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時の物語(易経短編小説集・近日中に出版予定)33

三十二.共に成長していく時

 若い男女が出逢えばやがて結婚につながることもある。二人がお付き合いしている期間よりも、夫婦となってからの期間の方が圧倒的に長い。新婚時代が数年間、やがて子供が産まれて子育てが始まる。子育ての期間は幼稚園に行くまでの幼少期、その後、小学生・中学生となり高校に進学する。今ではたいがい大学に行くので、子育て期間は二十年を超える。その間、夫婦を取り巻く環境は変化し続ける。夫婦はその変化に対応しながら共に成長していく。夫婦の関係も新婚時代と子供が学校に通い始めてからでは変化していく。男女が出逢って結婚し幾久しく共に変化して成長していく。それが「共に成長していく時」である。」

 「共に成長していく時」の主人公は「三十一.若い男女が出逢う時」でめでたく結婚することになった夫婦の「あなた(わたし)」である。

 わたしたち夫婦は昨年結婚したばかりだ。夫のわたしは三十三歳、家内は二十八歳である。一年間の新婚生活を経て今家内のおなかには子供が宿っている。半年後に出産の予定だ。二人の新婚生活は公営団地での暮らしから始まった。公営団地を選んだのは、わたしが勤めている会社の近くに空室のある団地があって入居者を募集していたからだ。築三十年と老朽化しつつある古い団地だが、会社の先輩や同僚も入居しており、団地での生活について色々教えてくれることもあって即決した。家内も大賛成だった。二人の実家からも近かったので、毎週週末には交互にそれぞれの実家に顔を出した。子供ができたので、家内は勤めていた会社を辞めることにした。日本では子供の教育費がかかるので共稼ぎの夫婦がほとんどだが、わたしも家内もせめて子供が小学校を卒業する頃までは、子供に寄り添ってきちんと子育をてしたいと思ったからだ。それぞれの両親もわたしたちの考え方に賛成してくれている。以下省略。