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易経六十四卦と本書(時の物語)の関係 10

二十八.枯れた柳に新芽が生える時  百四十一頁  沢風大過 ☱☴
二十九.人生で最も辛い時      百四十五頁   坎為水 ☵☵
三十.歴史に学ぶ時         百五十頁    離為火 ☲☲
易経では一~三十までを上(じよう)経(けい)と名付けている。

二十八澤風大過 ☱ ☴ 兌上巽下  枯れた柳に新芽が生える時 百四十一頁
 澤風大過☱☴は山雷頤☶☳の錯卦(陰陽反転した形)である。山雷頤が容れ物がしっかりしている(上爻と初爻が陽爻)のに中身が空っぽ(四爻から二爻まで陰爻)なのに対して、澤風大過は容れ物が壊れそう(上爻と初爻が陰爻)なのに、中身がぎっしりと詰まっている(四爻から二爻まで陽爻)。中身は剛強で活発に動くので、壊れそうな容れ物が倒壊しかねない時である。

二十九坎為水 ☵ ☵ 坎上坎下  人生で最も辛い時 百四十五頁
 四(よん)大(だい)難(なん)卦(か)と称される卦は「三.水雷屯☵☳」「二十九.坎為水☵☵」「三十九.水山蹇☵☶」「四十七.澤水困☱☵」の四つだが、坎為水は六十四卦の中で最も辛く困難な時である。四大難卦は、いずれも坎☵が置かれているが、坎為水は上卦も下卦も坎☵である。
 坎には次のような性質がある。
 「陥る、険しい、困難・険難・艱難、苦労、紆余曲折、悩む、憂う、泣く、流れる、下る、濡れる、溺れる、凹み、冷たい、寒い、寂しい、刑罰、悪、盗み、寇(あだ)、反目、病、貧しい、窮(きゆう)迫(はく)(困窮)、不景気、盗賊、寇(あだ)、悪、神経病、刑、眚(わざわい)、疾(やまい)、羞恥、害悪、敗れる、咎められる、醜い、呆(あき)れる、痛い、薄命、万苦、破廉恥、滅亡、流離、汚名、横着、倒産、潰れる、嫉妬、無頼漢、詐欺、悶える、無情、危急」
 これだけのマイナスの性質が上卦にも下卦にも詰まっているのだから六十四卦の中で最も辛く困難な時であることが納得できる。

三十離為火 ☲ ☲ 離上離下  歴史に学ぶ時 百五十頁
 易経には「天地人三才(天の道・地の道・人の道の三つがある)」という考え方があるが、「一.乾為天☰☰」から「三十.離為火☲☲」までの上経(じようけい)は「天の道・地の道」を大きく示しており、上経(じようけい)を締め括る「二十九.坎為水☵☵」と「三十.離為火☲☲」は上経(じようけい)で示した「天の道・地の道」を、下経(かけい)の「人の道」に繋げている。
 太極(無限のエネルギーと陽と陰の働き)によって天地宇宙が創造され、万物が生成発展する過程の中で地球という惑星が誕生し、その惑星に人類が生まれ、文明を発展させたことを上経の三十類型の物語は示している。
 地球という惑星を誕生させたのは「一.乾為天☰☰」と「二.坤為地☷☷」の相互作用である。地球上に生まれた人類が、他の惑星には見られない文明を創造発展した。
 文明を発展させるために必要不可欠なのは「水と火」である。人類が文明を創造発展させることができたのは、他の生物には決してできない「水と火」を制御することができたからである。すなわち、上経(じようけい)が「一.乾為天☰☰」と「二.坤為地☷☷」から始まるのは、地球という惑星を誕生させた原理原則を物語として示すためであり、「二十九.坎為水☵☵」と「三十.離為火☲☲」で終わるのは、人類だけが成し遂げた「水と火」を制御する方法を物語として示すためである。

 以上一乾為天から三十離為火までを「上経」と呼び、「天の道」「地の道」など大きな物語を表している。