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抜粋「現代語訳(超意訳) 呑象高島嘉右衛門著 増補 高島易斷 上下巻 占例篇」 雷火豊 二

2022年8月28日

豊 九三 ・・| |・|

九三。豐其沛。日中見沬。折其右肱。无咎。
□九三。其(その)沛(はい)を豊(おおい)にす。日(ひ)中(ちゆう)に沬(ばい)を見る。其(その)右(う)肱(こう)を折(お)る。咎(とが)无(な)し。
 剛健正位で明智を備え才德に秀でるが、応ずる相手が暗愚ゆえどうにもならない。沼沢地帯に雑草灌木が生い茂り太陽の光を遮り蔽って、昼間なのに真っ暗闇で小さい星が見える。六二の蔀(ほう)による真っ暗闇よりさらに真っ暗な状態、暗黒の世になった。この閉塞状態を何とかしようとするが、右腕の肱(ひじ)を骨折したようにどうすることもできない。やむを得ないことゆえ、誰も九三を咎められない。
象曰、豐其沛、不可大事也。折其右肱、終不可用也。
□其(その)沛(はい)を豊(おおい)にすとは、大事に可(か)ならざる也。其(その)右(う)肱(こう)を折(お)るとは、終(つい)に用(もち)ふ可(べ)からざる也。
 大きな事は為し遂げられない。才德秀でた九三が終に世に用いられないのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)剛正ノ德アリテ、從來發達シタルモ、今ハ衰運ニ向ヘリ、且ツ從來同志ノ人アリテ、互ニ相助ケシモ、是亦離ルルナリ、又賭博シテ大ニ損敗スルノ象アリ、法律ヲ・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)剛健正位で盛運にあったが、今や衰運に向かっている。しかも、これまで助け合ってきた同志と離れ離れになる時である。
○賭け事をして大きな損失を出す。警察に隠れて法律を犯すのは節度が破綻しているのである。損失を出せば右腕を失うような苦痛を伴うが、損害は金銭だけに止まり、咎を免れる。
○実用的な(有用な)事は成し遂げられない。
○大砲を放つように大きな事が起こり得る。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)友人某來リテ、某會社ニ加入スルノ吉凶ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ、豐ノ第三爻ヲ得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)ある友人がやって来て、ある会社に投資することについて吉凶を占ってほしいと頼まれたので筮したところ豊の三爻を得た。
 易斷は次のような判断であった。
 豊の卦は、知者と有力者が協力して盛大に事業を為し遂げる時。
 今回占って三爻を得た。
 その会社(ある会社)は表面的には公明正大であるが、内側を観察すると、吃驚(びつくり)するほど暗黒な組織である。喩えれば、窓を厚い木綿の日除けで覆って室内が真っ暗なので照明を使用しなければ何も見えないような状態。だが、社長の力が弱く、役員(取締役)が権威を振りかざしている。まるで、太陽(社長)が光を失って昼間なのに真っ暗闇になって、星(役員)が輝いている状態である。
 今、貴方が力を借りる相手は上爻である。貴方と上爻とは陰陽相応じている。そして、上爻は老舗の商人であるが、経営が傾いておりその継続すら危ぶまれている。しかも傲慢で人情味に欠ける人物である。貴方が上爻の力を借りれば、大きな損失を蒙って困窮する事態に陥ることは間違いない。しかも大金を失うことになる。それゆえ「其(その)右(う)肱(こう)を折(お)る。閉塞状態を何とかしようとするが、右腕の肱(ひじ)を骨折したようにどうすることもできない」と云う。よって、その会社への投資は、断固として止めるべきだと易断した。
 友人は易断を聞いて、投資を止めたので、損失を出さずにすんだ。
 果たしてその会社は倒産した。友人は、易占の絶妙さに感嘆した。