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期間限定「現代語訳(超意訳) 呑象高島嘉右衛門著 増補 高島易斷 上下巻 占例篇」 水地比

八 水地比 ・|・ ・・・

比、吉。原筮、元永貞、无咎。不寧方來。後夫凶。
□比は吉。原(げん)筮(ぜい)して、元(げん)永(えい)貞(てい)なれば、咎无なし。寧(やす)んぜずして方(あまね)く来(きた)る。後(おく)るる夫(ふ)は凶。
 比は親しみ和合する時。共存共栄する。親しむべき相手を推(お)し量(はか)り、占筮するように人の意見を素直に聞き、元(仁)永(恒)貞(正)の德を備えていれば過ちは犯さない。不安を抱く人々が九五の下(もと)に集まって来る。
 和合できない人は駄目である。
彖曰、比吉也。比輔也。下順從也。原筮、元永貞、无咎、以剛中也。不寧方來、上下應也。後夫凶、其道窮也。
□比は吉なり。比は輔(たす)くるなり。下(した)順從する也。原筮して元永貞なれば、咎无しとは、剛中なるを以てなり。寧(やす)んぜずして方(あまね)く来(きた)るとは、上下応ずるなり。後(おく)るる夫(ふ)は凶とは、其の道窮まればなり。
 比は親しみ和合するから共存共栄する。比は天子と臣民が助け合う。九五の天子に臣民が素直に従い和合する。親しむべき相手を推し量り、占筮するように人の意見を素直に聞き、元(仁)永(恒)貞(正)の德を備えていれば過ちは犯さない。九五が剛中備えて私欲なく(元)、健にして息まず(永)、正固にして偏らない(貞)からである。不安を抱く人々が集まって来る。九五が普(あまね)く親しむ道を衆陰に施すからである。和合できない人は駄目である。人々から疎外され終に困窮するのである。
象曰、地上有水比。先王以建萬國親諸侯。
□地上に水有るは比なり。先王以て万國を建て諸侯を親しむ。
 大地(坤)の上に水(坎)が有り、間隙ない潤いによって万物を生成するのが比の形。
 昔の王は、功德ある臣下を各地に分封し、大地と水が万物を生成する如く、諸侯臣民を養育したのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)此爻ヲ得ルトキハ、人ト親ミテ共ニ事ヲ爲スニ吉ナリ、獨立シテ事ヲ爲スベカラズ、又己レ貞實ニシテ勉強スルトキハ、衆人ノ加勢ヲ得テ望ム所ノ大業ヲ容易ニ遂ゲ得ルノ時トス、一タビ人ト親マズ、其人ヲ容レテ生涯親ヲ失フベカラズ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)この卦が出たら、人と親しんで共に事を為せば吉。一人で事を為そうとしてはならない。正しく篤実で勉強に励めば、大勢の人が参加してくれて、希望している大きな事業を容易に成し遂げられる。
人と親しむことを忘れて、信用を失ってはならない。
○大体の事は、高貴で老成の人に仕えて、企画実行するが宜しい。
○自分が相手に順えば、相手は自分を信用する。
○大体の事は順調に行なわれるが、賢臣が不在なので、組織内が調和しないことがある。
○先手を打てばうまくいくが、遅れると凶運を招く。
○助ける、親しむ、和らぐ時。
○願望が実現する時。
○出て行って行動すれば、多くの人々から親しまれる。
○物価は下がる。

比 初六 ・|・ ・・・

初六。有孚比之。无咎。有孚盈缶。終來有它吉。
□初六。孚有りて之に比す。咎无し。孚有りて缶(ほとぎ)に盈(み)つ。終に來りて它(た)の吉有り。
 誠実さに満ち溢れて人々と親しむ。それゆえ過失を免れる。その真心は質素な器に酒が溢れ出るようだ。やがて天子からご褒美を賜る。
象曰、比之初六、有它吉也。
□比の初六は、它(た)の吉有るなり。
 誠実さに満ち溢れて人々と親しむから、ご褒美を賜るのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)此爻ヲ得ルトキハ、憤發心ヲ起シテ知ラザル土地ニ行クノ象アリ、而シテ其地ニ於テ知己ノ人ナシト雖モ、孚ヲ盡シ誠ヲ竭シ勉強スルトキハ、人之ヲ信シテ終ニ大幸福ヲ得ルノ占トス、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)発憤する心が芽生えて、知らない土地に出かけて行く。知っている人はいないが、至誠の心で勉強する。周りの人から信用されて、大きな幸福を得る。人を愛し、敬することを肝要とし、親切にして、苦労が報われなくても愚痴を言わず、人のために尽くす。多くの人から愛されて、生涯の立身出世と幸福の土台を築くことができる。
○万事心配しなくて宜しい。予兆なく(急に)吉運を招く。
○ある事が充実していれば、他の事も吉運を招く。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)某氏ノ子、永ク英国ニ留學シ、歸朝ノ後職ヲ某省ニ奉ズ、一日來リテ身上ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ比ノ初爻ヲ得タリ・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)ある人のご子息は、長期間英国に留学していたが、帰国してからは、国家公務員として役所に勤めている。
 ある時、そのご子息がやって来て、身の上を占ってほしいと頼まれた。
 そこで占ったところ、比の初爻を得た。
 易斷は次のような判断であった。
 比は地上に水があるという形。地上に水がある時は、水が大地に密着して離れることがないので「比(ひ)(したしむ)」と名付けた。「比」は「親しむ」ことである。
 それゆえ、此の卦が出た時は、人に親しむことが肝要である。
 あなたの家庭教育が大変優れているのは、あなたの人柄を観れば推測できる。しかも、長期間英国に留学して多くの人々と交際してきたので、性質は温和で、処世にも長けている。比の卦が出たのは、あなたの身の上を占うのに最も適当で妥当な卦である。
 比の意味は、人に親切なことだから、身を立てることを最も重要としているので、あなたが身を立てようと思うのならば、親しみと調和の心を尽くして、人に接するべきである。あなたに対して不快な思いを抱いている人がいても、気にしたり、怨んだりすることなく、真心で接して、怨みに報いるに徳をもっていするようにすれば、その人も改心して、あなたを信頼するようになる。
 だから「孚有りて之に比す。咎无し。誠実さに満ち溢れて人々と親しむ。それゆえ過失を免れる」と云うのである。
 以上のようであれば、世間がどう変化しても、泰然と自分の心(志)を動かさずに、古典を読んで賢人を朋友とし、天地の道を履み行ない、誰からも信用されるようになれば、あなたの真心は本物となり、周りの人々を感化する。そうなれば、あなたが始めて会う人も、あなたの真心を感じ取って、あなたを尊敬して慕うようになる。
 このことを「孚有りて缶(ほとぎ)に盈(み)つ。終(つい)に來(きた)りて它(た)の吉(きつ)有り。その真心は質素な器に酒が溢れ出るようだ。やがて天子からご褒美を賜る」と云う。
「缶(ほとぎ)に盈(み)つ」とは、お酒が器に一杯盛られること。心から真心が溢れることを云う。
 あなたは、やがて、九五(明治天皇)に応ずる六二(賢臣)となり、将来は六四(天皇の側近)の地位を得ることもできる。
(易占の結果は書いてない。)

比 六二 ・|・ ・・・

六二。比之自内。貞吉。
□六二。之に比すること内よりす。貞にして吉。
 柔順中正の賢臣六二は、九五の天子に誠実に仕える。
 常に臣下の道を固く守るがよい。
象曰、比之自内、不自失也。
□之に比すること内よりすとは、自ら失わざるなり。
 六二は、臣下の立場を弁えて、己を見失わないのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)此爻ヲ得ルトキハ、五ノ心情ヲ察シ、内縁ヨリ親附シテ、上流ノ人ノ援助ヲ得、幸ヲ受ルノ時トス、比ハ自然ノ親和ナリ、巧言令色ノ謂ニアラズ、察セザルベカラズ・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)九五の心情を察して、組織の下層から親しむので、徐々に上層部に知られるようになる。九五の援助を得て、幸福を得る時。自然に親しむことが肝要、巧言令色は不可。それを察する繊細な心が大切。
○内側(内面)から外側(外面)に親しみ、水が渾然一体と合わさるように真心を抱くから、吉運を招く。
○愛情が溢れ過ぎて、物事に陥り溺れることもある。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)某縣ノ知事、某省ヘ榮轉セントスルニ際シ、其運氣及進退ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ比ノ第二爻ヲ得タリ・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)ある県の知事がある省の次官として栄転するかもしれないと噂されていた時に、その知事から今後の運気と進退を占ってほしいと頼まれた。
 そこで占ったところ、比の二爻を得た。
 易斷は次のような判断であった。
 比は大地の上に水があり、水と大地が密着して相親しむ時。
 六二は、柔順中正の德を具えて、剛健中正の德を具えた九五の天子に相応じている。その性質は正しくして善である。
 貴方は次官に就任し、事務方のトップとして組織を統制する。大臣は大局的な視点で政治的な決断を下す。貴方と大臣は共に補完し合って省庁を統治する責任を負っている。
 また、貴方と大臣との関係は、元々水と魚のように相性がよい。貴方と大臣が仕事を一緒にすることになれば、お互い手を取り合って大事業を成し遂げられる。泰然と構えているが宜しい。
 このことを「之に比すること内よりす。貞にして吉。柔順中正の賢臣六二は、九五の天子に誠実に仕える。常に臣下の道を固く守るがよい」と云う。
 その後しばらくして、その知事はある省の次官として、めでたく栄転したのである。

比 六三 ・|・ ・・・

六三。比之匪人。
□六三。之に比する、人に匪(あら)ず。
 六三は柔弱不中正でやり過ぎる性格。
 相親しむ時に応比なく、誰とも親しむことができない。無理して上六に親しもうとすれば、上六は「人でなし」ゆえ、禍(わざわい)を招く。
象曰、比之匪人、不亦傷乎。
□之に比する、人に匪(あら)ず、亦(また)傷(いた)ましからず乎(や)。
 誰とも親しむことができない。無理して上六と親しめば、禍(わざわい)を招く。嗚呼(ああ)…何と痛ましいことであろうか。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)此爻知ラズ識ラズ不善ノ人ニ親ヲ結ブノ象アリ、猛省シテ過ヲ改メズンバ親ム人ノ爲メニ大ナル禍ヲ得テ難澁ヲ醸スベシ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)この爻が出たら、知らず知らずのうちに、善からぬ人と親しくなってしまうことになる。よくよく注意すべきである。
○猛省して、過ちを改めなければ、大きな災難に遭遇して、大苦難・大困難な状況に陥ることになる。
○自分が犯している過ちに早く気が付き、その過ちを改めて、善き心を取り戻したならば、自力で凶運を免れることができる。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)友人某來リテ曰ク、僕近來友人某氏ト相謀リテ、一ノ大商業ヲ企テ、今將サニ着手セント欲ス、願クハ其成否如何ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ比ノ第三爻ヲ得タリ・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)友人がやって来て、「ある人」と共同で事業を企画していたが、そろそろ着手しようと思う。その成否を占ってほしいと頼まれた。
 そこで占ったところ、比の三爻を得た。
 易斷は次のような判断であった。
 比は地の上に水がある。朋友と大変仲良くなって親しみが厚くなるという意味である。だが、親しむ時だから、親しむ相手、親しむ友だちによっては、大いに損益と利害が分かれる。相手や友だちが善人であれば吉運を招くが、もし、善からぬ人ならば、凶運を招く。
 この爻は善からぬ人を善人と勘違いして凶運を招く。貴方が今善人と信じて親しんでいる上爻は、実は善からぬ人である。
 上爻の言葉には「首(かしら)なし。凶。剛に乗じて傲(ごう)慢(まん)不(ふ)遜(そん)ゆえ、九五と親しむことができない。卦辞(彖辞)の『後(おく)るる夫(ふ)は凶』とは上六のこと」とある。上爻は断罪に処せられる者である。あなたは、共に事業を行なおうとしている「ある人」が善からぬ人であることを知らずに一大商業を企画実行しようとしている。自ら凶運を招き入れようとしている。
 このことを「之に比する、人に匪(あら)ず。無理して上六に親しもうとすれば、上六は「人でなし」ゆえ、禍(わざわい)を招く」と云う。
 あなたが事業を共にしようとしている人は、「人でなし」である。あなたがそのことを知らないのは、嘆き悲しむべきことである。
 このことを「亦(また)傷(いた)ましからず乎(や)。嗚呼(ああ)…何と痛ましいことであろうか」と云っている。
 この易断を聞いて、その友人は大変に驚いた。
 その後しばらくして、西日本で謀反事件が起きた。その友人は、「人でなし」と道連れに、斬罪に処せられたのである。

比 六四 ・|・ ・・・

六四。外比之。貞吉。
□六四。外之に比す。貞にして吉。
 柔順正位の大臣六四は、上(外)の九五と親しむ。正しく天子を補佐するがよい。
象曰、外比於賢、以從上也。
□外賢に比し、以て上に従う也。
 賢者と親しむ。陰が陽に柔順に従うのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)目上ノ人ニ就テ事ヲ行フトキハ、平安ニシテ吉ヲ得ベシ、瑣々タル家事ニ關係セズ、一向我ヲ信用スル賢者ノ爲メニ孚ヲ盡シテ實功ヲ立ツベキノ時トス、
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)目上の人に従って事を行なえば、平安にして吉運を招き寄せる。細かいこと(小事)には関わらず、自分のことを信頼してくれる賢人のために誠を尽くして、功を成し遂げる時である。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)明治二十一年、某貴顕の氣運ヲ占ヒ、筮シテ比ノ第四爻ヲ得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)明治二十一年、ある貴人の気運を占い、比の四爻を得た。
 易斷は次のような判断であった。
 比は地の上に水があり、お互い親しみ和するという象。今回占って四爻が出た。
 貴人は九五の天皇陛下の側近として、誰よりも忠誠心を持って、心からお仕えすることが出来る人物である。このような人物を宮内大臣に任ずれば吉運を招き寄せる。大いに宜しく善き社会になると易断した。
(易占の結果については書いてない。)

比 九五 ・|・ ・・・

九五。顯比。王用三軀失前禽。邑人不誡。吉。
□九五。顯(あきら)かに比す。王三(さん)軀(く)を用ひ前(ぜん)禽(きん)を失ふ。邑(ゆう)人(じん)誡(いまし)めず。吉。
 剛健中正の天子九五は、衆陰から慕われ親しみ和合する。古(いにしえ)の天子三(さん)軀(く)の礼(君の狩猟は四方を囲まず三方を囲み、禽獣の逃げ道を作っておく)に倣(なら)って、来る者は拒(こば)まず去る者は追わない。
 大衆を戒める必要はない。天下を泰平に導く明君である。
象曰、顯比之吉、位正中也。舎逆取順、失前禽也。邑人不誡、上使中也。
□顯かに比するの吉は、位(くらい)正中なれば也。逆を舎(す)てて順を取り、前(ぜん)禽(きん)を失ふ也。邑(ゆう)人(じん)誡(いまし)めずとは、上の使うこと中なれば也。
 衆陰から慕われ天下を泰平に導くのは、剛健正中で尊位に居るからである。
 去る者は追わないことを「前(ぜん)禽(きん)を失う」と言う。大衆を戒める必要はない。上(九五)が正中備えているからである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)衆人ノ望ヲ得ル時ナレバ何人ニ對スルモ必ズ誠心ヲ以テ交際ヲ厚クスベシ、又如何ナル賤民ト雖モ我同胞兄弟ノ看ヲナシテ、賤ミ棄ルコト勿レ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)大衆の希望が叶う時。誰に対しても至誠の心で厚く交際すべきである。どんなに卑しい人でも、同胞や兄弟だと思って、冷たく接してはならない。以上のようであれば、必ず身を立てて、人の道を履み行ない、名を後世に残すことになる。この爻は、大衆を包容する見識を具えた人物である。己を虚しくして、人からの諫言をよく聞き、世間の英雄や豪傑と称される人物を集め、遂には功を成し遂げる。
○ある組織のトップになる。
○トップの地位に在り多くの部下に親しまれている。多くの優秀な部下に支えられている。
○親しみ和する者同士が集まる時。
○多くの部下から仰ぎ観られる時。
○一人のトップリーダーが多くの部下と親しみ、多くの部下が一人のトップリーダーを支える時。
○上層部の人々が下層部の人々と親しみ、下層部の人々が上層部の人々に従順に親しむ時。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)明治二十四年三月十四日、衆議院議長中島信行、前長崎縣知事日下義雄ノ兩氏、來訪セリ、(中略)乃チ筮シテ比ノ第五爻ヲ得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)明治二十四年三月十四日、衆議院議長の中島伸行氏と前長崎県知事の日下義雄氏がやって来て、時節がら話はロシアのことに及び、両氏は次のように言った。
「先月の横浜毎日新聞によれば、米国の漁船に雇用された米国人四人と日本人二十四人がロシアの領海でロシア人に捕えられてから数年が経過し、米国人と日本人の二名が苦役中に亡くなったとあるが、米国人の中で体力に優れた二名が帰国したという。ロシアは強国、米国は公明正大な国である。日本は両国に挟まれており、政府はこの事態にどのように対処するかを占ってほしい」。
 わたしは、占筮して未来を予測することを憚(はばか)るわけではないが、維新の時の当事者ではないので、この占筮は不肖のわたしが、あくまでも天の代理人として行なうことをお断りして、占筮したところ、比の五爻を得た。
 易斷は次のような判断であった。
 比の卦は地の上に水がある。地上と水がピタリと密着している。それゆえ比と言う。比とは親しむこと。水は大地に親しむ。
 今、国家間を占ったのだから、自国と他国が相親しんでいる時と見る。それゆえ、ロシア政府も親しむことを望んでいる。日本や米国に対して、他意があるわけではない。日本は欧米各国と条約を締結して、互いに相親しんでいる。これも比の時である。この卦爻が出たことから、ロシア政府が故意で行なったことではないことは明らかである。
 ロシアの国情を考えれば、その国土は広大で、沢山の民族が集まって、使用される言語の種類も異なる。政府の報告も、異なる言語で行なわれると聞く。事務手続きも煩雑で、統一されていない。シベリア地方は統治に苦労しており、命令や規則が徹底していない。欧米各国とロシアの間において、揉め事が起こった時、ロシア政府の方針がシベリア地方にまで行き届かないこともある。
 今回の事件はシベリア地方で起きた一つの小さな事件であり、現地人の蛮行だから、外交問題として公に対処するべきではない。米国が大使を派遣して公的に対応しても、シベリア地方の役人を厳罰に処すると言うに止まるであろう。公的に対応しても、このような結果しか得られない。竹の杖で象の尻を叩くようなものである。
 天皇陛下はロシアの皇帝陛下と親しんでいる間柄なので、このような小さな事件のために、国家間の親和を損なってはならない。ロシア皇帝は度量が大きいから、来る者は拒まず、去る者は追わない。こんどの事件は、元々ロシア政府の意に沿ったものではないのだから、罪を犯した者どもを、それ相当の刑罰に処するものと思われる。
 このことを「顯(あきら)かに比(ひ)す。剛健中正の天子九五は、衆陰から慕われ親しみ和合する」と云う。
 これからは、西シベリア海において、日本ロシア両国の人民が互いに漁業するという規則・条約を締結すべきである。その規則・条約は、ある一定の範囲内における漁業を禁じ、その範囲外であれば、自由に漁業することを許可するという内容にすべきである。
 このことを「王三(さん)軀(く)を用ひ前(ぜん)禽(きん)を失ふ。古(いにしえ)の天子三(さん)軀(く)の礼(君の狩猟は四方を囲まず三方を囲み、禽獣の逃げ道を作っておく)に倣(なら)って、来る者は拒(こば)まず去る者は追わない」と云う。
 大海は人類の共同資源だから、どの国民でも漁業を許可すべきである。
 このことを「邑(ゆう)人(じん)誡(いまし)めず。吉。大衆を戒める必要はない。天下を泰平に導く明君である」と云う。
 ロシア政府との談判は、以上のようであるべきだと易断した。
 両氏(衆議院議長の中島伸行氏と前長崎県知事の日下義雄氏)は易占の絶妙さに感服したようである。

比 上六 ・|・ ・・・

上六。比之无首。凶。
□上六。之に比するに首(かしら)无し。凶。
 柔弱不中でやり過ぎる上六は、剛に乗じて傲慢不遜ゆえ、九五と親しむことができない。卦辞(彖辞)の「後(おく)るる夫(ふ)は凶」とは上六のこと。
象曰、比之无首、无所終也。
□之に比するに首(かしら)无しとは、終る所なき也。
 剛に乗じて傲慢不遜。九五と親しむことができない。このような態度で、終りを全うできるはずがない。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)此爻ヲ得ルトキハ、人ト交ルノ初メ、道ニ違ヒタルガ故ニ、終ヲ善クスルコト能ハズ、朋友ト絶交スルノ時トス、改心スベキナリ、
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)この爻は、人と交わる道を始めから踏み外して歩むがゆえに、比の時の終わりを全うすることができない。
○朋友と絶交する時。心を改めなければならない。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)某縣人、余ガ友某氏ノ紹介状ヲ持ジ來リテ曰ク、生今度志願アリテ上京セリ、某貴顕ハ同縣人ニシテ、素ヨリ相知ル所ナレバ、同氏ニ就テ身上ヲ依頼セントス、諾否如何ヲ占ハンコトヲ請フト、乃チ筮シテ比ノ上爻ヲ得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)ある県の役人が、友人の紹介状を持参してやって来た。
「わたしは志願して上京して来た。わたしと同郷で知っている貴人にお願いして、志願を適えようと思うのだが、その願いが適うかどうかを占ってほしい」と頼まれた。
 そこで占ったところ、比の上爻を得た。
 易斷は次のような判断であった。
 比は地の上に水があって親しむという卦である。だが、今回占って上爻が出たので、親しむ道から外れてしまった。
 貴方は元々偏屈や頑固な人ではないが、貴方と同郷の貴人は、貴方のことを強情で我が儘な人だと思い込んでいるから、貴方の願いを聞き入れてくれない。貴方は、その貴人が以前から、貴方に親しくしてくれていると信じているが、それほど深い付き合いではなく、表面的に接しているだけである。その貴人は貴方が思っているほど、貴方のことを信じていない。今、貴方がお願いしても、その貴人は聞き入れてくれない。
 それゆえ「之に比するに首(かしら)无し。凶。柔弱不中でやり過ぎる上六は、剛に乗じて傲慢不遜ゆえ、九五と親しむことができない。卦辞(彖辞)の「後(おく)るる夫(ふ)は凶」とは上六のこと」と云う。貴方のお願いは無理があることを示している。
 残念ながら、貴方は志願を達成することができないと易断した。
 その後、志願は達成できなかったと伝え聞いた。