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抜粋「現代語訳(超意訳) 呑象高島嘉右衛門著 増補 高島易斷 上下巻 占例篇」 山天大畜

2022年5月31日

二六 山天大畜 |・・ |||

大畜、利貞。不家食吉。利渉大川。
□大畜は貞しきに利し。家(か)食(しよく)せず。吉。大川を渉るに利し。
 天(乾)が山(艮)の中に在(あ)り、大きなものを止め貯え養っている。君子が大きな才德を心の中に止め貯え養っている。正しい道を守るがよい。家から出て社会のために尽くせば、天下の艱難を救済できる。難事業に取り組むがよい。
彖曰、大畜、剛健篤實輝光、日新其德。剛上而尚賢、健止能。大正也。不家食吉、賢養也。利渉大川、應乎天也。
□大畜は剛健篤実にして、輝(き)光(こう)日々に新た也。其の德、剛上りて賢を尚び、能く健を止む〔能く健にして止まる〕。大いに正しき也。家食せず、吉とは、賢を養う也。
 大川を渉るに利しとは、天に応ずる也。
 大畜は剛健(乾)にして篤実(艮)。天德は光り輝き、日々新たに磨かれる。六五の天子は上九の顧問を尊びその教えによく順い正しい道を施して不義を畜める。大いに正しいのである。家から出て社会のために尽くせば、天下の艱難を救済できる。六五の天子が賢人を貴びよく養い任用するからである。
 難事業に取り組むがよい。天の道に適っているのである。
象曰、天在山中大畜。君子以多識前言往行、以畜其德。
□天、山の中に在るは大畜なり。君子以て多く前(ぜん)言(げん)往(おう)行(こう)を識(しる)して、以て其の德を畜(たくわ)う。
 天(乾)の元氣を山(艮)が貯えている。
 君子は古(いにしえ)の賢者の言行を体得し、見識を胆識に高めるべく、日々人德を磨くのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)幾多ノ艱難ヲ經テ、事業亨通スルノ意アリ、學事ニ長ジ、經験ニ冨ミ、多ク艱難ヲ嘗メタルノ士ハ、進退出身ニ宜シトス、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)困難を乗り越えて、事業が成就する。学問に優れ、経験も豊富、多くの困難を乗り越えた経験がある人は成功する。
○礼儀(調和を図ること)を大切にして、人々に恵みの心で施すように心がければ、利益を得られる。
○健やかさを維持するのに適した時である。
○あらゆる事が滞らないように心がければ、物事が思い通りに進み、利益を得られる時である。
○大畜の時は蓄える時、養う時、止める時である。
○貯えて積み上げれば、大きく成長する。立派な人(大人)は必ず吉運の兆しが現れる。天下に名を知られる時でもある。
○事を企てる(新規事業を立ち上げる)ことに適している時である。
○社会に出て人や企業(組織)に仕えることで吉運が開ける時。
○漸進、進出、浸入することが、時に中っていれば吉運が開ける。
○学問が発達する時である。
○占って下卦三爻が出たら進むことを戒め、上卦三爻が出たら止まることが肝要である。
○上九変ずれば之卦「地天泰」となり、物事が通達する兆しが現れる。

大畜 初九 |・・ |||

初九。有厲。利已。
□初九。危(あやう)き有り。已(や)むに利し。
 大畜は下卦乾が進むのを上卦艮が止めることを大義とする。正応六四は初九が進むのを止める。進めば危険に陥る。止めるがよい。
象曰、有厲、利已、不犯災也。
○危(あやう)き有り。已(や)むに利しとは、災を犯さざる也。
 止めるがよい。微力なのに危険を犯せば、自ら災害を招く。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)一學問ヲ修メ得テ、凡ソ天下ノ事、我ニ於テ成シ難キコトナシト、自ラ信ジテ疑ハザルガ如シ、是レ其一ヲ知テ、未ダ其二ヲ知ラズ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)「一つの学問を修めれば、成し難い事業はない」と、錯覚している人は、自分を過信している。一つのことを知っただけで、他のことも知っていると思い込んでいる。馬車馬が前方だけを見て、左右を見ていないのと同じである。羊の腸のようにくねくねと曲った 険しい道(艱難辛苦)は、山岳にあるのではなく、平地にあることが多い。
 剛健の才德がある人は、能く事業を成し遂げる一方で、事業の正否を見誤ることも多い。理屈はよく知っているけれども、経験の裏打ちがない人は、事を誤り、事に敗れる。経験の裏打ちがない時は、決して進んではならない。無理して進めば、必ず人に妨害される。
○下卦乾の三陽が、上卦艮に止められている。初爻は応ずる六四に止められる。進んで行けば危ない目に遭う。止まっているがよい。
○ちょっとした乱れに乗じて、自分が利益を得ようとする。
○家畜を養い、また、家畜を集める時。
○大きな事を企(たくら)んでいる時。
○行くことを止める方が理に適っている時。 ○制止される時。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)某縣士族某來リテ、運氣ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ大畜ノ初爻ヲ得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)ある県の役人某がやって来て、運氣を占ってほしいと頼まれたので、占筮したところ、山天大畜の初爻を得た。
 易斷は次のような判断であった。
 大畜は、地中の火氣が膨張しても、山の頂(いただき)が高いので、噴火には至らない。すなわち、天から見れば、小さな存在である山が、大きな存在である天を止める象である。それゆえ、この卦を大畜と名付ける。国家に例えれば、政府が法律を定めて、一億に達するほど多くの人民を統治する。下卦の剛健の三陽は連携して進み昇って行くが、上九の一陽が上でよく止め、下卦三陽の動きを抑制する。
 このように大いに止めることをもって大畜と云う。
 初爻は陽爻陽位で才智と氣力を合わせ持ち四爻の陰に応じている。これを読み解くと、貴方は知り合いの高官に依頼して、もっと高位の職務に仕官したいと希望している。だが、その希望は叶わない。大畜は、下に居る剛健の人々(民衆)が上に進もうとしても、上に居る政府はこの動きを静観せず、止めようとするからである。
 そこで「時のあり方に逆らって進んでも、その思いを遂げることはできない。それでもまだ進もうとすれば、自分だけでなく他人にも迷惑をかける(だから「危き有り。已むに利し」と云う。)」と易断した。
 だが、役人某は、この易断に従わずに、希望を叶えるべく、知り合いの高官に強引に面会を求めた。高官の書記官が諭しても納得せず、終には、三日間も警視庁に拘留される始末となった。その後、役人某は、易断は天命であることを痛感して、易を賛嘆するようになったのである。