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期間限定「現代語訳(超意訳) 呑象高島嘉右衛門著 増補 高島易斷 上下巻 占例篇」 山天大畜

二六 山天大畜 |・・ |||

大畜、利貞。不家食吉。利渉大川。
□大畜は貞しきに利し。家(か)食(しよく)せず。吉。大川を渉るに利し。
 天(乾)が山(艮)の中に在(あ)り、大きなものを止め貯え養っている。君子が大きな才德を心の中に止め貯え養っている。正しい道を守るがよい。家から出て社会のために尽くせば、天下の艱難を救済できる。難事業に取り組むがよい。
彖曰、大畜、剛健篤實輝光、日新其德。剛上而尚賢、健止能。大正也。不家食吉、賢養也。利渉大川、應乎天也。
□大畜は剛健篤実にして、輝(き)光(こう)日々に新た也。其の德、剛上りて賢を尚び、能く健を止む〔能く健にして止まる〕。大いに正しき也。家食せず、吉とは、賢を養う也。
 大川を渉るに利しとは、天に応ずる也。
 大畜は剛健(乾)にして篤実(艮)。天德は光り輝き、日々新たに磨かれる。六五の天子は上九の顧問を尊びその教えによく順い正しい道を施して不義を畜める。大いに正しいのである。家から出て社会のために尽くせば、天下の艱難を救済できる。六五の天子が賢人を貴びよく養い任用するからである。
 難事業に取り組むがよい。天の道に適っているのである。
象曰、天在山中大畜。君子以多識前言往行、以畜其德。
□天、山の中に在るは大畜なり。君子以て多く前(ぜん)言(げん)往(おう)行(こう)を識(しる)して、以て其の德を畜(たくわ)う。
 天(乾)の元氣を山(艮)が貯えている。
 君子は古(いにしえ)の賢者の言行を体得し、見識を胆識に高めるべく、日々人德を磨くのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)幾多ノ艱難ヲ經テ、事業亨通スルノ意アリ、學事ニ長ジ、經験ニ冨ミ、多ク艱難ヲ嘗メタルノ士ハ、進退出身ニ宜シトス、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)困難を乗り越えて、事業が成就する。学問に優れ、経験も豊富、多くの困難を乗り越えた経験がある人は成功する。
○礼儀(調和を図ること)を大切にして、人々に恵みの心で施すように心がければ、利益を得られる。
○健やかさを維持するのに適した時である。
○あらゆる事が滞らないように心がければ、物事が思い通りに進み、利益を得られる時である。
○大畜の時は蓄える時、養う時、止める時である。
○貯えて積み上げれば、大きく成長する。立派な人(大人)は必ず吉運の兆しが現れる。天下に名を知られる時でもある。
○事を企てる(新規事業を立ち上げる)ことに適している時である。
○社会に出て人や企業(組織)に仕えることで吉運が開ける時。
○漸進、進出、浸入することが、時に中っていれば吉運が開ける。
○学問が発達する時である。
○占って下卦三爻が出たら進むことを戒め、上卦三爻が出たら止まることが肝要である。
○上九変ずれば之卦「地天泰」となり、物事が通達する兆しが現れる。

大畜 初九 |・・ |||

初九。有厲。利已。
□初九。危(あやう)き有り。已(や)むに利し。
 大畜は下卦乾が進むのを上卦艮が止めることを大義とする。正応六四は初九が進むのを止める。進めば危険に陥る。止めるがよい。
象曰、有厲、利已、不犯災也。
○危(あやう)き有り。已(や)むに利しとは、災を犯さざる也。
 止めるがよい。微力なのに危険を犯せば、自ら災害を招く。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)一學問ヲ修メ得テ、凡ソ天下ノ事、我ニ於テ成シ難キコトナシト、自ラ信ジテ疑ハザルガ如シ、是レ其一ヲ知テ、未ダ其二ヲ知ラズ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)「一つの学問を修めれば、成し難い事業はない」と、錯覚している人は、自分を過信している。一つのことを知っただけで、他のことも知っていると思い込んでいる。馬車馬が前方だけを見て、左右を見ていないのと同じである。羊の腸のようにくねくねと曲った 険しい道(艱難辛苦)は、山岳にあるのではなく、平地にあることが多い。
 剛健の才德がある人は、能く事業を成し遂げる一方で、事業の正否を見誤ることも多い。理屈はよく知っているけれども、経験の裏打ちがない人は、事を誤り、事に敗れる。経験の裏打ちがない時は、決して進んではならない。無理して進めば、必ず人に妨害される。
○下卦乾の三陽が、上卦艮に止められている。初爻は応ずる六四に止められる。進んで行けば危ない目に遭う。止まっているがよい。
○ちょっとした乱れに乗じて、自分が利益を得ようとする。
○家畜を養い、また、家畜を集める時。
○大きな事を企(たくら)んでいる時。
○行くことを止める方が理に適っている時。 ○制止される時。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)某縣士族某來リテ、運氣ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ大畜ノ初爻ヲ得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)ある県の役人某がやって来て、運氣を占ってほしいと頼まれたので、占筮したところ、山天大畜の初爻を得た。
 易斷は次のような判断であった。
 大畜は、地中の火氣が膨張しても、山の頂(いただき)が高いので、噴火には至らない。すなわち、天から見れば、小さな存在である山が、大きな存在である天を止める象である。それゆえ、この卦を大畜と名付ける。国家に例えれば、政府が法律を定めて、一億に達するほど多くの人民を統治する。下卦の剛健の三陽は連携して進み昇って行くが、上九の一陽が上でよく止め、下卦三陽の動きを抑制する。
 このように大いに止めることをもって大畜と云う。
 初爻は陽爻陽位で才智と氣力を合わせ持ち四爻の陰に応じている。これを読み解くと、貴方は知り合いの高官に依頼して、もっと高位の職務に仕官したいと希望している。だが、その希望は叶わない。大畜は、下に居る剛健の人々(民衆)が上に進もうとしても、上に居る政府はこの動きを静観せず、止めようとするからである。
 そこで「時のあり方に逆らって進んでも、その思いを遂げることはできない。それでもまだ進もうとすれば、自分だけでなく他人にも迷惑をかける(だから「危き有り。已むに利し」と云う。)」と易断した。
 だが、役人某は、この易断に従わずに、希望を叶えるべく、知り合いの高官に強引に面会を求めた。高官の書記官が諭しても納得せず、終には、三日間も警視庁に拘留される始末となった。その後、役人某は、易断は天命であることを痛感して、易を賛嘆するようになったのである。
大畜 九二 |・・ |||

九二。輿説輹。
□九二。輿(くるま)、輹(とこしばり)を説(と)く。
 大畜の時ゆえ正応六五は九二が進むのを制止する。九二は六五が好意で自分を制止していることを知り、自ら車の車軸を外して進むのを止める。
象曰、輿説輹、中无尤也。
□輿(くるま)、輹(とこしばり)を説(と)くとは、中にして尤(とが)无(な)きなり。
 車軸を外して進むのを止める。中庸の德で自制するので、尤なきを得る。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)我レ進マントスレバ、彼抑ルノ時ナレバ、寧ロ共用ヲ已メテ、閑歩逍遙スルノ優レルニ若カザルナリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)進もうとすれば、相手が抑えようとする時だから、進むことをやめ、立ち止まってゆったりとする時である。
○真ん中に居て(中庸であることに徹して)、自ら立ち止まって、進もうとしない。車のタイヤを外して行動しない。
○博識である。 ○財産が集まる。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)親友某縣人某來リテ、運氣ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ大畜ノ第ニ爻ヲ得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)親友某と同郷の某がやって来て、運氣を占ってほしいと頼まれたので、占筮したところ、山天大畜の二爻を得た。
 易斷は次のような判断であった。
 大畜は、内卦三陽(剛健)の人民が連帯して驀進しようとする。外卦の政府は、人民の動きを止めて、今は篤実であることを求める。今の政府は、民間から賢人を登用することが難しい。自分が優秀だとアピールする人は、自分が登用されると過信している。また、政府が登用できる役人(公務員)の数には限りがある。
 賢人でも、今は登用することができない。埋もれている人や政府の都合で辞職した役人などが集まって、新聞紙上や演説会などで、国の政策を批判している。
 軽薄な人々は、大臣公邸に強引に押しかけて、面接を要求する。始めのうちは、大臣も執事を通じて、相手の要求を聞いてくれる。やがて、軽薄な人々は調子に乗って、毎日のように押しかけてくる。終に、事務作業が滞るようになり、それ以降、このような要求を謝絶するようになる。それでも、まだ面接を要求する輩(やから)は、巡査によって警視庁に送致される。九二は、国の政策に対して意見があり、提言したいと希望している。だが、今は、それは実現しないと察して、ゆったりと落ち着いて時が至るのを待っている。
 このことを「輿(くるま)、輹(とこしばり)を説(と)く」と云う。「輿(くるま)」とは、重い荷物を載せて遠くまで運ぶ道具である。今は、車を用いる時ではないことを知り、タイヤを外して休息する。重い荷物を遠くまで運べる力があっても、今、進んで行けば、抑えられてしまう。
 以上のことから、しばらく、様子を見て、時が到来するのを待つべきである。これを「輿(くるま)、輹(とこしばり)を説(と)くとは、中にして尤(とが)无(な)きなり」と云う、と易断した。
 親友某と同郷の某は、易断に従ったので、大いに宜しきを得た。
大畜 九三 |・・ |||

九三。良馬逐。利艱貞。曰〔日々〕閑輿衞。利有攸往。
□九三。良(りよう)馬(ば)逐(お)う。艱貞に利し。曰(ここ)に〔日々に〕輿(よ)衞(えい)を閑(なら)う。往く攸有るに利し。
 九三は下卦乾の上位に居り、駿(しゆん)馬(め)が疾駆(しつく)するように健やかに前進する。大畜は正応を畜止するので、上九は不応の九三を畜止せず、共に前進する。油断せずに艱難辛苦を覚悟して、正しい道を守るがよい。日々車馬の御し方と防衛の術を習得して、事を為すがよい。
象曰、利有攸往、上合志也。
□往く攸有るに利しとは、上、志を合わするなり。
 事を為すがよい。正応上九と志を同じくするのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)剛強ノ才ヲ恃ミ、進ムニ急ニシテ、却テ事ヲ敗ルノ意アリ、愼マザル可ラズ、但艱難辛苦ヲ經テ、後其ノ志願ヲ達スルコトヲ得ベシ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)剛強の才能を過信して、急いで進み過ぎる。本来なら成功することが失敗に終る。幾多の艱難辛苦を経験して、その後に志や希望が実現することを図るべきである。
○官僚になることを希望して(官を求めて)、国家公務員になる(朝廷に立つ)。或いは、官僚に訴えたいことがあって、官邸の前に立つ。
○任用されて希望が実現する時。
○大きな志を抱き、逃げずに厳しい環境に勉めて立ち向かえば、抜擢任用されて、大きな希望を成就することができる。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)余一日友人某氏ヲ訪フ、某氏謂テ曰ク、吾嘗テ或ル伯樂ヨリ馬車馬一頭ヲ購ハンコトヲ約セリ、今日當ニ牽キ來ルベシ、其性質駿駑果シテ如何、請フ一占を煩ハサント、乃チ筮シテ大畜ノ第三爻ヲ得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)ある日、友人某を訪ねたところ、某は次のように言った。
「嘗(かつ)て、わたし(某)は、ある伯楽(馬を見分ける専門家)から馬車馬を一頭購入する約束をした。その馬が今日、到着する。その馬の性質は駿(しゆん)馬(め)か、駄馬かを、占ってほしい」と頼まれた。その場で占筮したところ、山天大畜の三爻を得た。
 易斷は次のような判断であった。
 大畜は、剛健な性質で前に進もうとする人を、あえて強く止めようとする卦である。その馬(友人某が購入することを約束した馬)は剛健な性質で、吃驚(びつくり)するほど速く走る。また、大畜は、その馬の轡(くつわ)をしっかりと持ち、その馬が速く走ろうとすることを止めるという象をしている。爻辞に「良(りよう)馬(ば)逐(お)う。艱貞に利し」とある。その馬の性質が善良でも、貴方は元々馬を制御する技術が巧みではないので、剛健の性質で激昂しやすい馬を制御するのは難しい。
 以上の事から「しばらく、手(た)綱(づな)を操(あやつ)るのは技術が巧みな馭(ぎよ)者(しや)に任せて、よく訓練すれば、貴方(友人某)でも、遠くまで馬車を牽(ひ)いていける良馬になる。(これを「曰(ここ)に〔日々に〕輿(よ)衞(えい)を閑(なら)う。往く攸有るに利し。日々車馬の御し方と防衛の術を習得して、事を為すがよい」と云う)」と易断した。
 易断を聞いて、友人棒に馬車馬を購入することを勧めた伯楽(馬を見分ける専門家)が一頭の馬を牽いてやって来て、次のように言った。「この馬は剛健の性質で悪い癖はない。馬車を牽かせるのに適していることを保証する」。
 伯楽の話を信じた友人某は、馬を購入しようと思った。偶然、近くにある岸に繋いでおいた舟から砂利を陸揚げする人が大きな声を発した。馬は突然発せられた大きな声に驚いて、前足を上げてスクッと立ち上がり暴走しようとした。伯楽は精一杯の力で制止しようとしたが、止めることができず、馬の動きに巻き込まれて、下水に墜落してしまった。
 これを見ていた友人某は大変驚いて、この馬を購入する約束を取り消したのである。

(占例2)ある県の役人某がやって来て、運氣を占ってほしいと頼まれたので、占筮したところ、山天大畜の三爻を得た。
 易斷は次のような判断であった。
 大畜は、地中にエネルギー(氣)が満ちて地上に突き出ようとするが、聳え立つ高山が邪魔して、地上に出ることができない。国家に例えれば、人民は氣力が強く盛んで驀(ばく)進(しん)しようとしている。政府がこれを制止して、篤実な状態に止めようとする。その一方、優秀な人材が野に埋もれていることのないように、一定の給料水準を保証して、公務員として採用する時である。だから「家食せず。吉」と云う。
 三爻(役人某)は、下卦の一番上に在るから、下卦三陽の先頭に立って先に進んで行き、公務員として任用されることを望む。国家のためにあらゆる困難に立ち向かって行こうとする覚悟のある人である。応ずる上爻も、役人某(三爻)と同じく陽爻である。下を止める山天大畜の時にあっては、陽同士で応じない関係ゆえ、役人某(三爻)が進んで来るのを止めようとしない。
 役人某(三爻)は勉強熱心で体力も強く、至って健康だから、警視庁の役人として任用される。それゆえ、「良(りよう)馬(ば)逐(お)う。艱貞に利し」と云う。また、「輿(よ)衞(えい)を閑(なら)う」とは、武官として、警備や防衛の任務を訓練することを云う。「往く攸有るに利し」とは、武官として、立身出世することを云う。
 その後、ある県の役人某は、警部の職位を拝命した。

大畜 六四 |・・ |||

六四。童牛之牿。元吉。
○六四。童(どう)牛(ぎゆう)の牿(こく)なり。元吉。
 六四は大畜の時に中り、幼(よう)牛(ぎゆう)の角(つの)に横木を付けて人を害するのを防ぐように、正応初九の妄進を畜止する。微力な段階で悪を畜止すれば、初九は悪から遠ざかって善に遷(かえ)る。
象曰、六四元吉、有喜也。
○六四元吉とは、喜び有る也。
 初九は善に遷(かえ)る。天下万民上下君臣皆喜ぶ。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)其身地位ト時トヲ得タルガ故ニ、如何ナル人物ト雖モ、之ヲ自由ニスルコト、恰モ童牛ニ牿シテ、使役シ易キガ如クナルヲ得、大ニ吉ナルノ時トス、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)地位と時を得て、何事も自由自在。大いに吉運を得る。
○幼い牛の段階で、相手を防ぐことが容易にできる。善き吉運である。
○相手の要求を拒んで、争うことになる。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)余ハ愛知縣下熱田ニ「セメント」製造所ヲ所有ス、其支配人來リテ、明治二十三年「セメント」販賣上ノ商機ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ大畜ノ第四爻ヲ得タリ、…
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)わたしが所有しているセメント工場の支配人がやって来て、明治二十三年のセメント販売に関する商機を占ってほしいと頼まれた。そこで、占筮したところ、山天大畜の四爻を得た。
 易斷は次のような判断であった。
 大畜は、剛健を止めるという象。物事に例えれば、乾の堅物の人間が、艮の手(山・止)で「セメント」を製造する。セメントは、石灰(せつかい)と粘土とを混ぜ合わせて焼いたものを粉末にして、これを水に溶いて固めたものであり、石よりも硬い製品である。
 今、占筮して大畜を得た。沢山の物品を貯える必要がある。
 そこで、「今年は売りさばくことを控えて貯蔵する時だと認識すべきである。セメントの在庫を増やしてからでなければ、出荷してはならない。六四の爻辞(幼い牛の角に横木を付けて人を害することを防ぐ)のように、セメントを倉庫に納め、出荷できないように横木を取り付け、貯蔵しておき、(四爻から)上爻に移行する(二年後の)明治二十五年にこれを売り捌(さば)けば、面白いように高値で売れる。
 明治二十三年は在庫を増やすことに徹して、二十五年になったらこれを売り捌(さば)きなさい」と易断したところ、その通りになった。

大畜 六五 |・・ |||

六五。豶豕之牙。吉。
□六五。豶(ふん)豕(し)の牙(が)なり。吉。
 豚の子を杭に繋いで妄進を制止するように、正応九二を畜止して人德を修養させる。九二は自ら車輪を外して德を修め、天下國家のために力を尽くす。六五は天子としての役割を全うする。
象曰、六五之吉、有慶也。
□六五の吉は、慶(よろこび)有る也。
 天子としての役割を全うする。天下國家の慶(よろこ)びである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)地位最モ宜シキガ故ニ、剛健ナル人物ヲ使役スルニ、豶豕ヲ止ルノ易キガ如シ、吉ナルノ時トス、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)地位が最も高い(君位に在る)。剛健な性質を具えた賢臣を使役するに中り、子ブタを杭に繋げば、子ブタの妄進を制止することが簡単なように、吉運の時である。
○相手の勢いを制止できれば、相手に牙(きば)があっても、大きな騒ぎを制御できる。
○天下の悪(巨悪)は、力だけでは制止できないと認識すべきである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)明治二年、友人某來リ、時勢ヲ論ジテ曰ク、今ヤ箱館平定、天下安静朝廷各藩ノ俊士ヲ選抜シテ、大ニ人材ヲ登用シ政務ヲ整理スト雖モ、(中略)其形勢如何ヲ占ンコトヲ請フ、乃チ筮シテ大畜ノ第五爻ヲ得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)明治二年、友人某がやって来て、時勢を論じながら、次のように言った。「今や函館も平定され、天下は安定した。政府は各藩から、優れた役人を選抜して、大胆に人材を登用し、政務に中らせている。だが、各藩の役人を集めて政務に中らせると、権力を争い合って紛糾する恐れがあると思うが、その形勢を占ってほしい」。
 そこで、占筮したところ、山天大畜の五爻を得た。
 易斷は次のような判断であった。
 大畜は、下卦乾が各藩から選抜された剛健の性質を具えている役人であり、上卦艮は政府である。下卦の役人は剛健な性質で、驀進しようとするが、上卦の政府がこれを制止して、篤実な組織風土を保持しようとする。政府は人材を登用し、一定の給料を与え、役人として迎え入れた上で、大いに教育訓練に力を入れて、優秀な人材が家の中で燻(くすぶ)っている状況を回避しようとする。
 今は、まだ戊辰戦争直後。各藩で薄給に甘んじている無骨な役人たちが、俄(にわか)に高給を賜り、大いに志を実現できるチャンスを掴むため、喜んで職務に取り組む氣運が生じている。だが、吉原で女遊びをし、柳橋の料亭で月見を楽しむなど、これまで経験したことがない快楽に溺れて武士の心を忘れると、豚が牙(きば)を用いる勇気を失った状態になる。そうなると、風俗が乱れる。だから、「豶(ふん)豕(し)の牙(が)なり。吉」と云う。
 だが、新橋や柳橋の芸妓が、遊びに来た役人達の志を高揚させることができれば、役人達に国家を治める氣運が生じて、天下国家の紛糾を制止できる。
 以上のように易断したところ、事態は易断の通りに推移した。
 その後友人某は、わたしと会う度に、この易断のことを話題にして、易の効用について、感歎(感心)しないことは、一度もなかった。

大畜 上九 |・・ |||

上九。何天之衢。亨。
□上九。天の衢(ちまた)を何(にな)う。亨る。
 大畜の卦極で、人德を修養した下卦三陽の賢人を用いて、治國平天下を完成させる。
 天の広大無辺な道を担って、縦横無尽に活動する。大畜の時は成就した。
象曰、何天之衢、道大行也。
□天の衢(ちまた)を何(にな)うとは、道大いに行われる也。
 天の広大無辺な道を担って、大畜の時は成就した。
 畜止を終えた大畜の卦極で、天の道が完成したのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)昔我壓制セラレタルハ、我未ダ世事ニ通ゼザリシコトヲ悟ルベシ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)昔、圧力を受けて制止させられたのは、自分が世事に通じていなかったからだと悟るべきである。今上陛下(と天皇を補佐する指導者たち)は、現在、よく賢人を尊敬して、その提言をよく聞き入れ、広く人材を集めて話し合いを行い、国益になる事項は遅れることなく速やかに決行しておられる。天のように、小事に妨げられない時。
 誠にこのような世の中であるから、新聞も一変して、道德の大切さを啓蒙し、偏った批判などは紙上から一掃された。
 民衆が天の道を上に戴いて、恥ずかしいことをしなくなる時である。
○大畜の抑制が行き渡り、何事も成就する時である。
○時が到来するのを待って、志を実現する時である。
○賢くて人德を具えた人は、社会的地位や経済的利益を得て、吉運が開ける時である。
○あらゆることが矛盾して、事を違える時である。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)明治十四年、某貴顕ノ徴召ニ應ジ、國會開設請願ノ成否ヲ占ヒ、筮シテ賁ノ第二爻ヲ得タリ、(中略)余ハ賁ノ第二爻變ヲ活用シテ、山天大畜ニ取リ、現今ノ政略方針ヲ進メント欲シ、乃チ明治二十年ニ至レル大畜ノ上爻ヲ得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)明治十四年、貴人に呼び寄せられて、国会を開設することに関する成否を占うために筮して、山火賁の第二爻を得た。
 賁の卦象に沿って政治を推し進めると、明治十八年までの五ヶ年(十四・十五・十六・十七・十八の五ヶ年)は国家は無事だが、明治十九年から明治二十四年、すなわち今年(明治十四年を含めて)から十一年目にあたる山地剝の時に臨むと、不吉な運氣となる。
そこで、山火賁の二爻が変じて之卦の山天大畜となったと見立てて、政治動向を読み取った。すなわち、(明治十四年の翌年十五年を大畜の初爻とすれば、)明治二十年に至れば大畜の上爻を得る。
 易斷は次のような判断であった。
 大畜は一陽が一番上に止まって、下の三陽を用いる卦。上爻は昔は剛(つよ)く壮(さかん)だったが、今は、あらゆる事に老練して、時勢にも詳しくなった人々。昔は制止する必要があった人々も、今は制止する必要がなくなった。だから、艮の山が変じて坤の地となり、山天大畜は地天泰となる。四方八方通じない所はない。天の道が広く活発で全く障害がない。これを「天の衢(ちまた)を何(にな)う。亨る」と云う。
 そこで、「明治二十年は、鉄道の建設が盛んになる」と易断した。
 その後、明治二十年に至ると、全国の人々は鉄道の必要性を認識して、鉄道会社の株式が多くの人々に買われて、鉄道の建設は盛んになった。