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抜粋「現代語訳(超意訳) 呑象高島嘉右衛門著 増補 高島易斷 上下巻 占例篇」 山雷頥

2022年6月1日

二七 山雷頤 |・・ ・・|

頤、貞吉。覿頤自求口實。
□頤(い)は、貞にして吉。頤を観(み)、自(みずか)ら口実を求む。
 頤(い)は上下二陽(実)が中に四陰(虚)を含み、上卦艮は止まり下卦震は動く頤(あご)の形。頤(あご)は口から栄養を取り身体を養うので、自分の心身や人を養うという意味になる。正しい道を守るがよい。何を養うべきか観察し、自ら実践するのである。
彖曰、頤貞吉、養正則吉也。覿頤、覿其所養也。自求口實、覿其自養也。天地養萬物、聖人養賢以及萬民。顎之時大矣哉。
□頤は、貞にして吉とは、養うこと正しければ則ち吉也。頤を観るとは、其の養う所を観る也。自ら口実を求むとは、其の自ら養うを観る也。天地は万物を養い、聖人は賢を養い、以て万民に及ぼす。顎(い)の時、大なる哉(かな)。
 頤の時は道を守るがよい。天下の万物を養い育てることは、正しいことである。何を養うべきか観察する。自ら何を養うべきか省察するのである。
 自ら実践する。人に求めることなく自発的に行なうのである。天地は万物を養い、聖人は賢人を養い、賢人は民衆を養う。頤の時は、何と偉大であろう。
象曰、山下有雷頤。君子以愼言語、節飲食。
□山の下に雷有るは頤なり。君子以て言語を慎み、飲食を節す。
 山(艮)の下に雷(震)が潜んでいる。冬は山の下に潜んでいた雷が春には轟き渡り万物を養育する。下卦震は動き上卦艮は止まるから、下顎が動き上顎が止まる口の形をしている。君子は、口から出る「言葉」を慎み、口から入る「食べ物」を節制する。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)此卦雷ハ動キ、山ハ止ル、動止常アリ、頥養生ヲ失ハザランコトヲ要ス、又言語禍ヲ招キ、飲食體ヲ害フノ占トス、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)雷は動き山は止まる。そこには一定の法則がある。正しく養うことを失ってはならない。軽々しく言葉を口に出すと禍(わざわい)を招き、食べ過ぎると体に害を招く。よく慎んで節制すべきである。吉凶禍福は、行動から生ずる。目下の人に注意すべき時である。
○大きな事を言うが、実質が伴わない(何もできない)時である。
○お腹を減らした人が、アゴを下げて、食べ物や飲み物を乞(こ)い求める時である。
○頤(あご)の中に物が入ってない。空腹は、正しい道を履み行なうことで吉運が開ける。外から物を手に入れるよりも、自分を養ってくれる所を選ぶべきである。
○相手が自分を疑い、自分は相手を疑う。だから、お互い本心を表に出さずに、物事が調和しない時である。
○下卦三爻は生活のために働いて、自分を養っている。自分が動こうとすれば、相手が自分を止め、相手が動こうとすれば、自分が相手を止めて、お互いに意地を張り合って妨害する時。
○養う時。 ○起業する(業を産む)時。 ○二人が相争う時。
○飲み食いを節制し、発する言葉を慎んで、身を保つ時である。
○人々が共同して事を成し遂げようとすれば成就する。
○才能があり、性格は篤実である。
○物価が高騰するが、しばらくすると元に戻る。
○自分を養うのも、人を養うのも、正しいか、正しくないかによって、幸不幸が決まる。事の始めに、どうあるべきかを、よく考えるべし。
○禍(人災)は口から出る言葉から起こり、病気は口から入る飲食物から起こる。小さな舌が、大きな心身を損なう原因となる。
○動くべきか、止まるべきか、迷う時である。

頤 初九 |・・ ・・|

初九。舍爾靈龜、覿我朶頤。凶。
□初九。爾(なんじ)の靈(れい)龜(き)を舍て、我を観て頤(おとがい)を朶(た)る。凶。
 初九は震(動)の主爻ゆえ上に進もうとする。自分の貴重な才德を捨て、天子の師として君臨する頤の主爻上九を羨(うらや)ましく思い、下アゴを垂れて涎(よだれ)を流す。素行自得して己を養い、力の及ぶ範囲で人を養育するべきなのに、上九を羨(うらや)ましく思い下アゴを垂れて涎を流すようでは、お話しにならない。
象曰、覿我朶頤、亦不足貴也。
□我を観て頤(おとがい)を朶(た)るとは、亦(また)、貴(たつと)ぶに足らざる也。
 天子の師として君臨する上九を羨ましく思い、下アゴを垂れて涎(よだれ)を流す。どんなに才德高くても、貴ぶには及ばない。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)此爻ヲ得ルトキハ、己レ下ニ居テ、其有スル所ノ福裕ヲ以テ足レリトセズ、尚ホ多慾ニ耽リ、横財ヲ貪ラント欲シテ、却テ禍ヲ求ルノ時トス、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)社会や組織の下層に居て、例え経済的に裕福になっても、満足しない。もっともっとと欲を出し、贅沢三昧を堪能しようとするから、禍(人災)を招く。地方の豪商が祖先から長年続いている事業を大事にせず、平凡な能力しかないのに、役人になることを望む。そのような人が、お国のために力を尽くすはずがなく、役人になって権力を手にすることを望む。人と利益を競うべきではない。
この時に処するに、以上のあり方を反面教師にすべきである。
○自分の利益を優先しようと考える時。
○気持ちがフラフラして、何も手に付かない。
○自分の才能と能力を過小評価して、人に頼って働こうとしないから、人から批判される。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)友人某來リテ曰ク、余希望スル所アリ、因テ某貴顕ニ面シ、將ニ心事ヲ談ゼントス、其成否如何ヲ占ハンコトヲ請フト、乃チ筮シテ、頥ノ初爻ヲ得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)友人某がやって来て、次のように言った。「わたしには希望がある。それが叶うかどうか占ってほしい」。そこで、占筮したところ、頤の初爻を得た。
 易斷は次のような判断であった。
 頤は、内卦の雷には動く性質が、外卦の山には止まる性質がある。人事に当て嵌めると、自分は何かを為そうとするが、相手が戸惑って(止まって)応じてくれない時である。
 今は初爻を得た。「貴方の希望を、相手方に依頼すれば、相手方は必ず次のように言う」と易断した。
「貴方には財産があり、しかも才能と智慧を具えているから、何でも自由自在になる。それなのに、さらに希望を抱いて、それを叶えようとするのは、実に軽蔑すべきである。わたしは、役人として長年国家に奉じて、それなりの給料を頂いているが、国家のために命を落とした旧友の遺族を支援しており、役人としての交際費もかかるので、ほとんど財産は保有していない。貴方のように資産がある人の要請には応じられない」。
 友人某は、この易断に不満足だった。
 何とかなると思って、親しい人に会って希望を話してみた。
 だが、全く応じてもらえなかった。