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抜粋「現代語訳(超意訳) 呑象高島嘉右衛門著 増補 高島易斷 上下巻 占例篇」 地火明夷 一

2022年7月20日

三六 地火明夷 ・・・ |・|

明夷、利艱貞。
□明(めい)夷(い)は、艱(かん)貞(てい)に利(よろ)し。
 明夷は明るい太陽が大地の下に沈み、君子が小人に仕える暗黒の時。
 君子に降りかかる艱難辛苦に中って、時の流れに身を任せることなく、逆らうこともなく、常に正しい道を守るがよい。
彖曰、明入地中明夷。内文明而外柔順、以蒙大難。文王以之。利艱貞、晦其明也。内難而能正其志。箕子以之。
□明、地中に入るは明夷。内文明にして外柔順、以て大(だい)難(なん)を蒙(こうむ)る。文(ぶん)王(おう)之(これ)を以(もち)う。艱貞に利しとは、其の明を晦(くら)ます也。内難にして而も能く其の志を正しくす。箕(き)子(し)之を以(もち)う。
 太陽(離)が大地(坤)の下に沈んで真っ暗となり、暗黒の世を表しているのが明夷の形。内に文明(離)の德を備え、外に柔順(坤)に振る舞うけれども、大きな艱難辛苦が立ち塞(ふさ)がり、これを避けることができない。
 文王は内に文明の德を備え、外に柔順に振る舞って暴君紂(ちゆう)王(おう)に仕えた。「君子に降りかかる艱難辛苦に中って、時の流れに身を任せることなく、逆らうこともなく、常に正しい道を守るがよい」とは、明德を隠しつつも、常に正しい道を守るのである。艱難辛苦が立ち塞(ふさ)がっても、志操を貫く。紂王の叔父・箕(き)子(し)は狂人を装(よそお)って紂王の奴(ど)隷(れい)に甘んじ、己の志を貫いた。
象曰、明入地中明夷。君子以涖衆、用晦而明。
□明、地の中に入(はい)るは明夷なり。君子以て衆に涖(のぞ)むに、晦(くら)きを用いて明らかなり。
 太陽(離)が大地(坤)の下に沈み隠れているのが明夷の形。君子は、凡庸な大衆と接する時は、明德を包み隠して愚の如く振る舞い、知らず識らず大衆を感化するのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)内二文明ノ才智ヲ蓄ルト雖モ、之ヲ匿シテ、却テ愚昧ノ風ヲ装フベキノ時トス、若シ才智アリト見ラルルトキハ、威權ヲ以テ抑壓セラレ、不測ノ大害ヲ惹起スベシ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)内側に文明の智恵を具えていても、これを隠して愚昧であるように装わないと危ない時である。智恵がある人物と見なされると権力者に抑圧されて、不測の災難を招き寄せる。大きな事は成し遂げられないのは無論のこと、日頃のちょっとした言動や立ち居振る舞いを慎んで、不測の災難を招き寄せないように注意すべきである。
○眩(くら)まされる~暗黒の世界に陥る~時である。
○何事かに、迷い、惑わされる時である。
○無知・無能を装い、愚昧に徹すれば、不測の災難から回避できる。
○火事など火に関する災難に遭遇する。
○盗難などの災難に遭遇する時。
○何事も逼迫・閉塞する暗黒時代。
○不測の災難に遭遇する時。
○才能がある人は、才能があるために失敗する。世渡り上手な人は、私欲と小賢しい智恵によって身を滅ぼす。
○常に慎みの心を大切にして、不測の災難を回避すべき時である。
○物価は最初は上がるが、最後には下がる。

明夷 初九 ・・・ |・|

初九。明夷。于飛垂其翼。君子于行、三日不食。有攸往。主人有言。
□初九。明(めい)夷(やぶ)る。于(ゆ)き飛び、其(そ)の翼(つばさ)を垂(た)る。君子于(ゆ)き行(ゆ)きて三日食わず。往(ゆ)く攸(ところ)有り。主人言有り。
 明(めい)が夷(やぶ)れる時の最下で、賢明な智慧で危機を察し、翼を垂(た)らして低空を飛ぶように立ち去る。剛健正位の君子初九は、急いで立ち去る余り、三日も食事を取らない。まだ危機が到来していないので、俗人は怪しく思い、宿の主人からは、君子にあるまじき行為だと非難される。
象曰、君子于行、義不食也。
□君子于(ゆ)き行(ゆ)くとは、義(ぎ)、食わざる也。
 急いで立ち去る。暗黒の時に、暗(あん)君(くん)の下(もと)で禄(ろく)を食(は)んでいるのは、義に悖(もと)るのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)運氣衰ヘテ、智力ヲ施ス所ナク、術計盡キテ、羽敲きもならぬ時トス、我進マントスレバ、暴威ヲ加フル者アリテ、身ニ害ヲ受ク、亦行先キ不首尾ニシテ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)運氣は衰えており、智恵を絞っても打開できない。万策尽きて、お手上げの時である。進み行こうとすれば、何者かに妨害され、最後は権力で潰される。また、進み行く先には困難が待ち構えている。
○目上の人の善からぬ言葉によって、困難に陥る時である。
○万事において、時運衰退の時である。絶対に新しい事業に取り組んではならない。現状維持すら難しい。
○内側は明るいが、外側が暗い。内側には才能があっても、外側では通じない時であることを、よく認識しておくべきである。
○不測の災難に遭遇して、とんでもない苦労を背負う時。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)余ガ友人ナル商家ノ伴當某來テ、氣運ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ、明夷ノ初爻ヲ得タリ、・・・