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期間限定「現代語訳(超意訳) 呑象高島嘉右衛門著 増補 高島易斷 上下巻 占例篇」 地火明夷 一

三六 地火明夷 ・・・ |・|

明夷、利艱貞。
□明(めい)夷(い)は、艱(かん)貞(てい)に利(よろ)し。
 明夷は明るい太陽が大地の下に沈み、君子が小人に仕える暗黒の時。
 君子に降りかかる艱難辛苦に中って、時の流れに身を任せることなく、逆らうこともなく、常に正しい道を守るがよい。
彖曰、明入地中明夷。内文明而外柔順、以蒙大難。文王以之。利艱貞、晦其明也。内難而能正其志。箕子以之。
□明、地中に入るは明夷。内文明にして外柔順、以て大(だい)難(なん)を蒙(こうむ)る。文(ぶん)王(おう)之(これ)を以(もち)う。艱貞に利しとは、其の明を晦(くら)ます也。内難にして而も能く其の志を正しくす。箕(き)子(し)之を以(もち)う。
 太陽(離)が大地(坤)の下に沈んで真っ暗となり、暗黒の世を表しているのが明夷の形。内に文明(離)の德を備え、外に柔順(坤)に振る舞うけれども、大きな艱難辛苦が立ち塞(ふさ)がり、これを避けることができない。
 文王は内に文明の德を備え、外に柔順に振る舞って暴君紂(ちゆう)王(おう)に仕えた。「君子に降りかかる艱難辛苦に中って、時の流れに身を任せることなく、逆らうこともなく、常に正しい道を守るがよい」とは、明德を隠しつつも、常に正しい道を守るのである。艱難辛苦が立ち塞(ふさ)がっても、志操を貫く。紂王の叔父・箕(き)子(し)は狂人を装(よそお)って紂王の奴(ど)隷(れい)に甘んじ、己の志を貫いた。
象曰、明入地中明夷。君子以涖衆、用晦而明。
□明、地の中に入(はい)るは明夷なり。君子以て衆に涖(のぞ)むに、晦(くら)きを用いて明らかなり。
 太陽(離)が大地(坤)の下に沈み隠れているのが明夷の形。君子は、凡庸な大衆と接する時は、明德を包み隠して愚の如く振る舞い、知らず識らず大衆を感化するのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)内二文明ノ才智ヲ蓄ルト雖モ、之ヲ匿シテ、却テ愚昧ノ風ヲ装フベキノ時トス、若シ才智アリト見ラルルトキハ、威權ヲ以テ抑壓セラレ、不測ノ大害ヲ惹起スベシ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)内側に文明の智恵を具えていても、これを隠して愚昧であるように装わないと危ない時である。智恵がある人物と見なされると権力者に抑圧されて、不測の災難を招き寄せる。大きな事は成し遂げられないのは無論のこと、日頃のちょっとした言動や立ち居振る舞いを慎んで、不測の災難を招き寄せないように注意すべきである。
○眩(くら)まされる~暗黒の世界に陥る~時である。
○何事かに、迷い、惑わされる時である。
○無知・無能を装い、愚昧に徹すれば、不測の災難から回避できる。
○火事など火に関する災難に遭遇する。
○盗難などの災難に遭遇する時。
○何事も逼迫・閉塞する暗黒時代。
○不測の災難に遭遇する時。
○才能がある人は、才能があるために失敗する。世渡り上手な人は、私欲と小賢しい智恵によって身を滅ぼす。
○常に慎みの心を大切にして、不測の災難を回避すべき時である。
○物価は最初は上がるが、最後には下がる。

明夷 初九 ・・・ |・|

初九。明夷。于飛垂其翼。君子于行、三日不食。有攸往。主人有言。
□初九。明(めい)夷(やぶ)る。于(ゆ)き飛び、其(そ)の翼(つばさ)を垂(た)る。君子于(ゆ)き行(ゆ)きて三日食わず。往(ゆ)く攸(ところ)有り。主人言有り。
 明(めい)が夷(やぶ)れる時の最下で、賢明な智慧で危機を察し、翼を垂(た)らして低空を飛ぶように立ち去る。剛健正位の君子初九は、急いで立ち去る余り、三日も食事を取らない。まだ危機が到来していないので、俗人は怪しく思い、宿の主人からは、君子にあるまじき行為だと非難される。
象曰、君子于行、義不食也。
□君子于(ゆ)き行(ゆ)くとは、義(ぎ)、食わざる也。
 急いで立ち去る。暗黒の時に、暗(あん)君(くん)の下(もと)で禄(ろく)を食(は)んでいるのは、義に悖(もと)るのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)運氣衰ヘテ、智力ヲ施ス所ナク、術計盡キテ、羽敲きもならぬ時トス、我進マントスレバ、暴威ヲ加フル者アリテ、身ニ害ヲ受ク、亦行先キ不首尾ニシテ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)運氣は衰えており、智恵を絞っても打開できない。万策尽きて、お手上げの時である。進み行こうとすれば、何者かに妨害され、最後は権力で潰される。また、進み行く先には困難が待ち構えている。
○目上の人の善からぬ言葉によって、困難に陥る時である。
○万事において、時運衰退の時である。絶対に新しい事業に取り組んではならない。現状維持すら難しい。
○内側は明るいが、外側が暗い。内側には才能があっても、外側では通じない時であることを、よく認識しておくべきである。
○不測の災難に遭遇して、とんでもない苦労を背負う時。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)余ガ友人ナル商家ノ伴當某來テ、氣運ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ、明夷ノ初爻ヲ得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)ある商店の番頭をしている友人がやって来て、氣運を占ってほしいと頼まれたので、筮したところ明夷の初爻を得た。
 易斷は次のような判断であった。
 明夷は火がボウボウ燃えて土を覆ってしまうような卦である。賢人は愚人によって迷惑を被(こうむ)り、賢臣は暗君によって災難を被る時である。貴方の目の前には黒雲が立ち籠めており、これまで勤めてきた商店の主人と心が離れて行く。
 今回占って初爻が出た。貴方がどんなに商店の主人に忠誠を尽くしても、貴方の誠意は全く伝わらない。それどころか、貴方が商店の主人に悪意を抱いていると誤解される。そのため、貴方と商店の主人との関係はギクシャクして、終には貴方は商店を辞めることになる。貴方は他の土地に赴いて新しい人生を歩もうとするが、辞めた商店に関する事件に巻き込まれて、他の土地に赴くことすらできない。
 このことを「明(めい)夷(やぶ)る。于(ゆ)き飛び、其(そ)の翼(つばさ)を垂(た)る。明(めい)が夷(やぶ)れる時の最下で、賢明な智慧で危機を察し、翼を垂(た)らして低空を飛ぶように立ち去る」と云う。貴方は生活していくことすら困難になる。このことを「君子于(ゆ)き行(ゆ)きて三日食わず。剛健正位の君子初九は、急いで立ち去る余り、三日も食事を取らない」と云う。
 別の商店に就職しようとしても、辞めた商店の主人が邪魔する。このことを「往(ゆ)く攸(ところ)有り。主人言有り。俗人は怪しく思い、宿の主人からは、君子にあるまじき行為だと非難される」と云う。以上のように易斷した上で、氣運の盛衰は循環するものだから、今は忍耐すべき時だと励ました。
 その後、果たして、易占の通りとなった。

明夷 六二 ・・・ |・|

六二。明夷。夷于左股。用拯馬壮、吉。
□六二。明(めい)夷(やぶ)る。左(さ)股(こ)を夷(やぶ)る。用(もつ)て拯(すく)うに馬(うま)壮(さかん)なれば吉。
 明が夷れる時、何物かに左の股を傷付けられる。壮(そう)健(けん)な駿(しゆん)馬(ば)を用いて速やかに逃れ去れば、危機を脱することができる。
象曰、六二之吉、順以則也。
□六二の吉は、順にして以て則(のり)あれば也。
 危機を脱する。時に素直に順い、人の道に則(のつと)って対処するからである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)我文明ノ智德ヲ備ヘテ、彼ニ違ハズト雖モ、彼暴戻ニシテ、道德ノ何物タルヲ知ラズ、頻ニ迷惑ヲ我ニ負ハシム、一身立行難ク、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)自分は文明人の知識と人德を具えており、決して相手に劣らないが、相手は暴力的で道德を知らないから、何度も迷惑を被る。一見、解決の難しい出来事が起こるが、目下の人に助けられる時である。
○善人が災難に遭遇する時である。常に慎むべきである。
○大昔の王さまである文王は、明夷の時に、暗君紂王に睨まれて七年間も牢獄に入れられた。文王は殷王朝の諸侯の一人でもっとも尊敬されていた君子だったが、紂王に逆らわなかったので、紂王は非道の限りを尽くした。文王は堪え忍んだ。明君文王にしてこのようであったのだから、この暗黒の時は耐えるしかないのである。
○只管(ひたすら)謹慎して、災難を回避し、暗黒の時が過ぎ去って、氣運を開けるのを待つしかない。
○志が一致しない人と関わらざるを得ない時である。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)明治二十二年、某貴顕ノ氣運ヲ占ヒ、筮シテ、明夷ノ第二爻ヲ得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)明治二十二年、ある貴人の氣運を占って筮したところ明夷の二爻を得た。
 易斷は次のような判断であった。
 明夷は日が没して暗黒の時代が始まる時である。今の日本は文明開化の時であるが、貴方の氣運は衰退していく。貴方が賢明で博識であることを知らない人はいない。しかし、時運の陰陽消長(盛衰)の流れはどうすることもできない。日が地上に昇って、燦々と輝いている時は、普く万物を照らすことができるが、地下に没してしまうと、何も照らすことはできない。
 今回占って二爻が出た。貴方が計画したことがいくら素晴らしくても、それを理解できない近視眼的人物に邪魔されて、その計画を実行することはできない。それどころか、その人物のために大いに迷惑を被ることになる。それゆえ「明(めい)夷(やぶ)る。左(さ)股(こ)を夷(やぶ)る。明が夷れる時、何物かに左の股を傷付けられる」と云う。その一方で、貴方をいつも尊敬している人物が貴方の下に居て、貴方を補佐してくれる。このことを「用(もつ)て拯(すく)うに馬(うま)壮(さかん)なれば吉。壮(そう)健(けん)な駿(しゆん)馬(ば)を用いて速やかに逃れ去れば、危機を脱することができる」と云う。
 貴方の今年の氣運は、暗君紂王の仕打ちに耐え忍んだ文王のようである。貴方の計画が用いられないのは天命だと認識すべきである。
 暗黒の時が過ぎ去るのを待つしかない。(結果は書いていない。)