既済 九三 ・|・ |・|
九三。高宗伐鬼方。三年克之。小人勿用。
□九三。高(こう)宗(そう)、鬼(き)方(ほう)を伐(う)つ。三年にして之(これ)に克(か)つ。小(しよう)人(じん)は用(もち)ふる勿(なか)れ。
過剛の九三は天下泰平の時に大事を成し遂げようとする。殷(いん)中(ちゆう)興(こう)の天子武(ぶ)丁(てい)が殷を泰平にした後、さらに遠方の異民族も征伐しようとして三年かかった。明君武(ぶ)丁(てい)ですら天下泰平の時に大事を成し遂げようとして散々苦労したのだ。九三のような小人を迂(う)闊(かつ)に用いてはならない。
象曰、三年克之、憊也。
□三年にして之(これ)に克(か)つとは、憊(つか)るる也。
武(ぶ)丁(てい)は異民族征伐に三年もかかった。戦が長引き國力が衰えたのである。
以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)天理ニ從ヒテ、事ヲ企ツレバ、遅クモ成シ遂グルコトヲ得ベシ、然レドモ、諺ニ勘定合ふて銭足らずト云フガ如ク、得失相償ハザルナリ、又親友同僚ト議論合ハズ、・・・
以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)天理に従って事業を企画すれば、例え時間がかかっても成し遂げることができる。ただし、諺に勘定合って銭足らずと云うように、事業は成し遂げても、赤字が出る(資金が不足する)時である。
○親友や同僚と議論が噛み合わずに敵対する。慎むべきである。
○創業者(と共に歩んだ側近)が苦労に苦労を重ねて、新しい組織を作り上げて軌道に乗せた(国家を天下泰平に導いた)。しかし、二代目が継ぐと、安定した状態に胡座をかき、驕り高ぶり、怠るようになる。そのため、組織(国家)が危機的な状況に陥る。
○国家間の戦争や組織・人間の間で争いごとが起こる時。
○生活や仕事が安定している人が、「人を敬う」ことを忘れる。そのことによって、争いごとが起こる時である。
○親しんで近付いてきた人と争うようになり、憂鬱になる時である。
○水と火が争い合う。水は火に助けられないが、火は木に助けられる。自分(火)が甲(木)に支援されて、乙(水)と争う時である。
○自分の力では出来そうもない事を、無理して成し遂げようとするが、出来そうもない事は、やらないほうが賢明である。
以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)某商人來リテ、事業ノ成否ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ、歸濟ノ第三爻ヲ得タリ、・・・
以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)ある商人がやって来て、事業の成否を占ってほしいと頼まれたので筮したところ既済の三爻を得た。
易斷は次のような判断であった。
既済は物事が既に完成したから、既済(既に済む)と云う。
今回占って三爻が出た。貴方はすでに商売を成功させている。それに満足すべきだが、さらに新事業を企画して苦悩している。努力に努力を重ねれば新事業を押し進めることはできる。しかし、結果的に赤字が出る(資金不足に陥る)。このことを「高(こう)宗(そう)、鬼(き)方(ほう)を伐(う)つ。三年にして之(これ)に克(か)つ。小(しよう)人(じん)は用(もち)ふる勿(なか)れ。過剛の九三は天下泰平の時に大事を成し遂げようとする。殷(いん)中(ちゆう)興(こう)の天子武(ぶ)丁(てい)が殷を泰平にした後、さらに遠方の異民族も征伐しようとして三年かかった。明君武(ぶ)丁(てい)ですら天下泰平の時に大事を成し遂げようとして散々苦労したのだ。九三のような小人を迂(う)闊(かつ)に用いてはならない。」と云う。
名君の武(ぶ)丁(てい)ですら、大事を成し遂げようとして散々苦労した。貴方が新事業を押し進めることはリスクが高いから、リスク管理を強化すべきであると易断した。
(易占の結果は書いてない。)