三四 雷天大壮 ・・| |||
大壯、利貞。
□大(たい)壮(そう)は、貞しきに利し。
大壮は、君子(陽)の勢いが、小人(陰)を駆(く)逐(ちく)して益々盛んになる時。調子に乗ると大失敗を招く。常に正しい道を、固く守るがよい。
彖曰、大壯、大者壯也。剛以動、故壯。大壯利貞、大者正也。正大而天地情可見矣。
□大壮とは、大なる者壮(さかん)なる也。剛にして以て動く、故に壮なり。大壮は貞しきに利しとは、大なる者正しき也。正(せい)大(だい)にして天地の情見る可(べ)し。
大壮は大なる者(陽)の勢いが盛んになる時。「大という字は一と人から成る。一は天を意味し、天と人を重ねて人が天道を歩む意味になる(高島易断)」。
すなわち大壮は、天の道を歩む君子の勢いが盛んになる時である。
剛健(乾)にして動く(震)ので、陽の勢いが益々盛んになる。
大壮は君子(陽)の勢いが小人(陰)を駆逐して益々盛んになる時。調子に乗ると大失敗を招く。常に正しい道を、固く守るがよい。大なる者は正しい道を堂々と歩むのである。
君子は正しく天の道を歩み、天地の道理をしみじみ悟(さと)るのである。
象曰、雷在天上大壯。君子以非禮弗履。
□雷(かみなり)、天の上に在るは大壮なり。君子以て礼に非(あら)ざれば履(ふ)まず。
雷(震)が天(乾)の上に在る。天の道を歩む君子の勢いが益々盛んになる形。君子は、礼(調和)に適(かな)わない言行は、畏(おそ)れ慎(つつし)むのである。
以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)此卦長男傲然トシテ老父ノ上ニ居ル、血氣ニ過ギテ、和氣ニ乏シキノ嫌アリ、深ク禮譲ヲ守リテ、正ヲ行フベシ、然ルトキハ已ニ時ヲ得タルノ占トス、・・・
以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)(上卦の)長男が(下卦)の老父の上に居る。血氣が盛んで和氣に乏しいところがある。礼節に従い、謙譲の心を身に付けて、善行を実践すべし。それができれば、盛運を招き寄せる。
○才能に溺れ、他人を侮(あなど)り、暴走しかねない時である。
○只管(ひたすら)、上を向いて、昇り進む時である。
大壮 初九 ・・| |||
初九。壯于趾。征凶。有孚。
□初九。趾(あし)に壮(さかん)なり。征(ゆ)けば凶。孚(まこと)有り。
陽爻陽位、大(たい)壮(そう)の時には剛に過ぎる。最(さい)下(か)の卑(いや)しい身分(趾)でありながら、盛んに進もうとする。進めば必ず禍(わざわい)を受ける。真心は有るのだが…。
象曰、壯于趾、其孚窮也。
□趾(あし)に壮(さかん)なりとは、其の孚(まこと)窮(きゆう)する也。
卑(いや)しい身分でありながら、盛んに進もうとする。真心は有っても、暴走すれば、窮(きゆう)するのである。
以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)此爻ハ時機ノ未ダ熟セザルニ進ミ、身ヲ失フカ、或ハ名ヲ失フノ占トス、愼ムベシ、
以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)時機が至る前に進み行き、身体や名声を損なう時である。
○妄進して事を誤る時である。
以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)友人某來リ、事業ノ成否ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ、大壯ノ初爻ヲ得タリ、
以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)ある友人がやって来て、事業の成否を占ってほしいと頼まれたので、筮したところ、大壮の初爻を得た。
易斷は次のような判断であった。
大壮は、雷が天下に轟き鳴動して、勢力増大する時。人事に当て嵌めると、氣力が満ち溢れて事がどんどん進む時である。
今回、友人の事業を占って初爻が出た。時機はまだ至っていない。経験不足で実力が伴わない。今、事を進めると自他共に迷惑を生ずることになる。それゆえ「趾(あし)に壮(さかん)なり。征(ゆ)けば凶。孚(まこと)有り。陽爻陽位で剛に過ぎる。最(さい)下(か)の卑(いや)しい身分(趾)でありながら、盛んに進もうとする。進めば必ず禍(わざわい)を受ける。真心は有るのだが…」と云う。
「趾(あし)に壮(さかん)なり。征(ゆ)けば凶」とは軽はずみに行動して失敗することを云う。「孚(まこと)有り」とは、必ず災いを蒙ることを云う。
今、取り組もうとしている事業は、時を待ってから始めれば成功する可能性は十分あるが、今は時機が到来しておらず、喩えれば「渋柿」の段階である。時機が到来するのを待つべきだと易斷した。
だが友人は、易占を信用せずに、事業を始めた。しかし、大失敗して家の財産を失うことになり、その事業を三分の一の資本で買い取った事業者が大きな利益を得たと云う。