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期間限定「現代語訳(超意訳) 呑象高島嘉右衛門著 増補 高島易斷 上下巻 占例篇」 火地晋

三五 火地晋 |・| ・・・

晉、康侯用錫馬藩庶。晝日三接。
□晋(しん)は、康(こう)侯(こう)用(もつ)て馬を錫(たてまつ)ること藩(はん)庶(しよ)なり。晝(ちゆう)日(じつ)に三(み)たび接す。
 晋(しん)は日(離)が地(坤)上に出て、明德(離)で大地(坤)を照らし、地(坤)はその光(離)を柔順に受け容れ万物が生成する時。
 明德の君主の下、諸侯が柔順に國を治め、君主が馬を諸侯に賜り(諸侯が馬を君主に献上して)、一日三回も礼(らい)拝(はい)するほど、國は治まり天下は平(たい)らかになる。
彖曰、晉、進也。明出地上、順而麗乎大明、柔進而上行。是以康侯錫馬藩庶、晝日三接也。
□晋は進む也。明地の上に出(い)で、順にして大(たい)明(めい)に麗(つ)き、柔進みて上(のぼ)り行く。是(ここ)を以て康(こう)侯(こう)用(もつ)て馬を錫(たてまつ)ること藩(はん)庶(しよ)にして、晝(ちゆう)日(じつ)に三(み)たび接する也。
 晋は益々進み行く時。明るい太陽(聡明な天子)が地上に出て、大地(臣民)は明德を備えた太陽(天子)に柔順に従い、柔順な六五が君(くん)位(い)に上(のぼ)り詰めた。「風地観の大臣六四が成長して、火地晋の天子六五に上り詰めた」という解釈もある。君(くん)臣(しん)一体となって、君主が馬を諸(しよ)侯(こう)に賜(たまわ)り、一日三回も礼(らい)拝(はい)するほど國は治まり、天下は平らかになる。
象曰、明出地上晉。君子以自昭明德。
□明、地の上に出(い)づるは晋なり。君子以(もつ)て自ら明德を昭(あきら)かにす。
 明るい太陽(離)が地(坤)上に現れ出るのが晋(しん)の形。君子は、邪心(私利私欲)に蔽(おお)われた心を磨いて、明德を明らかにする。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)運氣盛ニ赴ク、文明ノ智者ニ從テ、幸福ヲ受クルノ時トス、國家ニ功勞ヲ立テ、又ハ國益トナル事ヲ發明シ、上ヨリ保護ノ恩惠ヲ受ク、所謂馬賜藩庶ノ如シ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)運氣良好、文明は繁栄し、明德と明智を具えた賢人が統治する幸福な社会が到来する。国家においては、功労を立てる人物が現れ、国益につながる事業を推進する。政府からご褒美を賜る。「康(こう)侯(こう)用(もつ)て馬を錫(たてまつ)ること藩(はん)庶(しよ)なり。晝(ちゆう)日(じつ)に三(み)たび接す。明德の君主の下、諸(しよ)侯(こう)が柔順に國を治め、君主が馬を諸侯に賜る(諸侯が馬を君主に献上する)。一日三回も礼(らい)拝(はい)するほど、國は治まり天下は平らかになる」とは、このことである。
○進み上り行く時である。
○外は華やかだが、内側は虚心で謙虚な時である。
○自分は柔弱だが、相手は明德と明智を具えている。
○柔順に文明の賢人に従えば、上昇する兆しが見えてくる。
○上の人から可愛がられる時である。
○人に寄り添って事を為せば志が実現する時である。
○上司は明智で観察して、事業を前に進める。部下は事業を請け負ってどんどん発展させ、上司からお褒めの言葉を賜る。
○売買は早い方がよい。遅れると損失を出す。
○物価は上がる。

晋 初六 |・| ・・・

初六。晉如摧如。貞吉。罔孚。裕无咎。
□初六。晋(しん)如(じよ)たり摧(さい)如(じよ)たり。貞にして吉。孚とする罔(な)し。裕(ゆたか)なれば咎无し。
 晋の最下、進むことの初め。正応九四とは不中正同士の天敵。抑(おさ)え退(しりぞ)けられ挫(くじ)かれ阻(はば)まれて、進むことができない。正しい道を固く守れば幸を得る。卑(いや)しい身分で進んで行っても、上の者から信用されない。泰然としてゆったり構えていれば、咎を免れる。
象曰、晉如摧如、獨行正也。裕无咎、未受命也。
□晋(しん)如(じよ)たり摧(さい)如(じよ)たりとは、独(ひと)り正(せい)を行えばなり。裕(ゆたか)なれば咎无しとは、未(いま)だ命を受けざれば也。
 進むことができない。強引に志を貫こうとする。泰然とゆったり構えて咎を免れる。未だ天子から官吏に任命されていないのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)身、卑下ニ在リ、將ニ爲スコトアラントス、然レドモ妨アリテ志ヲ果スヲ得ズ、宜シク心ヲ裕ニシテ、時運ノ來ルヲ待ツベシ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)卑しい身分でありながら、果敢に事を為し遂げようとするが、妨害されて志を実現できない。ゆったりとした心境で時運が到来するのを待つべきである。やがて必ず志を実現できる。忍耐すべし。
○進もうとするが、何者かに抵抗される時である。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)某縣人來リテ、志願ノ成否ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ、晋ノ初爻ヲ得タリ、
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)ある人がやって来て、自分の願い(志願)が叶うかどうかを占ってほしいと頼まれたので、筮したところ晋の初爻を得た。
易斷は次のような判断であった。
晋は太陽が地平線から昇って行く卦、進み行く時である。
国家に当て嵌めると、仁德具えた君主が文明国を統治して、国運益々盛んになる時。人事に当て嵌めれば、賢人に従って知識を身に付け、文明社会の役人として活躍する時である。
今回、占って初爻が出た。初爻は位の低い若い人なので、仕事の経験に乏しく、知識の積み上げもない。
国家のために尽くそうと志して、地位の高い人に認められようと努力するが、今は時が至らないので、志を叶えることができない。
これから仕事の経験を積んで、世の中の実情をよく勉強して、役人となって国家に尽くすことを目指すべきである。
今の段階で無理して志を叶えようととすれば、将来を棒に振ることになりかねない。このことを「晋(しん)如(じよ)たり摧(さい)如(じよ)たり。抑(おさ)え退(しりぞ)けられ挫(くじ)かれ阻(はば)まれて、進むことができない。」と云う。
自分の力はまだまだ不足していると反省して、切磋琢磨すれば、今は役人になれなくても、何ら恥ずかしいことはない。
それゆえ、小象伝に「独(ひと)り正(せい)を行えばなり。裕(ゆたか)なれば咎无しとは、未(いま)だ命を受けざればなり。進むことができない。強引に志を貫こうとするのである。泰然とゆったり構えて咎を免れる。未だ天子から官吏に任命されていないのである」と云う。
今はまだ時至らず、役人には登用されない。このことを「未(いま)だ命を受けざれば也」と云う。
以上は天命である。あなたの願いは、今はまだ叶わないと易斷した。
その後、伝え聞くところ、その人は願いを叶えようと、ある貴人を訪ねて仕官をお願いしたが拒否された。その上、警視庁の役人から説教されて、大いに後悔するとともに、易占の絶妙さに感心したと云う。

晋 六二 |・| ・・・

六二。晉如愁如。貞吉。受玆介福于其王母。
□六二。晋(しん)如(じよ)たり愁(しゆう)如(じよ)たり。貞にして吉。玆(こ)の介(かい)福(ふく)を其の王(おう)母(ぼ)に受(う)く。
 六五の支援なく、九四に阻まれて、容易に進むことができない。憂える気持ちを隠せない。憂える気持ちに打ち勝って、六五に順おうとすれば、幸を得る。孫の孝心が祖母に伝わるように、六二の誠心が六五に伝われば、大きな幸を得る。
象曰、受玆介福、以中正也。
□玆(こ)の介(かい)福(ふく)を受(う)くとは、中正なるを以て也。
 大きな幸を得る。六二も六五も中正なので、終に感応し合う。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)妨ヲ爲ス者アリテ喜バザリシガ、外ニ能キ手續出來テ、忽チ望ヲ遂グルノ時トス、思ハザルノ幸福アリ、目上ノ人ノ意ニ叶ヒ、盛運ニ赴クベシ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)最初は、進もうとして邪魔されるので面白くない。しかし最後には、他の手段によって、あっという間に望みを叶えられる。
○思ってもいなかった幸運に巡り逢える。目上の人に真心が通じれば、盛運を招き寄せる。
○何事も急いで進めようとすれば途中で挫折する。慎みの心を持って少しずつ積み上げて行けば吉運を招き寄せる。
○社会的地位の高い人から引き立てられる時である。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)縉紳某來リ謂テ曰ク、足下ハ維新以來、明治七八年頃マデ、進ミテ國家公益ノ事業ニ先鞭ヲ著ケ、(中略)明治五年、陸軍大佐福原實氏ニ随行シテ、讃州丸龜兵營ノ建築ニ赴ク、乃チ米國飛脚船「オルゴニヤ」號ニ搭ス、時ニ天氣和暢甲板上ノ室ニ出デ、談當今ノ事ニ及ビ、福原氏謂テ曰ク、方今我國ノ形勢前途未ダ知ル可ラズ、謂フ子試ニ之ヲ占ハンコトヲト、乃チ筮シテ、晋ノ第二爻ヲ得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)ある紳士がやって来て、次のように言った。
「あなた(嘉右衛門のこと)は、維新以来、明治七~八年頃までは、国家の公益に資する事業に取り組んできた。しかし、その後事業から引退して隠居しているのはどうしてか。何か考えがあってのことか。またあなたは、易占を通じて達観しているように見えるが、どうしてそういう境地に至ったのか」。わたしは、次のように答えた。
「わたしは、出獄してから経営者として活動し成功した。そのお金で欧米各国を視察して、先進国の優れている所を学んだ。経営者としてそれをわが国に取り入れようと思い、鉄道事業や瓦斯事業などの国益に資する事業を展開してきた。やがて、わが国の近代化が進むに連れて道徳が乱れはじめた。古来から伝わってきた神道・仏教・儒教の教えも廃れはじめ、世の中が段々乱れてきた。このことを心配して牢獄時代から学び続けてきた易経を用いて、道徳や世の中が乱れていることに警鐘を鳴らし、わが国の近代化が正常に進むように易の研究に人生をかけることにしたのである」。
 さて、話は変わって明治五年。陸軍大佐の福原実氏に随行して、四国の兵営を建設しに出張した時のことである。甲板上で福原氏と話をしていると、福原氏は次のように言った。
「わたしには、わが国の前途を予測することはできないが、是非、君の易占でわが国の前途を占ってくれないか」。
 そこで筮したところ、晋の二爻を得た。
 易斷は次のような判断であった。
 晋は太陽が地上に出て一日が始まり、その明るい光が地上を燦々と照れして何事も進み長ずる時である。これを国家に当て嵌めると、明德と明智を具えた王さまが君位に在り、貴人が相談役として王さまを補佐している。すぐ下には陽剛の側近が存在して、すべての大衆(下卦の陰爻)が立派な政府を仰ぎ見る。以上のようであるから、日本国は文明国家として進展していく。このことを彖伝に「晋は進む也。明地の上に出(い)で、順にして大(たい)明(めい)に麗(つ)き、柔進みて上(のぼ)り行く。晋は益々進み行く時。明るい太陽(聡明な天子)が地上に出て、大地(臣民)は明德を備えた太陽(天子)に柔順に従い、柔順な六五が君(くん)位(い)に上(のぼ)り詰めた」と云う。
 功績を上げる臣下が役人として国家のために尽くす。政府はこの臣下にご褒美や爵位を賜る。君主は素晴らしい政治を行う。このことを彖辞に「康(こう)侯(こう)用(もつ)て馬を錫(たてまつ)ること藩(はん)庶(しよ)なり。晝(ちゆう)日(じつ)に三(み)たび接す。明德の君主の下、諸(しよ)侯(こう)が柔順に國を治め、君主が馬を諸侯に賜り(諸侯が馬を君主に献上して)、一日三回も礼(らい)拝(はい)するほど、國は治まり天下は平らかになる」と云う。
 易には三天両地という考え方がある。初爻は天(陽)、二爻は地(陰)、三爻は天、四爻は地、五爻は天、上爻は地の定位である。この定位が全て当て嵌まる卦は水火既済だけである。位が正しいか正しくない(不正)かは、この考え方を当て嵌めるのである。
 火地晋は太陽が地上に出て、何事も明るい方向に向かって進んで行く卦である。六爻の中で二爻は、陰爻陰位の柔順中正である。二爻以外は全て不正である。
 初爻は大衆の中でも最下層の人々、社会的な影響力はほとんどない。それゆえ、苦労してもなかなか報われない。陰爻陽位で無理して進もうとしても、誰かに阻止される。
 二爻は陰爻陰位で中正を得ている。それゆえ資産を有する優れた人々と考える。陰爻ゆえ才能と氣力は弱いが、きちんと税金を納めて国民の義務を果たしている。お国に尽くそうとする気持ちは強いが、六五は陰爻で応じないので、役人として政府の一員になることはできない。だが、二爻は中正ゆえ、真心で国家のことを心配しており、文明開化の流れの中で、道德や仁義が失われていくことを心配している。このことを「六二。晋(しん)如(じよ)たり愁(しゆう)如(じよ)たり。貞にして吉。六五の支援なく、九四に阻まれて、容易に進むことができない。憂える気持ちを隠せない。憂える気持ちに打ち勝って、六五に順おうとすれば、幸を得る。」と云う。二爻は、やがて、政府の一員として国家に貢献して幸に巡り逢う。このことを「玆(こ)の介(かい)福(ふく)を其の王(おう)母(ぼ)に受(う)く。孫の孝心が祖母に伝わるように、六二の誠心が六五に伝われば、大きな幸を得る。」と云う。「王(おう)母(ぼ)」を、日本政府の例えるとよくわかる。
 三爻は陰爻陽位で才能も知恵もないが、氣力に満ちている人が大衆の上に居る。政府の役人である。四爻の大臣と比しているので、役人としての役割を果たす。大衆は三爻を羨ましく思いつつも、三爻が役人としての仕事を一生懸命するので信頼する。時流に従ってやるべきことをやる。このことを「志上(のぼ)り行くなり。上(のぼ)り行きて、六五に仕える志が固いのである」と云う。
 四爻は、陽剛にして柔中六五の側近でありながら、部下の意見を吸い上げず、君臣上下を分断する存在である。陽爻陰位で才能と知恵はあるが精神力・氣力に乏しい。だが、国家中興や創業の時には、国家に尽くすので君主から信頼されて側近の地位を得るが、自信過剰となり優れた部下の意見を握り潰すようになり、終には国家の財政を傾けることもしかねない。このことを「鼫(せき)鼠(そ)なり。貞なれども厲(あやう)し。九四は君主と臣下の間を隔てようとする不心得者。大臣の位に居て、柔順な家臣達(下卦三陰)が君主に従おうとするのを阻(はば)み、君臣の義を隔(かく)絶(ぜつ)する。昼は隠れて夜悪事を働く大鼠(ねずみ)の如く國家を蝕む賊臣。善いことをしても長続きせず、身を滅ぼして、家を喪(うしな)うほど、危険な状態に陥る」と云う。四爻の自信過剰を改め正すことができなければ、とんでもないことになりかねない。
 五爻は陰爻陽位で四爻と上爻に補佐されている。細かいことには囚われないので後悔することはない。三百年近く続いた徳川幕府が、西欧列強に対抗するために、それまでの体制を一新して明治の世となった。天皇陛下を頂点に戴く本来の国の形を固めて、維新の功臣を要職に抜擢任用した。五爻は明治政府の頂点に泰然と構える天皇陛下のような存在である。明德と明智がピカピカと光り輝いて、臣民を教え導く。また、常に中庸の德を失わないので、後悔することはない。今は維新の時に活躍した臣下を要職に抜擢して、全てを委任する時。新しい時代(近代国家)を切り開いていく人材を登用するのは、三十年先の事である。このことを「悔い亡ぶ。失得(しつとく)恤(うれ)ふる勿(なか)れ。往(ゆ)けば吉、利(よろ)しからざるなし。大いなる明智を有する天子六五は、下卦坤の家臣達に慕われて、悔いることはなくなる。明智を有する反作用で、失得を憂えて家臣を信頼できないようでは、天子の器ではない。失得に憂えることなく、家臣に委任して事を進めれば、幸を得る。不利になるようなことは何一つない」と云う。
 上爻は陽爻陰位で才能と知恵はあるが、氣力に乏しい。貴人(貴族)が君主の相談役(顧問)としての地位を得ているのである。貴人(貴族)は私有してきた土地を国家にお返した上で、大義名分を重んじて政府の方針に従って、国家に尽くしている。
政府も貴人を厚く待遇して爵位を賜る。
貴人は過去国家の要職を務めていたので、数多くの経験を積んでおり、威権をもって後輩にアドバイスをする。五爻と上爻は自らを正すと共に、協力して四爻の自信過剰を正そうとする。このことを「其の角(つの)に晋(すす)む。維(こ)れ用(もつ)て邑(むら)を伐(う)つ。厲(あやう)けれども吉にして咎无し。卦の最上に居るから動物の体の一番上に在る角(つの)に例える。進み行く時の極点に居る上九は進み過ぎて中庸を失した危ない存在。進み過ぎる力を用いて六五の君命に順い六三と力を合わせて九四の内乱を討伐すれば、危険はあるが道を違えることはない」と云う。
 以上、初爻から上爻までの流れから推察すると、わが国の前途は活劇を見るように予測できる。天の命ずるところは、日本人として、上下貴賤の区別なく一体となって、日本の近代化を推し進め、火地晋の文明開化を喜びお祝いする。だが、調子に乗りすぎてはならない。福原氏は以上の易占を聞き、大いに感じ入り、「予(あらかじ)め聖人はわが国のために、易を作ってくださったのだなぁ」と言われた。
 わたしは、「多少の違いはあっても、人生や国家の存亡には一定の法則がある。その法則を知らない人は、一寸先は闇と考えるが、聖人は易を作ってその法則を教えてくれる」と答えた。

晋 六三 |・| ・・・

六三。衆允。悔亡。
□六三。衆(しゆう)允(まこと)とす。悔い亡ぶ。
 九四に阻まれるが、下卦坤(柔順)の極みに居て、至誠の心で六五に順うので、大衆(初六・六二)から信用される。それゆえ不中正の悔いがなくなる。
象曰、衆允之。志上行也。
□衆(しゆう)、之(これ)を允(まこと)とす。志上(のぼ)り行く也。
 大衆から信用される。上(のぼ)り行きて、六五に仕える志が固いのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)此爻偏僻アル人ノ心ヲ能ク攬ルモノトス、是レ時勢ヲ察シテ、人ニ抗セズ、己レヲ枉ゲズ、人ニ諂ハズ、衆人亦感稱ス、上手ニ世ヲ渉ル此ノ如シ、何ヲ以テ悔アランヤ、
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)時勢をよく観察して無益な抵抗はしない。自分の信念を貫いて、人に諂(へつら)わない。それゆえ、多くの人から慕われる。適切に時に対処するので何も後悔することはない。
○大勢の人から信用される時である。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)九州ノ商人某來リテ、或ル大會社ヘ物品ヲ賣リ込マントス、其成否如何ヲ占ハンコトヲ請フト、乃チ筮シテ、晋ノ第三爻ヲ得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)九州の商人がやってきて、ある大企業に商品を売り込もうと思うが、その成否を占ってほしいと頼まれた。そこで、筮したところ、晋の三爻を得た。
 易斷は次のような判断であった。
 晋は明德と明智を具えた人に従って行けば文明が盛んになる時。提灯を持った人に従って進み行くような時である。
 今回商品を売り込む成否を占って晋の三爻が出た。その商品は上等な品で、他の商品よりも優れている。しかし、九四の番頭が社長と貴方の間に入って厳しく品定めをしているので、番頭の目に適わなければ商品の善し悪しに関係なく売り込むことはできない。
だが、その商品を買ってくれそうな大企業は他にはない。その番頭に商品の価値を納得してもらわなければ、その大企業に出入りすることすらできない。もし、この取引が成功したら、同業者にも称讃されるであろう。このことを「衆(しゆう)允(まこと)とす。九四に阻まれるが、下卦坤(柔順)の極みに居て、至誠の心で六五に順うので、大衆(初六・六二)から信用される」と云う。優れた商品を製造・販売しており、その商品を必要とする大企業があれば、当然その商品は売買されるはずであるが、番頭の目に適わなければ、交渉することすらできない。商売とは、このように難しいものである。よくよく上手に話を進めなければならないと易断した。
(残念ながら、易占の結果がどうなったのかは、書いていない。)

晋 九四 |・| ・・・

九四。晉如鼫鼠。貞厲。
□九四。晋(しん)如(じよ)たり、鼫(せき)鼠(そ)なり。貞なれども厲(あやう)し。
 偉大な明德を備えた天子に、柔順な臣下が従う晋の時にあって、九四は君主と臣下の間を隔てようとする不心得者。大臣の位に居て、柔順な家臣達(下卦三陰)が君主に従おうとするのを阻(はば)み、君臣の義を隔(かく)絶(ぜつ)する。昼は隠れて夜悪事を働く大鼠(ねずみ)の如く國家を蝕む賊臣。善いことをしても長続きせず、身を滅ぼして、家を喪(うしな)うほど、危険な状態に陥る。
象曰、鼫鼠貞厲、位不當也。
○鼫(せき)鼠(そ)、貞なれども厲(あやう)しとは、位(くらい)当らざれば也。
 家を喪うほど危険な状態に陥る。天子を補佐する大臣の位(くらい)に居ながら、職務に背(そむ)くからである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)我身ニ應ゼザル位置ニ居レバ、危キコト近キニ在リ、宜シク方向ヲ轉ゼザルベカラズ、已ニ好シト思フコト、知ラズ識ラズ、方向ヲ失ヒ居ルノ時トス、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)天子の側近でありながら、天子の立場を危うくする存在である。自分の考え方を転換させなければならない。自分では良いと思っていても、知らず識らずにに悪い方向に流れてしまう時である。
○父母に苦労をかけたり、父母を心配させたりする時である。
○知らず識らずに高慢になって、自分の地位が危なくなっていることに気が付かない時である。
○智恵があることが災いして、自信過剰になりやすい時である。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)商人某來リテ家政ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ、晋ノ第四爻ヲ得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)ある商人がやって来て、家政(商店の運勢)を占ってほしいと頼まれたので、筮したところ、晋の四爻を得た。
 易斷は次のような判断であった。
 晋は太陽が地上に昇って行く卦であり、明智・明德が盛んになるので晋(すすむ)と名付けた。これを家政(商店の運勢)に当て嵌めると、家業は日が昇るように進み行き繁昌する時である。
 今回占って四爻が出た。貴方が信用している番頭は、長年商売の経験があり商売に長けたベテランだが、知らず識らずにその権威を楯にして、商店の資金や財産を自分の所有物のように扱い、自分の意に合わない使用人は、どんなに仕事ができても辞めさせたりしている。商店の継続よりも、自分の利益を優先している、とんでもない人物である。
だから、今、この人物を解雇しなければ、家政は必ず衰退する。
 このことを「晋(しん)如(じよ)たり、鼫(せき)鼠(そ)なり。貞なれども厲(あやう)し。偉大な明德を備えた天子に、柔順な臣下が従う晋の時にあって、九四は君主と臣下の間を隔てようとする不心得者。大臣の位に居て、柔順な家臣達(下卦三陰)が君主に従おうとするのを阻(はば)み、君臣の義を隔(かく)絶(ぜつ)する。昼は隠れて夜悪事を働く大鼠(ねずみ)の如く國家を蝕む賊臣。善いことをしても長続きせず、身を滅ぼして、家を喪(うしな)うほど、危険な状態に陥る」と云う。
 貴方の店は今からどんどん繁盛していく。それを実現するためには、この番頭を解雇しなければならないと易断した。
(残念ながら、この結果も書いていない。)

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例二)子爵五條爲榮氏京都ニ地ヲ卜シ、居ヲ徒サントスルニ當リ、其吉凶如何ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ、晋ノ第四爻ヲ得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例2)五條子爵が京都に居を移すに中り、吉凶を占ってほしいと頼まれたので、筮したところ、晋の四爻を得た。
 易斷は次のような判断であった。
 晋は内卦坤は地、外卦離は日(太陽)。日が出て地上を照らす形である。この形は聖人君子のような君主が上に在って、その仁德の恩恵が万民に普く広がる時である。
 九四は君主の側近、貴方(五條子爵)のことである。貴方は君主の側近でありながら、その地位を辞して京都に居を移そうとしている。その姿はまるで「鼫(せき)鼠(そ)~昼は隠れて夜悪事を働く大鼠(ねずみ)~」のようである。京都に居を移して、しばらくは何も問題が起こらないかもしれないが、貴方は、本来してはならないことをしたのだから、やがて災難を招き寄せるであろうと易断した。
 このことを「晋(しん)如(じよ)たり、鼫(せき)鼠(そ)なり。貞なれども厲(あやう)し。偉大な明德を備えた天子に、柔順な臣下が従う晋の時にあって、九四は君主と臣下の間を隔てようとする不心得者。大臣の位に居て、柔順な家臣達(下卦三陰)が君主に従おうとするのを阻(はば)み、君臣の義を隔(かく)絶(ぜつ)する。昼は隠れて夜悪事を働く大鼠(ねずみ)の如く國家を蝕む賊臣。善いことをしても長続きせず、身を滅ぼして、家を喪(うしな)うほど、危険な状態に陥る」と云うのである。
(残念ながら、この占例も結果が書いていない。)

晋 六五 |・| ・・・

六五。悔亡。失得勿恤。往吉无不利。
□六五。悔い亡ぶ。失得(しつとく)恤(うれ)ふる勿(なか)れ。往(ゆ)けば吉、利(よろ)しからざる无し。
 大いなる明智を有する天子六五は、下卦坤の家臣達に慕われて、悔いることはなくなる。明智を有する反作用で、失得を憂えて家臣を信頼できないようでは、天子の器ではない。失得に憂えることなく、家臣に委任して事を進めれば、幸を得る。不利になるようなことは何一つない。
象曰、失得勿恤、往有慶也。
□失得(しつとく)恤(うれ)ふる勿(なか)れとは、往きて慶(よろこ)び有る也。
 家臣を信頼して事を進めれば、隠(いん)退(たい)した上九からも慶ばれる。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)此爻明智アリテ過不及ナキ者ナリ、些々タル心配アリト雖モ、憂フルニ足ラズ、終ニ解除シテ慶アルノ時トス、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)明智と中庸の徳を具えている人物。心配事があっても気にすることはない。やがて心配事は解消して、幸福を招き寄せる。
○発展・発達する兆しが見える時。明智を用いて観察すべし。
○寛大に(ゆったりと)、事を成し遂げられる時である。
○何事も功績や利益を求める気持ちがなければ、自然と順調に進んで、事を成し遂げられる。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)華族某來リテ、氣運ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ、晋ノ第五爻ヲ得タリ、…
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)ある華族(貴人)がやって来て、氣運を占ってほしいと頼まれたので、筮したところ、晋の五爻を得た。
 易斷は次のような判断であった。
 晋は日が地上に昇って普(あまね)く国中を照らす時、進み行く時である。これを貴人に当て嵌めれば、上は明らかで、下は順う時だから、明智・明德を具えた人に従って、知識を磨く時である。全体を俯瞰して見れば、側近的存在の九四がその権威を悪用し、私腹を肥やそうとしている。家の財産や株券などの管理を九四に任さず、毎月適度な予算を与えて、細々とした家事は任せても、実印を渡すなど大事な事を任せてはならない。貴人が保有する財産の利子など資金的な余裕は、旧藩士の就職活動の支援に用いるなど、お国のために使うことを使命とすべきである。御先祖さまの資産を有効に活用して、御皇室に尽くすという、貴人の役割であると易断した。
 このことを「六五。悔い亡ぶ。失得(しつとく)恤(うれ)ふる勿(なか)れ。往(ゆ)けば吉、利(よろ)しからざる无し。大いなる明智を有する天子六五は、下卦坤の家臣達に慕われて、悔いることはなくなる。明智を有する反作用で、失得を憂えて家臣を信頼できないようでは、天子の器ではない。失得に憂えることなく、家臣に委任して事を進めれば、幸を得る。不利になるようなことは何一つない。」と云うのである。
(この爻もまた、易占の結果は書いていない。)

晋 上九 |・| ・・・

上九。晉其角。維用伐邑。厲吉无咎。貞吝。
□上九。其の角(つの)に晋(すす)む。維(こ)れ用(もつ)て邑(むら)を伐(う)つ。厲(あやう)けれども吉にして咎无し。貞なれども吝(りん)。
 卦の最上に居るから動物の体の一番上に在る角(つの)に例える。進み行く時の極点に居る上九は進み過ぎて中庸を失した危ない存在。進み過ぎる力を用いて六五の君命に順い六三と力を合わせて九四の内乱を討伐すれば、危険はあるが道を違えることはない。
 内乱は治國の破綻。討伐したことは正しくとも、恥ずかしい話である。
象曰、維用伐邑、道未光也。
□維(こ)れ用(もつ)て邑(むら)を伐(う)つとは、道未(いま)だ光(おおい)ならざる也。
 内乱を討伐する。六五の德治が未だ広大ではなく、普(あまね)く天下に行き渡っていないのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)内ニ道德ヲ修メ身ヲ省ミテ過ナカランコトヲ要ス、(中略)朋友或ハ目上ノ人ト雖モ、僅ニ其意ニ牴牾スルトキハ、忽チ其角ヲ露ハスコトアリ、愼マザル可ラズ
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)道德を修めて、言行をよく反省し、過ちを犯さないように気を付ける時。家庭においてはよく子供を教え導き、使用人を大切にする。仕事においては私的な言行は慎み、職務に専念すべきである。
○ただ真っ直ぐに進むばかりで、他人のちょっとした誤りを許さない偏屈なところがある。包容力がなく、ちょっとしたことに一喜一憂して、失敗することがある。馬鹿正直な理屈屋で、親友や先輩であも、理屈に合わないことは拒否してしまう。そのような頑(かたく)なな態度は慎むべきである。
○怒りにまかせて、人が離れて行く時。
○家族を教え導くことは善いことだが、厳し過ぎると逆効果となる。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)友人某來リテ曰ク、今株主トシテ在アル一會社ハ、其創業ノ時ヨリ、余ガ關係セシ所ナルガ、一昨年總會ニ於テ、前社員ヲ改正シ、其後今ノ社員事務ノ不整頓ナルヲ以テ、(中略)社員ノ盛衰ヲ占ハンコトヲ請フト、乃チ筮シテ、晋ノ上爻ヲ得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)友人がやって来て、創業時から株主として関与している会社の盛衰(現在、業績が低迷している要因は、社内の人事の影響か、不景気の影響か)を占ってほしいと頼まれた。そこで、筮したところ、晋の上爻を得た。
 易斷は次のような判断であった。
 晋は日が地上に昇って行く時だから、社運は隆盛となる時だが、今回占って上爻が出た。上爻は進み行く時の極点(行き詰まる時)だから、不景気の影響が業績に悪影響を及ぼしていることになる。その一方で、社員の働きが業績に影響するが、社員を六段階に当て嵌めると四爻となる(下卦は株主、上卦は会社、会社の最下が四爻の社員となる)。
 四爻は不中正であるから、今の社員はよく働かないで、不正をしていると考えられる。そこで、全社員を検査して不正を正すことが必要である。その場合、社内がギクシャクすることは避けられない。このことを「其の角(つの)に晋(すす)む。卦の最上に居るから動物の体の一番上に在る角(つの)に例える。進み行く時の極点に居る上九は進み過ぎて中庸を失した危ない存在」と云う。
一旦はギクシャクするが、やがて不正を犯した社員は己の非を認めて心を入れ替える。このことを「維(こ)れ用(もつ)て邑(むら)を伐(う)つ。六五の君命に順い六三と力を合わせて九四の内乱を討伐する」と云う。社内の不正を正すことは困難が伴うが、断行すれば、社運は吉に向かって行く。このことを「厲(あやう)けれども吉にして咎无し。危険はあるが道を違えることはない」と云う。何の対処もしなければ後日後悔することになる。このことを「貞なれども吝(りん)。」と云う。
 速やかに不正を正すべきであると易断した。
(この爻もまた、易占の結果は書いていない。)