七 地水師 ・・・ ・|・
師、貞。丈人吉无咎。
□師は貞。丈(じよう)人(じん)なれば吉にして咎无し。
大衆を率いて戦(いくさ)をする時は、大義が必要である。
尊崇される長老を総大将に戴(いただ)けば、戦に勝利する。
多少犠牲があっても咎められない。
彖曰、師衆也。貞正也。能以衆正、可以王矣。剛中而應、行險而順。以此毒天下、而民從之。吉又何咎矣。
□師は衆也。貞は正也。能(よ)く衆を以て正しければ、以て王たる可し。剛中にして応じ、険を行(おこの)ふて順。此を以て天下を毒すれども、民(たみ)之(これ)に従う。吉にして又何の咎あらん。
師は大衆。貞は大義。大衆を率いて戦をする時は、大義が必要。
大義を掲げて大衆を率いてこそ、立派な王さまである。剛健と中庸の德を兼ね備えた九二の長老が、六五の天子に厚く信任され、険難な戦(下卦坎)に中り柔順(上卦坤)に対処する。民は帰服する。多少犠牲があっても九二に従う。
天子は戦に勝利する。どうして咎められようか。
象曰、地中有水師。君子以容民畜衆。
□地中に水有るは師なり。君子以て民を容れ衆を畜う。
地(坤)中に水(坎)が聚(あつま)っているのが師の形。
君子は、大地のような大らかな心で民を受け容れ、養い育て教え導く。
以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)此卦ヲ得ルトキハ、時正ニ危険ニ際ス、幾多カノ困難ニ遇フベシ、然レドモ權譎詐道ヲ以テ困難ヲ濟ハント欲スレバ、益々困難ヲ重ヌベシ、宜シク正道ヲ貞守シテ、詐術ヲ須ヒズ王師ノ正々堂々タルガ如クナレバ、遂ニ困難ヲ排除シテ、其志ヲ達スルヲ得ベシ、・・・
以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)危険に遭遇して、数多くの困難が立ち塞がる。力づくや誤魔化しで困難から脱しようと悪智恵を企てれば、ますます困難に陥る。正しい道を固く守って、正々堂々と王道を歩むがよい。そのようであれば、困難を脱して志を実現することができる。
○学校の先生が庶民の子どもを沢山集める。あるいは、演説や集会、議会などで沢山の人を集める時。
○優しい心と智恵があるので、庶民に慕われる。権威ある人物である。だが、部下の意見よりも、自分の意見を通そうとすれば、事を誤る。ひたすら柔順にして、庶民を包容する寛大な心を保てば、世間の人から称賛されて、庶民の先生としての名誉を得られる。
○先生が発憤して大衆を動かす時。
○大きなリスクが潜んでいる時。
○願望はすぐに実現しない。先ずは厳しい状況に陥るが、やがて願望を実現することが容易になる。
○心配事を解消するために、あえて苦難の道に挑戦する。成功か失敗かは、その人の人生経験や才覚で決まる。
○心身ともに苦労して、生活すらままならなくなる。だが、安易に今の職業や思想を変えてはならない。
○商売や売買では競争が激しくなる。物価は下落する。
○敵が現われるので、必要に迫られて、指揮官を招聘する。
○口先で論争したり、盗難にあったりする。用心すべきである。
師 初六 ・・・ ・|・
初六。師出以律。否臧凶。
□初六。師(し)出(い)づるに律を以てす。否(しから)ざれば臧(よ)きも凶なり。
戦(いくさ)の始めに処する道を説く。軍隊の規律は厳格である。
規律が乱れると総大将に人物を得ても敗北する。
象曰、師出以律、失律凶也。
□師出づるに律を以てすとは、律を失へば凶なる也。
軍隊の規律が乱れると、総大将に人物を得ても、戦に勝てないのである。
以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)凡ソ事ヲ爲サント欲セバ、宜シク始ニ於テ確乎タル見込ヲ立テ、固ク其規律ヲ定メ而シテ後着手スベシ、然ラザレバ必ズ失敗ヲ取ルベシ、・・・
以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)事を為すには、事の始めをきちんとすべきである。調査をして、予測を立て、確乎とした見通しを持ってから始めるべきである。
事を始めるにあたっては、規則をきちんと定めることが肝要である。そうでなければ、必ず失敗する。
○何事も、始めの段階は慎重に行い、過大な期待を抱くことなく、小さな事から始めれは、吉運を招き寄せる。
○剛毅に過ぎて規律を犯す。規律が乱れている軍隊で、しかも大将が力不足ならば、戦には絶対に勝てない。
以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)或人一ノ工業會社ヲ組織シ、株金ヲ募集シ、定款ヲ設ケ株主ノ投票ヲ以テ役員ヲ置カントシ、其社ノ成否ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ師ノ初爻ヲ得タリ・・・
以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。