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期間限定「現代語訳(超意訳) 呑象高島嘉右衛門著 増補 高島易斷 上下巻 占例篇」 火天大有

十四 火天大有 |・| |||

大有、元亨。
□大有は、元に亨る。
 大有は乾(天)の上に離(太陽)が在る。天上に太陽が燦々と輝いて普く天下を照らす。一陰六五が衆陽を率いる。何事も無条件にすらすら通る。
彖曰、大有、柔得尊位、大中而上下應之、曰大有。其德剛健而文明、應乎天而時行。是以元亨。
□大有は、柔尊位を得、大中にして、上下之に応ずるを、大有と曰う。其の德剛健にして文明、天に応じて時に行う。是を以て元に亨る。
 柔順な六五が尊位に在る。偉大な中庸の德を得て、上下五陽が心服するから、大いに所有する(大有)と言う。
 六五は強く健やか(乾)で明智(離)を備え、天命に順応して時に中る。それゆえ何事も無条件にすらすら通る。
象曰、火在天上大有。君子以遏惡揚善、順天休命。
□火、天上に在るは大有なり。君子以て惡を遏(とど)め善を揚(あ)げ、天の休(きゆう)命(めい)に順う。
 太陽が天上に在って燦々と輝き普く天下を照らすのが大有の形。
 君子は、悪を絶って、善を勧め、天命に順応する。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)此爻ヲ得ルトキハ、天性頴敏ニシテ氣力アリ、加フルニ學問ニ富ミ、實地ニ經験アル人ニ接シテ、智識益々進ムモノトス、且ツ神明ノ保護アリ、盛運ニ赴クベシ、唯身ノ驕ヲ愼ムベシ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)天性に恵まれ、氣力も充実しており、学問に優れている。経験豊富な人と交際しており、知識は豊富である。神仏のご加護によって、盛運に向かう。驕らないように気を付けるべきである。
○寛大で仁を具えた人が高い地位を得て、大衆から慕われる時。
○大富豪が善良な支配人を雇って財産を保つ時。
○思いやりと慈しみの心で、大衆をやさしく教え導く時。
○太陽が遙かかなた天の真上に在る象ゆえ盛運の時である。少しずつ傾いていく予兆もあるが、常に自戒して、慎みの心を抱き続ければ、長期間大有の時を維持することができる。
○富有になって人を侮り贅沢三昧するようになると、過失を犯すようになる。戒めるべきである。
○やっかいなことを引き受ける時でもある。
○売買で利益を得る。得た利益は手放さずに蓄えるべきである。
○女性が世帯主(あるいはリーダー)になる時である。
○女性が驕り高ぶって人から、嘲(あざけ)られる時でもある。
○離の卦徳である①聡明さや明智を持っていなければ、前には盗賊が立ち塞がり、後には悪口が飛び交っても、このことに気が付かない。②決断すべき時に決断できなければ、賢人を抜擢任用して小人を失脚させることはできない。③権威を具えていなければ(立派な人格を具えていなければ)、大衆から敬され慕われることはできない。以上の三つが具わってはじめて大有の時が成立する。
○多くの費用がかかるが得るところは少ない。人に施すことばかりで、自分が得ることはできない時。
大有 初九 |・| |||

初九。无交害。匪咎。艱則无咎。
□初九。害に交わる无し。咎あるに匪(あら)ず。艱(なや)めば則ち咎无し。
 初九は、富有の中に驕傲怠惰が潜んでいる上位の人と疎遠である。富有自体は咎められないが、富有の中には驕傲怠惰が潜んでいる。戦々兢々として自らを慎めば、咎められるような過失は免れる。
象曰、大有初九、无交害也。
□大有の初九は、害に交わる无き也。
 富有の中に驕傲怠惰が潜んでいる上位の人を遠ざけて、驕傲怠惰にならぬよう自戒するのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)君子ト雖モ交際廣カラズ、人ニ知ラレズ、又信ゼラレザルノ時トス、學士博士市井ニ住居シテ、防火夫ニ窘メラレ、(中略)實ニ他日ニ望アルノ占トス・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)君子だが、交際範囲が狭く、人に認知されない。世間に信用されない時である。学生や博士が町中に住居を構えているが、消防士(庶民のたとえだと思う)に窘(たしな)められいる。鶴が掃(は)き溜(だ)めに居て、周りの人からからかわれているようである。
 だが、そういうことは、小人のやることだと思って気にしないようにして、小人とは距離を置いて被害を受けないようにすべきである。
 大きな事業を成し遂げる人であっても、誰もがはじめは人から信用されずに小人の妨害を受ける。しかし、徐々に運氣は開けていき、やがては、盛運に至る。今は心を磨くための勉強をすべき時である。
 昔の人は「やがては大海に至る山の水も、しばらくは木の葉の下をチョロチョロと流れるのである」と歌っている。
「陽氣が発する所(前向きなエネルギーがあれば、の例え)は、金の石(価値あるものの例え)を生み出すことができる。どうして成し遂げられないことがあろうか」という言葉もある。
 以上のようであるから、今は妨害があったとしても、精神が挫けることがなければ、遂には天の助けを得て志を実現する時が来る。
○成金のメッキがはげて恥を晒(さら)すことになる。
○お金が有り余っているから不要なものを買いすぎる。
○世間から嫉(ねた)まれ、思ってもいなかった災難に遭遇する。
○今は裕福になったが、昔の苦労を思い出せば、驕り高ぶる心を抑えることができる。富を失うことがない所以(理由)である。
○世間から信用されない時である。
○孤立して意地を張り朋友に謝絶されることがある。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)佐賀縣ノ士族深江某ハ、余ノ親友ナリ、明治四年紙石灰等ノ商業ニ慣レザルヲ以テ、大ニ困却シ歎息ノ餘、余ニ後來ノ運氣ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ大有ノ初爻ヲ得タリ・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)佐賀県の旧士族である深江某氏は、わたしの親友である。彼は明治四年に、商業に従事し横浜にやって来て、悪い商人に騙されて商売に失敗した。学力も才能も高い人物だが、商業の経験がなかったので、どうしたらよいのか困り果て、運氣を占ってほしいと頼まれた。
 そこで占筮したところ、大有の初爻が出た。
 易斷は次のような判断であった。
 大有の卦は、大きなものを保有する象、後年の運氣が盛んになる時である。今回占って初爻が出たが、初爻は時の始めであるから、今の段階では、まだ世間の人から信用されず、地位の高い人と知り合うことはできない。それゆえ、小人のために迷惑を被(こうむ)ることがある。貴方は文武に長けているが、商業には疎く経験不足である。だが、今は思わぬ損失があったとしても、馴れないことをした結果だから、あまり、自分を責めてはいけない。気にしない方が良い。
 貴方は商業から離れて役人になり勉強して勤務に励めば、将来、立身出世して、大きな仕事を成し遂げるようになる。
 その時に至った暁には、今の困難な状況を思い出して、驕り高ぶる気持ちを抑え、感謝の気持ちを抱き続ければ、今の失敗は将来の貴方の人格形成に寄与する。
 それゆえ、今の不幸は将来の幸せにつながる。このことを「害に交わる无し。富有の中に驕傲怠惰が潜んでいる上位の人と疎遠である」と云う。
「咎あるに匪(あら)ず。艱(なや)めば則ち咎无し。富有自体は咎められないが、富有の中には驕傲怠惰が潜んでいる。戦々兢々として自らを慎めば、咎められるような過失は免れる。」とも云う。
 その後、果たして、易断の通りになった。

(占例2)知人の永井某氏がやってきて、氣運を占ってほしいと頼まれたので占筮したところ、大有の初爻が出た。
 易斷は次のような判断であった。
 大有は、大いなるものを保有する時、資産が増えて豊かになる象(かたち)。今回占って初爻が出た。あなたは近い将来、商業で莫大な利益を得て成金となる予兆がある(あなたは、内心、大金持ちになりたいと願っている)、ということである。
 大いに喜ばしいことであるけれども、一時の氣運に乗じて大金を得た時は知らず知らずのうちに自らを省みることを忘れて、怠慢な気持ちが生じて、気が付くと驕り高ぶっているということになりかねない。それゆえ、深く自戒して、自分を慎むというところがなければ、財産を保ち続けることは難しい。
 今、あなたの過去を振り返って考えてみると、大人として尊敬できる性格を具えており、何事にも着実に取り組み、大変に正直である。また、知識も具えており、家庭も仕事も一生懸命に勤め励んで怠ることはない。だが、生涯大金持ちになることはできないであろう。
あなたはそのような生活が、あまりにも質素に過ぎると感じて、一攫千金を狙って、発憤努力して好運にも大金を得ることができる。
 だが、それは一時的なバブルのようなものであって、苦労を積み上げて得たお金ではないので、長続きしない。今、慎みの心を抱かなければ、やがて傲慢になって、贅沢に走るか、無謀な投機をして、せっかく得た富を失うことを恐れるようになる。
 運悪く、大金を得たいという願いが叶わなければ、良心を失って悪い事をするようになる。よくよく今の段階で反省して自分を大切にし、善からぬ友だちとは付き合ってはならない。このことを「害に交わる无し。初九は、富有の中に驕傲怠惰が潜んでいる上位の人と疎遠である」と云う。
 今回示した易断と、あなたが内心思っていることは、大きく異なっているかもしれないが、易断に従い、よく考えて、慎重に行動すれば、過ちを犯すことはない。このことを「咎无し。自らを慎めば、咎められるような過失は免れる」と云う。
 永井某氏は、しばらくは、易断に従っていたが、やがて、大金を得たいという願いを抑えることができなくなり、遂には大金を得て傲慢になってしまった。そいて、投機に失敗して悪行に走り犯罪を犯して牢獄に繋がれることになった。
 易断に示された天命に従わないと、このような惨劇に陥るのである。何と恐ろしいことではないか…。
大有 九二 |・| |||

九二。大車以載。有攸往。无咎。
□九二。大(だい)車(しや)以て載す。往く攸有り。咎无し。
 剛健柔位で中庸の德を備える九二は、六五の天子に厚く信頼されている。大きな車に沢山の荷物を載せるほど才能道德豊富である。六五は九二を抜擢し、九二は時に中って天下の大事に対処する。咎められるような過失は犯さない。
象曰、大車以載、積中不敗也。
□大(だい)車(しや)以て載すとは、中(うち)に積みて敗れざる也。
 大きな車に沢山の荷物を載せるほど才能道德豊富である。
 天下の大事を任されても重圧に押し潰されないのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)才德アル人ニシテ、盛運ノ來レル時トス、益々勉勵セバ、幸福ヲ得ル、益々多カルベシ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)才能と人徳を具えた人が、盛運を招き寄せた時である。
事に中って、益々努め励めば、沢山の幸福を得る。
○資質も力も剛強ゆえ、天下の大任に耐えられる人物である。
○大きな計画を立て、大事業を起こし、さまざまな苦労をするが、大度量と大器量でそれを乗り越え、手のひらの上に載せて制御するように、天下泰平を実現する。
○国家・企業・団体などあらゆる組織のトップリーダーが、その責任を善く全うして名を上げる時。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)明治二年、友人來リテ、某貴顕ノ運氣ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ大有ノ第二爻ヲ得タリ・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)明治二年、友人がやって来て、ある貴人の運氣を占ってほしいと頼まれた。そこで占筮したところ、大有の二爻が出た。
 易斷は次のような判断であった。
 大有は、六五の一陰が君位に在って、天下の五陽を統御している。
 内卦の乾は、純粋な陽、欠けるところがないから、正大な性質を有している。外卦の離は火、明るい性質があるから、公明な性質を有している。すなわち、公明正大にして天下を良好な状態に保有できるのが大有である。
 今回占って二爻が出た。
 二爻は剛健中正の徳を具えて六五の君主と陰陽相応じており、天下の大任を背負って、大有の大事業を補佐する大人物である。まるで、大重量の物質を大きな車に載せて、自由自在に運転をこなせるような俊傑である。
 このことを「大車以て載す。往く攸有り。咎无し。剛健柔位で中庸の德を備える九二は、六五の天子に厚く信頼されている。大きな車に沢山の荷物を載せるほど才能道德豊富である。六五は九二を抜擢し、九二は時に中って天下の大事に対処する。咎められるような過失は犯さない」と云う。
 この貴人は、将来必ず大事な局面に世に出て、大事業を成功させると易断した。
 その後、果たして、易断の通りになった。
大有 九三 |・| |||

九三。公用亨于天子。小人弗克。
□九三。公(こう)用(もつ)て天子に亨(きよう)せらる。小人は克(あた)わず。
 大有は天子の威(い)德(とく)が天下に広がり諸侯が信服する時。六五は富有な諸侯九三を嘉(よみ)して饗宴の礼を賜る。
 小人は富有を恣(ほしいまま)にするので、饗宴の礼に与(あずか)れない。
象曰、公用亨于天子。小人害也。
□公(こう)用(もつ)て天子に亨(きよう)せらる。小人は害あるなり。
 六五は富有な諸侯九三を嘉(よみ)して饗宴の礼を賜る。
 小人が諸侯の位に居れば富有を恣(ほしいまま)にして社会に害悪を及ぼす。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)衆人ノ上ニ立チ、身豐カナルベシ、故ニ國恩ヲ報ゼントテ、我ガ土地ニ産シタルモノヲ献上スルノ象アリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)大衆の上に立って、富や地位を得る。国に恩返しするために、自分の土地で生産した農産物などを献上する時。至誠の心を貫くことによって、面目を保つ。だが、もし、利益と名誉を得るために、これを行う時は、それは小人のやることであって、驕り高ぶることになりかねず、後に害悪や災難を招き寄せる。
○銀行(銀行員)や税務署(税務署員)の象。
○小人が宝物を保有して罪を犯す時。
○牢獄の監守が公金を横領するという過ちを犯しかねない時である。注意すべきである。
○位負けする時。 ○世間の信用を失う時。
○他人の所有物を預かって、気持ちが驕り高ぶる時。
○良い地位を得る。謹慎して事に臨めば吉を招き寄せる。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)大阪ノ友人某來リテ、某豪商ノ身上ヲ占ンコトヲ請フ、乃チ筮シテ大有ノ第三爻ヲ得タリ・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)大阪の友人某がやって来て、豪商某の身の上を占ってほしいと頼まれたので、占筮したところ、大有の三爻が出た。
 易斷は次のような判断であった。
 大有の卦は、大きなものを保有する象である。
 このことからも豪商某が大金持ちであることを知るべきである。
 爻辞に「公(こう)用(もつ)て天子に亨(きよう)せらる。大有は天子の威德が天下に広がり諸侯が信服する時。六五は富有な諸侯九三を嘉(よみ)して饗宴の礼を賜る」とある。
 役人の場合、政府から厚く信頼される時である。
 商人の場合、政府の信任を得て高貴な人から愛顧される時である。
 商人が篤実さを守って、驕り高ぶらなければよいが、もし、そうではなく、高貴な人から愛顧されることを誇るあまり、富有と権威を傘にして、上の人に対して慢心となり、下の人に対して高圧的になれば、必ず資産を失うことになると易断した。
 吉凶禍福はその人の行ないによって決まるのである。
 その後、豪商某は、ある役所の公金を管理する貴人と交際することになった。ところが富有を自慢するようになり、手代にまで紳士の真似事をさせ、驕り高ぶっているという悪い噂が立つようになった。公金の管理も杜(ず)撰(さん)で、終には急病に罹って死亡した。
 終に、豪商の家は破産したのである。

(占例2)明治五年、土佐(高知)の人である渡邊小(こ)一(いち)郎(ろう)氏がやって来て、氣運を占ってほしいと頼まれた。
 そこで占筮したところ、大有の三爻が出た。
 易斷は次のような判断であった。
 大有の世は、天子(王さま)が私利私欲を捨てて(己を虚しくして)大勢の賢臣を抜擢任用する時。賢臣を心から信じて、予算執行を含めてすべてを任せる。
 九三は、その富裕な財産を公に供するべく、六四の大臣を現場で補佐する役割を果たす。
このような役割を小人に任せると、己の財産を公に供するどころか、公の財産を己のために用いかねない。すなわち滅私奉公の道を失う可能性が高い。
 それゆえ、爻辞に「公(こう)用(もつ)て天子に亨(きよう)せらる。小人は克(あた)わず。大有は天子の威德が天下に広がり諸侯が信服する時。六五は富有な諸侯九三を嘉(よみ)して饗宴の礼を賜る。小人は富有を恣(ほしいまま)にするので、饗宴の礼に与(あずか)れない」とある。
「あなたは、現在、鉄道局の神戸出張所の事務を担当している。大勢の職員を率いて予算を管理するに中り、もっとも注意しなければならない事は、私利私欲によって滅私奉公の道を失うことである。昔の封建制の時代には、武士も庶民もそれぞれの大義を弁えていた。とくに武士においては大義に反するようなことをしでかした時には腹を切って責任を全うしたのである。しかし、近代になって刑法の罰則が寛大になると、人々の間には恥を知るという心が段々薄れていき、しかも利益追求を良しとする教育が普及しつつある。それゆえ、よくよく注意しなければならない」。
 以上のように易断した。
 けれども、渡邊氏が勤める鉄道局の神戸出張所で、部下が米相場に手を出して公金を流用した。そのため、渡邊氏は責任を免れることができない立場に追い込まれた。渡邊氏は公金を流用した職員を救おうと、ある商人から若干のお金を借り公金の穴を埋めようとした。けれども、そのことが発覚して職員と共に罪に処せられたのである。

大有 九四 |・| |||

九四。匪其彭。无咎。
□九四。其の彭(さかん)なるに匪ず。咎无し。
 大有盛大な時に中り六五の天子に寵遇され富貴威権を一身に集める。
 柔順な六五を凌(しの)ぐ勢いがありながら、常に謙譲して驕り高ぶることもない。それゆえ、咎められることはない。
象曰、匪其彭、无咎、明辨晢也。
□其の彭(さかん)なるに匪ず。咎无しとは、明(めい)弁(べん)晢(あきらか)なる也。
 常に謙譲して驕り高ぶることなく、咎められることはない。
 明智で幾を見て出処進退を判断するのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)此爻ヲ得ルトキハ、賢哲ノ士君ニ擢用セラレ、德望自然ニ増シ權威自ラ備ル、此時ニ於テハ、友人ヨリスル通常ノ音信贈答モ、世人ニ賄賂視セラルルコトアルヤ知ル可カラズ、然レドモ是等ハ小事ニシテ、固ヨリ意トスルニ足ラズ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)賢明で哲学にも秀でた役人が、君主(王さま)に抜擢任用されて、人徳と人望が自然に醸成され、自ずから権威が具わる時。
こういう時は、友人からの贈り物も、世間からは賄賂と疑われることもある。だが、このような小さいことは大して気にしなくてもよい。ただ、一身をかけて国家のために尽くせば天地人に恥じることはない。このことを称賛して「明(めい)弁(べん)晢(あきらか)なる也。明智で幾を見て出処進退を判断する」と云う。
智恵と配慮に優れても、贅沢をしたり複数の女性と付き合ってはならない。慎みの気持ちを忘れなければ、安泰の時である。
○上位者の信任を得て、重大な任務を負い、人格を磨き、権威が滲み出てくる時である。
○よく世間のことを熟知し、人脈も広く、忙しい中にあって、公私混同することなく、巷(ちまた)のずる賢い輩(やから)に騙(だま)されることもなく、世間から疑われることもない。それゆえ「明(めい)弁(べん)晢(あきらか)なる也。明智で幾を見て出処進退を判断する」と云う。
○他人の言葉を受け入れて事情に通ずる(成就する)時である。
○賄賂のやりとりがある時でもある。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)親友某氏、商業ノ爲メ旅行シ、其不在中ノ事ヲ余ニ托セリ、(中略)之ヲ憂ヒテ懵乎タリ、余乃チ筮シテ大有ノ第四爻ヲ得タリ・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)親友が旅行に行き、わたしは留守を任された。ある晩、親友の番頭が突然やって来て、わたしに哀訴して次のように言った。
「とんでもないことが起こってどうしたらよいのかわからない。
 どうすればよいか占ってほしい。わたしは、今朝、ある商人から三百円を受け取り、これをタンスに収めた。しっかりとカギをかけたが、忙しかったので、カギをタンスの別の引き出しに入れたままで、他の仕事にとりかかってしまい、カギをフトコロに入れ忘れた。
夕方になり、三百円を奥さんに渡すために、タンスの引き出しを開けてみるとお金がない。あちこち探しても見つからないが、出入りした者はみな身内なので疑うような人はいない。一体どこへ行ってしまったのか、呆然としている」。
 そこで占筮したところ、大有の四爻が出た。
 易斷は次のような判断であった。
 卦名が大有と云うのは、大いに保有するからである。それゆえ、そのお金は外に出て行っておらず、家の中に在ると考えるべきである。また、卦を一つの家に見立てると、上卦は二階である。
 今回占って四爻が出たが爻辞に「其の彭(さかん)なるに匪ず。咎无し。大有盛大な時に中り六五の天子に寵遇され富貴威権を一身に集める。柔順な六五を凌(しの)ぐ勢いがありながら、常に謙譲して驕り高ぶることもない。それゆえ、咎められることはない」と云っている。
「匪(あら)ず」とは、また「匪(はこ)(箱)」のことでもあり、その箱は贈り物を入れる竹の器である。今、これを商家に当て嵌めると、籠や長持ち(長方形の箱)の類である。「すぐに商家に戻って、二階にある籠や長持ちの中を探してみなさい」と易断した。
 番頭は感謝して商家に戻った。しばらくして、二階にあった長持ちの中の一つから三百円が見つかったと連絡があった。
大有 六五 |・| |||

六五。厥孚、交如。威如、吉。
□六五。厥(その)孚、交(こう)如(じよ)たり。威(い)如(じよ)たり。吉。
 六五の天子は誠を以て九二の賢人に下り、九二は至誠の心で六五に事(つか)える。衆陽も六五を信服し六五と衆陽の至誠が相交わる。
 六五が柔順温和の中に威厳を含めば、大有の時は長く続く。
象曰、厥孚交如、信以發志也。威如之吉、易而无備也。
□厥(その)孚、交(こう)如(じよ)たりとは、信以て志を発する也。威(い)如(じよ)の吉は、易にして備うるなき也。
 衆陽は六五を信服して至誠が相交わる。六五の至誠が衆陽の志を啓発する。
 大有の時は長く続く。鎧甲・よろいかぶと(厳めしさの象徴)の備えなくとも、自然に醸し出される威厳で衆陽が帰服する。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)此爻文明柔和ヲ以テ尊位ニ居リ、衆賢者ヲ擧用シテ、其才ヲ施サシム、所謂ル垂拱シテ天下治マルノ時トス、常人ニ在テハ、衆有力者ヲ使用シテ、大事ヲ成就シ、美名を得ルノ時タリ、然レドモ其身ヲ愼ミテ驕ラズ、其心ヲ誠ニシテ・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)この爻は、文明の徳と柔和な性質を具えて君位に在り、大勢の賢人を抜擢任用して、その才能を発揮させる。「柔よく剛を制す」ようにして天下が治まる時。普通の人にとっては、大勢の有力者を使用して大事業を成し遂げ、名誉を得る時。慎みの心を忘れず、驕り高ぶることなく、至誠を保って言行一致を守ることが肝要である。以上の事ができなければ、天下泰平(組織安泰)を維持することは難しい。
○誠心を保って大衆からの信望を得る時である。
○莫大な資産や利益があるから、大衆に周く恩恵を施すことができる。
○清廉過ぎるので世間から浮いてしまう。
○手代や番頭などの側近にお金を横領される。
○家事を任せきりにして家政が傾く予兆が現われる。
○商人の場合は、善良な手代や番頭などの側近を得られる。
○リーダーの場合は、剛健であることが求められるので、温柔に過ぎると権威を失ってその座を追われることになりかねない。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)一日予ノ親友ナル豪家ノ主人來リテ、其運氣を占ハンコトヲ請フ、、乃チ筮シテ、大有ノ第五爻ヲ得タリ・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)ある日、わたしの親友の豪商がやって来て、運氣を占ってほしいと請うので、筮したところ、大有の五爻が出た。
 易斷は次のような判断であった。
 柔中の徳を具えた六五の王さまが公明正大の権威と温和な性質を具えて、大衆から慕われている。その君徳によって賢臣を任用し、大衆を自分の子どものように温かく見守っている。六五の王さまは剛健の徳を具えた九二の賢臣と陰陽相応じて、剛健の徳を具えた九四の宰相と陰陽相比して、大衆から慕われているから、治国平天下の象となっている。
 あなたが手代や番頭などの側近をよく信用し、他人の意見をよく取り入れ、従業員やお客様の喜びを自分の喜びとして、従業員やお客様の悲しみや苦しみを自分の悲しみや苦しみとする時は、上下君民よく調和して、商家は繁盛して安泰となる。
「国家が治まるのは、リーダーに権威があるからだ。リーダーに権威がなければ、誰も命令に従わない。商家もまた同じである。どんなに信用できる側近でも、何もかも任せてしまっては、侮りの心や慢心が生じて遂にはコントロールできなくなる。リーダーとしての権威を保つように心がけるべきだ」と易断した。
 某氏は易断をよく守ったので、商家は益々繁盛した。

大有 上九 |・| |||

上九。自天祐之。吉无不利。
□上九。天より之を祐(たす)く。吉にして利しからざる无し。
 上九は無位の賢人、富有を超越して天命に順い謙譲の心で六五の天子を教え導き天の幸を授かる。何事も滞りなくすらすら通る。
象曰、大有上吉、自天祐也。
□大有の上(じよう)吉(きつ)は、天より祐(たす)くる也。
 何事も滞りなくすらすら通る。天道に則って天子を教え導き、大有の時を長く保つので、天の幸を授かるのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)天性正直ニシテ剛毅ノ志操ヲ有シ、世事ノ經験ニ富ミ、眞正ノ才智アリ、而モ孚誠ヲ積ミ神ノ保護ヲ得ルモノトス、運氣盛ンナリト謂フベシ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)天から授かった性質が正直である。剛毅(確乎不抜)な志を心に抱き、世の中の酸いも甘いも知り尽くして、真心と正しさに裏付けられた才能と智慧を有している。しかも、至誠の徳を積み上げて、神仏のご加護を得ている。運氣盛大な時である。
○広く人々から信用される時。
○神仏のご加護を得られる時。
○賢く善良な人を敬う時である。
○大きな事を保つことができるのは、ただ才能と智恵があるからだけではない。神仏のご加護があるからできるのである。
○病気を占った場合は、天命が終る時である。霊魂が天に昇って大衆から尊敬される(尊位を得る)ようになる。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)明治十五年、某貴顕ノ運氣を占ヒ、筮シテ大有ノ上爻ヲ得タリ・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)明治十五年、ある貴人の運氣を占って筮したところ、大有の上爻が出た。
易斷は次のような判断であった。
 大有は、太陽が天上に輝き、五陽の賢臣が太陽の中心の六五を支えているから、天下泰平を大いに保つ。
 今回占って、この爻が出たのは、これまで善きことを積み上げて、人徳を磨き、神仏のご加護を得るに至ったのである。
 天下の事業として、何を成し遂げようとして、不可能なことは何一つないという時。このことを「天より之を祐(たす)く。吉にして利しからざる无し。上九は無位の賢人、富有を超越して天命に順い謙譲の心で六五の天子を教え導き天の幸を授かる。何事も滞りなくすらすら通る」と云う。
 以上のような易断だったのに、貴人はこの年、ご逝去された。
 この卦は元来帰魂の卦である。貴人は天命に到達したのである。