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期間限定「現代語訳(超意訳) 呑象高島嘉右衛門著 増補 高島易斷 上下巻 占例篇」 火雷噬嗑

二一 火雷噬嗑 |・| ・・|

噬嗑、亨。利用獄。
□噬(ぜい)嗑(こう)は亨る。獄(ごく)を用うるに利し。
 噬嗑は上アゴと下アゴの間にある邪魔物を、聡明な智慧(離)と活発な威権(震)で噛み砕いて除き去り、上下和合亨通する時。
 邪魔物は天下の害悪ゆえ、裁判や刑罰で懲らしめるがよい。
彖曰、頤中有物、曰噬嗑。噬嗑而亨。剛柔分、動而明。雷電合而章。柔得中而上行、雖不當位、利用獄也。
□頤(い)中(ちゆう)に物有るを噬嗑と曰う。噬嗑して亨る。剛柔分かれ、動きて明らかなり。雷電合して章(あき)らかなり。柔中を得て上(じよう)行(こう)す。位に当らずと雖も、獄を用いるに利しき也。
 上アゴと下アゴの間に邪魔物が有るので噬嗑と名付ける。聡明な智慧(離)と活発な威権(震)で邪魔者を噛み砕いて除き去り、上下和合亨通する。剛(震)柔(離)上下に分かれ、果断決行する威力(震)と聡明な智慧(離)を兼ね備えている。雷(震)の盛大な威力と電光(離)の煌(きら)めく光明が合体して、輝いている。柔順で中庸の德を備えた六五が尊位に居る。位は正しくないが、裁判と刑罰の執行が適切(厳格に過ぎない)ゆえ、宜しいのである。
象曰、雷電噬嗑。先王以明罰勑法。
□雷電は噬嗑なり。先王以て罰を明らかにして法を勑(ととの)う。
 上卦離の電光(明智)と下卦震の雷(威光)から成るのが噬嗑の形。
 昔の王は、明智で罪を区分して刑罰を細かく示し、威光で法律を整えて厳正に執行した。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)此卦ヲ得ルトキハ、我レ事ヲ爲サント欲スルノ時、差支ノ事生ズルカ、或ハ中間ニ妨ヲ爲ス者アルノ時トス、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)事を為そうと欲して、何か障害が発生するか、邪魔する者が現われる。礼儀と謙譲の心を大切にして、障害や邪魔者を除去しようとするが効果が上がらない。力(権力や権威)によって、障害や邪魔者を除去すべきである。力で対処すれば効果が上がる時である。
全て事を為そうとするならば、剛強の性質を前面に立てるが宜しい。
○声を高く上げて、その威力で人を脅す時である。
○心の中に含みがあるので、他人に腹を立てる時。
○腹が立ったり怒ったりしやすい時である。自分から相手に声をかけ(言葉を発し)て和合するべきである。
○よく考えないから、争い事を招き寄せる。
○自分と相手の間を邪魔する者がある。自分の志が相手に通じないので事がうまく進まない。邪魔する者を除去すれば、事は成就する。
○邪魔者を除去するために刑罰を用いれば効果が上がる。刑罰を執行すれば、利益が得られる。
○明智と権威によって刑罰を決める。刑罰の効果を見極めて、刑罰を執行すべきかどうか決める。権威を背景に武器を用いて国家を正す時。自分と相手の間に存在する邪魔者を除去すれば事は成就する。
○誰かと争っている場合は、訴訟すれば利益を得られる。
○騒々しくて落ち着きがなく、埒(らち)が明かない時。
○知らないことを人に質問する。 ○女性が強く、男性が弱い時。
○捕まって刑務所に入れられることがある。
○人から誹謗中傷され、あれよあれよという間に災いを招き寄せる。
○感情を激して(怒りまくって)、財産を失う。
○人に利害を説く。 ○人に利害を説かれる。
○人を養う。 ○何かを養う。 ○相手と交易する。
○強硬策で上下が分断される。 ○才能と智恵がある人が勉強する。
○人と反対の売買により利益を得る。物価は騰貴する。

噬嗑 初九 |・| ・・|

初九。屨校滅趾。无咎。
□初九。校を履(ふ)みて趾(あし)を滅す。咎无し。
 悪事を働き、足枷を嵌(は)められ、身動きが取れなくなる刑罰を受けた。初期の段階(小悪)ゆえ、反省して行動を改めれば更生できる。
象曰、屨校滅趾、不行也。
□校を履(ふ)みて趾(あし)を滅すとは、行かざる也。
 身動きが取れない刑罰を受ける。
 これ以上悪事を重ねないように、行動を制したのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)已ニ從事スル所ノ方向ヲ誤ル、宜シク猛省シテ之ヲ改ムベシ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)現在の方向性が誤っている。よく反省して改善すべきである。これから起こす予定の事業のことを知らないので、失敗して恥をかく。いつも行っている小さな事業でも迅速に遂行できない。
○交際する相手の是非善悪をよく判断して、しっかりと選ぶべき時。
○足が傷付いており、動いて行くのが困難な時。無理して進んで行けば悪い結果になる。
○今は成功することが難しい時と判断して、進んではならない。
○初爻と上爻は刑罰を執行される時である。悪い要素は早い段階(初爻の段階)で制止するべきである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)明治二十三年春、友人某來リ謂テ曰ク、今共同シ進ミテ爲スコトアラントス、其吉凶成否ヲ占ハンコトヲ請フト、乃チ筮シテ、噬嗑ノ初爻を得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)明治二十三年の春、友人がやって来て「今、共同で進めようとしている事業があるが、その吉凶成否を占ってほしい」と頼まれた。
 そこで筮したところ、噬嗑の初爻が出た。
 易斷は次のような判断であった。
 下卦の震は木で動くという性質を有しており、上卦の離は火。薪(たきぎ)を背負って火に向かっている。薪を背負って火に向かって進めば必ず災難に陥る。だから、事業を進めてはならない。この卦は下から動いてやがて止まる。四爻が邪魔するからである。上アゴが止まって、下アゴが動き、中に在る障害を噛み砕く。上アゴと下アゴの間に物が挟まっているから噬嗑と名付ける。
 今回占って初爻が出た。初爻は下アゴだから噛み砕く力があって事を為し遂げられる。だが、決して吉運とは云えない。
 初爻は悪を早い段階で抑制すべき時。私利私欲を追求して悪事を働く者には、懲らしめて刑罰を執行すべきである。悪事の初期の段階だから、足を縛る刑に処せば、それ以上の悪事は働かない。
 それゆえ、「校を履(ふ)みて趾(あし)を滅す。咎无し。悪事を働き、足枷を嵌(は)められ、身動きが取れなくなる刑罰を受けた。初期の段階(小悪)ゆえ、反省して行動を改めれば更生できる」と云う。以上から「事の正邪に関係なく、進んではならない」と易断した。
 友人は易断を聞き、「今、易断を聞いて、事業を進めてはならないことを悟った。進めようとしていた事業は、十分に練られた策ではない。共同して進めようとしていた人々に、キッパリと謝罪して中止することにする」と感謝して帰って行った。
 しばらくして、その友人がやって来て「(わたしが参加を取り止めた事業は)金貸し業であった。株券や公債証書を抵当に入れて、お金を借りたい者があれば、株券や公債証書をかなり低く見積もった上でお金を貸す事業である。このやり方でお金を貸せば、少ない資本で大きな利益が得られる。計画通りにいかない場合は、財産を隠して破産してしまおうという企てだったが、この企てが露呈して、(事業から手を引いたわたしを除いた)二人は、投獄された。易断は、実に驚くべきものである」と云って、讃歎したのである。

噬嗑 六二 |・| ・・|

六二。噬膚滅鼻。无咎。
□六二。膚(ふ)を噬(か)みて鼻を滅す。咎无し。
 刑罰を執行する官吏の六二は、鼻がめり込むほど、軟らかい肉に深く噛み付くが如く、刑罰を執行する。適切に執行するので咎められない。
象曰、噬膚滅鼻、乘剛也。
□膚(ふ)を噬(か)みて鼻を滅すとは、剛に乗ずれば也。
 刑罰を執行する。強情な罪人を信服させたのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)此爻ヲ得ルトキハ、與シ易キ者ト侮リ、却テ害ヲ受ルノ時トス、又己ガ力ヲ用ヒズシテ、利ヲ博セント欲シ、却テ資本ヲ失フノ象アリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)相手のことを「与(くみ)しやすい人物だ」と侮(あなど)り、逆に自分が損害を被る時である。
○自分の力を使わずに利益を得ようとする。それが裏目に出て財産を失うことがある。
○軟らかい肉が噛みやすいように、力を使わずに事が成就する。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)明治二十五年十月廿五日春、杉浦重剛、菊池熊太郎、三宅雄次郎、志賀重昴、陸實ノ諸學士ト、俱ニ星ケ岡茶寮ニ會セリ、其前夕政府ヨリ日本新聞ノ發行ヲ停止シタリ、陸氏其新聞紙ノ主筆タルヲ以テ、余ニ問フニ解停ノ期ヲ以テセリ、乃チ筮シテ、噬嗑ノ第二爻を得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)明治二十五年十月二十五日、杉浦重剛他諸々の学者らと会議を行った。その前日、政府が新聞の発行を停止したが、その中の一人がある新聞社の主筆だったので、発行停止の期間は何時になるのかを、わたしに質問した。そこで筮したところ、噬嗑の二爻が出た。
易斷は次のような判断であった。
 噬嗑は、頤(上アゴと下アゴ)の中に物が挟まっている。
 顎(上アゴと下アゴ)を噛み合わせて、挟まっている物を粉砕して、はじめて物事が通じる。事を為そうとすれば、その間に横たわって邪魔する者がいる。邪魔者を粉砕しなくてはならない。
 新聞が発行停止になったのは、記事の中に政府にとって都合の悪いことが書いてあったからである。上アゴと下アゴの間に邪魔者が挟まっていたので、噛み砕いたのである。しかも、噬嗑の卦は、彖辞に「獄(ごく)を用うるに利し。邪魔物は天下の害悪ゆえ、裁判や刑罰で懲らしめるがよい」と云っている。罪がある人を刑罰に処する時である。
 今回占って六二が出た。六二は下に居て罪は重くない。
 爻辞の「膚を噬みて鼻を滅す。鼻がめり込むほど、軟らかい肉に深く噛み付くが如く、刑罰を執行する」とは、飲食する者の不注意で鼻がへし折られたように、新聞記者が軽率な気持ちで政府の意に反する記事を書いて新聞に載せたので、その高慢な鼻をへし折られたようなものである。
 鼻は金銭に例えることもできる。「鼻を滅す。鼻がめり込む」とは、発行停止のために金銭を損失したことを云っている。
 下卦震は数字でいうと八、この爻変ずると兌となって兌は数字でいうと九である。したがって「今から八日あるいは九日後に発行停止期間終了の命令が下って、咎なきを得る」と易断した。
 その後、果たして八日を経過して発行停止期間は終了となった。
 やがて新聞社の主筆が杉浦重剛氏に送った文章が新聞に報じられた。その文章には「わたしの易断が的中して見事八日後に発行停止期間が終了した。まさしく奇跡である」と書いてあった。

(占例2)わたしの親友の商人がやって来て、成功しそうな事業があるが、その吉凶成否を占ってほしいと頼まれた。そこで筮したところ、噬嗑の二爻が出た。
 易斷は次のような判断であった。
 噬嗑は、頤(上アゴと下アゴ)の中に挟まっている邪魔物を噛み砕く時である。この噛み砕いて腹の中で消化するという理屈を商売に当て嵌めて考えると、物品を売り捌(さば)くのに良い時である。だが、今回占って二爻が出たので、商売を軽率に始めると、思ってもいなかった損失を被る可能性がある。「膚を噬み」とは軟らかい肉は噛みやすいことを、「鼻を滅す」とは、商業に熟練している天狗が鼻を折られることを云う。
 以上のことから、軽率な気持ちで事業に手を出してはいけない。詳細に研究してから、慎重に事業に着手すれば、失敗することはない。それゆえ「膚を噬みて鼻を滅す。咎无し。刑罰を執行する官吏の六二は、鼻がめり込むほど、軟らかい肉に深く噛み付くが如く、刑罰を執行する。適切に執行するので咎められない」と云う。
 その後、果たして易断の通りになったのである。

噬嗑 六三 |・| ・・|

六三。噬腊肉、遇毒。小吝无咎。
□六三。腊(せき)肉を噬(か)み、毒に遇う。小しく吝なれども咎无し。
 柔弱不中正の自(うぬ)惚(ぼ)れ屋の六三が官吏として刑罰を執行する。罪人は服従せず怨み憎んで反抗する。堅い干し肉を噛むように梃(てこ)摺(ず)り、毒に中るように抵抗される。官吏として恥ずかしいが、必要な刑罰を執行するので、咎を免れる。
象曰、遇毒、位不當也。
□毒に遇うとは、位当らざれば也。
 刑罰の執行に梃(てこ)摺(ず)り、毒に中るように抵抗される。柔弱不中正の自(うぬ)惚(ぼ)れ屋が過分な位に居るからである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)此爻ヲ得ルトキハ、我度量ニ過ギタル事業ヲ創メ、一擧ニ大利ヲ博セントシテ、却テ爲ニ財産ヲ失フノ時トス、又讒毒ニ遇フノ時トシ、好味ヲ貪テ毒ニ中ルノ時トス、宜シク愼ムベシ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)自分の手に余る事業を立ち上げ、短期間で大きな利益を得ようとするが、逆に財産を失う時である。
○また、誹謗中傷に苦しむ時であり、美食(グルメ)に溺れて、食中毒に中る時でもある。よくよく慎むべきである。
○陰柔不中正ゆえ、人を治めようとしても、信服されない。「腊(せき)肉を噬(か)み、毒に遇う。柔弱不中正の自(うぬ)惚(ぼ)れ屋の六三が官吏として刑罰を執行する。罪人は服従せず怨み憎んで反抗する。堅い干し肉を噛むように梃(てこ)摺(ず)り、毒に中るように抵抗される」のである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)友人某來テ、或ル刑事ノ裁判ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ噬嗑ノ第三爻を得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)友人がやって来て、ある刑事裁判を占ってほしいと頼まれたので、筮したところ噬嗑の三爻が出た。
 易斷は次のような判断であった。
 噬嗑は、頤(上アゴと下アゴ)の中に物が挟まっており、これを噛み砕かなければ通じない時である。人間社会に例えれば、自分と相手の間を邪魔する人がいる。その人を力ずくで排除すれば、自分と相手の関係が通じる。それゆえ、邪魔される人と邪魔する人が争って訴訟となり、その是非を断ずるという意味に敷衍できる。
 邪魔する人を除去するには訴訟を起こすしかない。だから、彖辞に「噬嗑は亨る。獄を用うるに利し」と云う。この爻においては、犯罪者の凶暴性の程度を肉の硬軟に例え、裁判官の巧拙を位の上下で判断している。
 今回、占って六三が出た。
「腊(せき)肉。堅い干し肉」とは骨付き干し肉。大悪の犯罪に小善のメッキを施して誤魔化している。こういう犯罪を犯した者を不中正の六三が裁くのは難しいことを、「腊(せき)肉を噬み、毒に遇う。柔弱不中正の自(うぬ)惚(ぼ)れ屋の六三が官吏として刑罰を執行する。罪人は服従せず怨み憎んで反抗する。堅い干し肉を噛むように梃(てこ)摺(ず)り、毒に中るように抵抗される」と例えている。六三の裁判官は力不足だが、天下国家の一員として、法律を執行するのだから、どんなに凶悪な犯罪者でも、好き勝手にできるはずがない。遂には法に服することになる。
 だが、六三は不中正だから、犯罪者はなかなか服さない。それゆえ、報を執行する裁判官としては恥ずかしい。だから「小しく吝。官吏として恥ずかしい」と云う。だが、何度も問い詰めて遂に刑罰を執行する。それゆえ「咎无し。必要な刑罰を執行するので、咎を免(まぬが)れる」と云う。以上のことから、実に困難な裁判になると易断した。
 その後、果たして、易断の通りとなった。
 友人は「刑罰は国家にとって大切なことである。懼れ多くも天皇陛下の名においてこれを執行するのである。刑罰を執行するに中っては、人知の及ばない事例は、易断を用いるべきである。あぁ、易断は何と偉大であろうか」と、讃歎したのである。
噬嗑 九四 |・| |・・

九四。噬乾胏、得金矢。利艱貞。吉。
□九四。乾(かん)胏(し)を噬み、金(きん)矢(し)を得(う)。艱貞に利し。吉。
 九四は優れた才德と柔和な性格を兼ね備え、刑罰を執行する道を得た大臣。噬嗑の時も半ばを過ぎ、凶悪犯の刑罰を執行する役割を担う。
 噛み切れない骨付き乾し肉のように剛強な、凶悪犯を取り調べたところ、金の矢尻を噛み当てるように、信服させた。
 職責の困難さを自覚して、道を守るがよい。大臣の役割を全うする。
象曰、利艱貞、吉、未光也。
□艱貞に利し、吉とは、未だ光(おお)いならざる也。
 職責の困難さを自覚して道を守れば、大臣の役割を全うする。
 不中正ゆえ、その德は未だ広大と言うには及ばない。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)此爻ヲ得ルトキハ、己ヲ以テ己ヲ妨ゲ、身ヲ以テ身ヲ助ケ、一身ノ通塞唯一心ノ艱ニ在ルモノトス、眞正ノ男子、宜ク當ニ剛毅ノ志ヲ立ツベシ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)自分の行いは、全て自分が決める時。至誠の心を有する男子ならば、確乎不抜の志を打ち立てる時。「思い立つ志さえ弛まなければ、龍をも倒すことができる」という歌がある。見習うべきである。
○上下よく噛み合う時。よく勉強すれば、功業必ず成し遂げられる。
○故障していた物事が解消する時。 ○スパッと裁断する時である。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)相識某商業上一大紛紜ヲ生ジ、其結果如何ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ、噬嗑ノ第四爻を得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)よく知っている人物が商業に関する大紛争に巻き込まれたので、その結果を占って筮したところ噬嗑の四爻が出た。
 易斷は次のような判断であった。
 噬嗑は自分と相手の間を隔絶して、大きな利益を得ようとする者がいる。力(ちから)業(わざ)でその邪魔者を除去すべき時。今回、第四爻が出た。よく勉強してその邪魔者を除去する時である。
「乾(かん)胏(し)。噛み切れない骨付き乾し肉」とは、大きな獣の身体を乾したもの、骨と肉の固まり。すなわち、叶うことが出来ない程大きな欲望を企てる人物である。
 幸い、剛健で実直な側近や代官がその人物を訴えて罪悪を暴き、遂には勝利して紛争を解決する。その側近や代官は剛健な性質で一直線に志を貫くから「金(きん)矢(し)。金の矢尻」と云う。心挫けることなく紛争に立ち向かう。忍耐力が強いので「艱貞に利し。職責の困難さを自覚して、道を守るがよい。大臣の役割を全うする」と云う。
 以上のようだから、深く悩むことは無いと易断した。
 その後、果たして、易断の通り、剛直な人物が現われ、紛争を解決して勝利した。紛争に巻き込まれた知人は初めは消沈していたが、この易断に大いに力を得て、紛争の解決を剛直な人物に任せた。

噬嗑 六五 |・| ・・|

六五。噬乾肉、得黄金。貞厲无咎。
□六五。乾(かん)肉(にく)を噬み、黄金を得(う)。貞にして危(あやぶ)む。咎无し。
 柔順中庸の天子六五は、最高司令官として極悪非道人の刑罰に立ち会う。刑罰の執行は乾(ほ)し肉を噛み切るように難しいことではないが、相手が極悪非道人ゆえ九四の大臣の補佐を得る(※黄金を得)。正しい道を守り、自ら危ぶむ気持ちで対処すれば、咎を免れる。
※黄金を得:六五は中庸を得ているから五行(木・火・土・金・水)の真ん中にある土、土の色を「黄」と言い。九四は剛健であるから、これを「金」と言う。それゆえ「黄金を得」とは六五が九四の補佐を得るという意味になる。
象曰、貞厲无咎、得當也。
□貞にして危(あやぶ)む。咎无しとは、当を得ればなり。
 道を守り、危ぶむ気持ちで対処すれば、咎を免れる。
 柔順中庸の德で九四の補佐を得るからである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)我本ト明智、加フルニ剛毅ニシテ險難ヲ避ケザル人ノ助ヲ得、奏ス可カラザルノ事功ヲ容易ニ奏スルノ時トス、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)生まれつき明智を具えている。険難に遭遇すれば、必ず助けてくれる人が現われる。困難な事業でも容易に成し遂げられる。
○柔順な性格で尊位に居て刑罰を執行する。信服しない人はいない。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)明治二十二年ノ米作ヲ占ヒ、噬嗑ノ第五爻を得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)明治二十二年の米作を占ったところ噬嗑の五爻が出た。
易斷は次のような判断であった。
 雜卦伝に「噬嗑は食らうなり」とある。彖伝には「頤(い)中(ちゆう)に物有るを噬嗑と曰う。噬嗑して亨る。上アゴと下アゴの間に邪魔物が有るので噬嗑と名付ける。聡明な智慧(離)と活発な威権(震)で邪魔者を噛み砕いて除き去り、上下和合亨通する」とある。
 この卦は、食料に関係ある。下卦雷は地下から出てくるエネルギー。雷のエネルギーが地上に出てくる季節になると草木は萌芽する。雷を草木に例える所以である。下卦雷は稲でもある。上卦には火の太陽のエネルギーが在る。
 占って五爻が出たので豊作である。
 だが、三四五爻は坎水ゆえ、五爻の前の段階、すなわち四爻の段階、季節でいえば七~八月には洪水による被害もある。
 爻辞に「乾(かん)肉(にく)を噬み。柔順中庸の天子六五は、最高司令官として極悪非道人の刑罰に立ち会う。刑罰の執行は乾し肉を噛み切るように難しいことではない」とあるのは、易の開祖伏羲の時代は、獣の肉を乾かして蓄えたのである。現代は田畑を耕して食を得ている時代なので、米や野菜を蓄えておくのは、昔、獣の肉を乾かして蓄えたのと同じである。
 以上のことから「明治二十二年は豊作となり、しかも、米価は下落しない。だから、農家は十分な利益を得る」と易断した。このことを「黄金を得」と云う。
 果たして、七~八月には雨量が多く、二~三の県の稲作は大変な被害を受けたが、全国的には豊作で米価も高止まりとなった。

噬嗑 上九 |・| ・・|

上九。何校滅耳。凶。
□上九。校を何(にな)いて耳を滅す。凶。
 極悪非道の罪で首(くび)枷(かせ)を嵌(は)められ、耳が潰(つぶ)れるほどの刑罰を受ける。言うまでもなく凶。
象曰、何校滅耳、聰不明也。
□校を何(にな)いて耳を滅すとは、聴くこと明らかならざる也。
 極悪非道の罪で、耳が潰(つぶ)れるほどの刑罰を受ける。忠告を聴き容れる聡明さの欠片(かけら)もなく、性(しよう)懲(こ)りもなく悪(あつ)行(こう)を積み重ねて来たのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)一歩ヲ過チテ、千里ノ差ヲ生ズルノ時トス、一念ノ不善ヲ改メズシテ、覺ヘズ大惡ニ陥ラントス、宜シク人ノ諫ヲ聴キ、方向ヲ過ツナク、改心シテ善ニ遷ランコトヲ要ス、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)最初は僅かな誤差だが、やがて大きな誤差となる。小さな悪を見逃して改めようとしないので、いつの間にか大きな悪に陥る。人の意見を聞いて、過ちに気付き、改心して軌道修正すべきである。
○相手と戦って共に斃れる(死んでしまう)時。
○刑罰を受ける時。凶悪犯罪を犯して重罪人となり、大きな罰を執行される。凶運を招き寄せる時である。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)東京麹町酒屋主人某家業上苦慮ノコト多ク、(中略)余ニ就キ易ヲ學ビタル者ナルヲ以テ、酒屋ノ手代ヨリ占考ヲ依頼セシニ、孝伯筮シテ、噬嗑ノ上爻を得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)東京麹町にある酒屋の主人は、家業で苦労が多く、最近では、気力を失い仕事も手に着かない。ある日主人はふらりと家を出たまま戻ってこない。心当たりを訪ねても何処にも見つからない。
 わたしの門人である盲人の鈴木孝伯氏が、酒屋の番頭から頼まれて、主人が何処に行ったかを占ったところ噬嗑の上爻が出た。
 門人の孝伯氏の易斷は次のようであった。
 噬嗑の下卦雷は大きな音を轟かせて動いている。上卦離は火で、南を指している。
 麹町の南で火と音を轟かせて動いているのは蒸気機関車である。
 上爻の爻辞に「校を何(にな)いて耳を滅す。凶。極悪非道の罪で首枷を嵌められ、耳が潰れるほどの刑罰を受ける。言うまでもなく凶」とある。そこで、門人は「主人は蒸気機関車に轢かれて耳が千切れて死亡した」と易断したのである。
 驚いた酒屋の人々は、早く線路の近くを探すべきだと言った。番頭はこの易断を信じなかった。だが、夜十時に愛宕警察署から直ぐ来いと連絡があった。酒屋の主人が鉄道の線路上に横たわって死んでいるとのことである。首と耳が引き千切られた遺体を引き取りに来るように命ぜられた。誰もが門人の易断に敬服した。
 この話を門人から聞き、その易断がわたしの教えそのものだったので、自分のことのように嬉しくて、紹介した。