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抜粋「現代語訳(超意訳) 呑象高島嘉右衛門著 増補 高島易斷 上下巻 占例篇」 雷風恒

2022年7月16日

三二 雷風恒 ・・| ||・

恆、亨。无咎。利貞。利有攸往。
□恒(こう)は亨(とお)る。咎无し。貞しきに利し。往(ゆ)く攸(ところ)有るに利し。
 恒は夫婦の道。古今に亘(わた)り易(か)わらない変通の道。
 すらっと通る。咎められない。不易の恒(変化の法則)を守るがよい。進み往くには変易の恒(変化)で対処するがよい。
彖曰、恆久也。剛上而柔下。雷風相與、巽而動、剛柔皆應恆。恆亨无咎、利貞、久於其道也。天地之道、恆久而不已也。利有攸往、終則有始也。日月得天而能久照、四時變化而能久成、聖人久於其道而天下化成。觀其所恆而天地萬物之情可見矣。
□恒は久しきなり。剛上(のぼ)りて柔下(くだ)り雷風相(あい)與(おこ)し巽にして動き、剛柔皆応ずるは恒なり。恒は亨る、咎无なし、貞しきに利しとは、其の道に久しければなり。天地の道は恒(こう)久(きゆう)にして已(や)まざるなり。往く攸(ところ)有るに利しとは、終れば則ち始まる有るなり。日(じつ)月(げつ)は天を得て久しく照らし四(しい)時(じ)は変化して能(よ)く久しく成(な)し、聖人は其の道に久しくして天下化成す。其の恒にする所を観て、天地万物の情見る可(べ)し。
 恒は常に久しい変通の道を説く。剛震(長男)が上、柔巽(長女)が下、雷風(上下)力を合わせて、内は巽順(巽の卦德)、外は大いに動く(震の卦德)。六爻全て交わっている。恒は夫婦の道。古今に亘り易(か)わらない天地の定めゆえ、すらっと通り、咎められない。変通の道(不易・変易)を守るがよい。天地の定めを久しく守るのである。天地の道は幾久しく常なきを常とし、窮まることなく止まることもない。進み往くには変易の恒で対処するがよい。一つの時が終われば次の時が始まる。
 日月が天に在って大地を普く幾久しく照らし、季節は変化して万物を化成する。聖人は天地の道に則り万民を教化するゆえ國を治めることができる。これら(日月と季節の変化、聖人の治國)を観察すれば、天地万物の情理(真理)を知ることができる。
象曰、雷風恆。君子以立不易方。
□雷風は恒なり。君子以て立ちて、方を易(か)えず。
 雷風相(あい)待(ま)って、常に久しい変通の道が成就するのが恒の形。
 君子は、確乎不抜の志を実現すべく、あらゆる変化(万変)に適切に対処して、常に久しい変通の道を失わないのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)各々其業トスル所ノ常務ヲ修メテ怠ラザルコト、天運ノ自彊息ザルガ如クナルトキハ、家榮エ、盛運ノ幸ヲ得ベシ、或ハ勉メ、或ハ怠リ、其德ヲ恒ニセザレバ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)各(おの)々(おの)、その本業をよく務め、よく修めて、怠らないこと「自強して息(やすま)ない」ようであれば、家は栄えて盛運となり幸福を得る。だが、務めを怠り、德に背けば、物事は必ず滞って過ちを犯す。それゆえ、至誠を尽くして德を修めることを要する。
 今、至誠を尽くして徳を修めていれば、人から信頼され吉運を招き寄せ、貴人としての地位を得る。本業をよく務めて、脇目も振らないようにすれば、思わぬ吉運を招き寄せる。
○自分は相手に背いて従わない。相手は自分を拒んで逃げ去って行く。
○性命を連綿とつないでいく時である。
○毎日本業を善く務めて、新しい事には目もくれない。伝統を大切にして先人の道に順えば、幾久しく繁栄する。
○親しい人に従って、事業を企画すれば吉。願望は叶う、
○勤勉で怠らない時である。

恒 初六 ・・| ||・

初六。浚恆。貞凶。无攸利。
□初六。恒を浚(ふか)くす。貞しけれども凶。利しき攸(ところ)无し。
 最下に居て正応九四を深く求める。今は恒の道の始め、深く求める時ではない。正しい道に適(かな)っていても失敗する。宜しいことは何一つない。
象曰、恆浚之凶、始求深也。
□恒を浚(ふか)くするの凶は、始めに求むること深ければ也。
 正しい道に適っていても失敗する。時の始めの段階で恒の道を深く求めるからである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)己ガ才力ノ足ラザルヲ顧ミズ、目上ノ人ニ聊カ困アルヲ幸トシ、不相當ナル望ヲ屬シテ、之ヲ其人ニ依頼シ、其成ヲ待ツ、然ルニ其人他事ニ忙シクシテ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)才能も力量もないのに、目上の人に不相応な望みを依頼して、それが叶うと信じて返事を待っている。だが、目上の人は忙しくて、望みは叶わない。目上の人に迷惑をかけ、自分は失望する。
 自分の力を知らず、苦労もせずに、楽して願いを叶えようとする。欲に目が眩んでいる。それゆえ「貞凶」である。
 ろくに井戸を掘っていないのに美味しい水を得ようと欲する。結果を急ぐ余りに、地に足が付かず何事も実現しない。
 結果を急ぐ人は、必ず途中で諦める。
 卑しい地位に居て、言論は立派である。時事に疎(うと)くて、利益が得られず、咎められる。何事も、慎むべきである。
○計画している事業に障害がある。実現は難しい。
○実情を知らないのに、深く入り込もうとする。
○付き合いが浅いのに、深い所を求めて、猪突猛進する恐れあり。
○深遠な事に生半可な知識で関わるべきではない。順序立てて修養し、己と知識を磨くべし。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)明治十五年七月、朝鮮變起リ、花房公使以下、脱シテ長崎ニ歸ル、同八月、朝廷陸海軍ヲ發シ更ニ花房公使ニ命ジ朝鮮ニ至リ、問罪談判ヲ爲サシム、余之ヲ筮スルニ、恒ノ初爻ヲ得タリ、
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)明治十五年七月、朝鮮に異変が起こり、花房公使など外交官は朝鮮を脱出して長崎に帰国した。同年八月、政府は陸海軍を出動させて花房公使は再び朝鮮に渡った。異変について談判するためである。わたしは談判の行方を占って筮したところ、恒の初爻を得た。
 易斷は次のような判断であった。
 彖伝に「恒は久しきなり。剛上(のぼ)りて柔下(くだ)り雷風相(あい)與(おこ)し巽にして動き、剛柔皆応ずるは恒なり。恒は亨る、咎无なし、貞しきに利しとは、其の道に久しければなり。天地の道は恒(こう)久(きゆう)にして已(や)まざるなり。往く攸(ところ)有るに利しとは、終れば則ち始まる有るなり。日(じつ)月(げつ)は天を得て久しく照らし四(しい)時(じ)は変化して能(よ)く久しく成(な)し、聖人は其の道に久しくして天下化成す。其の恒にする所を観て、天地万物の情見る可(べ)し。恒は常に久しい変通の道を説く。剛震(長男)が上、柔巽(長女)が下、雷風(上下)力を合わせて、内は巽順(巽の卦德)、外は大いに動く(震の卦德)。六爻全て交わっている。恒は夫婦の道。古今に亘り易(か)わらない天地の定めゆえ、すらっと通り、咎められない。変通の道(不易・変易)を守るがよい。天地の定めを久しく守るのである。天地の道は幾久しく常なきを常とし、窮まることなく止まることもない。進み往くには変易の恒で対処するがよい。一つの時が終われば次の時が始まる。日月が天に在って大地を普く幾久しく照らし、季節は変化して万物を化成する。聖人は天地の道に則り万民を教化するゆえ國を治めることができる。これら(日月と季節の変化、聖人の治國)を観察すれば、天地万物の情理(真理)を知ることができる。」とある。
 以上のことから、朝鮮は漸次に文明開化に向かって進んで行く。