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期間限定「現代語訳(超意訳) 呑象高島嘉右衛門著 増補 高島易斷 上下巻 占例篇」 雷風恒

三二 雷風恒 ・・| ||・

恆、亨。无咎。利貞。利有攸往。
□恒(こう)は亨(とお)る。咎无し。貞しきに利し。往(ゆ)く攸(ところ)有るに利し。
 恒は夫婦の道。古今に亘(わた)り易(か)わらない変通の道。
 すらっと通る。咎められない。不易の恒(変化の法則)を守るがよい。進み往くには変易の恒(変化)で対処するがよい。
彖曰、恆久也。剛上而柔下。雷風相與、巽而動、剛柔皆應恆。恆亨无咎、利貞、久於其道也。天地之道、恆久而不已也。利有攸往、終則有始也。日月得天而能久照、四時變化而能久成、聖人久於其道而天下化成。觀其所恆而天地萬物之情可見矣。
□恒は久しきなり。剛上(のぼ)りて柔下(くだ)り雷風相(あい)與(おこ)し巽にして動き、剛柔皆応ずるは恒なり。恒は亨る、咎无なし、貞しきに利しとは、其の道に久しければなり。天地の道は恒(こう)久(きゆう)にして已(や)まざるなり。往く攸(ところ)有るに利しとは、終れば則ち始まる有るなり。日(じつ)月(げつ)は天を得て久しく照らし四(しい)時(じ)は変化して能(よ)く久しく成(な)し、聖人は其の道に久しくして天下化成す。其の恒にする所を観て、天地万物の情見る可(べ)し。
 恒は常に久しい変通の道を説く。剛震(長男)が上、柔巽(長女)が下、雷風(上下)力を合わせて、内は巽順(巽の卦德)、外は大いに動く(震の卦德)。六爻全て交わっている。恒は夫婦の道。古今に亘り易(か)わらない天地の定めゆえ、すらっと通り、咎められない。変通の道(不易・変易)を守るがよい。天地の定めを久しく守るのである。天地の道は幾久しく常なきを常とし、窮まることなく止まることもない。進み往くには変易の恒で対処するがよい。一つの時が終われば次の時が始まる。
 日月が天に在って大地を普く幾久しく照らし、季節は変化して万物を化成する。聖人は天地の道に則り万民を教化するゆえ國を治めることができる。これら(日月と季節の変化、聖人の治國)を観察すれば、天地万物の情理(真理)を知ることができる。
象曰、雷風恆。君子以立不易方。
□雷風は恒なり。君子以て立ちて、方を易(か)えず。
 雷風相(あい)待(ま)って、常に久しい変通の道が成就するのが恒の形。
 君子は、確乎不抜の志を実現すべく、あらゆる変化(万変)に適切に対処して、常に久しい変通の道を失わないのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)各々其業トスル所ノ常務ヲ修メテ怠ラザルコト、天運ノ自彊息ザルガ如クナルトキハ、家榮エ、盛運ノ幸ヲ得ベシ、或ハ勉メ、或ハ怠リ、其德ヲ恒ニセザレバ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)各(おの)々(おの)、その本業をよく務め、よく修めて、怠らないこと「自強して息(やすま)ない」ようであれば、家は栄えて盛運となり幸福を得る。だが、務めを怠り、德に背けば、物事は必ず滞って過ちを犯す。それゆえ、至誠を尽くして德を修めることを要する。
 今、至誠を尽くして徳を修めていれば、人から信頼され吉運を招き寄せ、貴人としての地位を得る。本業をよく務めて、脇目も振らないようにすれば、思わぬ吉運を招き寄せる。
○自分は相手に背いて従わない。相手は自分を拒んで逃げ去って行く。
○性命を連綿とつないでいく時である。
○毎日本業を善く務めて、新しい事には目もくれない。伝統を大切にして先人の道に順えば、幾久しく繁栄する。
○親しい人に従って、事業を企画すれば吉。願望は叶う、
○勤勉で怠らない時である。

恒 初六 ・・| ||・

初六。浚恆。貞凶。无攸利。
□初六。恒を浚(ふか)くす。貞しけれども凶。利しき攸(ところ)无し。
 最下に居て正応九四を深く求める。今は恒の道の始め、深く求める時ではない。正しい道に適(かな)っていても失敗する。宜しいことは何一つない。
象曰、恆浚之凶、始求深也。
□恒を浚(ふか)くするの凶は、始めに求むること深ければ也。
 正しい道に適っていても失敗する。時の始めの段階で恒の道を深く求めるからである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)己ガ才力ノ足ラザルヲ顧ミズ、目上ノ人ニ聊カ困アルヲ幸トシ、不相當ナル望ヲ屬シテ、之ヲ其人ニ依頼シ、其成ヲ待ツ、然ルニ其人他事ニ忙シクシテ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)才能も力量もないのに、目上の人に不相応な望みを依頼して、それが叶うと信じて返事を待っている。だが、目上の人は忙しくて、望みは叶わない。目上の人に迷惑をかけ、自分は失望する。
 自分の力を知らず、苦労もせずに、楽して願いを叶えようとする。欲に目が眩んでいる。それゆえ「貞凶」である。
 ろくに井戸を掘っていないのに美味しい水を得ようと欲する。結果を急ぐ余りに、地に足が付かず何事も実現しない。
 結果を急ぐ人は、必ず途中で諦める。
 卑しい地位に居て、言論は立派である。時事に疎(うと)くて、利益が得られず、咎められる。何事も、慎むべきである。
○計画している事業に障害がある。実現は難しい。
○実情を知らないのに、深く入り込もうとする。
○付き合いが浅いのに、深い所を求めて、猪突猛進する恐れあり。
○深遠な事に生半可な知識で関わるべきではない。順序立てて修養し、己と知識を磨くべし。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)明治十五年七月、朝鮮變起リ、花房公使以下、脱シテ長崎ニ歸ル、同八月、朝廷陸海軍ヲ發シ更ニ花房公使ニ命ジ朝鮮ニ至リ、問罪談判ヲ爲サシム、余之ヲ筮スルニ、恒ノ初爻ヲ得タリ、
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)明治十五年七月、朝鮮に異変が起こり、花房公使など外交官は朝鮮を脱出して長崎に帰国した。同年八月、政府は陸海軍を出動させて花房公使は再び朝鮮に渡った。異変について談判するためである。わたしは談判の行方を占って筮したところ、恒の初爻を得た。
 易斷は次のような判断であった。
 彖伝に「恒は久しきなり。剛上(のぼ)りて柔下(くだ)り雷風相(あい)與(おこ)し巽にして動き、剛柔皆応ずるは恒なり。恒は亨る、咎无なし、貞しきに利しとは、其の道に久しければなり。天地の道は恒(こう)久(きゆう)にして已(や)まざるなり。往く攸(ところ)有るに利しとは、終れば則ち始まる有るなり。日(じつ)月(げつ)は天を得て久しく照らし四(しい)時(じ)は変化して能(よ)く久しく成(な)し、聖人は其の道に久しくして天下化成す。其の恒にする所を観て、天地万物の情見る可(べ)し。恒は常に久しい変通の道を説く。剛震(長男)が上、柔巽(長女)が下、雷風(上下)力を合わせて、内は巽順(巽の卦德)、外は大いに動く(震の卦德)。六爻全て交わっている。恒は夫婦の道。古今に亘り易(か)わらない天地の定めゆえ、すらっと通り、咎められない。変通の道(不易・変易)を守るがよい。天地の定めを久しく守るのである。天地の道は幾久しく常なきを常とし、窮まることなく止まることもない。進み往くには変易の恒で対処するがよい。一つの時が終われば次の時が始まる。日月が天に在って大地を普く幾久しく照らし、季節は変化して万物を化成する。聖人は天地の道に則り万民を教化するゆえ國を治めることができる。これら(日月と季節の変化、聖人の治國)を観察すれば、天地万物の情理(真理)を知ることができる。」とある。
 以上のことから、朝鮮は漸次に文明開化に向かって進んで行く。
 日本政府が朝鮮に対して、武力を用いず、近代化の必要性を教え導く至誠を貫いていることを、全ての日本人は支持している。朝鮮は時々異変を起こして、礼節に欠けるところがあるが、日本政府はよく忍耐して武力を用いていない。
 この数年以上のように対応してきたのだから、今回の異変に対して武力を用いることはないと思われる。だが万が一、理不尽なやり方に対して怒りを抑える事ができず、談判を諦めて、武力を用いれば、とんでもないことになる。
 爻辞に「恒を浚(ふか)くす。貞しけれども凶。利しき攸(ところ)无し。最下に居て正応九四を深く求める。今は恒の道の始め、深く求める時ではない。正しい道に適(かな)っていても失敗する。宜しいことは何一つない。」とあり、小象伝に「恒を浚(ふか)くするの凶は、始めに求むること深ければ也。正しい道に適っていても失敗する。時の始めの段階で恒の道を深く求めるからである。」とある。つまり、朝鮮国に「正論」をぶつけても、朝鮮はそれに応じないので、談判は不調に終わる。そこで、今回は「正論」を多少曲げても、朝鮮国が応じられる内容で談判すべきである。
 この爻変ずれば、雷天大壮となる。大壮は軍備で相手を圧倒する時である。わが軍の力は六対四で相手に勝っている。六のうち四を現地に止めて、残る二で朝鮮国で文明開化を進める勢力を支援すべし。それでもなお反乱軍を制圧できなければ、わが現地軍が背後を攻めて、文明開化を進める勢力に朝鮮国を統治させるべきである。
 以上の易占は、天が示したシナリオである。
 そこで、政府の要人に易占の内容を伝えたところ、その要人は朝鮮のことは何とかなっても、支那との関係は実に難しくなる。日本と支那の関係を占ってほしいと頼まれたので、筮したところ艮爲山を得た。
 艮爲山は二つの山が相対する時である。このような時は見ているだけで、近付いてはならない。お互いに応じ合う事はない。近付かず、応じ合わない時だから、戦争にはならないと認識すべきである。
 艮爲山の彖伝には「艮は止まる也。時止まれば則ち止まり、時行けば則ち行き、動静、其(その)時を失わず。其道光明也。其止に艮まるは、其所に止まる也。上下敵応し、相(あい)与(くみ)せざる也。是を以て其身を獲ず、其庭に行き、其人を見ず。咎无き也。艮は止まる時である。止まるべき時は止まり、行くべき時は行く。止まる時も行く時も時中で対処することが肝要である。時中で対処する道は光り輝き明らかである。止まるべき時に止まるとは、止まるべき正しい所を知ることである。艮は全爻不応ゆえ相手を意識しない。それゆえ自我に囚われない。自我に囚われないから、庭に行っても人を見ない。俗世間に身を置いても煩悩妄想や欲望を抱かない。咎という概念もない。」とある。艮爲山の卦辞・彖辞にある「其の背に艮(とど)まりて」とは、朝鮮海に於いて必ず支那の軍艦と背中合わせになることを言っている。彖伝にある「上下敵応し、相(あい)与(くみ)せざる也」とは、日本と支那は相対することになるが、何事も起こらないことを言っている。同じく彖伝に「其庭に行き、其人を見ず」とあるのは、支那人を観ても畑に南瓜があるように見て、軍人を見たとは認識しないので、何の問題も起こらないと云うことである。
 その後、朝鮮(及び支那)との関係は、易占の通りとなった。

恒 九二 ・・| ||・

九二。悔亡。
□九二。悔い亡(ほろ)ぶ。
 剛中の才德で柔中の天子を補佐するので、後悔することを免れる。
象曰、九二悔亡、能久中也。
□九二の悔い亡ぶるは、能(よ)く中(ちゆう)に久しければ也。
 後悔することを免れる。剛中の才德で幾久しく時に中るのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)世運ニ因リテ、大任ノ職ニ居ル、故ニ心ノ及バン限リハ、善ヲ盡スベシ、善久シキニ非ザレバ顯レズ、事勞ヲ積ムニ非ザレバ成ル能ハズ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)時に重大な任務を遂行する職責を担う。命をかけて職務を全うすべし。結果を出すためには、小善を積み上げることが必要である。事を成し遂げるためには、苦労に苦労を重ねることが必要である。
○本業を守るために、よく勉強すべき時である。本業以外の事に心を奪われてはならない。
○功業を成し遂げ、志を実現する時。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)某會社ノ社長來リテ、社運ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ恒ノ第二爻ヲ得タリ、
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)ある会社の社長がやって来て、社運を占ってほしいと頼まれたので、筮したところ、恒の二爻を得た。
 易斷は次のような判断であった。
 恒は雷が進み、風は入る性質。雷風のエネルギー(氣)が合致し万物を発育する。天地恒久の道である。事業に当て嵌めると、経済状況の盛衰や物価の変動の中で、忍耐して本業を維持継続すれば、やがては希望が実現する。
 今回占って二爻を得た。陽爻陰位で才德強いが、志が脆弱なので迷いが生じ易い。だが中庸の德で、迷いを断ち切る。よく忍耐して事業を継続すれば、やがては盛大な成果が得られる。だから「悔い亡ぶるは、能(よ)く中(ちゆう)に久しければ也。後悔することを免れる。剛中の才德で幾久しく時に中るのである」と云うのである。
 以上の易占を聞いて社長は「創業以来、ずっと利益が少なく、計画を達成したことがなかったので、最近は半ば諦めていた。だが今、易占を聞いて、まだまだ努力が足りないと痛感した。これからは、もっと真剣に経営に取り組んでいきたい」と話していた。
 その後、その社長は、よく努力して、忍耐を重ね、事業を大きく成長させたのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例二)明治二十六年二月、北海道炭礦鐵道會社支配人、植村澄三郎氏來リテ曰ク、余ハ從來該社ニ勤務スト雖モ、事務多端ニシテ、余ガ微力、或ハ能ク業務ヲ盡ス能ハザランンカト、日夜憂慮シテ措カズ、寧ロ翻然職ヲ官途ニ奉ジ、此虞ヲ去ラント欲ス、其可否如何、幸ニ一筮ヲ請フト、因テ筮シテ恒ノ第二爻ヲ得タリ、
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例2)明治二十六年二月、北海道炭鉱鉄道会社の支配人植村氏がやって来て、「長年この会社に勤めているが、微力のわたしがこれ以上勤務を続けるべきか否か悩んでいる。転職すべきかどうかを、占ってほしい」と頼まれた。そこで、筮したところ、恒の二爻を得た。
 易斷は次のような判断であった。
 恒は幾久しく飽きることなくコツコツと継続する時。至誠の心がなければできることではない。二爻は陽爻陰位で進退を果敢に決めることができない。あれこれ迷って後悔する時である。だが、中庸の德を具えているので、グズグズ迷ったりせずに本業に力を入れれば、後悔することはなくなる。
 だから、貴方は、至誠の心で本業に力を注ぎ、これまで以上に業務に精通すれば、利益を得るだけでなく、社内外から信頼が寄せられ福運を招いて出世すること間違いない。「今の会社で一生懸命励みなさい」と伝えた。
 その後、植村氏は、一心不乱に仕事に励んで、数ヶ月後には重要な任務を沢山任される立場に出世した。

恒 九三 ・・| ||・

九三。不恆其德。或承之羞。貞吝。
□九三。其の德を恒(つね)にせず。或いは之に羞(はじ)を承(すす)む。貞しけれども吝(りん)。
 巽(利益を貪る、進退果たさず)の極点で、利益を求めて右往左往。恒の德を守ることができない。恥ずかしい。正しくあろうとしても直ぐに挫折する。恥ずかしい。
象曰、不恆其德、无所容也。
□其の德を恒にせず、容(い)るる所无き也。
 恒の德を守れない。誰にも相手にされず、天からも見放される。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)農工商共ニ固ク本業ヲ守ル可シ、慾ニ迷ヒ、習ハザルノ事業ヲ爲シ、失敗ヲ取ル可カラズ、又官吏ニ在リテハ、俸給ノ多キヲ貪リ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)どんな仕事であっても本業を固守すべきである。私利私欲で慣れない事業に手を出して失敗してはならない。役人は高給を目指して、経験のない職務に転任することを望んではならない。高給が実現しても、終には居場所がなくなり失敗に終わる。慎むべきである。
○自分を過信して妄進すれば、時を失して過ちを犯す。また人と言い争って絶交に至る。慎んで、これらの事態を防止すべきである。
○君子の働きかけを拒めば悪德を犯すことになる。自戒すべきである。
○色々な願望が錯綜して物事が滞る時である。
○万事混乱して散財することが多い時である。
○(女性の)帯を解くことがある。淫行に走って、道徳を踏み外す事がある。慎むべきである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)一日某貴顕、弊舎ヲ訪ヒ來リ、予ニ謂テ曰ク、遇般同僚某負債ニ苦ミ、至急ニ金ヲ要スルガ爲ニ、予ニ一時ノ融通ヲ乞ハル、(中略)彼レ未ダ返濟ノ義務ヲ履行セズ、敢テ乞フ、予ガ得失如何を占筮セヨト、乃チ筮シテ恒ノ第三爻ヲ得タリ、
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)ある日、貴人がやって来て、「同僚の某が負債に苦しみ、至急お金が必要になったので融通してほしい、と頼まれた。上司からも某に融通してほしい、と頼まれたので、上司を信用して、朋友から資金を調達し、某に貸し付けた。その後、約束の期日を過ぎても、某は返済してくれない。お金が返ってくるかどうかを占ってほしい」と頼まれた。そこで、 筮したところ、恒の三爻を得た。
 易斷は次のような判断であった。
 恒は幾久しく変わらない時。貸したお金はしばらく返ってこないと認識すべきである。爻辞に「其の德を恒(つね)にせず。或いは之に羞(はじ)を承(すす)む。貞しけれども吝(りん)。巽(利益を貪る、進退果たさず)の極点で、利益を求めて右往左往。恒の德を守ることができない。恥ずかしい。正しくあろうとしても直ぐに挫折する。恥ずかしい」とある。
 貴方は、同僚と上司の言葉を信じて、親切心で同僚を救ったのだが、同僚は貴方の親切心を何とも思わず恩義を忘れている。だから「其の德を恒にせず」と云う。「或いは之に羞(はじ)を承(すす)む」。もし貴方が返済を要求すれば、彼は逆ギレして貴方に冷たい言葉を放つ。どうして窮迫した者を追い詰めるのか、と貴方を責める。「貞しけれども吝」。貴方が同僚を信じ、上司に義理立てしたことが、貴方を不幸に追い込む。
 その後、貴人に逢った時、「易占は的中しました」と云っていた。

恒 九四 ・・| ||・

九四。田无禽。
□九四。田(かり)に禽(えもの)无(な)し。
 初六と応ずるが、不中正同士ゆえ善い結果は得られない。
 九四は震(動く)の主爻(狩人)ゆえ恒を守らず上に向かい、初六は巽(伏せて入る)の主爻(禽獣)ゆえ恆を守らず下に向かう。禽獣不在の土地で狩りをするようなもの。
象曰、久非其位、安得禽也。
□其の位に非(あら)ざるに久しくす、安(いずく)んぞ禽(えもの)を得ん也(や)。
 居るべきでない位(不正)に久しく止まる。どうして禽獣を獲られようか。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)禽ハ巽ノ深キ所ニ居ルヲ知ラズシテ、己レ震ノ高キニ居リ、尚高キヲ望ムヲ謂フ、事ノ齟齬甚シト謂フベシ、己ガ見込ム所大ニ差ヒ、勞シテ功ナキノ時トス、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)下卦巽の上に乗っていることを自覚していない。自分は上卦震に属しており、さらに上を目指している。勘違いも甚だしい。見通しを完全に誤って、いくら苦労しても、報われない禽獣である。
○政治に携わっている人ならば、今の体制を一変するか、引退するかの決断を迫られる時である。一般人も同様である。
○自分の一存で事を決断しようとするが、失敗して後悔する。
○心の中がワサワサとして落ちつかずに、散財する時である。
○何事も、見ることはできるが、手に取ることができない。
○部下から信用が薄いのに、部下を酷使しようとしている。どんなに頑張っても成果を上げられない。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)明治二十三年、某縉紳來リテ、某貴顕ノ氣運を占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ、恒ノ第四爻ヲ得タリ、
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)明治二十三年、ある紳士やって来てある貴人の氣運を占ってほしいと頼まれたので、筮したところ、恒の四爻を得た。
 易斷は次のような判断であった。
 恒は上卦震の長男が外に勤めて、下卦巽の長女が内で家事を治める。家庭が幾久しく続いている時。だから恒(の道)と云う。四爻は陽爻陰位で才能は高いが、志は脆弱である。初爻の陰に応じて、外面は君子を装っているが、内面は諂(へつら)うことを喜ぶ小人である。外面と内面が矛盾している。そして、四爻を慕う初爻も小人である。今の立場で、災害を招き寄せることはないが、利益を得ることもない。結果を出すためには、優れた人格と高い地位が必要である。四爻を猟師として、初爻を禽獣(獲物)とすれば、上卦震の猟師が上に進み、下卦巽の禽獣は下に隠れる。獲物を得ることはできない。
 このことを「田(かり)に禽(えもの)无(な)し。初六と応ずるが、不中正同士ゆえ善い結果は得られない。九四は震(動く)の主爻(狩人)ゆえ恒を守らず上に向かい、初六は巽(伏せて入る)の主爻(禽獣)ゆえ恆を守らず下に向かう。禽獣不在の土地で狩りをするようなもの」と云う。
 以上のようであるから、その貴人がその地位に留まっても何も成果を上げることはできない。職を辞するべきだと易斷する。
(その結果、どうなったかは、書いていない。)

恒 六五 ・・| ||・

六五。恆其德貞。婦人吉、夫子凶。
□六五。其の德を恒(つね)にす。貞。婦人は吉。夫子は凶。
 六五は陰柔不正で中を得ている。正応九二は陽剛不正で中を得ている。陰柔な長男が陽剛な長女の力を借りて事を成す象。どちらも中を得て、恒の道を固く守っている。柔順に従うのは婦人の道。婦人ならば幸を得る。夫(君主)ならば不甲斐ない。
象曰、婦人貞吉、從一而終也。夫子制義、從婦凶也。
□婦人は貞にして吉とは、一に従って終れば也。夫子は義を制す。婦に従うは凶なる也。
 婦人は、幸を得る。婦人は夫に柔順に従って生涯を終える。夫(君主)は、事変に処して陣頭指揮を執るのが務め。婦人に従うのは、不甲斐ない。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)大學ニ曰ク、天子ヨリ以テ庶人ニ至ルマデ、壹ニ是皆身ヲ修ルヲ以テ本ト爲ス、其本亂レテ末治ル者否ズト、蓋シ身ヲ修ムルノ本ハ、其職ヲ盡シ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)大學に「天子から庶人まで身を修めることが本分だ」とあるが、身を修めることは、本業(今の職業)を全うして、自分の任務を果たすことである。だが、五爻は自分の任務を放棄して人に頼っている。まるで女の腐ったような男である。勇気を出して本業に励むべきである。それができなければ、凶運を招き寄せる。慎むべし。
○婦人が自分の意見を持たずに、一人の男の意志に従って人生を全うする時である。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)豪商某縉紳來リテ、氣運ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ、恒ノ第五爻ヲ得タリ、
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)ある豪商がやって来て、氣運を占ってほしいと頼まれたので、筮したところ、恒の五爻を得た。
 易斷は次のような判断であった。
 恒は雷が上、風が下に在る。雷と風のエネルギー(氣)によって万物は発育して生成発展する。それゆえ恒(の道)と云う。国家に当て嵌めれば、君主が立派に統治して国民は公に奉ずるあり方を恒(の道)と云う。上下その役割を全うして怠ってはならない。人に当て嵌めれば、それぞれの職業(本分)を全うして、脇目を振らないあり方を恒(の道)と云う。また、世に処するには、時と位と所を得て、志を微動だにしないあり方を常業または恒産と云う。
 今回占って五爻を得た。四爻の番頭と二爻の支配人は共に陽爻で五爻を補佐する役割を担っている。しかし、五爻は陰爻なのでトップとしては力不足である。まるで、婦人に大役を任せるようなものである。婦人が四爻の番頭と二爻の支配人を使いこなすことは難しい。番頭と支配人が失敗した場合に、トップとして対処することができない。
 このことを「婦人は貞にして吉とは、一に従って終ればなり。夫子は義を制す。婦に従うは凶なるなり。婦人は、幸を得る。婦人は夫に柔順に従って生涯を終える。夫(君主)は、事変に処して陣頭指揮を執るのが務め。婦人に従うのは、不甲斐ない」と云う。
 貴方は大きな商店(豪商)の主としての役割を怠ってはならない。もし番頭に全てを任せれば商店は破産の凶運を招き寄せる。「婦に従うは凶なるなり」を戒めの言葉と受け止め、主としての役割を全うすれば、商店が幾久しく継続することは間違いない。
(易占の結果については書いていない。)

恒 上六

上六。振恆。凶。
□上六。恒(つね)を振(ふる)う。凶。
 上六は陰爻陰位で不才不中。恒(つね)の道に窮してふらふらと妄動する。正応九三は利益を求めて右往左往。事を損ない禍(わざわい)を招く。
象曰、振恆在上。大无功也。
□恒(つね)を振(ふる)うて上に在り。大いに功なき也。
 上の位に在りながら、ふらふらと妄動する。どうして功を上げられようか。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)他ノ事業ヲ羨ミテ、數々其業ヲ換ヘ、他ノ居處ヲ羨ミテ、頻ニ其居ヲ移ス、譬ヘバ樹木ヲ植ルガ如シ、數々之ヲ植エ換レバ、其木ヲ枯サン、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)本業を疎かにして他の仕事を羨んで、しばしば転職する。他の住居を羨んで、しばしば引っ越しする。樹木をしばしば植え換えれば樹木は枯れて果実は実らない。何事も本分を疎かにして他を羨めば、事業は滞って必ず破綻に至る。以上を反面教師として慎むべきである。
○常に忙しくて走り回っているが、何の成果も上がらない。骨折り損の草臥(くたび)れ儲(もう)けの時である。
○常識を失って災難を招き寄せる。深く妄動を戒めるべきである。
○何のために仕事をしているのか、その理由を知らない。いくら仕事をしても、何の成果も得られない。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)豪商人來リテ、氣運ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ、恒ノ上爻ヲ得タリ、
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)ある商人がやって来て、氣運を占ってほしいと頼まれたので、筮したところ、恒の上爻を得た。
 易斷は次のような判断であった。
 恒は雷と風のエネルギー(氣)が鼓舞して万物を生育する。天地間の恒(の道)である。だが、雷と風はエネルギー(氣)で、形がない。迅速に変動することが恒(の道)である。天地が変動することは恒(の道)である。恒(の道)は変動することでもあり、時を待つだけではない。人に当て嵌めれば、基本は本業を守って、コツコツと積み上げて行くことが大切である。だが、時には変化することも必要である。
 今回占って上爻を得た。本業が行き詰まって、他に仕事を求めたくなる時である。
しばしば本業を替えて、他の仕事に活路を見出そうとする。だが、本業を疎かにする人は、他に活路を見出すことはできない。しょっちゅう草木を植え換えて枯らしてしまうのと同じである。すなわち、上爻は妄動すること甚だしく、今から慎むことを怠れば、必ず凶運を招き寄せる。
 このことを「恒(つね)を振(ふる)う。凶。上六は陰爻陰位で不才不中。恒(つね)の道に窮してふらふらと妄動する。正応九三は利益を求めて右往左往。事を損ない禍(わざわい)を招く」と云う。
 本業を大切にして、新規の事業は断念すべきだと易断した。
(今回も、易占の結果については書いていない。)