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期間限定「現代語訳(超意訳) 呑象高島嘉右衛門著 増補 高島易斷 上下巻 占例篇」 山風蠱

2022年5月23日

十八 山風蠱 |・・ ||・

蠱、元亨。利渉大川。先甲三日、後甲三日。
□蠱(こ)は元に亨る。大川を渉るに利し。甲に先だつこと三日、甲に後(おく)るること三日。
 蠱は惑乱・腐敗・頽廃・崩壊が進み、窮まり、一変して通じる時。窮して後、変革が起こり、何事もすらすら通る。勇気を奮い起こして幾多の艱難辛苦に対処するがよい。先ず根本的原因を探り、次に抜本的対策を熟慮し、その弊害と収拾を見据えてから対処するのである。
彖曰、蠱、剛上而柔下。巽而止蠱。蠱元亨而天下治也。利渉大川、往有功也。先甲三日、後甲三日、終則有始、天行也。
□蠱は剛上りて柔下る。巽にして止まるは蠱なり。蠱は元に亨りて天下治まる也。大川を渉るに利しとは、往きて功有る也。甲に先だつこと三日、甲に後るること三日とは、終れば則ち始め有り、天行也。
 蠱は艮(剛)が上に、巽(柔)が下に在る。泰の初九と上六が入れ替わった形。剛は上り柔は下り交わらない。巽は巽順に上に阿(おもね)り諂(へつら)い上を諫(いさ)めず、艮は止まり怠り下を慮(おもんぱか)らない。国家は惑乱・腐敗・頽廃・崩壊が進み、窮まり、一変して大いに通じる。天下が治まるのである。勇気を奮い起こして幾多の艱難辛苦に対処するがよい。有事には勇(ゆう)往(おう)邁(まい)進(しん)して天下の乱れを救済するのである。先ず根本的原因を探り、次に抜本的対策を熟慮してから、対処するのである。寒(かん)暑(しよ)昼(ちゆう)夜(や)が往来するように、天の道をお手本に、事を行うのである。
象曰、山下有風蠱。君子以振民育德。
□山の下に風有るは蠱なり。君子以て民を振(ふる)い德を育(やしな)う。
 山麓に風が押し止められて惑乱・腐敗するのが蠱の形。君子は変革を断行し、人民の志を奮(ふる)い立たせて、人德を養い育てる。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)我巽フテ彼止マリ、其憑ム所ノ人我ニ應ゼズ、縱ヒ彼應諾スルモ、信憑スルヲ得ザルノ時トス、又・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)自分は巽順に従い相手は止まる。頼りにする相手が振り返ってくれない。振り返ってくれても、頼りにできない時。
 災害は遠くから招き寄せるのではなく、近くから発生する。
 外敵の心配をするよりも、内側から乱れることを心配する時。
 長女が少男に恋をして家族が混乱する時。
 家の財政が破綻しそうになった状態を努力して回復させる時。
 いずれも、突然ではなく、漸次に起きる。慎むべきである。
○蟻の穴が原因となって、堤防が決壊する事態に至る。
○天下泰平で驕り高ぶり奢侈に流れ、心が柔弱になり、ずる賢い小人が調子に乗って内乱を起こす。
○乱れた状態を治めて、長年積み上がった弊害を刷新する時である。力を尽くして改革を断行すべきである。
○私利私欲を追求し、大切な友に悪影響が及んでいることを省みない。
○表面は正しく実直であることを装っている。内面は優柔不断でグズグズの状態である。
○奸(かん)佞(ねい)にして斡旋する才能がある。仕事を任される器量を具えた人物である。
○自分が相手のために尽くしても、相手は自分を省みてくれない時。
○無理矢理、圧服させられる時。
○物価は最初は低いがその後高くなる。物品は粗悪品が多い。取引に支障が出ないように注意すべきである。
○破損した物事を修復する時である。
○欺(あざむ)き、諂(へつら)い、疑い、迷う時。
○寡婦が色恋沙汰を起こして家が乱れる時。
○資財を損失する。 ○臣下が君主を惑わし、妾が主を溺れさせる。

蠱 初六 |・・ ||・

初六。幹父之蠱。有子考无咎。厲終吉。
□初六。父の蠱に幹(かん)たり。子有り、考(ちち)咎无し。 厲(あや)うけれども終に吉。
 先代の事業を引き継ぎ、旧来の弊害を刷新する。事業継承者として弊害を刷新できれば、先代の名誉を傷を付けない。己の拙(つたな)さを自覚して持戒精進すれば、終に幸を得る。
象曰、幹父之蠱、意承考也。
□父の蠱に幹たりは、意(い)、考(ちち)に承(う)くる也。
 旧来の弊害を刷新する。先代の志を継承し、事業を継続発展させるのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)此爻父ガ事業ヲ始ルモ、運未ダ至ラズシテ、其功ヲ遂ル能ハズ、事業半途ニシテ死亡シ、其子之ヲ継續スルノ時トス、夫レ父ノ大業ヲ始ムルヤ、之ヲ成就シテ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)父親が立ち上げた事業(志半ばで父親は亡くなる)を、子供が引き継ぎ、その弊害を刷新して事業を軌道に乗せようとする時。
父親は大きな事業を立ち上げ、それを軌道に乗せ、子供に継いでもらおうと思った。だが、事業を軌道に乗せる前に亡くなってしまった。時が至らなかった。どうすることもできない。宿命である。
 事業を引き継いだ子供は、父親の志を実現するため、奮い立たなければならない。子供は父母から身体を授かり、育ててもらった恩を忘れてはならない。父親が大きな事業を立ち上げたのは、子供に引き継いでもらうためだから、子供は父親の志を引き継いで、その志を実現させなければならない。
 創意工夫して父親の思いを実現させることが、父親への恩返し。引き継いだ事業を力を尽くして手伝ってくれる人を得たら、どんなに困難な事業であっても、父親の志は必ず成就する。
○先輩の失敗を引き受けて、それを改革する時である。
○土台を残して腐敗が進んでいる事業を再生するために、周到に準備を重ねて、父親の事業を救う時である。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)和歌山縣下ニ一ノ材木商アリ、其初メ煩々タル材木ヲ伐リ出シ、東京大阪ニ送リシガ後(中略)善後ノ策ヲ問フ、乃チ其男子ノ爲ニ筮シテ蠱ノ初爻ヲ得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。