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期間限定「現代語訳(超意訳) 呑象高島嘉右衛門著 増補 高島易斷 上下巻 占例篇」 地澤臨

十九 地沢臨 ・・・ ・||

臨、元亨利貞。至于八月有凶。
□臨は、元に亨る。貞しきに利し。八月に至りて、凶有り。
 臨は上が下に臨む時。和らぎ悦び(兌)柔順(坤)に臨んで、すらすら通る。正しい道を守るがよい。君子の勢いが盛んに伸びて、やがて天下泰平(地天泰)となる。泰平を極めれば、小人の勢いが増長する(八か月後は風地観となる)。
彖曰、臨、剛浸而長、説而順、剛中而應。大亨以正。天之道也。至于八月有凶、消不久也。
□臨は剛(ごう)浸(ようや)くにして長じ、説(よろこ)びて順い、剛中にして応ず。大いに亨りて以て正し。天之道也。
 八月に至りて凶有りとは、消(しよう)すること久しからざるなり。臨は剛(君子)が漸次に進んで盛んになり、上が下に和悦柔順の德で臨み、下が和悦の德で進む。剛中の九二と柔中の六五が相応じ、六五の天子は九二を深く信任する。
 すらすら通り正しい道を歩む。天の道に適っている。泰平を極めれば、必ず陰柔小人の勢いが増長し、やがては小人の天下(風地観)となる。君子の天下が少しでも長続きするように、自戒することが大切である。
象曰、澤上有地臨。君子以教思无窮、容保民无疆。
□沢の上に地有るは臨なり。君子以て教え思うこと窮まり无く、民を容れ保(やす)んずること疆(かぎ)り无し。
 沢(兌)の上に大地(坤)が在る(地下水が涸れない)のが臨の形。君子は民を教え導き思いやること窮まりなく、民を包み込んで安寧に導くことこと限りない。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)盛運來リタルノ時トス、但人ノ妬忌ヲ避ケン爲メ、人ニ交ルニ温和ヲ以テシ、勢ニ乘ジテ躁進ス可カラズ、又人氣ヲ得ルノ時トス、謹愼シテ運ノ傾カンコトヲ慮リ、鄭重ニ進メバ、吉ノ道ナリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)盛運がやって来る。人から嫉妬されかねないので、人と接する際は温和であることを心がけるべきである。調子に乗ってはならない。
○人気を得られる時。謹慎して盛運が崩れないように熟慮し、鄭重に進めば吉の道を歩むことができる。
○自分の方向性を定めて、誠の心と篤実さを貫けば、何事もすらすらと通じて成就する(元亨吉)。
○物事を始めて、しばらくはすらすら通るが、八ヶ月経過した頃には、とんでもない失敗をしでかす恐れがある。
○人との関係は愛敬を大切にして事を進めるべきである。
○鶴が鶏(にわとり)の群に入る。自分の志を満たすことができない。常に不平を抱いている時。
○役人になろうとする志願が実現する時。
○ある事を人と約束し、共に行う時。
○売り買いはすべきではない。今売り買いすれば損をする。
○何かを希望すべき時、希望を抱く時。
○お互いに遭遇する(相逢う)時。
○大いに意義のある時、大きな事が起こる時。
○一丸となって進めば、必ずゴールに至る。
○志願は成就する。  ○お互いに親しみ和合する。
○人から愛される時。 ○自分の言葉に人が順う時。
臨 初九 ・・・ ・||

初九。咸臨。貞吉。
□初九。咸(かん)臨(りん)す。貞にして吉。
 剛健正位の初九は柔順正位の大臣六四と相応じている。
 互いに感応し合い、初九は大臣の信任を得て世の中に臨む。正しい道を守って幸を得る。
象曰、咸臨。貞吉、志行正也。
□咸(かん)臨(りん)す。貞にして吉とは、志正しきを行う也。
 正しい道を守って幸を得る。正しい志を抱いて事を行うからである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)目上ノ同志ト謀リ、力ヲ一ニシテ、事ヲ爲サントス、而シテ六四ノ陰柔高位ニ居リ、我陽剛ノ才ヲ用ヒ、志ヲ合セ、事成就スルノ時トス、又運氣進ムノ時タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)志を同じくする上司と共に力を尽くして、事を成し遂げようとする。陰柔の性質を有する六四(上司)が、陽剛の性質を具えている初九を抜擢任用して、共に志を合わせて、事を成就する。
○運氣が盛んに進む時である。是非善悪を明らかにして、至誠の心を尽くして進み行けば、吉運を招き寄せる。
○家業によく勤めて、志願を達成する。 ○男女が互いに情を通じる。
○有力者と共に事を為せば、吉運を招き寄せる。
○上は空っぽで、下は充実している。
○上位者が下位者を求める時。
○組織の長(社長や党首)に就任する。
○人と志を同じくすることによって、希望していることが実現する。
○上位者から期待される。それに阿(おもね)ることなく、真っ直ぐで正しい志を実現するために、進み行く時である。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)友人某來リテ、運氣ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ、臨ノ初爻ヲ得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)ある友人がやって来て、運氣を占ってほしいと頼まれたので、筮したところ、臨の初爻が出た。
 易斷は次のような判断であった。
 臨は地の下に沢がある。沢は水が溜っている所。すなわち海である。太陽の熱が地球を照射すると、海水は蒸発して雨となる。雨は下降して大地を潤す。雨水は川を流れてまた大海に通ずる。地と沢がそれぞれ臨み合って、滞りなく循環して万物を生成する。地と沢の造化の絶妙な働きである。そこで、この卦を臨と云う。
 人事に当て嵌めると、希望の時である。
 貴方の運氣を占って臨の初爻(陽爻)が出た。貴方は上位者である六四の陰爻に応じている。四爻は貴人の地位である。貴人が陰柔の性質を有して陰の位に在る。人徳を具えているが陽剛の力に欠けている。初爻の貴方は陽剛の性質で陽の位に在り、陽剛の力はあるが地位が低く、事業を実施することができない。
 四爻の貴人は、貴方の力を用いようとし、貴方もそれを望んでいる。お互いに望むことが一致するので意気投合する。このことを「咸臨す。互いに感応し合い、初九は大臣の信任を得て世の中に臨む」と云う。
 貴方は初爻なので、急に望みが叶うことを願ってはならない。名誉を求めてもならない。また、邪心を抱いてはならない。邪心を抱けば、信用を失う恐れがある。それゆえ「貞にして吉。正しい道を守って幸を得る」と云う。
 以上の易断を聞き、友人は敬服して帰って行った。
(その後、どうなったかは書いてない。)

臨 九二 ・・・ ・||

九二。咸臨。吉无不利。
□九二。咸臨す。吉にして利しからざる无し。
 剛健中庸で才德高い九二は柔順中庸の六五の天子と相応じている。六五は九二の才德に感動し、九二は天子の信任を得て事に臨む。宜しくして、何の問題もない。
象曰、咸臨。吉无不利、未順命也。
□咸臨す。吉にして利しからざる无しとは、未だ命に順わざる也。
 宜しくして、何の問題もない。時には天子(六五)の発する命令に順わず、諫めることも辞さない態度で事に中る。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)天運盛ナルノ時トス、必ズ目上ノ人、我ヲ知ルアリテ、其援引ヲ蒙リ、幸福ヲ得ベシ、時運ニ合ヒ、我才器ヲ用フベキノ時タリ、勉強シテ命ニ從フベシ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)天運盛んな時。必ず目上の人は貴方の存在を認知してくれる。貴方は目上の人から抜擢されて、幸運を招き寄せる。
○時運に適合する形で自分の才能を発揮する時。よく勉強して天命に従うべきである。
○上位者は下位者の中から、才能がある者を抜擢して、志を共にする協力関係を築き、業務に従事すれば大成功に至る盛運の時である。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)友人來テ、某貴顕ノ運氣ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ、臨ノ第二爻ヲ得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)友人がやって来て、ある貴人の運氣を占ってほしいと頼まれたので、筮したところ、臨の二爻が出た。
易斷は次のような判断であった。
 臨は、下卦の二つの陽爻が進み長じ勢力を増大して、上に在る陰爻が衰える時。陽爻を君子に、陰爻を小人に例える。君子が地位を得れば、国家は安泰、万民は幸福である。小人が地位を得れば、国家は傾き、万民は苦しむ。君子の道が世に受け容れられれば、国家は安泰となる。大衆もそれを望んでいる。
 今回占って二爻が出た。九二は六五の君主と応じている。九二は陽剛の性質を有して、君主を補完する役割。六五の君主は九二を厚く信頼して、抜擢任用する。
 このことを「咸臨す。吉にして利しからざるなし。剛健中庸で才德高い九二は柔順中庸の六五の天子と相応じている。六五は九二の才德に感動し、九二は天子の信任を得て事に臨む。宜しくして、何の問題もない」と云う。
 よって、その貴人の運氣は、今年は盛運であると易断した。
(易断の結果については書いてない。)

(占例2)明治二十七年、友人の金原明善氏がやって来て、次のように言った。「わたしの故郷は静岡県の浜松市で、主に林業を営んで生計を立てていた。現在、わたしは東京で銀行を営んでいる。家庭の事情で孫娘に婿を迎えて事業を相続させて、妻と娘は浜松の実家に帰らせようと思っている。その吉凶を占ってほしい」。
 そこで、筮したところ、臨の二爻が出た。
 易斷は次のような判断であった。
 臨の卦は、お互いに臨み合うことから臨と云う。上卦坤を金原氏の妻に例え、下卦兌を孫娘に例える。金原氏の妻は孫娘を柔順に愛し、孫娘は金原氏の妻(祖母)の慈愛に従い、お互い臨み合っている。臨むとは、望むことでもある。お互いに臨み望み合う。それゆえ、卦徳は悦び順うことである。
 今回占って二爻が出た。その爻辞に「咸臨す。吉。六五は九二の才德に感動し、九二は天子の信任を得て事に臨む」とある。二と五は陰陽相感じる象。お孫さん(五爻)に迎える予定の婿さん(二爻)は幸福になることが確実なので、できるだけ早く結婚させるべきである。もし結婚の時期が遅れて来年になったとしたら、三爻の「甘(かん)臨す。利しき攸なし。柔弱不正の六三は、才德乏しい佞人。巧みに人を悦ばせる言葉や物腰柔らかな態度で下々に臨み、媚び諂って人の上に立つ。こんな有様では、何をやっても失敗する」という爻辞にあるように、予想できない心配事が起こる。
 さらに結婚の時期が遅れて、再来年になれば、変爻は雷沢帰妹となる。帰妹は少女が長男を追いかける象で、大義に従わずに欲望に従うという意味がある。
 だから、お孫さんの結婚は今年中にしなければならない。
 また、奥さんと娘さんは一度浜松の実家に帰って、再来年(四爻)の「至臨す。咎なし。才德乏しい六四の大臣は、至誠を尽くして賢人初九を招聘する。初九は悦服して國政を補佐する。六四は誰からも咎められない」という時(金原氏を六四、奥さんを初九に例えたのだと思う)を待って、東京に呼び寄せるべきである。
 以上の易断を聞いて、金原明善氏は感謝して帰って行った。
(今回も、易断の結果は、何も書いてない。)

臨 六三 ・・・ ・||

六三。甘臨。无攸利。既憂之无咎。
□六三。甘(かん)臨(りん)す。利しき攸(ところ)无し。既に之を憂うれば咎无し。
 柔弱不正の六三は、才德乏しい佞人。巧みに人を悦ばせる言葉や物腰柔らかな態度で下々に臨み、媚び諂って人の上に立つ。こんな有様では、何をやっても失敗する。己の非を知り、憂えて態度を改めれば、咎められることは免れる。
象曰、甘臨、位不當也。既憂之、咎不長也。
□甘臨すとは、位当らざればなり。既に之を憂うれば、咎、長からざる也。
 媚び諂って人の上に立つ。邪心を抱いて下卦兌の最上に居るのである。憂えて態度を改めれば、咎められることは、漸次になくなっていく。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)己レ智力ナクシテ、唯小才ヲ用ヒ、人ヲ籠絡セント欲ス、是レ何事ヲカ能ク爲サン、俚諺ニ所謂ル、人ヲ甘ク見テ失敗スル、是ナリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)知恵も力もないのに、小賢しいことを考え、人を惑わそうとする。何事も為し遂げることはできない。世間を甘く見て失敗する。今、臨の時に中って君子に近付き、君子を見倣って、自分の非を悟り、志を改めれば咎を免れる。善き道を歩み始める入り口となる。
○相手(陽)が自分(陰)に近付き迫ってくる時である。
○邪心を抱いて世の中に対処しようとして凶運や困難を招き寄せる時。早く自分の非を悟って改めなければならない。
○心卑しき人物が、心貴い人物に成り代わって権力を振るう時。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)明治五年、友人某來リテ、某商人ノ運氣ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ、臨ノ第三爻ヲ得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)明治五年、ある友人がやって来て、ある商人の運氣を占ってほしいと頼まれたので、筮したところ、臨の三爻が出た。
 易斷は次のような判断であった。
 臨の卦は、地の下に沢がある象。
 人間に当て嵌めると、地は母、沢(兌)は少女に例えられる。母と少女が出逢う時は、母は少女を愛して臨み、少女は母に順って臨む。お互いに望んで臨むので臨と云う。臨とは希望することである。
 今回ある商人の運氣を占って三爻が出た。六三は陰爻陽位なので才能や智恵が不足している。過ぎる位に居るので強気である。勢いに乗じて一時は幸運を得るが調子に乗って世間を甘く見て、私利私欲を貪る。やがて氣運が衰えて、落ちぶれる。その時初めて夢から覚めたように、これまでの行動を恥ずかしく思う。
 この商人は将来、以上のように落ちぶれてしまうリスクがある。それを踏まえて、よくよく注意すれば、大きな過ちは犯さない。
 ところが、友人によると…
「その商人は、横浜の吉田新田に一坪の沼地を十銭で購入していた。
ある豪商が役所との取引の過程でその沼地を一坪一円で買い取った。商人が購入した沼地は十銭から一円へと十倍の値段に跳ね上がった。商人は調子に乗って、ドンチャン騒ぎをするようになった」と云う。そこで、わたしは友人に、以上の易断を商人に伝えて、よくよく忠告すべきだと進言した。
(その後、どうなったかは書いてない。)

臨 六四 ・・・ ・||

六四。至臨。无咎。
□六四。至臨す。咎无し。
 才德乏しい六四の大臣は、至誠を尽くして賢人初九を招聘する。
 初九は悦服して國政を補佐する。六四は誰からも咎められない。
象曰、至臨。无咎、位當也。
□至臨す。咎无しとは、位当れば也。
 初九が国政を補佐し、六四は誰からも咎められない。
 君主の側近としての職責を全うするからである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)目下ノ智者ト謀リテ事ヲ成スノ時ナリ、至ハ懇切篤志交リテ求ルノ謂ニシテ我上位ニ在リテ、下卦ノ智者ト謀ル、故ニ彼ニ對シテハ、常ニ其欲スル所ニ就テ、之ヲ啓キ以テ其衷情ヲ伸ベシメ、以テ其智嚢ヲ盡サシムベシ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)下位の賢者と協力し合って事を成し遂げる時である。
至臨とは、同志が厚く丁寧に協力することを求めること。自分は上位に在って下位の者と協力し合う。下位の者に対しては、常に啓蒙することを心がけ、その心を自分の方に向けておき、いざとなったら進んで協力してくれるようにしておくことが肝要である。
○お互いに臨み合えば、至誠の気持ちで協力し合う。咎められない。
○上の者が下の者に臨む時である。
○利益を集めることに関しては、これ以上の幸せはない時。
○之卦の雷沢帰妹に変ずれば、長男が少女を娶る時となる。
○君子が天命によって事を為す時である。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)友人某氏來リ、某貴顕ノ運氣ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ、臨ノ第四爻ヲ得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)ある友人から、ある貴人の運氣を占ってほしいと頼まれたので、筮したところ、臨の四爻が出た。
 易斷は次のような判断であった。
 臨の卦は、内卦の兌は口、外卦の坤は大衆である。すなわち広く世論を聞いて世情を知り、事に臨む時である。それゆえ、臨と名付けた。
 今回占って臨の四爻が出た。
 六四は柔順正位で君主に尽くし、心身共に苦労を厭わない。自分の才能では不足するので、応ずる関係の初九が剛健の賢臣であることを観察して、礼儀厚く、謙譲の心で訪問する。初九から意見を虚心坦懐に聞き出して、初九を抜擢任用する。初九に自分の才能を補完してもらい、君主を支えて、よりよい政治を実現させるべく尽くす。
 このことを「至臨す。咎なし。才德乏しい六四の大臣は、至誠を尽くして賢人初九を招聘する。初九は悦服して國政を補佐する。六四は誰からも咎められない」と云う。
 ある貴人も、以上のように、職務に尽くせば「咎无し。初九は悦服して國政を補佐する。六四(ある貴人)は誰からも咎められない」と易断した。
(易断の結果は書いてない。)

臨 六五 ・・・ ・||

六五、知臨。大君之宜。吉。
□六五、知臨す。大(たい)君(くん)の宜しきなり。吉。
 柔順中庸の天子六五は、己を虚しくして賢臣九二を信任し、広く衆智を集めて国政に中る。偉大な君主は叡智を用いて陽剛の君子を帰服させ、天下泰平の宜しきを得る。何事も順調に進む。
象曰、大君之宜、行中之謂也。
□大君の宜しきとは、中を行うの謂也。
 偉大な君主が天下泰平の宜しきを得る。柔順中庸の天子が剛健中庸の賢臣を用いて、時に中るのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)思慮深ク、見識アルノ人ニシテ、能ク目下ノ人才ヲ知リ用ヒ、共ニ大事業ヲ成スノ時ナリ、又事物ノ理由ヲ會得シ、時機ヲ審ニシ、隠微ヲ知ルノ人トス、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)思慮深く見識がある。部下(下に居る者)の人物と才能を熟知して、抜擢任用し、共に大事業を成し遂げる時である。
物事の由って立つ所以を会得しており、行動すべき時機を弁えている。その言行は適切で、為す事は必ず成功する。
○柔順な君主が中庸の徳を具えて九二に応じている。自らは動かないが、部下を抜擢任用することで吉運を招き寄せる。
○社会的地位の高い人(貴人)からお願いされることがある。
○進み続けて、万事順調に育っていく時である。
○自分より下位に居る人物に臨むべき時(用いる時)。神仏をお祀りして(祭祀して)、ご加護を賜ることを希求するべきである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)明治二十二年、某貴顕ノ運氣ヲ占ヒ、筮シテ、臨ノ第五爻ヲ得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)明治二十二年、ある貴人の運氣を占って、筮したところ、臨の五爻が出た。
 易斷は次のような判断であった。
 下卦沢は水を貯えておく所。水を貯えておく所で海より大きなものはない。海水は太陽に照らされて蒸発して雨となり、大地に慈雨を施す。その慈雨は川の水と合流して、大海に戻ってくる。海には海草が繁茂し魚が育つ。大地には草木が繁茂し鳥獣が育つ。このようにして人類も大地に養われているのである。地も山も元々大地である。山(すなわち地)と沢が氣(エネルギー)を通じ合って臨み合う。
 国家に当て嵌めれば、仁徳を具えた君主が国家の頂点に在って臣民に臨み、公明正大な太陽のように臣民を照らしている。臣民はそれぞれ所を得て幸せである。
 今回占って五爻が出たが、ある貴人を二爻に当て嵌めて観れば、五爻の君主に感応して抜擢され、君命によって国家の大事業を担当する。五と二が一体となって事に中る時ゆえ「知臨す。柔順中庸の天子六五は、己を虚しくして賢臣九二を信任し、広く衆智を集めて国政に中る」と云う。
 二爻が行うことは、君主の意に沿っているので「大君の宜しきなり。吉。偉大な君主は叡智を用いて陽剛の君子を帰服させ、天下泰平の宜しきを得る。何事も順調に進む」と云う。臨は、陽剛が成長して、勢力がどんどん大きくなっていく時、君子が世の中に受け容れられる時である。
 卦辞・彖辞に「元亨利貞」の四徳を具えているのは、乾為天と同じであるが、陰陽消長は天道が循環する不易の法則ゆえ、消えていくものは、長じていくものを快く思わず、長じていくものは、消えていくものを快く思わない。陰陽消長の循環において、臨から八段階変化すると風地観の卦となり、陽が長ずる時が一変して、陰が長ずる時となる。
 それゆえ卦辞・彖辞に「八月に至りて、凶有り。泰平を極めれば、小人の勢いが増長する(八か月後は風地観となる)」と云う。
 吉運を招き寄せるこの卦に、何故か「凶有り」と書いてあるのは、陽が長ずる時は、やがて陰が長ずる時に変化して行くという、天の道(陰陽消長の循環)を示している。陽が長ずる時だからこそ、将来に備えて小善を積み上げ、あっという間に陰が長ずる流れに陥らないよう戒めているのである。
 以上が、ある貴人の運氣を占って出た易断である。
 その後、ある貴人は暴漢に襲われた。この出来事は、陰が長ずる勢いがどんどん増して、逃げるしか対抗の術がない天山遯の時に該当する。天山遯はやがて天地否となり風地観の時に至る。
(すなわち、八月に至りて凶有り、という陰陽消長の循環による出来事であろうか…。)
臨 上六 ・・・ ・||

上六。敦臨。吉无咎。
○上六。敦(とん)臨(りん)す。吉。咎无し。
 柔順正位で臨・坤の極点に居る上六は、六五の德風に包まれて下々に篤実に臨み、民を思いやること窮まりなく、民を包容すること限りない。幸を得る。誰からも咎められない。
象曰、敦臨之吉、志在内也。
□敦(とん)臨(りん)の吉は、志内に在る也。
 幸を得るのは、上六が国政の安定を強く願っているからである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)事ヲ爲スニ誠心到ラザルナクハ、何ヲ爲シテカ成ラザランヤ、縱ヒ己レ爲サント欲スル所ノ事業、未ダ成功ヲ見ルニ至ラザルモ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)至誠の心で事業を成し遂げる。志半ばで終ったとしても、必ずその事業を受け継ぐ者があって、遂には成就する。
○忠臣が事に臨み、君主のために力を尽くす。身命をも惜しまない。
○貴い人が卑しい家に帰ってくる(臨む)時。
○人々を救うために、資産や財産を費やすべき時。
○老人が西方にある浄土に行きたいと願う時。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)友人某氏來テ、身上ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ、臨ノ上爻ヲ得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)ある友人がやって来て、身上を占ってほしいと頼まれた。
 筮したところ、臨の上爻が出た。
 易斷は次のような判断であった。
 臨の卦は、希望することがあるから「臨む」と云う。今回占って上爻が出た。上爻は、必ずしも自分の希望を叶えようとは思っていない。人間は希望を持つ。これは人情の常である。だが、上爻は、人生は「任重くして道遠い」ことを知っている。貴方は「重い任務を背負い遠くまで行こうとするのが人の一生である。急いではならない」と云う古語を実行しようとしている。
 古語の云う通りに志を貫けば、遂には志を成し遂げることができる。
 貴方は思慮深いので、以上ような易断が示された。
 友人は、「誠に先生のおっしゃる通り」と、深く感謝して帰って行った。
(その後どうなったかは書いてない。)