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期間限定「現代語訳(超意訳) 呑象高島嘉右衛門著 増補 高島易斷 上下巻 占例篇」 離為火

三十 離為火 |・| |・|

離、利貞。亨。畜牝牛吉。
□離は貞(ただ)しきに利し。亨(とお)る。牝(ひん)牛(ぎゆう)を畜(やしな)えば吉。
 離は正しきに麗(つ)きて明智を用いる時。常に正しきに麗きて明智を用いるがよい。
 すらっと通る。牝(め)牛(うし)のように柔順の至りを尽くせば、幸を得る。
彖曰、離麗也。日月麗乎天。百穀草木麗乎土。重明以麗乎正。乃化成天下。柔麗乎中正、故亨。是以畜牝牛吉也。
□離は麗(つ)く也。日(じつ)月(げつ)は天に麗(つ)く。百(ひやつ)穀(こく)草(そう)木(もく)は土に麗(つ)く。
 重(ちよう)明(めい)にして以(もつ)て正に麗(つ)く。乃(すなわ)ち天下を化(か)成(せい)す。柔中、正(せい)に麗(つ)く、故に亨(とお)る。是(ここ)を以て牝(ひん)牛(ぎゆう)を畜(たくわ)えば吉なるなり。
 離は一陰が二陽に麗(つ)く。一陰は虚心、二陽は身体。明(めい)鏡(きよう)の如(ごと)く曇りのない心と健康な身体があるので、明德が発現する。宇宙を司る元氣は天地に分かれ、天の氣は日(じつ)月(げつ)星(せい)辰(しん)に麗き、地(土)の氣は百(ひやつ)穀(こく)草(そう)木(もく)に麗く。
 離は太陽。日日に新たに太陽が昇るように、人は明智に明智を重ねて正しい道に麗く。すなわち君主が太陽のような明德を発現して、臣民を化(か)育(いく)すれば、文化・文明は生成発展する。君臣が柔順中庸の德を備えて正位に麗く。すらっと通る。
 かくして、牝(め)牛(うし)のように柔順の至りを尽くせば、幸を得る。
象曰、明兩作離。大人以繼明、照于四方。
□明(めい)両(ふた)たび作(おこ)るは離なり。大(たい)人(じん)以て明を継(つ)ぎて四(し)方(ほう)を照らす。
 日日に新たに太陽が昇るように、明德に明德を継いで文明を継承するのが離の形。大人(聖人たる君主)は、先代の明德を継承し、天地と德を合わせ、賢臣と意を合わせて、普(あまね)く天下人民を照(しよう)臨(りん)する。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)怜悧ニシテ文學アリ、然レドモ、離ハ獨立スベキ者ニアラズ、故ニ善良ノ友ヲ撰ミテ、與ニ力ヲ合セ、事を謀ルベシ、夫レ薪ハ火の體ナリ、火ハ薪ノ用ナリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)冷静で頭が良く、文学の才能に秀でているが、独立する者ではない。それゆえ、善良の友だちを選んで、共に力を合わせて、事業を企画すべきである。「薪(たきぎ)」は「火」の実体。「火」は「薪」の運用。「薪」と「火」が一つになって、実用化する。以上の理屈をよく会得して、あらゆる事に従うべきである。また、火は物に付着して移動する性質がある。それゆえ、始めは善き性質を持っていても、互卦(二三四爻)巽の風が吹けば、火の勢いが盛んになって、損害を及ぼすことがある。剛健で積極的な人と接するよりも、柔順な善人と接して、共に事業を計画するべきである。目下に剛健で積極的な人が存在し、その人が原因となり人災を招く。慎まなければならない。
○気持ちや意思(意志)が移ろいやすい時。
○驕り高ぶる気持ちや贅沢を慎み、質素であることが肝要とする。
○飛んでいる鳥が網で捕らえられる時である。
○罪人が捕まって手錠をかけられる時である。
○目の前の小さな事から利益を得られる。宜しく思って速やかに対処すべきである。ボヤボヤしていると勢いを失う。
○文学の才能があり、智恵と明德を兼ね具えている。
○熟慮せず、せっかちな性格で、失敗が多く、人災を招く。
○女性なら、美人である。 ○網で押さえつけられ伏せている。
○弱い人が強くなる時である。 ○物価は上昇する。

離 初九 |・| |・|

初九。履錯然。敬之无咎。
□初九。履(ふ)むこと錯(さく)然(ぜん)たり。之(これ)を敬すれば咎无し。
 前世の初め、夜が明けようとしている時。まだ道路は暗く辺りの様子は判然としない。このような時は進むことを控えて待った方がよい。進もうとする気持ちを抑えて、六二を敬(うやま)い慎んで仕えれば、咎められるような過失は犯さない。
象曰、履錯之敬、以辟咎也。
□履(ふ)むこと錯(まじ)わるの敬は、以て咎を辟(さ)くる也。
 進もうとする気持ちを抑え、六二を敬い慎んで仕える。
 咎められるような過失は犯さないのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)凡ソ事ヲ起シ、又人ニ接スル、能ク其始ヲ愼ミ、其終ノ全キヲ圖ルベシ、懇親ノ間ト雖モ、禮ヲ失フコト勿レ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)事を起こそうと、人に接するに場合は、その始めを慎み、終りを全うすべきである。親しい間でも、失礼があってはならない。
○志が一定しないので、何をやっても長続きしない。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)友人某來リテ、運氣ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ、離ノ初爻ヲ得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)ある友人がやって来て、氣運を占ってほしいと頼まれたので、占筮したところ、離の初爻を得た。
 易斷は次のような判断であった。
 離は火。火の性質は、炎が上に登って、暗闇を照らし、寒い時には、空気を暖め、色々な物を焼いて、生臭い物を食べられるようにする。その卦の形は、一つの陰爻が二つの陽爻の間に付着している。陽は強く陰は柔らかい。一つの柔らかい物が二つの強い物に付着するときは、強い物両方に付く。牝(ひん)牛(ぎゆう)(めうし)のように柔和に順うのである。人間の身体に置き換えれば、火は心の中にある魂。魂があるから人間には感覚があり、明らかな智慧がある。火は物に付着するという性質だから、独立していない。
 善良な友人を選んで、共に力を合わせて事業を計画すべきである。温和な心で友人に接すれば、事業を成就することができる。できない場合は、怒りが炎のように燃え上がり、それが人災を招いて、宝石のように大切な物を焼き尽くしてしまう。だから、安静な心を保って、怒りが炎のように燃え上がらないようにすべきである。
 それゆえ、卦辞で「牝(ひん)牛(ぎゆう)を畜(やしな)えば吉。牝(め)牛(うし)のように柔順の至りを尽くせば、幸を得る」と戒めている。牝(ひん)牛(ぎゆう)(めうし)の角(つの)は、人を傷つけない。
今回、占って初爻を得た。
「これから事業を始める時である。その始めにおいて、行なうべき事を慎んで行なうべきである。人を敬い、あらゆる物事を敬い、丁寧に事を行なえば、成功する」と易断した。
以上を「履(ふ)むこと錯(さく)然(ぜん)たり。之(これ)を敬すれば咎无し。前世の初め、夜が明けようとしている時。まだ道路は暗く辺りの様子は判然としない。このような時は進むことを控えて待った方がよい。進もうとする気持ちを抑えて、六二を敬(うやま)い慎んで仕えれば、咎められるような過失は犯さない」と云う。(易断の結果は書いてない。)

離 六二 |・| |・|

六二。黄離。元吉。
□六二。黄(こう)離(り)なり。元(げん)吉(きつ)。
 離の成(せい)卦(か)主(しゆ)六二は、柔順中正にして文明の德を備え正位に麗(つ)き中天に燦(さん)然(ぜん)と輝く。黄色は最も高貴な色、黄(こう)氣(き)は吉(きつ)祥(しよう)。日が中天に昇って天運盛んな時である。何事もすらすら通る。
象曰、黄離、元吉、得中道也。
□黄(こう)離(り)元吉とは、中(ちゆう)道(どう)を得れば也。
 日が中天に昇って天運盛んな時。何事もすらすら通る。
 六二が柔順中正の道を体得しているからである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)天運盛ナルノ時トス、宜シク文明ノ政事ヲ布キ、文明ノ事業ヲ起スベシ、此機ニ乘ジテ、文明ノ美事ヲ爲ス、何モノカ我ニ妨害ヲ加フルアランヤ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)天から授かった運命が盛ん(盛運)な時。文明の発展のために政治体制を構築(政治的な事業を実施)して、経済的な繁栄のために事業を興すべきである。この機会に乗じて、文明の華を開花させる。どうして、妨害されるようなことがあろうか。
○何事にも慎重で人を敬する気持ちを忘れなければ大丈夫。
○柔らかい性質の人や事業に関わって、正しい役割に就いて、正しいことを履み行なう時は吉運である。 ○智恵がある。
○明智や明德を具えた人、清く明るい人に従えば、自分の身を修めることができる。
○邪な智恵を用いて事に敗れ、身を滅ぼす時。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)某來リ、某貴顕ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ、離ノ第二爻ヲ得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)ある人がやって来て、ある貴人(ある組織の次官)の氣運を占ってほしいと頼まれたので、占筮したところ、離の二爻を得た。
 易斷は次のような判断であった。
 離は自然に当て嵌めると火、その性質は文明を表わしている。初九は、薪(たきぎ)や石炭、火が生ずるための材料である。対して、六二は火そのもの。九三は火から生ずる煙。
 今回占って六二が出た。その貴人(次官)は火のような能力を具え、次官が属する組織のエースである。次官と組織は一体となって智恵を発動して文明社会を発展させる。(爻辞に「黄(こう)離(り)なり。元(げん)吉(きつ)。離の成(せい)卦(か)主(しゆ)六二は、柔順中正にして文明の德を備え正位に麗(つ)き中天に燦(さん)然(ぜん)と輝く。黄色は最も高貴な色、黄(こう)氣(き)は吉(きつ)祥(しよう)。日が中天に昇って天運盛んな時である。何事もすらすら通る。」とあるが、)黄色は中央(五行で言えば「木火土金水」の中央)を表わしている。また黄色の氣(エネルギー)は吉運の兆し。
「正しく、天の運命が盛んな時、文明が発展する政治体制を構築して、文明の発展に寄与する事業を興すべきである。このチャンスを活かして、文明を発展させるべし。決して、誰かに妨害されるようなことはない」と易断した。以上を「黄(こう)離(り)なり。元(げん)吉(きつ)」と云う。
(易断の結果は書いてない。)

離 九三 |・| |・|

九三。日昃之離。不鼓缶而歌、則大耋之嗟。凶。
□九三。日(ひ)昃(かたむ)くの離なり。缶(ほとぎ)を鼓(こ)して歌わざれば、則(すなわ)ち大(だい)耋(てつ)を之(こ)れ嗟(なげ)く。凶。
 九三は中を過ぎ下卦の終りに居(い)る。日が傾きまた日が昇る形。これから夜を迎え、人生が終わろうとする時。年老いた身を天命に任せ、素焼きの器で酒を飲み、器を叩いて拍子を取り、歌を唱って余生を楽しめば心安らかである。
 余命が短いことを嘆き悲しめば心は乱れる。残された人生は空しく儚(はかな)い。
象曰、日昃之離、何可久也。
□日(ひ)昃(かたむ)くの離は、何ぞ久しかる可(べ)けん也(や)。
 もう夜を迎えた。余命が短いことを嘆き悲しんでも、どうなるものでもない。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)暴虎馮河死シテ悔ザル者、不明ニシテ鋭進ノ禍ニ罹ルノ時トス、又樂ム可ラザルニ樂ミ、哀ム可ラザルニ哀ミ、言行心情共ニ異ヲ立ルノ占トス、愼ムベシ
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)暴(ぼう)虎(こ)馮(ひよう)河(が)、死して後悔する。蒙昧ゆえ暴走して人災を招く時。また、楽しむべきでない時に楽しみ、哀しむべきではない時に哀しんで、言行や心情共にギクシャクする。
○総じて慎まなければならない。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)友人來リテ曰ク、余將ニ某女ヲ娶ラントス、依テ其吉凶如何ヲ占ハンコトヲ請フト、乃チ筮シテ、離為火ノ第三爻ヲ得タリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)友人がやって来て、次のように言った。
「わたしは今、ある女性をお嫁さんにしたいと思っている。そこで、その吉凶を占ってほしい」。
 それに応えて、占筮したところ、離の三爻を得た。
 易斷は次のような判断であった。
 離為火を自然に当て嵌めると「火」、その性質は「明」。人に当て嵌めれば、明智を具えた人。貴方がお嫁さんにしたいと思っている方は、明智を具えた人である。
 大局的に捉えると、初爻は燃える材料(薪や紙)、二爻は火そのもの、三爻は火から立ち上る煙。煙は周りを燻(いぶ)す。上に昇って、目上の人を燻(いぶ)す。これは誠の智恵ではない。邪心のある智恵である。
 その女性を娶れば、目上の人や両親に逆らって、嘆き悲しむことになる。
「日(ひ)昃(かたむ)くの離なり。缶(ほとぎ)を鼓(こ)して歌わざれば、則(すなわ)ち大(だい)耋(てつ)を之(こ)れ嗟(なげ)く。凶。九三は中を過ぎ下卦の終りに居(い)る。日が傾きまた日が昇る形。これから夜を迎え、人生が終わろうとする時。年老いた身を天命に任せ、素焼きの器で酒を飲み、器を叩いて拍子を取り、歌を唱って余生を楽しめば心安らかである。余命が短いことを嘆き悲しめば心は乱れる。残された人生は空しく儚(はかな)い」とは、その女性を娶れば、家庭の調和が乱れて、快く楽しむことができないと云うことである。家庭はどんよりと曇って、両親は嘆き悲しむことになる。
 よって、「その女性を娶ることはやめたほうがよい」と易断した。しかし、友人は易断に従わず、その女性を娶った。
 その結果、家庭の調和が乱れ、両親は嘆き悲しみ、終に離婚した。

離 九四 |・| |・|

九四。突如其來如。焚如、死如、棄如。
□九四。突如として其(そ)れ来(らい)如(じよ)たり。焚(ふん)如(じよ)たり、死(し)如(じよ)たり、棄(き)如(じよ)たり。
 剛毅に過ぎて、謙譲の德に欠ける(不中正)。君主を補佐する大臣の位にありながら、君主の座を射止めようとして猪突猛進する。烈火の如く天下国家を攪(かく)乱(らん)するが、誰の支持も得られずに自爆して、反逆罪で処刑される。大衆からも見捨てられ、その存在は葬(ほうむ)り去られる。
象曰、突如其來如、无處容也。
□突如として其(そ)れ来如たりとは、容(い)るる所なきなり。
 猪突猛進する。このような反逆者が、どうして世間に受け容れられようか。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)勇気ニ誇テ、常ニ人ノ諫ヲ用ヒズ、肆横侵凌自ラ禍ヲ取ル、諺ニ曰フ、飛で火に入る夏の虫トハ、其レ此九四ノ謂カ、愼ミテ災ヲ避ク可キナリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)自分の勇気を誇る余り、人からの諫めに全く耳を貸さず、やりたい放題を重ねて、自ら人災を招く。「飛んで火に入る夏の虫」とは、九四のこと。恐れ慎み人災に遭遇することを避けるべきである。
○婦人の場合は、嫉妬が原因となり、人間関係や事業が破綻する。
○ザワザワと騒がしい。私利私欲で動けば、人間関係や事業は破綻し、親しい人々は離れて、思いもよらない人災に遭遇する。
○延焼するという象(かたち)。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)明治二十三年春、友人某來リテ、本年ノ運氣ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ、離ノ第四爻ヲ得タリ・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)明治二十三年の春、友人がやって来て、今年の運氣を占ってほしいと頼まれたので、占筮したところ、離の四爻を得た。
 易斷は次のような判断であった。
 離を自然に当て嵌めると火。初爻は薪や石炭、燃料の役割をしている。二爻は火そのもの、すなわち炎。三爻は炎から立ち上る煙である。
 離為火は上卦と下卦が共に火。二階建ての家が火事になっている。火事になれば、上卦の火は下の炎で、ボウボウと燃え上がり、下卦の火の勢いは益々盛んになる。下から煙がモクモク立ち上り、上卦の火は煙によって勢いに陰りが見えるようになる。
 今回、人事を占って四爻が出た。三爻の煙に燻(いぶ)されて、炎の勢いに陰りが見える。下に居る人に迷惑を蒙(こうむ)る時。例えば、目下の人を可愛がって引き立てたのに、その人が恩を忘れて仇で返される。いわゆる「飼い犬に手を噛まれる」のである。その裏切り行為は非道くて、煙で人を燻すようなやり方をする。
 目は腫れて涙が溢れる。その炎の勢いは、猛火のようで近付くこともできない。このことを「突如として其れ来如たり。剛毅に過ぎて、謙譲の德に欠ける(不中正)。君主を補佐する大臣の位にありながら、君主の座を射止めようとして猪突猛進する」と云う。
 以上のようであるから、憤って怒りを抑えることができない。
 自分の名誉も失われようとしている。心は衰弱・苦悩して、何も楽しむことができない。このことを「焚(ふん)如(じよ)たり、死(し)如(じよ)たり、棄(き)如(じよ)たり。烈火の如く天下国家を攪(かく)乱(らん)するが、誰の支持も得られずに自爆して、反逆罪で処刑される。大衆からも見捨てられ、その存在は葬(ほうむ)り去られる」と云う。
 よって、「今年は目下の人に心を許してはならない」と易断した。
 だが友人は、お人好しで大らかで、わたしの易断を意に介せず、どんな人に対しても誠実であれば、相手もまた誠実であるはずだと心から信じていた。そこで、親族の少年(目下の人)に財産を委ねた。
 その少年は社会経験のないご苦労なしで、それを少しも有り難いと思わず、友人の恩に背いて、傍若無人に振る舞うようになった。友人は、家族や子孫のために長年積み上げた財産を一人の少年のために失ってしまった。それなのに、友人は自分の不明を責めて、その少年を咎めず、少年が改心することを期待して、少年を懇々と諭した。少年はその話をろくに聴かず、友人を怨むようになって、とんでもない態度に出た。とうとうお人好しの友人も嘆き悲しみ、憤りを感じて、病気になってしまった。
 友人は、このような状況になって初めて、「飼い犬に手を噛まれる」という易断の啓示を悟り、わたしの易断を意に介さなかったことを後悔したのである。
 何と云うことであろう。世の人々は、この事例を反面教師と受け取り、易断は天命であることを知るべきである。

離 六五 |・| |・|

六五。出涕沱若。戚嗟若。吉。
□六五。涕(なみだ)を出すこと沱(た)若(じやく)たり。戚(うれ)へて嗟(さ)若(じやく)たり。吉。
 文明と中庸の德を備えた天子だが、上下二陽に挟まれ、涙を流すような心労が絶えない。憂え悲しみ嘆かずにはいられない。
 柔中の仁德で時勢を見極め、戒め慎み、艱難辛苦に対処する。二陽の勢いは徐々に衰え、國家は安(あん)寧(ねい)に至る。
象曰、六五之吉、離王公也。
□六五の吉は、王(おう)公(こう)に離(つ)けば也。
 國家は安寧に至る。天子としての役割を全うすべく、憂え畏(おそ)れて、為すべき事を成すのである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)人ヲ慈愛スルノ深キ、能ク此爻ノ如クナルトキハ、其家ヲ齊ヘ天下ヲ治ルニ於テ何カアラン、彖伝ニ重明ニシテ以テ正ニ麗ク、乃チ天下ヲ化成スト曰フモ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)人を慈しみ愛する気持ちが深く、この爻の言葉を体現できる人ならば、その人が属する家族・地域・組織は調和して、平和な天下国家を実現できる。彖伝に「重(ちよう)明(めい)にして以て正に麗(つ)く。乃ち天下を化成す。日日に新たに太陽が昇るように、人は明智に明智を重ねて正しい道に麗く。すなわち君主が太陽のような明德を発現して、臣民を化育すれば、文化・文明は生成発展する」とあるのは、この爻を称賛しているのである。世の爲政者は、この爻を見習って自戒すべきである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)某豪商ノ身上ヲ占ヒ、筮シテ、離ノ第五爻ヲ得タリ・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)ある大富豪の商人から運勢(身の上)を占ってほしいと頼まれたので、占筮したところ、離の五爻を得た。
 易斷は次のような判断であった。
 離は、火のように明らかで、明智も具えている。上卦と下卦が共に火であることから、明智を具えている二人の人物が知識を競い合って、終には、権利を争うことになる。
 老練な人ならば、争いを避けることを、思慮すべきである。
 占いを請うた商人は、以上の易断を聞いて、次のように言った。
「何と、絶妙な易断であろうか。神が示された天命であろう。わたしの家は、先代の恩恵によって財産が豊富だから、生活に困ったことはない。だが、さらに豊かになるべく事業を興し、親族や使用人がそれぞれ役割に応じて事業を担うようになった。
 ところが、彼らは事業に夢中になるあまり、壮年の親族や使用人は頭にカーッと血が昇り、浅はかな智恵を振りかざし、言い争うようになって、揉(も)め事が絶えなくなった。わたしが親族や使用人の生活を安定を願っていることを知らずに、内々の權力闘争に明け暮れ、事業に支障を来すようになった。何と思慮が浅いことであろうか。わたしは無益な争いをして親族と使用人が仲良くできないことを嘆息するしかない…」。
 わたしは商人の話を聞いて考え込んでしまった。商人の言葉は爻辞とピタリと重なる。人間の活動は限界がないようで、実際には限界があることを知っておくべきである。

離 上九 |・| |・|

上九。王用出征。有嘉折首。獲匪其醜。无咎。
□上九。王用(もつ)て出(い)でて征(せい)す。嘉(か)有り。首(かしら)を折る。獲(え)ること其(そ)の醜(たぐい)に匪(あら)ず。咎无し。
 天子の命令で、反乱軍を討伐すべく出征する。見事に反乱軍の首(しゆ)領(りよう)を討ち滅ぼすが、手下の仲間には寛大に対処する。誰からも咎められない。
象曰、王用出征、以正邦也。
□王用(もつ)て出(い)でて征(せい)すとは、以(もつ)て邦(くに)を正すなり。
 天子の命令で出征する。天子を補佐して、國を正しく治めるためである。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)勇氣ヲ用ヰテ奸惡ヲ制シ、大ニ功アルノ時トス、智識明達ノ人、大事ニ當リ實功ヲ奏スルノ時ナリ、・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)勇気を持って悪を制止すれば、大きな成功を治める時である。明智を具えた人が大事業に中って実質的な成功を治める。
○剛毅さと明察さを極める時。よく決断する(決断できる)。
○智恵が多いので幸福が得られる。

 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)明治七年三月、佐賀亂ル、朝廷將ニ師ヲ發シテ、之ヲ征討セントス、陸軍大佐某、同中佐某ノ二氏來リ、余ニ謂テ曰ク、聞く子ハ易占に精シト、試ニ今回ノ征討ヲ筮セヨト、余乃チ之ヲ筮シテ、離の上爻ヲ得タリ・・・
 以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)明治七年三月、佐賀の変が起こった。政府が官軍を整え征伐しようとしている時に、陸軍大佐の某氏と中佐の某氏がやって来て、
「あなたは易占に詳しいと聞く。そこで、今回の征伐の結果を占ってほしい」と頼まれた。
 そこで、占筮したところ、離の上爻を得た。
 易斷は次のような判断であった。
 離は上卦・下卦共に火。火には戦争・征伐という象(かたち)があります。また、先に発した者が必ず勝つ象もあります。さらには、あれよあれよという間に、激動の叛亂が勃発する象もあります。物に付着して、蔓延(はびこ)るという象もあります。自然に消滅してしまうという象もあります。
 以上の五つの象に拠れば、今回の叛亂は、あれよあれよと大事変が始まって、徐々に他に波及していくでしょう。政府は速やかに官軍を派遣して、他に波及することを、防がなければなりません。速やかに対処すれば、叛亂はあっという間に鎮定されるでしょう。
 上爻の爻辞に「王用(もつ)て出(い)でて征(せい)す。嘉(か)有り。天子の命令で、反乱軍を討伐すべく出征する」とあるのは、天皇陛下の命令で出兵して、宜しき結果を治めることを云います。
 天皇陛下を安易に現地に赴かせてはなりません。必ず天皇陛下の代理(親王)を総大将に立てて、現地に赴かせるべきです。
「首(かしら)を折る。獲(え)ること其(そ)の醜(たぐい)に匪(あら)ず。咎无し。見事に反乱軍の首(しゆ)領(りよう)を討ち滅ぼすが、手下の仲間には寛大に対処する。誰からも咎められない」とは、官軍は反乱軍の首領は厳しく処罰し、下っ端には寛大に対処すれば、叛亂軍の過ちを補って、咎めを免れることを云います。上爻の応爻九三が官軍に背いた叛亂軍と想定します。
 九三の爻辞に「九三。日(ひ)昃(かたむ)くの離なり。缶(ほとぎ)を鼓(こ)して歌わざれば、則(すなわ)ち大(だい)耋(てつ)を之(こ)れ嗟(なげ)く。凶。九三は中を過ぎ下卦の終りに居(い)る。日が傾きまた日が昇る形。これから夜を迎え、人生が終わろうとする時。年老いた身を天命に任せ、素焼きの器で酒を飲み、器を叩いて拍子を取り、歌を唱って余生を楽しめば心安らかである。余命が短いことを嘆き悲しめば心は乱れる。残された人生は空しく儚(はかな)い」とあり、象伝に「日(ひ)昃(かたむ)くの離は、何ぞ久しかる可(べ)けん也(や)。もう夜を迎えた。余命が短いことを嘆き悲しんでも、どうなるものでもない」とあります。今回の叛亂は、そう長引かずに鎮圧されるでしょう。
 この爻変ずれば雷火豊。豊の下卦は火、上卦は木(五行)。下にある火が、上にある木を焼く、官軍が叛亂軍を焼き滅ぼすことになります。
 以上のことから、官軍は大勝利して、叛亂軍の首領を捕らえ、謀反を鎮定すること一ヶ月を要さないでしょう。
 その後、一ヶ月も経たないうちに、叛亂軍は大敗し、首領を始め謀反の首謀者はみな捕らえられたのであった。