升 九三 ・・・ ||・
九三。升虚邑。
□九三。虚(きよ)邑(ゆう)に升(のぼ)る。
上六と応じ六四と比する。支援者に恵まれている。
人のいない村落を闊歩(かつぽ)する(空虚な陰爻で成る上卦坤に升り進む)ように、誰にも妨げられずに、どんどん升り進むことができる。
象曰、升虚邑、无所疑也。
○虚(きよ)邑(ゆう)に升(のぼ)るとは、疑(うたが)ふ所(ところ)无(な)き也(なり)。
どんどん升り進むことができる。誰も九三を疑わないのである。
以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)才德アリテ、衆人服從シ、前路妨ゲナク、升進スルコト、恰モ軍ヲ無人ノ境ニ行リ、向フ所敵ナキガ如シ、又位階升進スルノ象アリ、・・・
以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)才德具えて、大衆は服従する。前進する道を妨害する者はなく、軍隊が無人の荒野を驀進して向かう所に敵は存在しないように、上り進み、地位はドンドン昇進する。
○大勢の人々が進み行くことを楽しむ時である。
○南方面に進んで行き、無人の村落に潜んで、謀反を企んでいる小人を討伐する。
○少人数で大勢の人々を心服させる時である。
○激烈な心で対処する時である。
以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)明治十六年、縉紳某、某縣令ニ任ゼラレ、將ニ任所ニ赴カントス、因テ其吉凶ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ、升ノ第三爻ヲ得タリ、・・・
以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)明治十六年、ある紳士が県令(現在の知事)に任命された。現地に赴任しようとする時にやって来て、その吉凶を占ってほしいと頼まれたので、筮したところ升の三爻を得た。
易斷は次のような判断であった。
升は果実の種が春のエネルギーを得て、地上に木の幹をスクスクと伸ばし、大木に育って実を結ぶ時である。人間に当て嵌めれば、盛運に乗って出世する時である。
今回占って三爻が出た。貴方がその県に赴任するに中り、貴方とその県の臣民の心は和合一致して、何一つ障害となる存在はない。それゆえ「虚(きよ)邑(ゆう)に升(のぼ)る。上六と応じ六四と比する。支援者に恵まれている。人のいない村落を闊歩(かつぽ)る(空虚な陰爻で成る上卦坤に升り進む)ように、誰にも妨げられずに、どんどん升り進むことができる」と云う。
運氣は以上のようであるから、貴方が心から県民を可愛がって、よき県土や県風を育てるために尽くせば、県民に信服されて、貴方の地位は安泰となると易断した。
その後、易占の通りの結果となった。