益 六三 ||・ ・・|
六三、益之用凶事。无咎。有孚中行。告公用圭。
□六三、之(これ)を益すに凶(きよう)事(じ)を用(もち)ふ。咎无し。孚有り中(ちゆう)行(こう)有り。公に告(つ)ぐるに圭(けい)を用(もち)ふ。
六三は柔順不正で下卦震(雷動)の極点に居るので通常は益することは難しいが、非常時に六三を用いて艱難辛苦を克服すれば、咎を免れることができる。
六三は至誠の心と中庸の德で事に中る。至誠の心が君主に伝わり、神を祭る五角形の玉を献上するように信頼される。
象曰、益用凶事、固有之也。
□益すに凶(きよう)事(じ)を用(もち)うるは、固(もと)より之(これ)を有する也。
艱難辛苦の非常時に六三を用いる。元々六三が確乎不抜の志を抱いているからである。
以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての原文の一部。
(占)大利ヲ獲テ富ヲ致サンコトニ熱心シ、爲ニ艱難ニ陥ルノ時トス、然レドモ其艱難タルヤ、其心ヲ磨キ、其志ヲ固メ、異日開運ノ資ト爲ルベキ者ナルヲ以テ・・・
以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占いの見立ての現代語訳。
(占)大きな利益を得て富を築き上げることに熱心なあまり、艱難に陥る時である。後日、開運を招き寄せる人物ゆえ、落胆せずに、心を磨いて、確乎不抜の志を抱き、正しい道を歩むべきである。
○動く性質の極点に居る。艱難や非常事態に遭遇する時である。
以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の原文の一部。
(占例)友人某來リテ、氣運ヲ占ハンコトヲ請フ、乃チ筮シテ、益ノ第三爻ヲ得タリ、
以下、高島嘉右衛門著高島易斷の占例の現代語訳。
(占例)ある友人がやって来て、氣運を占ってほしいと頼まれた。そこで、筮したところ益の三爻を得た。
易斷は次のような判断であった。
益は風雷が造化を補佐して万物が生育する時である。これを人間に当て嵌めれば、勉強に励み勤労に努め、氣運に乗って、他人を助け、結果的に利益を受け取る時である。
今回占って三爻が出た。三爻は、利益を受け取ることを喜ぶあまり、妄進して利益を貪(むさぼ)り取ろうとする人物である。三爻は不中正で、利益を貪り取ろうとして妄進する。いつも、邪心を抱き、利益を得るためには、親族や朋友であっても、容赦なく接する。他人の場合は尚(なお)更(さら)である。お金に困った人を見れば、すっと近付いて行き、とんでもない高利でお金を貸し付ける。返済が遅れれば、滞納金を要求し、悪質な取り立てを行い、終には裁判沙汰にして、相手の資産を搾り取る。そのため、相手の家族は離散して不幸のどん底に沈む。
お金を借りた当人が破産するだけでなく、残された家族は親類に頼るしかなく、とても苦しい状況に置かれる。高齢者の場合には、病気にかかっても医者にも行けない状況に陥り、子どもの場合には、学校にも行けない状況に陥る。妻は自分の子どもを手放して他人の乳母となる。何ともやるせない話である。
このような状況に陥ったのは、欲に目が眩んだからである。このことを「之(これ)を益すに凶(きよう)事(じ)を用(もち)ふ」と云う。それゆえ、利益を貪り取れば取るほど、周りの人々の怨みも貯まり、その怨みは子孫にまで及ぶ。貴方が、このような状況にまで陥るとは思えないが、利益を得ることに執着すれば、このような状況に陥る。逆に貴方が己の邪心を捨てて、天下国家を救済する志を抱けば、貧者を救うためにアメリカ大陸に移民のための会社を設立して、貧者に職を与え、政府からお褒めの言葉を賜る。このことを「孚有り中(ちゆう)行(こう)有り。公に告(つ)ぐるに圭(けい)を用(もち)ふ。六三は至誠の心と中庸の德で事に中る。至誠の心が君主に伝わり、神を祭る五角形の玉を献上するように信頼される」と云う。
全ては貴方次第(利益を得ることにに執着するか、天下国家を救済する志を抱くか)であると易断した。(易占の結果は書いてない。)