○象に曰く、山の下に風有るは蠱なり。君子以(もつ)て民を振(ふる)い德を育(やしな)う。
大象伝は次のように言っている。山(さん)麓(ろく)に風が押し止(とど)められて山麓の草木や民家が惑乱・腐敗するのが蠱の形である。君子はこの形に見習って窮すれば変ずるが如く変革を断行し、臣民の志を奮(ふる)い立たせて、臣民の人德を養い育てるのである。
ここまでが、原文(漢文と書き下し文)と意訳で見た、山風蠱の「大きな物語」である。
ここからは「小さな物語」となる。「小さな物語」は六つある。一つひとつを原文(漢文と書き下し文)を示した上で、初心者が理解できるように意訳していく。
初六 ☶☴ 之卦 二六山天大畜☶☰
初六。幹父之蠱。有子考无咎。厲終吉。
○初六。父の蠱(こ)に幹(かん)たり。子(こ)有り、考(ちち)咎(とが)无(な)し。厲(あや)うけれども終(つい)に吉(きつ)。
貴方は先代の事業(組織)を引き継ぎ、旧来の弊(へい)害(がい)を刷新しようと決意する。事業(組織)継承者として旧来の弊害を刷新できれば、先代の名誉に傷を付けない。
己の拙(つたな)さを自覚(先代を尊敬)して持(じ)戒(かい)精(しよう)進(じん)(先ずは事業継承者として周りの人から認められれれば)すれば、終(つい)には幸運を得る(旧来の弊害を刷新することができる)のである。
象曰、幹父之蠱、意承考也。
○象に曰く、父の蠱に幹たりは、意、考に承くる也。
貴方が旧来の弊(へい)害(がい)を刷新しようと決意するのは、尊敬する先代の志を継承して、事業(組織)を継続発展させようとしているからである。以下省略。