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はじめての易経 23.山地剝

二十三山地剝 ☶ ☷ 艮上坤下

 互卦  二坤爲地 ☷☷
 綜卦 二四地雷復 ☷☳
 錯卦 四三澤天夬 ☱☰

 山地剝は陰陽消長卦の循環の中にある大衰運の時。下限の坤為地☷☷の一歩手前に位置している。だが、一陽五陰であるから一陽上九の五陰に対する影響力は弱くない。一陽を剝ぎ落とそうと束になって迫ってくる五陰の勢いを、上卦艮☶の山のようにどっしりと構えてくい止める。
 陰陽消長卦では、「山地剝☶☷→坤為地☷☷→地雷復☷☳」と進んで行くが、下限の坤為地に至っても陰が消滅したわけではない。陰の裏側に隠れているのである。そして、坤為地の時が終われば一陽が表に現れ地雷復となって衰運は終わり、盛運に移行する。下卦坤☷を小人(陰)と見立て、上卦艮☶を君子(陽)と見立てると、山地剝は小人(陰)の立場の物語。君子(陽)の立場の物語は、綜卦の地雷復☷☳となる。
 そもそも小人(陰)は君子(陽)がいるから生きていけるのである。君子は人の上に立つことを前提に己を磨いている。やがて指導者として色々な組織を率いることになる。組織を率いる者は己の利益を優先しない。
 剝ぎ落とされる君子の立場で見れば、坤為地を経て、やがて地雷復で復活する。山地剝の時に一陽として最大限の力を発揮すれば、一旦剝ぎ落とされても、その力で地雷復の時に復活する。
 山地剝の時に一陽としてやるべきことをやりきる。それが君子の道である。

 以上が山地剝の概要である。
 ここから先は原文(漢文と書き下し文)を示した上で、初心者でも理解できるように意訳していく。(太字を読めば理解できる。)

剝、不利有攸往。
○剝(はく)は往(ゆ)く攸(ところ)有るに利(よろ)しからず。
 剝は陰気が増長して盛んになり陽気を押し出す(一陽五陰の)時。下から漸次に長じてきた陰氣が浸食する力に山が剝ぎ落とされて平地になる(下流階級と中流階級、上流階級の一部が腐敗・堕落してしまい、極めて少数の上流階級の人や一部の人格者だけが道を守っている)ように、君子(陽爻)が小人(陰爻)に(一陽五陰にまで)追い詰められてしまった。
 人事に当て嵌めた場合、このような陰陽消長の流れの中で、君子(極めて少数の上流階級の人や一部の人格者)は積極的に行動してはならない(積極的に行動すればあっという間に追い詰められてしまう)。陰氣が浸食する時勢に順い止(とど)まって、様子を窺(うかが)うべきである。