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人生に役立つ易経 澤雷随

 澤雷随は随う時であるから陰の卦とも云える。繋辞上伝第三章に「卦には小大有り」とある。黒岩重人先生は「全釈易経下」の中で「小は小卦、すなわち陰卦をいい、陰爻を主とする卦のこと」と解説している。「陰爻を主とする卦」の解釈は難しく、彖に陰爻が多いから「陰卦」と考えるのは違うと思う。澤雷随は陰陽三爻ずつで同数であるが、「今随うべき相手に随う時」だから明らかに「陰卦」である。「陰卦」とは「陰」の「柔順、従う、承ける、消極的、静的」という「陰」の性質を持っている卦であろう。
 澤雷随はその時々に随うべき相手に随いなさいと教えている。易経の時には三つの概念がある。一つは時間軸の時、一つは空間軸の時、一つは社会軸の時である。物事の進捗状況の中で誰に随うべきか(時間軸)、横に広がる人間関係の中で誰に随うべきか(空間軸)、社会や組織の地位の中でどの地位の人に随うべきか(社会軸)を考えるのである。

 以上が澤雷随の概要である。
 ここから先は原文(漢文と書き下し文)を示した上で、初心者でも理解できるように意訳していく。

隨、元亨利貞。无咎。
○隨(ずい)は元(おお)いに亨(とお)る。貞(ただ)しきに利(よろ)し。咎(とが)无(な)し。
 隨(ずい)は、その時、随(したが)うべき相手に随(したが)う時の道を説いている。卦の象(かたち)を観ると、下卦震(陽卦)の長男が、上卦兌(陰卦)の少女に謙(へりくだ)って随(したが)っている。随(したが)うべき相手に素直に随(したが)っているので、何事もすらすら通る。その時、随(したが)うべき相手に素直に随(したが)って、正しい道を守るが宜しい。随(したが)うべき相手に素直に随(したが)えば、何も問題は起こらない。以下省略。