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人生に役立つ易経 離為火

 以上のことから、「坎為水☵☵」は「水害・水難・困苦」など「坎水」の性質がもたらす艱難辛苦を人類が乗り越えるための物語を示し、「離為火☲☲」は「爆発・争う・競う・中虚・虚飾」など「離火」の性質がもたらす艱難辛苦を人類が乗り越えるための物語を示していると考えることもできる。
 離為火の時は下卦を過去の文明(成功)、上卦を今または将来の文明(困窮)と見立てることができる。日本の歴史に重ねると下卦(成功)は建国から江戸時代に至るまでの文明創造であり、上卦(失敗)は明治維新から今日までの文明崩壊である。日本の文明を崩壊させないためには、建国から江戸時代に至るまでの文明創造期に何を考え何を行ったかをよく学び、それを現在に取り入れることが求められるが、今の日本政府は過去を切り捨て否定して政治を行っている。これでは文明は崩壊するしかない。
 このように、下卦を過去の文明(成功)、上卦を今または将来の文明(困窮)と見立てて、離為火の爻辞を読めば、今日本政府が何を行うべきか、その答えが書いてある。けれども、今の政治家や官僚は易経を全く学んでいないので、その答えを導き出すことができないのである。易経は高島嘉右衛門によって明治時代までは政治を下支えしてきたが、それ以降は政治から切り離されてしまった。日本の昏迷は日本の指導者層が易経を全く学んでいないことに起因すると考えることもできる。

 以上が離為火の概要である。
 ここから先は原文(漢文と書き下し文)を示した上で、初心者でも理解できるように意訳していく。

離、利貞。亨。畜牝牛吉。
○離は貞(ただ)しきに利し。亨(とお)る。牝(ひん)牛(ぎゆう)を畜(たくわ)えば吉。
 離は天地人の道の正しきに麗(つ)きて(人間社会に当て嵌めれば大人・君子は要職に就くべきだが小人は要職に就くべきではない)明智・明德を用いて世を治める時である。
 常に堅固に正しき道に麗(つ)きて明智・明德を用いるが宜しい。そうであれば、何事もすらっと通る。柔順な牝(め)牛(うし)を養い育てるように、柔順に正しき天地人の道に麗(つ)き(大人・君子が要職に就い)て明智・明德で世を治めれば、幸運を招き寄せる。以下省略。