毎日連載! 易経や易占いに関する情報を毎日アップしています。

時の物語(易経短編小説集・近日中に出版予定)16

十五.謙遜して支える時

 次は「謙遜して支える時」の物語である。小は家庭から大は国家まで組織の上層部に人材が不在で組織を収められない時は、下層部のリーダーが組織を支えるしかない。家庭においては長男や長女、団体においては現場のリーダー、会社においては部長や店長である。その際、下層部のリーダーは上層部に人材がいないことを見下してはならない。上層部には謙遜して仕えて上層部が組織を動かしているように見せなければならない。
 家庭においては長男や長女が父母に謙遜して仕え、団体においては現場のリーダーが役員に謙遜して仕え、会社においては部長や店長が経営陣に謙遜して仕えなければ、組織を存続させることはできないのである。もし下層部のリーダーが上層部に取って代わろうとすれば、権力を有する上層部の力で組織から抹殺されるであろう。
 組織にとっては「謙遜して支える時」がない方が望ましい。だが、本当のリーダー教育が行われていない今日においては上層部に人材がいない組織は少なくない。そのような組織に属している場合は下層部のリーダーが謙遜して上層部を支えるしかない。それが「謙遜して支える時」である。あなたが組織下層部のリーダーなら覚悟しなければならない。

 「謙遜して支える時」の主人公は「六.内部分裂する時」に登場した地方の旧家の今時珍しいほどの大家族に嫁いだ専業主婦の夫である「あなた(わたし)」である。

 地方の旧家の今時珍しいほどの大家族の家族構成は次の通りである。
 祖父(八十九歳)、祖母(八十六歳)、父(五十九歳)、母(五十四歳)、わたし(三十四歳)、妻(二十九歳)、弟(二十九歳)、妹(二十七歳)、長男(四歳)、長女(二歳)。
 大家族の上層部は祖父と祖母(威厳あるご意見番)、父(ご意見番に従うトップ)・母(側近)で、下層部はわたし(下層部のリーダー)、妻(リーダーの補佐)、弟と妹(役に立たない中間管理職)、長男と長女(全く役に立たない組織構成員)である。
 わが家の問題点は時代錯誤の祖父と祖母がご意見番として君臨しているので、トップの父はその方針に逆らうことができないところにある。側近の母は普通の家族から嫁いできたので時代錯誤な大家族の方針に反発することが多いが声に出すことはできない。すなわちわが家の方針は時代錯誤の祖父と祖母によって決められてしまうので、家族仲良く暮らしていくことができないのである。以下省略。