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時の物語(易経短編小説集・近日中に出版予定)15

十四.全てが順風満帆な時

 次は「全てが順風満帆な時」の物語である。「全てが順風満帆な時」は、小は家庭から大は国家まであらゆる組織のリーダーが人格者(思いやりの人)であることが前提条件となる。一方優れた組織は「一.がんばる時の物語」に書いてあるように「夢や希望の矢印を自分に向けるのを止めて、他人や社会に向ける」ことが求められる。志ある組織のリーダーは人格者であるが同時に権力者でもある。権力者が組織を率いるから優れた組織になるが、人格と権力のバランスが権力に傾くと組織に亀裂が生じるようになる。組織に亀裂が生じると組織を守るために権力者はその地位を追われる。すると人格者(思いやりの人)がリーターの地位に就いて組織が安定する。ほとんどの組織がそのようなことを繰り返すのである。
 「全てが順風満帆な時」の物語は、一人の人格者(思いやりの人)がリーダーの地位に在り続ける時である。古事記や日本書紀に描かれる「民の竈」で有名な仁徳天皇の時代が「全てが順風満帆な時」である。誰もが生きていくためには組織に属さなければならない。ならばリーダーが人格者(思いやりの人)で在り続ける組織に属したいものである。
 あなたが今属している組織が「全てが順風満帆な時」ならばあなたは幸せである。人類は古くからあらゆる組織が「全てが順風満帆な時」になることを理想とした。

 「全てが順風満帆な時」の主人公は「十一.安定する時」に登場した、江戸時代の中期に創業し三百年の歴史を誇る地方の老舗企業に勤めている「あなた(わたし)」である。

 わたしが勤める「江戸屋」の社風は「思いやり」である。「上の者は下の者を思いやり、下の者は上の者を尊敬する」を社訓とする企業文化である。しかし、当初「江戸屋」の社風は「思いやり」ではなかった。「江戸屋」の創業者は「思いやり」を大切にする人だったが子宝に恵まれなかった。そこで養子を迎え入れて「江戸屋」を継がせたが、二代目には敵が多くしばらくは「思いやり」の企業統治ができなかった。「江戸屋」の創業者には兄弟が二人居て番頭(側近)として「江戸屋」に貢献していた。兄弟にはそれぞれ後継ぎの息子がいて、「江戸屋」の二代目候補だった。だが、創業者は自分が迎え入れた養子を後継者に指名した。創業者の兄弟とその息子はそれが不満だったので「江戸屋」から二代目を追い出そうと画策した。二代目は経営者としての力量を磨く努力をした。自分を「江戸屋」から追い出そうとしている創業者の兄弟と息子に対抗するためである。その結果「江戸屋」の社風は「実力主義」となり、実力ある者が出世して要職に就くようになった。みんなが切磋琢磨して仕事に励んだので、「江戸屋」の業績は伸びて店子(従業員)も増え藩主(お殿さま)からも一目置かれるようになった。以下省略。