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人生に役立つ易経 天山遯

 易経には様々な解釈があり、著者が易経に惹かれるきっかけとなった安岡正篤先生は実に面白い解釈をしている。「澤山咸☱☶の時に出逢った若い男女が結ばれて雷風恒☳☴の時となり、夫婦となって幾久しく共に歩む。だが、男たる者家庭に縛られてはならない。広く社会に出て社会人としての役割を果たさなければならない。だから、家庭から逃げて社会に向かうことが必要である。それが天山遯の時である」と。実に面白い解釈である。
 著者は天山遯の時を、衰運の流れに身を任せて、やがてやってくる盛運の流れをイメージし、今自分が何をやるべきかを考える。そして、小人が蔓延(はびこ)って乱れている社会には背を向けて、今やるべきことを只管(ひたすら)やり続ける時だと解釈している。陰陽消長卦の循環で捉えると衰運の時はまだまだ続くが、やがては地雷復☷☳の時が来て盛運に転じる。その時に発揮する陽のパワーを衰運の時に蓄えておくのである。
 外に向かっては、大きな事には絶対に取り組んではならないが、小さな事なら取り組むこともできる。社会的に何もしないというわけにはいかないので、仕事や生活など必要最小限の事にはキッチリと取り組んで成就すべきは成就するのである。
 内に向かっては、将来展望を描き、志をしっかりと確立して、将来外に向かって発揮するパワーを今は内に蓄えておくのである。
 隠遁を前向きに捉えて、嫌な事、嫌な社会、嫌な世の中、現世のしがらみから、如何にして見事に隠遁して、悠々自適と人生を送るかと解釈することもできる。考えてみれば、今の世の中どんどん狂った方向に進んでいる、と筆者は思っているが、それを正そうとして、世の中に真正面から立ち向かって行ったところで、どうにもなるものではない。ならば、こんな世の中には背を向けて、有意義な人生を送るために、自分がやりたいことを悠々自適とやっていくのも悪くない。
 古事記に当て嵌めれば、建(たけ)御(み)雷(かづち)之(の)男(お)の神(雷天大壮☳☰)に戦いを挑んだものの、建(たけ)御(み)雷(かづち)之(の)男(お)の神の圧倒的な強さに恐れをなし長野の諏訪湖まで逃げ、命乞いして国譲りを承諾した大国主の神の皇子(みこ)・建御名方(たけみなかた)の神は、雷天大壮☳☰の綜卦(建(たけ)御(み)雷(かづち)之(の)男(お)の神の敵建御名方(たけみなかた)の神の立場に立つと)天山遯☰☶となる。

 以上が天山遯の概要である。
 ここから先は原文(漢文と書き下し文)を示した上で、初心者でも理解できるように意訳していく。以下省略。