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人生に役立つ易経 水火既済

 水火既済は吉運であるが、今がピークであり、これからは衰運に落ちていくことを避けられない。今が最高の状態であるから、この状態にあることを喜び、満足して、これ以上を望んではならないのである。こう考えると水火既済は吉運ではあるが、将来に希望が持てないと云う意味で、哀しい時である。
 卦象で見ると、下卦離☲の火の上に、上卦坎☵の水がある。火の熱が水を温め沸騰して蒸気となる。蒸気は雲となり、雲からは慈雨が降ってくる。このような好循環が幾久しく続けば、みんな幸せである。だが、幸せは何時までも続かない。水火既済の次には火水未済が置かれている。火水未済は下卦坎☵の水の上に、上卦離☲の火がある。火が上に在っては水はいつまで経っても温まらないので沸騰しない。沸騰しなければ蒸気とならなければ雲はできない。雲ができなければ慈雨は降ってこないのである。
 卦象を下から追っていくと、最初は下卦離☲の明智・明德から始まる。離☲は明るく光り輝いている。次は二三四爻の互体坎☵の困難が待ち構えている。坎☵の困難を坎☵の心と思想と情で乗り越えていく。その次は三四五爻の互体離☲となる。坎☵の困難を心と思想と情で乗り越えて、再び離☲で明るく光り輝くのである。最後は上卦坎☵である。以上の経験を経て、水火既済の君子は坎☵の哲学者、思想家、宗教家、僧侶、教育家として大成するのである。

 以上が水火既済の概要である。
 ここから先は原文(漢文と書き下し文)を示した上で、初心者でも理解できるように意訳していく。

既濟、亨小。利貞。初吉、終亂。
○既(き)濟(せい)は亨ること小なり。貞しきに利し。初めは吉、終りは亂(みだ)る。
 既濟は六爻全て正位・正応・正比と完璧な(完成した)形をしているが、既に完成しているので伸びしろがない。それゆえ、大きな事は成就しないが、小さな事なら成し遂げられる。正しい道(道德)を固く守ることが肝要である。以下省略。