卦象を下から追っていくと、下卦艮☶の制止している状況は、やがて二三四爻の互体巽☴となり迷いが生じる。その迷いは三四五爻の互体兌☱となり楽しみ悦びに変わる。最後は上卦震☳となり動き進んで決断する。
雷山小過の時は、プラスの方向にやり過ぎることなく、マイナスの方向に程よくやり過ぎる。プラスの方向に程よくやり過ぎることは難しくないが、マイナスの方向に程よくやり過ぎることは、かなり難しいのである。
以上が雷山小過の概要である。
ここから先は原文(漢文と書き下し文)を示した上で、初心者でも理解できるように意訳していく。
小過、亨。利貞。可小事。不可大事。飛鳥遺之音。不宜上、宜下。大吉。
○小(しよう)過(か)は亨る。貞しきに利し。小事に可なり。大事に可ならず。飛(ひ)鳥(ちよう)、之が音(ね)を遺(のこ)す。上(のぼ)るに宜しからず、下るに宜し。大吉。
小(しよう)過(か)は小(陰)が少し過ぎる(小さいものが過ぎる、小さいことが過ぎる、少しく過ぎる、以上「公田連太郎述 易経講話四」)ことが妥当である場合には、物事がうまく進んで行く時である。
小(陰)が少し過ぎることは、本来善いことではないので、自らの過ぎたる所を知って程よい所に戻り、正しい道(道德)を固く守ることが求められるのである。小過の時は、小(陰)が小さく行き過ぎることなら許されることがあるが大きく行き過ぎることは許されない。また、小さな事なら成し遂げられるが、大きな事は成し遂げられないのである。
小過は大きな坎☵(大卦坎)の形をしている。それは、飛ぶ鳥の形(真ん中の陽爻が身体、上下の陰爻が翼)である。鳴き声が耳に残る所までは行ってもよいが、鳴き声が聞こえなくなる所まで行き過ぎてはならない。どこまでも高く飛翔しようなどと図に乗ってはいけないのである。ほどほどの所で下に降りてくることが肝要である。上を目指して傲(ごう)岸(がん)不(ふ)遜(そん)になってはならない。下に謙って、謙遜謙譲して控え目にすべきである。
以上のようであれば、大きな幸運を招き寄せる。以下省略。