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はじめての易経 44.天風姤

四十四天(てん)風(ぷう)姤(こう) ☰ ☴ 乾上巽下

 互卦  一乾爲天☰☰
 綜卦 四三澤天夬☱☰
 錯卦 二四地雷復☷☳

 天風姤☰☴は乾為天☰☰初爻の之卦である。乾為天初爻は志や公的な目的を確立する時である。自分のために何をするのかという野心・野望ではない。世のため人のために何をするのかという志や公的な目的である。この志や公的な目的を高らかに打ち立てることによって、乾為天の大盛運が始まるのである。
 ところが、世のため人のために何をするかという発想がなく、「今だけ金だけ自分だけ」という発想でしか物事を考えられない自分中心の人間は、乾為天初爻の時を全うできずに、陽爻が陰爻に変じて乾為天☰☰の時は天風姤☰☴の時に転じてしまうのだ。
 陰陽消長卦の循環で見ると、天風姤は衰運の始めである。全て陽爻で成る大盛運の乾為天の時が終わると、これまで続いてきた盛運の流れが衰運の流れに転じる。その始めが天風姤である。
 例え乾為天初爻の時に世のため人のために何をするかという志や目的を確立して、二爻→三爻→四爻と順調に進み、五爻に至ってその志や目的を成就したとしても、最後の上爻で行き詰まって地雷復☷☳→地澤臨☷☱→地天泰☷☰→雷天大壮☳☰→澤天夬☱☰→乾為天☰☰と続いてきた盛運の流れは終わり、一番下に陰爻が現れて衰運の流れに転じるのである。
 天風姤☰☴は怖い時である。誰もが一番下にスッと入り込んできた陰爻が及ぼす害悪に気付かない。むしろ、一陰五陽の陰爻に魅力を感じて近付いて行く。害悪と知らずに近付いて行けば、害悪はアッという間に全体に広がる。
 一番下に入り込んできた陰爻の害悪にいち早く気付くのは五爻のトップである。五爻のトップは指揮官なので自ら動くことはできない。そこで、陽爻同志ながら志を同じくして応じている二爻に命じて、陰爻の害悪が全体に及ばないようにする。
 明治維新以来、近代化を図るべく明治天皇を頂点に戴き、驀進を続けて世界の一流国となり、自国を守ると共に東南アジアの植民地を独立させるために大東亜戦争を戦った日本が、戦争に敗れてGHQという害悪が日本社会にスッと入り込んできた。
 天風姤の五爻である昭和天皇は二爻の歴代政府・総理に初爻の害悪が日本全体に広がらないような政治をしてほしいと願った。ところが、歴代政府・総理は目先の経済成長に目を奪われ、戦後レジームの枠組みに囚われ、今や日本の運命は風前の灯火になってしまった。日本社会は天風姤の害悪が知らず知らずのうちに全体に広がるように、日本人本来の精神を喪失する戦後レジームの枠組みを定着させてしまったのである。

 以上が天風姤の概要である。
 ここから先は原文(漢文と書き下し文)を示した上で、初心者でも理解できるように意訳していく。(太字を読めば理解できる。)以下省略。