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四季と易経 その三十五

皐(さ)月(つき)と水(み)無(な)月(づき)に中る区分

 皐月と水無月にまたがる陰陽消長卦と十二支、二十四節氣の順序で整理してみる。

皐(さ)月(つき)(和風月明)
【新暦五月一日から三十一日】

 5月はさつき。田植えの時期ということもあり、「早苗月(さなえづき)」と呼ばれ、それが「さつき」へと変化したともいわれています。(「暮らしのこよみ」)

水(み)無(な)月(づき)(和風月明)
【新暦六月一日から三十日】

 旧暦では梅雨が明け、夏の暑さが始まるころ。田んぼの水が涸れた状態を言い表して「水無月」との呼称がついたといわれています。しかし実際はまだまだ梅雨半ばの時期。田んぼには豊かに水が張られ、まるで「水張月」のようです。(「暮らしのこよみ」)

乾為天(易経・陰陽消長卦)

【新暦五月二十日から六月二十日ころまで】

 次に易経の「澤天夬」の全体像を表す言葉(卦辞・彖辞、彖伝、大象伝)を示す。これらの言葉は【五月二十日ころから六月二十日ころまで】に当て嵌まる。

《卦辞・彖辞》
乾、元亨利貞。
○乾(けん)は元(げん)亨(こう)利(り)貞(てい)。乾(けん)は元(おお)いに亨(とお)りて貞(ただ)しきに利(よろ)し。
 剛健に剛健を重ねた乾の時は、あらゆる物事が最大限に成し遂げられる時である。貴方が何かを成し遂げようとすれば、貴方の実力が最大限に発揮されて、物事が大いに成就する。
 天地の道に基づいて人の道の真ん真ん中を堂々と歩むが宜しい。但し、天地の道に背いて人の道(天地の道が人に発して徳となる→だから人の道を「道德(仁)」と云うのである)から外れた行為は一切認められない。

《彖伝》
彖曰、大哉乾元、萬物資始。乃統天。雲行雨施、品物流形。大明終始、六位時成。時乗六龍、以御天。乾道変化、各正性命、保合大和、乃利貞。首出庶物、萬國咸寧。
○彖に曰く、大いなるかな乾(けん)元(げん)、萬(ばん)物(ぶつ)資(と)りて始(はじ)む。乃(すなわ)ち天を統(す)ぶ。雲行き雨施(ほどこ)して、品(ひん)物(ぶつ)形を流(し)く。大いに終始を明らかにし、六(りく)位(い)時に成る。時に六(りく)龍(りゆう)に乗じ、以(もつ)て天を御(ぎよ)す。乾(けん)道(どう)変化して、各(おの)々(おの)性(せい)命(めい)を正しくし、大(だい)和(わ)を保(ほう)合(ごう)するは、乃(すなわ)ち利(り)貞(てい)なり。庶(しよ)物(ぶつ)に首(しゆ)出(しゆつ)して、萬(ばん)國(こく)咸(ことごと)く寧(やす)し。
 彖伝は次のように言っている。なんと偉大であろうか。乾の大いに成就する(あらゆる物事が最大限に成し遂げられる)時は。宇宙空間に存在する萬(ばん)物(ぶつ)が(乾坤が交わることにより)生成発展を始めたのである。乾の大いに成就する(あらゆる物事が最大限に成し遂げられる)力によって天地宇宙にエネルギーが満ち溢れ、そのエネルギーを受容した坤の働きによって、萬物が生み出される。すなわち、雲がモクモク湧き出て慈雨を施し、萬物が一つ一つ形を成して流通する(何もなかったところから形有る事象が生み出される)のである。
 乾の時は物事の始めと終わりをダイナミックに表現した「時に適切に対処すべく龍が六段階に変化する物語」である。「龍の物語」は、君子としての資質が隠れ潜んでいた潜龍(世に潜んでいる龍)が、確(かつ)乎(こ)不(ふ)抜(ばつ)の志を打ち立てて、見龍(注目される龍)として世の中に現れる。見龍は潜龍の段階で打ち立てた確乎不抜の志を実現するために、己を導いてくれる人生の師匠と巡り逢う。師匠から学んだことを己の血肉とするために努力に努力を重ね自己研鑽(君子終日乾乾)して、世の中の頂点に立つべくチェンスを窺う。終に慈雨を施す飛龍として大空に羽ばたく。以上が「龍の物語」である。乾(天)の道は陰陽消長変化(乾から坤へ、坤から屯へ、屯から蒙へ…)して、六十四種類の時(六十四卦)はその役割を全うし、天地宇宙が生成発展する。常に正しくして宜しきに適っている。龍が時を得て大空に羽ばたけば、世界は調和するのである。

《大象伝》
象曰、天行健。君子以自彊不息。
○象に曰く、天(てん)行(こう)は健(けん)なり。君子以(もつ)て自(じ)彊(きよう)して息(や)まず。
 大象伝は次のように言っている。天地宇宙の営みは、「日に新た、日に日に新た(大學の一節)」に活動を行っている。まるで、萬物を遍(あまね)く照らし続ける太陽の働きのように健やかであり、怠ることがない。
 君子を目指す人々は、萬物を遍く照らし続ける太陽の働きを見習うべきである。太陽のように強く健やかになるために自らを養い続けて、一日たりとも休んではならないのである。

巳(み)(十(じゆう)二(に)支(し))

 陰陽消長卦の「乾為天」に当て嵌まる十二支は「巳(み)」である。
 「とどまる」や「やむ」に通じ、万物の成長がきわまり、一段落した状態を意味している。(陰陽五行)
 冬眠していた蛇が、春になり、地上に現れる象形。陽気が極まり、新たに万物は出発するという意である。陽盛の極、漸く陰に移ろうとするところとも言える。(「干支の智恵」)

小(しよう)満(まん)(二十四節氣の八節氣)

【新暦五月二十日ころから六月四日ころまで】
 「穀(こく)雨(う)」の次の二十四節氣は「小(しよう)満(まん)」である。
 日を追うごとに気温も増し、万物が次第に長じて天地に満ち始める時季。本来は麦の穂が実り始め、ほっとひと安心(少し満足)という意味から「小満」といいます。(絵で楽しむ)