毎日連載! 易経や易占いに関する情報を毎日アップしています。

四季と易経 その三十四

竹笋生(たけのこしようず)(七十二候の候の二十一候・立夏の末候)

【新暦五月十五日ころから十九日ころまで】
 意味は「筍が生えてくる(絵で楽しむ)」である。
 「絵で楽しむ」には次のように書いてある。
 筍がひょっこりと顔を出すころ。最も目にする品種「孟(もう)宗(そう)竹(ちく)」は春先の三月中旬から出回りますが、日本原産の「真(ま)竹(だけ)」は五、六月に旬を迎えます。

 「竹笋生(たけのこしようず)」は、易経・陰陽消長卦の「澤天夬」上六に中る。次に「澤天夬」上六の文章(爻辞と小象伝)を示す。
 「澤天夬」上六の言葉は【新暦五月十五日ころから十九日ころまで】に当て嵌まる。

澤天夬上六(易経・陰陽消長卦)

《爻辞》
上六。无號。終有凶。
○上六。號(さけ)ぶ无(な)かれ。終(つい)に凶有り。
 夬(一陰五陽)の時に中り天子(トップ)の相談役として衆陽(君子)を押さえつけるように君臨してきた佞人上六だが、いよいよ最後の時を迎えた。最早これまで。泣き叫んでもどうにもならない。どのように足(も)掻(が)いてみても、最後は失脚する外(ほか)ないのである。

《小象伝》
象曰、无號之凶、終不可長也。
○象に曰く、號(さけ)ぶ无(な)きの凶は、終(つい)に長かる可(べ)からざる也(なり)。
 小象伝は次のように言っている。佞人上六が泣き叫び足(も)掻(が)いてみても最後は失脚する外ない。君子が本来の勢い(剛健さ)を取り戻せば、小人の天下は長続きしないのである。

 「澤天夬」上六の之卦は「乾為天」である。次に「乾為天」の全体像を表す言葉(卦辞・彖辞、彖伝、大象伝)と「乾為天」上九の言葉(爻辞、小象伝)を示す。これらの言葉は「澤天夬」の上六と同じく【新暦五月十五日ころから十九日ころまで】に当て嵌まる。

乾為天(澤天夬上六の之卦)

《卦辞・彖辞》
乾、元亨利貞。
○乾(けん)は元(げん)亨(こう)利(り)貞(てい)。乾(けん)は元(おお)いに亨(とお)りて貞(ただ)しきに利(よろ)し。
 剛健に剛健を重ねた乾の時は、あらゆる物事が最大限に成し遂げられる時である。貴方が何かを成し遂げようとすれば、貴方の実力が最大限に発揮されて、物事が大いに成就する。
 天地の道に基づいて人の道の真ん真ん中を堂々と歩むが宜しい。但し、天地の道に背いて人の道(天地の道が人に発して徳となる→だから人の道を「道德(仁)」と云うのである)から外れた行為は一切認められない。

《彖伝》
彖曰、大哉乾元、萬物資始。乃統天。雲行雨施、品物流形。大明終始、六位時成。時乗六龍、以御天。乾道変化、各正性命、保合大和、乃利貞。首出庶物、萬國咸寧。
○彖に曰く、大いなるかな乾(けん)元(げん)、萬(ばん)物(ぶつ)資(と)りて始(はじ)む。乃(すなわ)ち天を統(す)ぶ。雲行き雨施(ほどこ)して、品(ひん)物(ぶつ)形を流(し)く。大いに終始を明らかにし、六(りく)位(い)時に成る。時に六(りく)龍(りゆう)に乗じ、以(もつ)て天を御(ぎよ)す。乾(けん)道(どう)変化して、各(おの)々(おの)性(せい)命(めい)を正しくし、大(だい)和(わ)を保(ほう)合(ごう)するは、乃(すなわ)ち利(り)貞(てい)なり。庶(しよ)物(ぶつ)に首(しゆ)出(しゆつ)して、萬(ばん)國(こく)咸(ことごと)く寧(やす)し。
 彖伝は次のように言っている。なんと偉大であろうか。乾の大いに成就する(あらゆる物事が最大限に成し遂げられる)時は。宇宙空間に存在する萬(ばん)物(ぶつ)が(乾坤が交わることにより)生成発展を始めたのである。乾の大いに成就する(あらゆる物事が最大限に成し遂げられる)力によって天地宇宙にエネルギーが満ち溢れ、そのエネルギーを受容した坤の働きによって、萬物が生み出される。すなわち、雲がモクモク湧き出て慈雨を施し、萬物が一つ一つ形を成して流通する(何もなかったところから形有る事象が生み出される)のである。
 乾の時は物事の始めと終わりをダイナミックに表現した「時に適切に対処すべく龍が六段階に変化する物語」である。「龍の物語」は、君子としての資質が隠れ潜んでいた潜龍(世に潜んでいる龍)が、確(かつ)乎(こ)不(ふ)抜(ばつ)の志を打ち立てて、見龍(注目される龍)として世の中に現れる。見龍は潜龍の段階で打ち立てた確乎不抜の志を実現するために、己を導いてくれる人生の師匠と巡り逢う。師匠から学んだことを己の血肉とするために努力に努力を重ね自己研鑽(君子終日乾乾)して、世の中の頂点に立つべくチェンスを窺う。終に慈雨を施す飛龍として大空に羽ばたく。以上が「龍の物語」である。乾(天)の道は陰陽消長変化(乾から坤へ、坤から屯へ、屯から蒙へ…)して、六十四種類の時(六十四卦)はその役割を全うし、天地宇宙が生成発展する。常に正しくして宜しきに適っている。龍が時を得て大空に羽ばたけば、世界は調和するのである。

《大象伝》
象曰、天行健。君子以自彊不息。
○象に曰く、天(てん)行(こう)は健(けん)なり。君子以(もつ)て自(じ)彊(きよう)して息(や)まず。
 大象伝は次のように言っている。天地宇宙の営みは、「日に新た、日に日に新た(大學の一節)」に活動を行っている。まるで、萬物を遍(あまね)く照らし続ける太陽の働きのように健やかであり、怠ることがない。
 君子を目指す人々は、萬物を遍く照らし続ける太陽の働きを見習うべきである。太陽のように強く健やかになるために自らを養い続けて、一日たりとも休んではならないのである。

乾為天上九(澤天夬上六の之卦・爻辞)

《爻辞》
上九。亢龍有悔。
○上(じよう)九(きゆう)。亢(こう)龍(りゆう)悔い有り。
 自戒(自らを律して君徳を維持すること)を怠った飛龍が独走して雲(臣下・部下・下々等)から見放された。雲がなければ地上に慈(じ)雨(う)を施(ほどこ)せない。後悔してもどうにもならない。

《小象伝》
亢龍有悔、盈不可久也。
○亢(こう)龍(りゆう)悔い有りとは、盈(み)つれば久しかる可(べ)からざる也。
 自戒を怠った飛龍が雲から見放された。後悔してもどうにもならない。
 どれほど優秀な大人でも頂点を極(きわ)めれば、何時かは堕(お)ちていくしかない。頂点を極めた飛龍は、よほど自分を戒(いまし)めないと、あっという間に怠(おこた)り驕(おご)り、自ら堕ちていく。もし、自分を戒(いまし)め続けることができたとしても、やがては君德が衰えて権威を失い、その地位に留まることはできなくなる。君德が衰えたと自覚した指導者(トップ)は、自らその地位を後継者に譲ることが求められるのである。