睦(む)月(つき)と如月(きさらぎ)に中る区分
次に、睦月と如月にまたがる陰陽消長卦と十二支、二十四節氣の順序で整理してみる。
睦(む)月(つき)(和風月明)
【新暦一月一日から三十一日】
「睦月(一月)」は「正月に親戚一同が集まって睦(むつ)ぶ(親しくする)」から睦月という。
如月(きさらぎ)(和風月明)
【新暦二月一日から二十八日】
「如月(二月)」は衣更着(きさらぎ)とも言う。まだ寒さが残っていて、衣を重ね着する(更に着る)月。
(https://www.ndl.go.jp/koyomi/chapter3/s8.html)
地(ち)澤(たく)臨(りん)(易経・陰陽消長卦)
【新暦一月二十二日から二月二十二日ころまで】
次に易経の「地澤臨」の全体像を表す言葉(卦辞・彖辞、彖伝、大象伝)を示す。これらの言葉は【一月二十二日ころから二月二十二日ころまで】に当て嵌まる。
《卦辞・彖辞》
○臨は、元(おおい)に亨(とお)る。貞(ただ)しきに利し。八月に至りて、凶有り。
臨は上が下に臨(のぞ)む時。権威を有する上の者が下の者に和らぎ悦び(下卦兌)柔順(上卦坤)に臨むから、何事もすらすら通る。正しい道を固く守るが宜しい。
陽剛君子の勢いが盛んに伸びて、やがて天下泰平(二・地天泰)となるが、泰平を極めれば、小(しよう)人(じん)の勢いが増長(三・澤天夬→四・乾為天→五・天風姤→六・天山遯→七・天地否→八・風地觀と陰陽消長)する。
《彖伝》
○彖に曰く、臨は剛(ごう)浸(ようや)くにして長じ、説(よろこ)びて順い、剛中にして應(おう)ず。大いに亨(とお)りて以て正し。天(てん)之(の)道(みち)也(なり)。八月に至りて凶有りとは、消(しよう)すること久しからざる也(なり)。
彖伝は次のように言っている。臨は剛(君子)が漸(ぜん)次(じ)に進んで盛んになり、権威を有する上の者が下の者に和(わ)悦(えつ)柔順の德で臨み、下の者が和悦の德で進む。剛中の九二と柔(じゆう)中(ちゆう)の六五が相応じ、六五の天子(トップ)は剛中の賢臣九二を深く信任する。それゆえ、何事もすらすら通り、正しい道を歩む。天の道に適(かな)っているのである。
今は陽剛君子の勢いが盛んに伸びて、やがて天下泰平(地天泰)となるが、泰平を極めれば、必ず陰柔小人の勢いが増長し、やがては小人の天下(天風姤→天山遯→天地否→風地觀)となる。君子の天下が少しでも長続きするように、盛んに上り行く時である今から警戒せよと戒めているのである。
《大象伝》
○象に曰く、澤(さわ)の上に地(ち)有るは臨なり。君子以(もつ)て教え思うこと窮(きわ)まり无(な)く、民(たみ)を容(い)れ保(やす)んずること疆(かぎ)り无(な)し。
大象伝は次のように言っている。澤(兌)の上に大地(坤)が在るのが臨の形。君子はこの形に見習って、地下水(大地・坤の下の澤・兌)が涸(か)れないように、民(たみ)を教え導き、思いやること窮(きわ)まりなく、民を包容して安んずること限りない。
丑(うし)(十(じゆう)二(に)支(し))
陰陽消長卦の「地澤臨」に当て嵌まる十二支は「丑(うし)」である。
「かがむ」と読み、紐(ひも)に通じ、紐でつなぎ止めている状態を指し示している。あたかも、万物がいままさに芽を吹き出そうとしているのを必死でつなぎ止めているありさまを意味している(陰陽五行)
また、易経の「地澤臨」は七十二候の「大寒」と「立春」を併せた期間となる。その期間が【新暦一月二十二日ころから二月二十二日ころまで】である。
大(だい)寒(かん)(二十四節氣の二十四節氣)
【新暦一月二十日ころから二月三日ころまで】
「小寒」の次の二十四節氣は「大寒」である。
「大寒」は一年でいちばん寒さが厳しくなるころである。
款冬華(ふきのはなさく)(七十二候の七十候)
【新暦一月二十日ころから二十四日ころまで】
意味は「蕗(ふき)の薹(とう)が蕾を出す(絵で楽しむ)」である。
「絵で楽しむ」には次のように書いてある。
雪解けを待たずに顔を出すことから「春の使者」とも呼ばれる。
「款冬華(ふきのはなさく)」は、易経・陰陽消長卦の「地(ち)澤(たく)臨(りん)」初九に中る。次に「地澤臨」初九の文章(爻辞と小象伝)を示す。
「地澤臨」初九の言葉は【新暦一月二十日ころから二十四日ころまで】に当て嵌まる。
地澤臨初九(易経・陰陽消長卦)
《爻辞》
○初九。咸(かん)臨(りん)す。貞(てい)にして吉(きつ)。
剛健正(せい)位(い)の賢臣初九は柔順正位の大臣(天子・トップの側近)六四と相(あい)応(おう)ずる関係にある。六四の大臣(側近)も初九の賢人も感(かん)応(おう)し合って、賢臣初九は大臣六四の信任を得て世の中に臨む。正しい道を固く守れば幸運を招き寄せる。
《小象伝》
○象に曰く、咸(かん)臨(りん)す。貞(てい)にして吉(きつ)とは、志正しきを行う也(なり)。
小象伝は次のように言っている。賢臣初九は柔順正位の大臣(天子・トップの側近)六四の信任を得て世の中に臨み、正しい道を固く守るので幸運を招き寄せる。正しい志を抱いて人の道を真っ直ぐに進み行くからである。
「地澤臨」初九の之卦は「地水師」である。次に「地水師」の全体像を表す言葉(卦辞・彖辞、彖伝、大象伝)と「地水師」初六の言葉(爻辞、小象伝)を示す。これらの言葉は「地澤臨」初九と同じく【新暦一月二十日ころから二十四日ころまで】に当て嵌まる。
地水師(地澤臨初九の之卦)
《卦辞・彖辞》
○師(し)は貞。丈(じよう)人(じん)なれば吉にして咎无し。
師は多くの人々(大衆)を率(ひき)いて、相手(国家から家庭まであらゆる組織)と戦う時である。戦いには正義がなければならぬ。才德高く、尊崇される長老や経験豊富な人物を総大将に得ることができれば、戦いに勝利して多くの人々(大衆)の安寧を守ることができる。多少犠牲があったとしても咎められない。
《彖伝》
○彖に曰く、師は衆也。貞は正也。能(よ)く衆を以て正しければ、以て王たる可(べ)し。剛中にして應(おう)じ險を行(おこの)ふて順。此(ここ)を以て天下を毒すれども民之(これ)に從う。吉にして又何の咎あらん。
彖伝は次のように言っている。師は多くの人々(大衆)。貞は正義。大衆を率いて相手と戦う時は、正義がなければならぬ。正義を掲(かか)げて大衆を率いてこそ、天下に誇れるリーダーである。剛健と中庸の德を兼ね備えた九二の長老や経験豊富な人物が、六五のトップに厚く信任され、険難な戦い(下卦坎)に中り柔順(上卦坤)に対処する。
天の正しい理法に順って戦いを行うので大衆は帰服するのだ。多少犠牲があったとしても、大衆は九二のリーダーに従う。それゆえ、トップは戦いに勝利して大衆の安寧を守ることができる。どうして咎められようか。
《大象伝》
○象に曰く、地中に水有るは師なり。君子以て民を容れ衆を畜(やしな)う。
小象伝は次のように言っている。地(上卦坤)中に水(下卦坎)が聚(あつま)っているのが師の形である。貴方が君子なら、この形を見習って、大らかな心で大衆を受け容れ、養い育て教え導くのである。
地水師初六(地澤臨初九の之卦・爻辞)
《爻辞》
○初六。師出(い)づるに律(りつ)を以てす。否(しから)ざれば臧(よ)きも凶なり。
初六は戦(いくさ)の始めに処する道を説く。軍隊が出動する(組織が戦いを始める)時は、規律を厳格にする。規律が乱れると総大将(リーダー)に人物を得ても敗北する。
《小象伝》
○象に曰く、師出(い)づるに律(りつ)を以てすとは、律を失(うしな)へば凶なる也。
小象伝は次のように言っている。戦(いくさ)の始めに処するに、規律を厳格にするのは、軍隊(組織)の規律が乱れると総大将(リーダー)に人物を得ても、戦に勝てないからである。
(四季と易経 その八)