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四季と易経 その二十二

雀始巣(すずめはじめてすくう)(七十二候の十候・春分の初候)

【新暦三月二十日ころから二十四日ころまで】
 意味は「雀が巣を作り始める(絵で楽しむ)」である。
 「絵で楽しむ」には次のように書いてある。
 雀が冬の枯れ草や藁を集め、屋根瓦の下や軒先などに巣を作り始めるころ。

 「雀始巣(すずめはじめてすくう)」は、易経・陰陽消長卦の「雷天大壮」初九に中る。次に「雷天大壮」初九の文章(爻辞と小象伝)を示す。
 「雷天大壮」初九の言葉は【新暦三月二十二日ころから十八日ころまで】に当て嵌まる。

雷天大壮初九(易経・陰陽消長卦)

《爻辞》
初九。壯于趾。征凶。有孚。
○初九。趾(あし)に壯(さかん)なり。征(ゆ)けば凶。孚(まこと)有り。
 初九は正位(陽爻陽位)だが、大壮の時には剛に過ぎる。応比なく、最(さい)下(か)の卑(いや)しい身分(趾)でありながら、盛んに進もうとする。調子に乗ってやり過ぎる(傲(ごう)慢(まん)になったり強(ごう)引(いん)すぎたりする)と大失敗を招き寄せる大壮の時に、無闇に進めば必ず禍(わざわい)を受ける。
 初九に真心があったとしても、やり過ぎてはならないのである。

《小象伝》
象曰、壯于趾、其孚窮也。
○象に曰く、趾(あし)に壯(さかん)なりとは、其(そ)の孚(まこと)窮(きゆう)する也(なり)。
 小象伝は次のように言っている。初九は卑(いや)しい身分にありながら、盛んに進もうとする。
 調子に乗ってやり過ぎる(傲(ごう)慢(まん)になったり強(ごう)引(いん)すぎたりする)と大失敗を招き寄せる大壮の時に、卑(いや)しい身分の初九が暴走すれば、真心があっても窮するしかないのである。

 「雷天大壮」初九の之卦は「雷風恒」である。次に「雷風恒」の全体像を表す言葉(卦辞・彖辞、彖伝、大象伝)と「雷風恒」初六の言葉(爻辞、小象伝)を示す。これらの言葉は「雷天大壮」の初九と同じく【新暦三月二十日ころから二十四日ころまで】に当て嵌まる。

雷風恒(雷天大壮初九の之卦)

《卦辞・彖辞》
恆、亨。无咎。利貞。利有攸往。
○恆(こう)は亨(とお)る。咎(とが)无(な)し。貞(ただ)しきに利(よろ)し。往(ゆ)く攸(ところ)有るに利(よろ)し。
 恆(こう)は幾(いく)久しく仲睦まじい夫婦・君臣の道のように、古今に亘(わた)り易(か)わらざる天地の定めである。それゆえ、何事も常に久しくすらっと通る。誰からも咎められない。
 一貫して不易(易(か)わらざる)の恆(こう)(幾(いく)久しく仲睦まじい夫婦・君臣の道)を正しく固く守るが宜しい。進み往(ゆ)くには変易(変通の妙)の恆(その時々に中って仲睦まじい夫婦の道)で対処するが宜しい。

《彖伝》
彖曰、恆久也。剛上而柔下。雷風相與、巽而動、剛柔皆應恆。恆亨、无咎、利貞、久於其道也。天地之道、恆久而不已也。利有攸往、終則有始也。日月得天而能久照、四時變化而能久成、聖人久於其道而天下化成。觀其所恆而天地萬物之情可見矣。
○彖に曰く、恆(こう)は久しき也。剛上(のぼ)りて柔下(くだ)り雷(らい)風(ふう)相(あい)與(おこ)し巽(そん)にして動き、剛柔皆應(おう)ずるは恆なり。恆は亨(とお)る、咎(とが)无(な)し、貞(ただ)しきに利(よろ)しとは、其(そ)の道に久しければ也。天地の道は恆(こう)久(きゆう)にして已(や)まざる也。往(ゆ)く攸(ところ)有るに利しとは、終れば則(すなわ)ち始まる有る也。日(じつ)月(げつ)は天を得て久しく照らし四(しい)時(じ)は變化して能(よ)く久しく成(な)し、聖人は其(そ)の道に久しくして天下化(か)成(せい)す。其の恆(つね)にする所を觀(み)て、天地萬(ばん)物(ぶつ)の情見る可(べ)し。
 彖伝は次のように言っている。恆(こう)は常に久しく永く変わらない道を説いている。剛震(長男)が上、柔巽(長女)が下に在り、雷風(上下)力を合わせて、内は巽順(巽の卦德)にして外は大いに動く(震の卦德)。六爻全て交わっており内と外が情を通じて常に久しくすらっと通るのが恆の道である。
 恆は幾(いく)久しく仲睦まじい夫婦の道のように、古今に亘(わた)り易(か)わらざる天地の定めである。それゆえ、何事も常に久しくすらっと通り誰からも咎められない。一貫して不易(易(か)わらざる)の恆(こう)(幾(いく)久しく仲睦まじい夫婦の道)を正しく固く守るが宜しい。易わらざる天地の定めを幾久しく守るのである。天地の道は幾久しく常なきを常とし、窮まることなく止まることもない。進み往くには変易(変通の妙)の恆(その時々に中って仲睦まじい夫婦・君臣の道)で対処するが宜しい。一つの時が終われば次の時が始まるのである。
 日(じつ)月(げつ)が天に在って大地を普く幾久しく照らし、季節は変化して萬物を化成する。聖人は天地の道に則り萬民を教化するから国を治めることができる。日(じつ)月(げつ)、四(しい)時(じ)、聖人の恆(常久の道)を観察して、天地萬物の情理(真理)を知るべきである。

《大象伝》
象曰、雷風恆。君子以立不易方。
○象に曰く、雷風は恆(こう)なり。君子以(もつ)て立ちて、方(ほう)を易(か)えず。
 小象伝は次のように言っている。雷風(陽雷陰巽)相(あい)待(ま)って常なき常(常久)の道が成就するのが恆(こう)の形である。
 君子はこの形に見習って、確(かつ)乎(こ)不(ふ)抜(ばつ)の志を打ち立ててしっかりと独立し、其(そ)の志を実現すべく、萬(ばん)変(ぺん)に処するに変通窮まりなく、常なき常(常久)の道を失わないのである。

雷風恒初六(雷天大壮の之卦・爻辞)

《爻辞》
初六。浚恆。貞凶。无攸利。
○初六。恆を浚(ふか)くす。貞(ただ)しけれども凶。利しき攸(ところ)无(な)し。
 初六は陰柔不中正。陰爻陽位で才能や道德心に乏しく思(し)慮(りよ)に欠けているのに気が強い。最下に居て正応九四を深く求める(深く関係しようとする)。今は恆(こう)の道の始めだから深く求める(深く関係しようとする)時ではない。
 初六の性格や行動も時のタイミングも恆の道に合致していないので、成し遂げようとすることが正しい道に適(かな)っていたとしても失敗するであろう。宜しいことは何一つない。

《小象伝》
象曰、恆浚之凶、始求深也。
○象に曰く、恆を浚(ふか)くするの凶は、始めに求むること深ければ也(なり)。
 小象伝は次のように言っている。成し遂げようとすることが正しい道に適(かな)っていたとしても失敗する。時の始めの(相手と深く関係しようとしてはならない)の段階で、相手(正応九四)と深く関係しようとするからである。