毎日連載! 易経や易占いに関する情報を毎日アップしています。

四季と易経 その十二

黄鶯睍睆(うぐいすなく)(七十二候の二候・立春の次候)

【新暦二月九日ころから十三日ころまで】
 意味は「鶯が山里で鳴き始める(絵で楽しむ)」である。
 「絵で楽しむ」には次のように書いてある。
 うららかな春の訪れを告げる鶯が、美しい鳴き声を響かせる時季。古くから鶯は「春(はる)告(つげ)鳥(どり)」とも呼ばれ、

 「黄鶯睍睆(うぐいすなく)」は、易経・陰陽消長卦の「地(ち)澤(たく)臨(りん)」六五に中る。次に「地澤臨」六五の文章(爻辞と小象伝)を示す。
 「地澤臨」六五の言葉は【新暦二月九日ころから十三日ころまで】に当て嵌まる。

地澤臨六五(易経・陰陽消長卦)

《爻辞》
○六五、知(ち)臨(りん)す。大(たい)君(くん)の宜しきなり。吉。
 六五は柔順で中庸の德を具えた天子(トップ)である。己を虚(むな)しくして九二の賢臣を信任し、広く衆(しゆう)智(ち)を集めて国政に中(あた)る。偉大な君主(トップ)は叡(えい)智(ち)を用いて陽剛の君子(九二)を帰服させ、天下泰平の宜しきを得る。何事も順調に進む。
《小象伝》
○象に曰く、大(たい)君(くん)の宜しきとは、中を行(おこな)うの謂(いい)也(なり)。
 小象伝は次のように言っている。偉大な君主(トップ)六五が天下泰平の宜しきを得る。柔順中庸の天子が剛健中庸の賢臣を用いて、臨の時に適切に対処するからである。

 「地澤臨」六五の之卦は「水澤節」である。次に「水澤節」の全体像を表す言葉(卦辞・彖辞、彖伝、大象伝)と「水澤節」九五の言葉(爻辞、小象伝)を示す。これらの言葉は「地澤臨」六五と同じく【新暦二月九日ころから十三日ころまで】に当て嵌まる。

水澤節(地澤臨六五の之卦)

《卦辞・彖辞》
○節は亨る。苦(く)節(せつ)は貞(てい)にす可(べ)からず。
 節は澤(下卦兌)の上に水(上卦坎)が過不足なく満ちて、程よい節度(中庸に「喜怒哀楽の未だ発せざる之を中と謂う。発して皆な節に中る。之を和と謂う」とある。喜怒哀楽の感情の中で、その時々に適切に対処することが調和であり、その調和を「程よい節度」と云う)を保ちながら、険阻艱難(上卦坎)に悦んで順う(下卦兌)ことができる。それゆえ何事も順調に進むのである(節は亨る)。節度は程よい節度(喜怒哀楽の感情の中でその時々に適切に対処する)だから何事も順調に進むのである。程よい節度を超えた節度を苦節(喜怒哀楽の感情の中で強引に対処しようとする)と云うが、苦節を固く守り続けることはできないのである。
《彖伝》
○彖に曰く、節は亨るとは、剛柔分れて、剛中を得ればなり。苦節は貞にす可からずとは、其道窮まる也。説(よろこ)びて以て險を行ひ、位に當りて以て節し、中正にして以て通ず。天地節(せつ)して四時成る。節以て度を制し、財を傷(そこな)はず、民を害(そこな)はず。
 彖伝は次のように言っている。節は程よい節度(中庸に「喜怒哀楽の未だ発せざる之を中と謂う。発して皆な節に中る。之を和と謂う」とある。喜怒哀楽の感情の中で、その時々に適切に対処することが調和であり、その調和を「程よい節度」と云う)を保ちながら、険阻艱難(上卦坎)に悦んで順う(下卦兌)から、何事も順調に進む。剛柔均等(陽爻と陰爻が同数)に分かれて、九五の天子(トップ)も賢臣九二も剛健にして中庸の德を具えているからである。
 節度は程よい節度だから何事も順調に進むのである。程よい節度を超えた節度を苦節(喜怒哀楽の感情の中で強引に対処しようとする)と云うが、苦節を固く守り続けることはできない。程よい節度を越えた節度(苦節)は、道に窮して行き詰まるのである。
 険(けん)阻(そ)艱(かん)難(なん)に悦んで順って節度のある節制を保ち、九五の天子(トップ)が君主の位に相応しく、程よい節度を保ちながら、中庸の德を具えて正義の統治や経営を貫き通す。天地は常に程よい節度を保ちながら、春夏秋冬の季節が循環していくから萬(ばん)物(ぶつ)は生成化(か)育(いく)するのである。天子(トップ)も天地の循環を見習って、程よい節度を保ちながら法律や規則を制定して運営すれば、国や組織の財政が困窮・破綻することはなく、過度に重い税金を取り立てて民衆を苦しめたり、敵国や外資に国や組織を乗っ取られたりすることもないのである。
《大象伝》
○象に曰く、澤の上に水有るは節なり。君子以て數(すう)度(ど)を制し、德(とつ)行(こう)を議す。
 大象伝は次のように言っている。澤(下卦兌)の上に水(上卦坎)が有り、澤の水が過不足なく満ちているのが節の形である。君子はこの過不足がない形(程よい節度)を参考にして、貴賤上下の身分に応じて生活の規律を定め、貴賤上下の身分に相応(ふさわ)しい德行の基準(身分に応じた道德の水準)を推し量り、程よく節度を保つ(その時々に適切に対処する)社会を築くのである。

水澤節九五(地澤臨六五の之卦・爻辞)

《爻辞》
○九五。甘(かん)節(せつ)なり。吉。往(ゆ)きて尚(たつと)ばるる有り。
 九五は剛健中正の理想的な天子(トップ)である。程よい節度を定めて物事を節制する節の時に中り、甘美で(険しい事にも喜び楽しみ適切に対処できる)程よい節度(法律や規則)を制定するので臣民に慕われている。それゆえ、何事も順調に進んで行く。
 このやり方をさらに押し進めて安寧な社会(国家・組織)を実現すれば、さらに臣民(部下や国民)から慕われて、尊崇されるようになるであろう。
《小象伝》
○象に曰く、甘(かん)節(せつ)の吉は、位に居(お)ること中なる也。
 小象伝は次のように言っている。九五の天子(トップ)は、甘美で(険しい事にも喜び楽しみ適切に対処できる)程よい節度(法律や規則)を制定するので、臣民(部下や国民)に慕われている。天子の位に居て自ら険しい節度を定めて節制するから、臣民から慕われるのである。
(四季と易経 その十二)