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四季と易経 その十一

立春(りつしゆん)(二十四節氣の一節氣)

【新暦二月四日ころから十八日ころまで】
 二十四節氣は「立春」から始まる。
 旧暦では、立春に近い新月の日を元旦としていた(絵で楽しむ)。

東風解凍(とうふうこおりをとく)(七十二候の一候・立春の初候)

【新暦二月四日ころから八日ころまで】
 意味は「春風が吹いて氷が解け始める(絵で楽しむ)」である。
 「絵で楽しむ」には次のように書いてある。
 東風とは春風のこと。これは中国における陰陽五行の思想から、春は東から訪れると信じられていたことによります。

 「東風解凍(とうふうこおりをとく)」は、易経・陰陽消長卦の「地(ち)澤(たく)臨(りん)」六四に中る。次に「地澤臨」六四の文章(爻辞と小象伝)を示す。
 「地澤臨」六四の言葉は【新暦二月四日ころから八日ころまで】に当て嵌まる。

地澤臨六四(易経・陰陽消長卦)

《爻辞》
○六四。至(し)臨(りん)す。咎无し。
 柔順な側近六四は才能と人德が乏しいから、自分の力だけでは大臣(トップの側近)の職責を全うできない。そこで、至(し)誠(せい)を尽くして賢人初九を招(しよう)聘(へい)する。賢人初九は悦(えつ)服(ぷく)して国政を補佐する。人から咎(とが)められるような過失は犯さない。
《小象伝》
○象に曰く、至臨す。咎无しとは、位當れば也。
 小象伝は次のように言っている。賢臣初九は六四の側近(大臣)に悦(えつ)服(ぷく)して国政を補佐するので、人から咎められるような過失は犯さない。
 柔順な大臣六四が六五の天子(トップ)の側近としての職責を全うするのである。

 「地澤臨」六四の之卦は「雷澤帰妹」である。次に「雷澤帰妹」の全体像を表す言葉(卦辞・彖辞、彖伝、大象伝)と「雷澤帰妹」九四の言葉(爻辞、小象伝)を示す。これらの言葉は「地澤臨」六四と同じく【新暦二月四日ころから八日ころまで】に当て嵌まる。

雷澤帰妹(地澤臨六四の之卦)

《卦辞・彖辞》
○歸(き)妹(まい)は、征けば凶。利しき攸(ところ)无(な)し。
 帰妹は、女性がお嫁に行く(若者が就職する)時の道を説いている。上卦震の長男が動くので下卦兌の少女が悦(よろこ)ぶ時である。動くことを悦ぶことは、女として「はしたない」。女が男に媚(こ)び悦んで結婚を迫ったり、臣下(部下・若者)が君主(上司・就職先)に媚び諂(へつら)って昇進や就職を望んだりすることは、人の道(道德)に反するので失敗するのである。媚び諂うことで善い結果になることは、絶対にあり得ない。
《彖伝》
○彖に曰く、歸(き)妹(まい)は天地の大義也。天地、交はらざれば、萬物興(おこ)らず。歸妹は人の終(しゆう)始(し)也。説(よろこ)びて以て動く。歸(とつ)ぐ所は妹(まい)也。征けば凶なるは、位、當(あた)らざれば也。利しき攸(ところ)无きは、柔、剛に乗ずれば也。
 彖伝は次のように言っている。年頃の娘が嫁ぐことは子孫繁栄に繋がるので天地の大義に適っている。天地(陰陽)が交わらなければ、萬物は生々発展しない。嫁げば娘としての人生は終わり、妻としての人生が始まる。夫婦が交わり子が産まれ、新しい生命が始まる。やがて夫婦は年老いて、子供達に引き継がれる。以上のことから、年頃の娘が嫁ぐことは天地の大義に適っているのである。しかし、長男(上卦震)が動いて少女(下卦兌)が悦び、少女(若い女性)から求婚するのは駄目である。若い女性がかなり年上の男性に媚び悦んで結婚を迫ったり、臣下(部下・若者)が君主(上司・就職先)に媚び諂って昇進や就職を望んだりすることは、人の道(道德)に反するので失敗するのである。二爻から五爻まで全て不正な(適材適所でない)ので、結婚や就職に悉(ことごと)く失敗するのである。媚び諂うことで善い結果になることは、絶対にあり得ない。柔順な六五と六三が剛健な九四と九二の上に乗って増長しているからである。すなわち、陰的な存在が陽的な存在を凌(しの)いで蔑(ないがし)ろにしたり、己を過信している臣下(部下・若者)が増長して君主(上司・就職先)を軽く見ているからである。
《大象伝》
○象に曰く、澤の上に雷(かみなり)有るは歸妹なり。君子以て終りを永くし敝(へい)を知る。
 大象伝は次のように言っている。澤(兌)の上に雷(震)が有るのが歸妹の形。澤の上で雷が轟けば澤の水が振動するように、壮年の男性が上で動けば若い女性が下で悦んで我を忘れる。しかし、雷が治まれば澤の水の振動も治まるように、長男の動きが治まれば少女も我を取り戻す。君子はこの形を見習って、若い女性が一時の感情に惑わされることの弊害を知り、何事も幾(いく)久しく継続させることを心がけるのである。

雷澤帰妹九四(地澤臨六四の之卦・爻辞)

《爻辞》
○九四。妹を歸(とつ)がするに期(き)を愆(す)ぐ。歸(とつ)ぐを遲(ま)つこと時有り。
 九四は魅力的で高(こう)貴(き)な女性(能力が高い求職者)だが、お付き合いしている(求職している)相手(初九)との相性が悪く(陽爻同士)、魅力的で高貴である(能力が高い)がために釣り合いのとれる相手(就職先)が少なく、これまで、良(りよう)縁(えん)に恵まれなかったので、気が付いたら婚(こん)期(き)が過ぎてしまった(正社員としてキャリアを積み上げることができなかった)。そこで今は、自分に相応しい相手(就職先)が現れるのをじっと待っているのである。
《小象伝》
○象に曰く、期(き)を愆(す)ぐるの志は、待つ有(あ)りて行く也(なり)。
 小象伝は次のように言っている。気が付いたら婚期が過ぎてしまった(正社員としてキャリアを積み上げることができなかった)九四が抱いている志は、「自分に相応しい結婚相手(就職先)が現れるまで待って結婚(正社員として勤務する)する」ことである。九四は魅力的で高貴な女性(能力が高い求職者)なので、やがて相応しい相手(就職先)が現れるであろう。
(四季と易経 その十一)