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四季と易経 その二

 また、易経の「地雷復」は七十二候の「冬至」と「小寒」を併せた期間となる。その期間が【新暦十二月二十二日ころから一月二十日ころまで】である。

冬至(二十四節氣の二十二節氣)

【新暦十二月二十一日ころから一月四日ころまで】
 「冬至」は一年で「最も昼が短く、夜が長い日。(「水野久美著絵で楽しむ 日本人として知っておきたい 二十四節気と七十二候」から引用。以下「絵で楽しむ」と省略する。)」である。
 一年を二十四で区分する二十四節氣の冬至は一年を七十二で区分する七十二候の六十四候(及東生(なつかれくさしようず))から六十六候までに中る。

及東生(なつかれくさしようず)(七十二候の六十四候)

【新暦十二月二十一日ころから二十五日ころまで】
 意味は「夏枯草が芽を出す(絵で楽しむ)」である。
 「絵で楽しむ」には次のように書いてある。
 周囲の草木が枯れていく中で若い芽を吹き始める姿は、冬至の日を境に力を取り戻す太陽のように春への希望を抱かせるもの。

 「及東生(なつかれくさしようず)」は、易経・陰陽消長卦の「地(ち)雷(らい)復(ふく)」初(しよ)九(きゆう)に中る。次に地雷復初九の文章(爻辞と小象伝)を示す。

地(ち)雷(らい)復(ふく)初九(易経・陰陽消長卦)

《爻辞》
○初九。遠からずして復(かえ)る。悔(くい)に祗(いた)る无(な)し。元吉。
 復の成(せい)卦(か)主(しゆ)(主人公)初九は一(いち)陽(よう)来(らい)復(ふく)して(山地剝の一番上に在った一陽が剝落して、陰爻ばかりの坤為地となった後に、一番下に一陽が復って来て地雷復となり)道に復(かえ)る(漸次に日が長くなって行く)始めの段階である。
 もし、道を踏み外しても遠くまで行かず、速やかに過ちを覚(さと)って正しい道に復(かえ)る。それゆえ後悔することはなく、大いなる幸運を招き寄せるのである。
《小象伝》
○象に曰く、遠からざるの復は、以(もつ)て身を修(おさ)むる也(なり)。
 小象伝は次のように言っている。もし、道を踏み外しても遠くまで行かず、速やかに過ちを覚(さと)って正しい道に復る(道德心を取り戻す)。その身を修めて心を正し(修身・正心・誠意・致知・格物)、直(ただ)ちに過ちを改める(反省・改心・改善する)のである。

 「地雷復」初九の之卦は「坤(こん)為(い)地(ち)」である。次に「坤為地」の全体像を表す言葉(卦辞・彖辞、彖伝、大象伝)と「坤為地」初六の言葉(爻辞、小象伝)を示す。これら言葉は「地雷復」初九と同じく【新暦十二月二十一日ころから二十五日ころまで】に当て嵌まる。

坤(こん)為(い)地(ち)(地雷復初九の之卦)

《卦辞・彖辞》
○坤は、元(おお)いに亨(とお)る。牝(ひん)馬(ば)の貞に利(よろ)し。君子往(ゆ)く攸(ところ)有り。先んずれば迷い、後(おく)るれば主を得(う)。西南に朋(とも)を得(え)、東北に朋(とも)を喪(うしな)うに利(よろ)し。貞に安んずれば吉。
 柔順に柔順を重ねた坤の時は、貴方が担っている役割(生活や仕事などにおける貴方の役割と貴方が仕えている人のリーダーとしての資質)の大きさに応じて成就する。貴方は脇役としての自分の役割をはっきりと認識して、雌(めす)馬(うま)が雄(おす)馬(うま)に柔順に従うように、貴方が仕えている人に従うが宜しい。
 今の貴方には脇役の君子として、進むべき道がある。自分が先頭に立てば道に迷うが、雌(めす)馬(うま)が雄(おす)馬(うま)に仕えるように、今、貴方が仕えている人に従えば、貴方が生涯仕える人物に巡り逢うことができる。西南(坤・陰の方角)の地にある故郷に居る時は家族や友達との関係を大切にしなさい。親元を離れて東北(艮・陽の方角)の地に赴けば家族や友達と離れ離れになるが、それが脇役の君子の道だから、宜しいのである。貴方は脇役の君子として、貴方が今、仕えるべきリーダーに柔順に従うが宜しい。
《彖伝》
○彖に曰く、至れるかな坤(こん)元(げん)、萬(ばん)物(ぶつ)資(と)りて生ず。乃(すなわ)ち順にして天を承(う)く。坤厚くして物を載(の)せ、德无(む)疆(きよう)に合う。含(がん)弘(こう)光(こう)大(だい)にして、品(ひん)物(ぶつ)咸(ことごと)く亨(とお)る。牝馬は地の類、地を行くこと无(む)疆(きよう)なり。柔順利貞、君子の行う攸(ところ)なり。先んずれば迷いて道を失い、後(おく)るれば順(したが)って常を得(う)。西南に朋(とも)を得るは、乃ち類と行くなり。東北に朋を喪うは、乃ち終(つい)に慶(よろこ)び有るなり。貞に安んずるの吉は、地の无(む)疆(きよう)なるに應(おう)ず。
 彖伝は次のように言っている。乾元(物事が最大限に成し遂げられる力)に至るほどに偉大であるなぁ、坤元の(萬物を生み出す)力は…。乾元が発する根源的なエネルギーを坤元が丸ごと受け容れて、萬物は生み出された。すなわち大地(坤)が柔順に天(乾)の根源的な力(元氣)を受け容れて、あらゆる事象(萬物)を創造したのである。
 坤の性質は、陰德を厚く積み上げて萬物をその上に載せているから、疆(かぎ)りない乾の性質と合致する。萬物は優しく包含されて光り輝き、それぞれ天から授かった性命(天命)を発揮して、すらすら成長する。
 雄馬に柔順に従う雌馬は、天に対する地に分類される。雌馬は大地としての役割を果たすために疆(かぎ)りなく進んで行く。雌馬はあくまでも雄馬に柔順で、脇役としての貞しさを固く守る。以上が雄馬に従順に従う坤の君子である雌馬の行く道である。
 雌馬は自分が先頭に立てば道に迷うことになるが、雄馬のリーダーに仕えれば、やがて生涯仕える人物に巡り逢える。西南(坤・陰の方角)の地にある故郷に居る時に家族や友達との関係を大切にするのは、生涯仕える人物に巡り逢うための基礎固めである。
 東北(艮・陽の方角)の地に赴けば家族や友達と離れ離れになるが、それが脇役の君子の道である。最初は寂しいけれども、やがて生涯仕える人物に巡り逢って、終には喜びを得られる。今は、脇役の君子として、仕えるべきリーダーに柔順に従えば幸を得るのである。大地(坤)の性質は天(乾)の疆(かぎ)りない性質に相応じているからである。
《大象伝》
○象に曰く、地(ち)勢(せい)は坤(こん)なり。君子以(もつ)て德を厚くし物を載(の)す。
 大象伝は次のように言っている。乾の元氣(天地宇宙の根源的なパワー)を受け容れて萬物を包容・含蓄・創造しているのが、坤の卦象である。坤の君子は、この卦象に倣(なら)って、陰德を厚く積み上げて、あらゆる事象を包容・含蓄・創造するのである。

坤為地初六(地雷復初九の之卦・爻辞)

《爻辞》
○初(しよ)六(りく)。霜を履(ふ)みて堅(けん)氷(ぴよう)至る。
 初六は雄(おす)馬(うま)(剛陽のリーダー)に柔順に従う雌(めす)馬(うま)(柔陰の部下)の君子の始まりであるから、どんなに小さな悪事でも見逃してはならない。初(はつ)霜(しも)を履む季節が来れば、やがて堅い氷が張る厳寒の季節が到来するように、小さな悪事(初(はつ)霜(しも))を見逃せば(積小)、やがて大きな悪事(堅(けん)氷(ぴよう))に至る(為大)のである。
《小象伝》
○象に曰く、霜を履(ふ)みて堅(けん)氷(ぴよう)とは、陰の始めて凝(こ)る也。其の道を馴(じゆん)致(ち)すれば、堅(けん)氷(ぴよう)に至る也。
 小象伝は次のように言っている。初(はつ)霜(しも)を履む季節が来れば、やがて堅い氷が張る厳寒の季節が到来するように、小さな悪事(初(はつ)霜(しも))を見逃せば、やがて大きな悪事(堅(けん)氷(ぴよう))に至るのは、柔順であるべき雌馬(柔陰の部下)に邪(よこしま)な気持ちが芽生え、悪事を重ねて堅(けん)固(ご)になり、終には取り返しがつかなくなるからである。
 邪(よこしま)な気持ちに馴れてしまい、小さな悪事を重ね続ければ、初(はつ)霜(しも)が堅(けん)氷(ぴよう)に至るように、やがて大きな悪事に至り、雄(おす)馬(うま)(剛陽のリーダー)に柔順に従う雌(めす)馬(うま)(柔陰の部下)の君子としての資質を失ってしまうのである。
(四季と易経 その二)