麋角解(さわしかのつのおつる)(七十二候の六十五候)
【新暦十二月二十六日ころから三十一日ころまで】
意味は「大鹿の角が落ちて生え変わる(絵で楽しむ)」である。 「絵で楽しむ」には次のように書いてある。
角は毎年生え変わり、大鹿の場合は冬のこの時季に抜け落ちて春に生え始めます。
「麋角解(さわしかのつのおつる)」は、易経・陰陽消長卦の「地雷復」六(りく)二(じ)に中る。次に地雷復六二の文章(爻辞と小象伝)を示す。
「地雷復」六二の言葉は【新暦十二月二十六日ころから三十一日ころまで】に当て嵌まる。
地雷復六二(易経・陰陽消長卦)
《爻辞》
○六二。休(きゆう)復(ふく)す。吉。
柔順中正の六二は賢人初九を師と仰いで德を磨き、継続的に指導を受けて正しい道(仁義礼智信の五常の道)に復(かえ)る。日(ひ)々(び)善(よ)い心が芽生えるので、幸運を招き寄せる。
《小象伝》
○象に曰く、休(きゆう)復(ふく)の吉は、仁(じん)を下(くだ)るを以(もつ)て也(なり)。
小象伝は次のように言っている。六二は日(ひ)々(び)善(よ)い心が芽生えるので、幸運を招き寄せる。賢人初九を師と仰いで德を磨き、継続的に指導を受けて正しい道に復(かえ)る(仁義礼智信の五常の道を歩み、仁德を目指して日々精進する)からである。
「地雷復」六二の之卦は「地(ち)澤(たく)臨(りん)」である。次に「地澤臨」の全体像を表す言葉(卦辞・彖辞、彖伝、大象伝)と「地澤臨」二爻の言葉(爻辞、小象伝)を示す。これらの言葉は「地雷復」六二と同じく【新暦十二月二十六日ころから三十一日ころまで】に当て嵌まる。
地(ち)澤(たく)臨(りん)(地雷復六二の之卦)
《卦辞・彖辞》
○臨は、元(おおい)に亨(とお)る。貞(ただ)しきに利し。八月に至りて、凶有り。
臨は上が下に臨(のぞ)む時。権威を有する上の者が下の者に和らぎ悦び(下卦兌)柔順(上卦坤)に臨むから、何事もすらすら通る。正しい道を固く守るが宜しい。
陽剛君子の勢いが盛んに伸びて、やがて天下泰平(二・地天泰)となるが、泰平を極めれば、小(しよう)人(じん)の勢いが増長(三・澤天夬→四・乾為天→五・天風姤→六・天山遯→七・天地否→八・風地觀と陰陽消長)する。
《彖伝》
○彖に曰く、臨は剛(ごう)浸(ようや)くにして長じ、説(よろこ)びて順い、剛中にして應(おう)ず。大いに亨(とお)りて以て正し。天(てん)之(の)道(みち)也(なり)。八月に至りて凶有りとは、消(しよう)すること久しからざる也(なり)。
彖伝は次のように言っている。臨は剛(君子)が漸(ぜん)次(じ)に進んで盛んになり、権威を有する上の者が下の者に和(わ)悦(えつ)柔順の德で臨み、下の者が和悦の德で進む。剛中の九二と柔(じゆう)中(ちゆう)の六五が相応じ、六五の天子(トップ)は剛中の賢臣九二を深く信任する。それゆえ、何事もすらすら通り、正しい道を歩む。天の道に適(かな)っているのである。
今は陽剛君子の勢いが盛んに伸びて、やがて天下泰平(地天泰)となるが、泰平を極めれば、必ず陰柔小人の勢いが増長し、やがては小人の天下(天風姤→天山遯→天地否→風地觀)となる。君子の天下が少しでも長続きするように、盛んに上り行く時である今から警戒せよと戒めているのである。
《大象伝》
○象に曰く、澤(さわ)の上に地(ち)有るは臨なり。君子以(もつ)て教え思うこと窮(きわ)まり无(な)く、民(たみ)を容(い)れ保(やす)んずること疆(かぎ)り无(な)し。
大象伝は次のように言っている。澤(兌)の上に大地(坤)が在るのが臨の形。君子はこの形に見習って、地下水(大地・坤の下の澤・兌)が涸(か)れないように、民(たみ)を教え導き、思いやること窮(きわ)まりなく、民を包容して安んずること限りない。
地澤臨九二(地雷復六二の之卦・爻辞)
《爻辞》
○九二。咸(かん)臨(りん)す。吉(きつ)にして利(よろ)しからざる无(な)し。
剛中の賢臣九二は剛健中(ちゆう)庸(よう)で才能と人德高く柔順中庸の六五の天子(トップ)と相応じている。六五の天子(トップ)は賢臣九二の才能と人德に感動する。賢臣九二は六五の天子(トップ)の信任を得て事に臨むから、何事も宜しくして、何の問題も起こらない。
《小象伝》
○象に曰く、咸(かん)臨(りん)す。吉(きつ)にして利(よろ)しからざる无(な)しとは、未(いま)だ命(めい)に順(したが)わざる也(なり)。
小象伝は次のように言っている。剛中の賢臣九二は六五の天子(トップ)の信任を得て事に臨むから、何事も宜しくして、何の問題も起こらない。
賢臣九二が時には六五の天子(トップ)の発する命令に順わず、諫(いさ)めることも辞さない態度で事に中(あた)るからである。
(四季と易経 その三)