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四季と易経 その六十七

蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)(七十二候の五十一候・寒露(かんろ)の末候)

【新暦十月十八日ころから二十二日ころまで】
 意味は「キリギリスが戸口で鳴く(絵で楽しむ)」である。
 「絵で楽しむ」には次のように書いてある。
 戸口で秋の虫の声が響くころ。昔はコオロギのことをキリギリスといいました。この候の「蟋蟀(きりぎりす)」はコオロギをさすのか、いやどちらも秋に鳴く虫として含まれるまど、諸説あります。

 「蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)」は、易経・陰陽消長卦の「風地観」上九に中る。次に「風地観」上九の文章(爻辞と小象伝)を示す。
 「風地観」上九の言葉は【新暦十月十八日ころから二十二日ころまで】に当て嵌まる。

風地観上九(易経・陰陽消長卦)

《爻辞》
上九。觀其生。君子无咎。
○上九。其(そ)の生を觀(み)る。君子なれば咎无し。
 剛健にして無位の老師上九は九五の相談役として天下萬(ばん)民(みん)から仰ぎ観られており、その一(いつ)挙(きよ)手(しゆ)一(いつ)投(とう)足(そく)が萬民から注目されている。聖君(聖人のように立派なトップ)の相談役(老師)に相応(ふさわ)しい立ち居振る舞いをするならば、誰も上九を咎めない。

《小象伝》
象曰、觀其生、志未平也。
○象に曰く、其(そ)の生を觀(み)るとは、志未(いま)だ平(たい)らかならざる也(なり)。
 小象伝は次のように言っている。剛健にして無位の老師上九の一(いつ)挙(きよ)手(しゆ)一(いつ)投(とう)足(そく)が萬民から注目されている。国家の治(ち)乱(らん)興(こう)亡(ぼう)は聖君(聖人のように立派なトップ)の相談役(老師)上九の助言に左右されるゆえ、志を安(あん)閑(かん)として呑(のん)気(き)に構えていられないのである。

 「風地観」上九の之卦は「水地比」である。次に「水地比」の全体像を表す言葉(卦辞・彖辞、彖伝、大象伝)と「澤地萃」上六の言葉(爻辞、小象伝)を示す。これらの言葉は「天地否」の上九と同じく【新暦十月十八日ころから二十二日ころまで】に当て嵌まる。

水地比(風地観上九の之卦)

《卦辞・彖辞》
比、吉。原筮、元永貞、无咎。不寧方來。後夫凶。
○比(ひ)は吉。原(げん)筮(ぜい)して、元(げん)永(えい)貞(てい)なれば、咎无し。寧(やす)んぜずして方(あまね)く來(きた)る。後(おく)るる夫(ふ)は凶。
 比は親しみ助け合い和合する時だから、みんなが共存共栄できる。親しむべき相手を推(お)し量(はか)ってよく見極め、察知できない事は、占(せん)筮(ぜい)するように人の意見をよく聞くべきである。元(仁)永(恒)貞(正)の德を具えていれば過ちは犯さない。
 不安を抱く人々が親しむべき相手のところに集まって来て和合する。ぐずぐず遅れて孤立している(和合できない)人は不幸な結果となる。

《彖伝》
彖曰、比吉也。比輔也。下順從也。原筮、元永貞、无咎、以剛中也。不寧方來、上下應也。後夫凶、其道窮也。
○彖に曰く、比は吉也。比は輔(たす)くる也。下(した)順(じゆう)從(じゆん)する也。原筮して元(げん)永(えい)貞(てい)なれば、咎无しとは、剛中なるを以て也。寧(やす)んぜずして方(あまね)く來(きた)るとは、上下應(おう)ずる也。後(おく)るる夫(ふ)は凶とは、其の道窮(きわ)まれば也。
 彖伝は次のように言っている。比はみんな親しみ助け合い和合するから共存共栄する。比は天子(トップ)と臣(しん)民(みん)(部下や民衆)が助け合う時である。九五の天子(トップ)に臣民(部下や民衆)が素直に従い親しみ助け合い和合する。
 親しむべき相手を推(お)し量(はか)ってよく見極め、察知できない事は、占(せん)筮(ぜい)するようによく人の意見を聞き、元(仁)永(恒)貞(正)の德を備えていれば過ちは犯さない。九五の天子(トップ)が剛中備えて私欲なく(元)、健にして息(やす)まず(永)、正固にして偏らない(貞)からである。
 不安を抱く人々が親しむべき相手のところに集まって来て和合する。九五の天子(トップ)が普(あまね)く親しむ道を施(ほどこ)すからである。ぐずぐず遅れて孤立している(和合できない)人は不幸な結果となる。一人孤立して人々から疎外され、終に困窮するのである。

《大象伝》
象曰、地上有水比。先王以建萬國親諸侯。
○象に曰く、地上に水有るは比なり。先(せん)王(おう)以って萬(ばん)國(こく)を建て諸侯を親しむ。
 小象伝は次のように言っている。大地(坤)の上に水(坎)が豊富に有る。間隙ない潤い(絶えることがない水の潤い)によって萬(ばん)物(ぶつ)を生々化成するのが比の卦象である。
 昔の王様はこの形を見習って、功(く)德(どく)ある臣下(人徳具えた有能な部下)を各地に分(ぶん)封(ぽう)(配置)して、大地と水が萬物を生々化成するように、諸侯(地域のリーダー)と臣民(人徳具えた部下や民衆)を養い育てるのである。

水地比上六(風地観上九の之卦・爻辞)

《爻辞》
上六。比之无首。凶。
○上六。之に比するに首(かしら)无(な)し。凶。
 上六は柔弱不中でやり過ぎる性格である。九五のトップの上に居て傲(ごう)慢(まん)不(ふ)遜(そん)なので、九五と親しむことができない。卦辞(彖辞)の「後(おく)るる夫(ふ)は凶」とは上六のことである。
 上六が不幸に陥ったのは、自ら禍(わざわい)を招いたのである。

《小象伝》
象曰、比之无首、无所終也。
○象に曰く、之に比するに首(かしら)无(な)しとは、終る所无(な)き也。
 小象伝は次のように言っている。上六は九五のトップの上に居て傲(ごう)慢(まん)不(ふ)遜(そん)なので、九五と親しむことができない。みんなが親しみ合う比の時に、自分だけ傲慢不遜に振る舞ったのである。こんな態度で終りを全うできるわけがない。