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四季と易経 その四十七

蓮始開(はすはじめてひらく)(七十二候の三十二候・小暑の次候)

【新暦七月十二日ころから十六日ころまで】
 意味は「蓮の花が開き始める(絵で楽しむ)」である。
 「絵で楽しむ」には次のように書いてある。
 仏教とともに渡来し、蓮(れん)華(げ)とも呼ばれる蓮の花が開くころ。「泥(でい)より出で泥に染まらず」といわれる通り、蓮は古来より清らかさの象徴とされてきました。。

 「蓮始開(はすはじめてひらく)」は、易経・陰陽消長卦の「天風姤」九五に中る。次に「天風姤」九五の文章(爻辞と小象伝)を示す。
 「天風姤」九五の言葉は【新暦七月十二日ころから十六日ころまで】に当て嵌まる。

天風姤九五(易経・陰陽消長卦)

《爻辞》
九五。以杞包瓜。含章。有隕自天。
○九五。杞(き)を以て瓜(うり)を包む。章(あや)を含む。天より隕(お)つる有り。
 九五は剛健中正の君主(トップ)である。君子(五陽爻)を誑(たぶら)かそうとしている悪しき小人初六が瓜(うり)の蔓(つた)が伸びるように下から迫って来ようとしているが、高木の杞(き)柳(りゆう)(川柳)のような寛大さで小人初六を包み込む(邪心が魅力的な姿に化身して君子を誑(たぶら)かす時に適切に対処すべく邪心を排除する)。
 剛健中正の德を内に含んで時が至るのを待つが宜しい。悪しき小人初六は天の道のような九五の君主(トップ)の度量の大きさに恐れ入って退散する。

《小象伝》
象曰、九五含章、中正也。有隕自天、志不舍命也。
○象に曰く、象に曰く、九五、章を含むは、中正なる也。天より隕つる有りとは、志、命を舍てざる也。
 小象伝は次のように言っている。剛健中正の德を内に含んで時が至るのを待つ。中正を備えた名君(立派なトップ)である。悪しき小人初六は天の道のような名君九五の度量の大きさに恐れ入って退散する。名君九五が命をかけて天命を貫徹するからである。

 「天風姤」九五の之卦は「火風鼎」である。次に「火風鼎」の全体像を表す言葉(卦辞・彖辞、彖伝、大象伝)と「火風鼎」の六五の言葉(爻辞、小象伝)を示す。これらの言葉は「天風姤」の九五と同じく【新暦七月十二日ころから十六日ころまで】に当て嵌まる。

火風鼎(天風姤九五の之卦)

《卦辞・彖辞》
鼎、元吉亨。
○鼎(てい)は元(げん)吉(きつ)、亨(とおる)る。
 鼎(かなえ)(食物を煮炊きする器。上爻を鉉(つる)、五爻を耳、四三二爻を器、初爻を足とする)に食物を入れ煮炊きすれば食物の性質は刷新して素晴らしい料理になるように、変革後の社会制度を刷新して(革を引き継ぎ)、より善い社会制度を構築するのが鼎の時である。文明(上卦離)的な六五の天子(トップ)と巽順(下卦巽)な賢臣九二が相応じて、鼎で新しい料理を煮炊きするように、君臣協力して、社会制度を刷新し、より善い社会制度を構築するから大いに宜しきを得て幸運を招き寄せる。何事もすらすら通る。

《彖伝》
彖曰、鼎、象也。以木巽火、亨飪也。聖人亨以享上帝、而大亨以養聖賢。巽而耳目聰明、柔進而上行、中得而應乎剛。是以元亨。
○彖に曰く、鼎(てい)は象(しよう)也。木を以て火に巽(い)れ、亨(ほう)飪(じん)する也。聖人、亨(ほう)して以て上帝を享(きよう)し、而して大いに亨(ほう)して以て聖賢を養ふ。巽にして耳目聰明、柔進みて上(のぼ)り行き、中を得て剛に應ず。是を以て元に亨る。
 彖伝は次のように言っている。鼎(てい)の形は偉大な宝器「鼎(かなえ)」にそっくりである。鼎は木(下卦巽)を火(上卦離)の中に入れ、食物をほどよい塩(あん)梅(ばい)に煮炊きするために用いる三本脚の巨大な器である。聖人のように立派な天子(トップ)は、鼎を用いて食物を煮炊きして、天の神様・仏様にお供えして神仏をお祭りするだけでなく、より多くの食物を煮炊きし、天下の各地から聖賢(聖人のような仁者や賢者)を集めて饗(きよう)応(おう)して養う。以上のようであるから、天下は泰平に治まり、萬民は安泰なのである。
 巽の性質は巽(そん)順(じゆん)、離の性質は聰(そう)明(めい)。鼎(てい)の性質は巽順にして耳目聰明。天下の賢人(賢者)に巽順に謙(へりくだ)り、聖賢(古典)の教えに素直に順う。それゆえ、六五の天子(トップ)は耳目聰明にして明德が光輝き、世の中の状態がよくわかる。革の六二が天子(トップ)の位に上り中庸の德を得て、剛健にして中庸の德を備えた賢臣九二の補佐を得る。鼎の時はこのように盤石な体制なので、何事もすらすら通るのである。

《大象伝》
象曰、木上有火鼎。君子以正位凝命。
○象に曰く、木の上に火有るは鼎(てい)なり。君子以て位を正し命(めい)を凝(な)す。
 大象伝は次のように言っている。木(巽)の上に火(離)が有るのが鼎の形である。木を鼎の脚の火中に入れると盛んに燃えて鼎(かなえ)の中の食物を程よく煮炊する。
 君子は端正で安定している鼎の形に見習って、上下の位を正して(新しい組織に適材適所の人事をして)、変革後の社会制度を刷新して、より善い社会制度を構築するという天命を成就するのである。

火風鼎六五(天風姤九五の之卦・爻辞)

《爻辞》
六五。鼎黄耳金鉉。利貞。
○六五。鼎(かなえ)黄(こう)耳(じ)にして、金(きん)鉉(げん)あり。貞しきに利し。
 六五は鼎の耳。柔順にして中庸の德を具えた天子(トップ)である。終に完成した美味しい料理(新しい社会制度)を鼎の耳に鉉(つる)を差し込み持ち運ぶ(世の中に披露する)。耳は鼎の要(天子・トップ)である。六五の天子(トップ)は中庸の德を具えているので黄(こう)耳(じ)と言い、黄耳はよく人の言葉を聞き入れる。すなわち六五は九二の賢臣の言葉をよく聞き入れる。さらに上九の老師が六五をしっかりと補佐してくれる。正しい道(天子・トップとして、新しい社会制度を世の中に定着させること)を固く守れば、幸運を招き寄せる。

《小象伝》
象曰、鼎黄耳、中以爲實也。
○象に曰く、鼎(かなえ)黄(こう)耳(じ)とは、中以て實(じつ)と爲(な)す也(なり)。
 小象伝は次のように言っている。六五の天子(トップ)は九二の賢臣の言葉をよく聞き入れる。中庸の德を発揮する(その時に適切に対処する)ことが天子(トップ)の實質的な役割(存在意義)だと心得ているからである。