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四季と易経 その四十六

小(しよう)暑(しよ)(二十四節氣の十一節氣)

【新暦七月七日ころから七月二十一日ころまで】
 「夏至」の次の二十四節氣は「小(しよう)暑(しよ)」である。
 いよいよ梅雨明けを迎え、本格的に夏に向かうころ。この小暑から立秋までが、暑中見舞いを送る時季。立秋以降は、残暑見舞いになります。また七月七日といえば五節句のひとつでもある「七夕」。(中略)願い事を書いたカラフルな短冊を笹に飾るのは、江戸時代から始まった日本特有の行事です。(絵で楽しむ)

温風至(あつかぜいたる)(七十二候の三十一候・小暑の初候)

【新暦七月七日ころから十一日ころまで】
 意味は「暖かい風が吹いてくる(絵で楽しむ)」である。
 「絵で楽しむ」には次のように書いてある。
 南から暖かく湿った風が吹き、本格的な夏の到来を予感させるころ。南風にも、梅雨の時季に合わせてさまざまな名前がつけられました。梅雨入りのころに吹く風を「黒南風(くろはえ)」、中ごろは「荒南風(あらはえ)」、梅雨明けのころは「白南風(しらはえ)」。

 「温風至(あつかぜいたる)」は、易経・陰陽消長卦の「天風姤」九四に中る。次に「天風姤」九四の文章(爻辞と小象伝)を示す。
 「天風姤」九四の言葉は【新暦七月七日ころから十一日ころまで】に当て嵌まる。

天風姤九四(易経・陰陽消長卦)

《爻辞》
九四。包无魚。起凶。
○九四。包(つと)に魚(うお)无(な)し。起(た)てば凶。
 九四の大臣(側近)は本来悪しき小人初六と正応だが、姤は出逢うこと(と、出逢うことによる悪しき影響を排除すること)を重要視しているので、初六のすぐ近くにいる九二の君子がすでに初六を封じ込めて(悪しき影響を排除)しまった。それゆえ、九四の苞(つと)には魚(正応初六)はいないのである。九二の君子は初六の悪影響が他の君子(陽爻)に及ばないように封じ込めた(悪しき影響を排除した)のである。
 もし九四の大臣(側近)が真意を推(お)し量(はか)れずに、九二の君子と争えば禍(わざわい)を被(こうむ)ることになる。真意を推し量って、今の場所に安んじていれば禍を回避できる。

《小象伝》
象曰、无魚之凶、遠民也。
○象に曰く、魚(うお)无(な)きの凶は、民(たみ)に遠ければ也(なり)。
 小象伝は次のように言っている。九四の大臣(側近)が九二の君子と争えば禍を被ることになる。大臣(側近)としての思慮に欠け、民の支持を得られないからである。

 「天風姤」九四の之卦は「巽為風」である。次に「巽為風」の全体像を表す言葉(卦辞・彖辞、彖伝、大象伝)と「巽為風」の六四の言葉(爻辞、小象伝)を示す。これらの言葉は「天風姤」の九四と同じく【新暦七月七日ころから十一日ころまで】に当て嵌まる。

巽為風六四(天風姤九四の之卦)

《卦辞・彖辞》
巽、小亨。利有攸往。利見大人。
○巽(そん)は小しく亨る。往(ゆ)く攸(ところ)有るに利し。大人を見るに利し。
 巽はすっと入る。すっと入ると云う意味から謙る。巽順と云う意味が出てくる。巽は巽順(柔順)に人に謙(へりくだ)って従う時である。巽順(柔順)に人に謙(へりくだ)って従う時であるから、小さな事ならすらっと通る。常に柔順に人に謙って行動することが肝要である。誰にでも謙ればよいと云うわけではない。立派な人(大人)に謙るから善い結果が得られるのである。

《彖伝》
彖曰、重巽以申命。剛巽乎中正而志行。柔皆順乎剛。是以小亨、利有攸往、利見大人。
○彖に曰く、重(ちよう)巽(そん)にして以て命(めい)を申(かさ)ぬ。剛、中正に巽(したが)ひて志行はる。柔、皆剛に順ふ。是を以て小しく亨り、往く攸有るに利しく、大人を見るに利し。
 彖伝は次のように言っている。上卦・下卦、巽(巽順・風)が重なっているから、巽(そん)順(じゆん)にして巽順(柔順)に人に謙ることができ、風のように隅々まで命令が行き渡るのである。すなわち、下の人々は上の人々の命令に巽順(柔順)に従い、上の人々は下の人々の意見や要望をよく聞き、その時々に適合する政策を打ち立て、丁(てい)寧(ねい)且(か)つ繰り返して、下の人々に命令を伝える。
 剛健にして位正しく中庸の德を具えている九五の天子(トップ)が柔順に人の道(道德・仁)に従うから、天子(トップ)としての志が為し遂げられるのである。小人(陰・普通の人々)は大人(陽・立派な人々)に柔順に従うものである。それゆえ、小さな事ならすらっと通る。何事も巽順(柔順)に人に謙って行動することが肝要である。謙るに中って、誰にでも謙ればよいと云うわけではない。立派な人(大人)に謙るから善い結果が得られるのである。

《大象伝》
象曰、隨風巽。君子以申命行事。
○象に曰く、隨(ずい)風(ふう)は巽なり。君子以て命(めい)を申(かさ)ね事を行ふ。
 大象伝は次のように言っている。風が次から次へと吹き続けるのが巽の形である。人の上に立つ君子はこの形に見習って、部下や民衆がよく理解できるように、丁寧且つ、繰り返し繰り返し命令を伝えて、その後、計画を実行するのである。

巽為風六四(天風姤九四の之卦・爻辞)

《爻辞》
六四。悔亡。田獲三品。
○六四。悔(くい)亡ぶ。田(でん)にして三(さん)品(ぴん)を獲(う)。
 六四の大臣(側近)は柔弱な性質で剛健な九三に乗じ、初六の部下とは不応なので本来は後悔するはずだが、上卦の最下で位正しく(陰爻陰位)、比する九五の天子(トップ)に側近として巽順(柔順)に従うので、後悔することはなくなる。例えば、狩りに出かけたら思いのほか獲物が沢山捕れてみんなで喜んでいるように、六四の功德は遍(あまね)く上下に行き渡るのである。

《小象伝》
象曰、田獲三品、有功也。
○象に曰く、田(でん)にして三(さん)品(ぴん)を獲(う)とは、功(こう)有る也。
 小象伝は次のように言っている。狩りに出かけたら思いのほか獲物が沢山捕れてみんなで喜んでいる。側近として九五の天子(トップ)に巽順(柔順)に従う六四だから成し得た功績である。