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四季と易経 その六

水泉動(すいせんうごく)(七十二候の六十八候)

【新暦一月十日ころから十四日ころまで】
 意味は「地中の凍った泉が動き始める(絵で楽しむ)」である。
 「絵で楽しむ」には次のように書いてある。
 「水泉(すいせん)」とは、地中から湧き出る泉のことをいいます。地中では少しずつ陽気が生じ、凍った泉が動き始めるとされるころ。

 「水泉動(すいせんうごく)」は、易経・陰陽消長卦の「地雷復」六(りく)五(ご)に中る。次に地雷復六五の文章(爻辞と小象伝)を示す。
 「地雷復」六五の言葉は【新暦一月十日ころから十四日ころまで】に当て嵌まる。

地雷復六五(易経・陰陽消長卦)

《爻辞》
○六五。敦(あつ)く復(かえ)る。悔(くい)无(な)し。
 六五は柔順な性質で中の德を備えた君主(トップ)。復の卦主として篤実に正しい道に復る(何かあれば速やかに反省して道德心を取り戻す)。
 賢人初九とは応比の関係にないので、賢者のアドバイスは受けられないが、自ら君主(トップ)としての非を知り德を磨いて大衆を教化する。後悔することはない。
《小象伝》
○象に曰く、敦(あつ)く復(かえ)る。悔(くい)无(な)しとは、中にして以て自(みずか)ら考(な)す也。
 小象伝は次のように言っている。復の卦主として自ら君主(トップ)としての非を知り德を磨いて大衆を教化し、後悔することはない。
 中庸の徳を具えているので自らの非を知っており、正しい道を貫き通す(何かあっても常に道德心を取り戻す)のである。

 「地雷復」六五の之卦は「水(すい)雷(らい)屯(ちゆん)」である。次に「水雷屯」の全体像を表す言葉(卦辞・彖辞、彖伝、大象伝)と「水雷屯」九(きゆう)五(ご)の言葉(爻辞、小象伝)を示す。これらの言葉は「地雷復」六五と同じく【新暦一月十日ころから十四日ころまで】に当て嵌まる。

水(すい)雷(らい)屯(ちゆん)(地雷復六五の之卦)

《卦辞・彖辞》
○屯(ちゆん)は元(おお)いに亨(とお)りて貞(ただ)しきに利(よろ)し。往(ゆ)く攸(ところ)有るに用(もち)ふる勿(なか)れ、侯(きみ)を建(た)つるに利(よろ)し。
 屯は萬物創世(産みの苦しみ)の時。創世・創業には苦しみが伴う。その苦しみに耐えてこそ、物事が始まり、すらすら成長して行く。正しく天の道を固く守るが宜しい。
 創世・創業の時は艱難辛苦が待ち受けているから、妄(みだ)りに動いてはならない。泰然と構えて全体を見渡し、将来を切り開いて行く人物(初九)を抜擢任用するが宜しい。
《彖伝》
○彖に曰く、屯は剛柔始めて交(まじ)わりて難(なん)生(しよう)じ、険(けん)中(ちゆう)に動く。大いに亨(とお)りて貞なるは、雷雨の動き満(まん)盈(えい)すればなり。天(てん)造(ぞう)草(そう)昧(まい)、宜しく侯(きみ)を建(た)てるに寧(やす)からず。
 彖伝は次のように言っている。屯の時は、乾(陽剛)と坤(陰柔)が始めて交わり下卦震(長男)を生み、震は上卦坎に塞がれて、萬物創世の生みの苦しみに遭遇する。すなわち困難な状況(坎)の中を進む(震)のである。
 創世・創業には苦しみが伴うものである。その苦しみを乗り越えてこそ、物事が始まり、すらすら成長して行くのだ。正しく天の道を固く守るが宜しい。雷雨(下卦震と上卦坎の性質)の震動が漸次に満ちて(上卦震と下卦坎から成る雷水解の時・上卦坎の水が下卦坎となり慈雨が降ってきて)、やがて萬物が誕生するからである。
 天の時運を見通すことは難しい。九五が泰然と構えて全体を見渡し、将来を切り開いて行く人物(初九)を抜擢任用しても、しばらくは、生みの苦しみが続くであろう。
《大象伝》
○象に曰く、雲(うん)雷(らい)は屯(ちゆん)なり。君子以(もつ)て経(けい)綸(りん)す。
 大象伝は次のように言っている。雷(下卦震)が轟(とどろ)き渡(わた)り、雲(上卦坎)が湧き上がるが、未だ恵みの雨に到らないのが屯の時である。君子はこの卦象(卦の形)に倣(なら)って、恵みの雨を降らせるために、縦糸と横糸(時間・歴史と空間・現体制のつながり)を紡(つむ)ぐのである。

水雷屯九五(地雷復六五の之卦・爻辞)

《爻辞》
○九五。其の膏(めぐみ)を屯(とどこお)らす。小は貞にして吉。大は貞にして凶。
 九五は屯難(産みの苦しみ)の時の天子(リーダー)。側近六四も従臣六二も、陰柔なので頼りにならない。それゆえ、天子(リーダー)としての恩沢を民に施すことができない。(最下の地位に居る卑しい人物は抜擢任用しないと云う)既成概念に固執しなければ、将来を切り開くことができる。固執すれば行き詰まる。
《小象伝》
○象に曰く、其の膏(めぐみ)を屯(とどこお)らすとは、施(ほどこ)すこと未(いま)だ光(おおい)ならざる也。
 小象伝は次のように言っている。天子としての恩沢を民に施すことができないのは、今はどうがんばっても屯難を解決できないのである。すなわち、未だ屯難が解ける時に至らないからである。(屯難は慈雨が降ってくる雷水解の象になった時に解決するのである。)
(四季と易経 その六)