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四季と易経 その七

雉始雊(きじはじめてなく)(七十二候の六十九候)

【新暦一月十五日ころから十九日ころまで】
 意味は「雉(きじ)が鳴き始める(絵で楽しむ)」である。
 「絵で楽しむ」には次のように書いてある。
 日本の国鳥である雉(きじ)が鳴き始めるとされるころ。

 「雉始雊(きじはじめてなく)」は、易経・陰陽消長卦の「地雷復」上(じよう)六(りく)に中る。次に地雷復上六の文章(爻辞と小象伝)を示す。
 「地雷復」上六の言葉は【新暦一月十五日ころから十九日ころまで】に当て嵌まる。

地雷復上六(易経・陰陽消長卦)

《爻辞》
○上六。復(かえ)るに迷う。凶。災(さい)眚(せい)有り。用(も)って師(いくさ)を行(や)れば、終(つい)に大敗有り。其(そ)の國(こつ)君(くん)を以(もつ)てす。凶。十年に至るまで征(せい)する克(あた)わず。
 上六は復の終りに居て応比なく、賢人初九と最も遠く離れているので、正しい道に復る(道德心を取り戻す)ことを深く迷う。道を踏み外している(道德心に背いている)ことを自覚しながら、正しい道に復ることを深く迷うのだから、救いようがない。
 このような有様では、天災と人災が度重なるであろう。自ら道德心に背いていることを自覚しながら、他国に戦争を仕掛ければ、大敗する。兵卒を失うだけでなく、君主(トップ)にまで禍(わざわい)が及ぶ。自分の身を滅ぼし国を喪(うしな)い社会は壊(かい)滅(めつ)状態に至る。その後長い年月を積み重ねても国力は回復せず再び戦争に勝つことはできない。
《小象伝》
○象に曰く、復(かえ)るに迷うの凶は、君(くん)道(どう)に反(はん)すれば也(なり)。
 小象伝は次のように言っている。上六は道を踏み外している(道德心に背いている)ことを自覚しながら、正しい道に復ることを深く迷うのだから、救いようがない。
 天災と人災が度重なり、他国に戦争を仕掛ければ大敗し、兵卒を失うだけでなく、君主(トップ)にまで禍(わざわい)が及ぶ。このような事態に陥(おちい)ったのは、上六が君子の道(仁義礼智信の五常の道)に反したからである。

 「地雷復」上六の之卦は「山(さん)雷(らい)頥(い)」である。次に「山雷頥」の全体像を表す言葉(卦辞・彖辞、彖伝、大象伝)と「山雷頥」上(じよう)九(きゆう)の言葉(爻辞、小象伝)を示す。これらの言葉は「地雷復」上六と同じく【新暦一月十五日ころから十九日ころまで】に当て嵌まる。

山(さん)雷(らい)頥(い)(地雷復上六の之卦)

《卦辞・彖辞》
○頤(い)は、貞(てい)にして吉。頤(い)を覿(み)、自ら口(こう)實(じつ)を求む。
 頤は上下二陽(実)が中に四陰(虚)を含んでいる。上卦艮は止まり下卦震は動く頤(あご)の形をしている。頤は口から栄養を取り身体を養うので、自分の身心(栄養と人德)や民衆(仁德)を養う意味になる。自分の身心や民衆を養うには、正しい道(自分の身には栄養を、自分の心には人德を、民衆に対しては仁德を養うこと)を固く守るが宜しい。今、自分は何を養うべきかをよく観察して、先ずは自らを養うために努力するのである。
《彖辞》
○彖に曰く、頤は、貞にして吉とは、養うこと正しければ則(すなわ)ち吉也。頤を覿るとは、其(そ)の養(やしな)う所を覿る也。自ら口實を求むとは、其の自ら養うを覿る也。天地は萬(ばん)物(ぶつ)を養い、聖人は賢を養い、以て萬民に及ぼす。顎の時、大(だい)なる哉(かな)。
 彖伝は次のように言っている。頤(い)の時は正しい道(自分の身には栄養を、自分の心には人德を、民衆に対しては仁德を養うこと)を固く守れば宜しいとは、天下の萬(ばん)物(ぶつ)を養い育てることは、正しいことだからである。今、自分は何を養うべきかをよく観察するとは、自ら何を養うべきか(何が欠けているのか)を省(しよう)察(さつ)することである。先ずは自らを養うために努力するとは、人に求めることなく自発的に行なうと云うことである。
 一人ひとりが自らを養うために努力することは、天地が萬物を養い、聖人が賢人を養い、賢人が民衆を養うことと同義である。養い育てる頤の時は、何と偉大であろうか。
《大象伝》
○象に曰く、山の下に雷(かみなり)有るは頤なり。君子以て言語を愼(つつし)み、飲食を節す。
 大象伝は次のように言っている。山(上卦艮)の下に雷(下卦震)が潜んでいるのが頤(い)の形。冬は山の下に潜んでいた雷が春には轟き渡り萬物を養育する。下卦震は動き上卦艮は止まるから、下顎が動き上顎が止まる口(上顎と下顎)の形をしている。
 君子はこの(上顎と下顎の)形に倣(なら)って、口から出る「言葉」は慎(つつし)み、口から入る「食べ物」は節制するように努力して、自分の心に人德(民衆に対して仁德)を養うのである。

山雷頥上九(地雷復上六の之卦・爻辞)

《爻辞》
○上九。由(よ)りて頤(やしな)わる。厲(あや)うけれども吉。大川を渉るに利し。
 頤は萬物を養う時だが、養う力があるのは陽剛の上九と初九のみである。初九は位が低く力を十分に発揮できないので、上九が天子(トップ)を指導して天下萬民を養う。
 極めて危うい任務であるが、畏(おそ)れ慎み時に中(あた)れば幸福を招き寄せる。上九は上卦艮の極点だから、止まる時は終わり開けていく時が始まったのだ。上九が天子(トップ)を直接指導して天下萬民を養うならば、大(たい)川(せん)を渉るような危険を冒しても宜しい。
《小象伝》
○象に曰く、由りて頤わる、厲うけれども吉とは、大いに慶び有る也。
 小象伝は次のように言っている。上九は天子(トップ)を指導して天下萬民を養う。極めて危うい任務であるが、畏(おそ)れ慎(つつし)み時に中(あた)れば幸福を招き寄せる。上九が天子(トップ)を直接指導して天下の艱難を救えば、天下萬民大いに慶ぶのである。
(四季と易経 その七)