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四季と易経 その二十七

虹始見(にじはじめてあらわる)(七十二候の候の十五候・清明の末候)

【新暦四月十四日ころから十八日ころまで】
 意味は「虹が初めて架かるころ(絵で楽しむ)」である。
 「絵で楽しむ」には次のように書いてある。
 春雷をともなうにわか雨がやみ、雲間から洩れるやわらかな光の中から虹が浮かび上がるころ。

 「虹始見(にじはじめてあらわる)」は、易経・陰陽消長卦の「雷天大壮」上六に中る。次に「雷天大壮」上六の文章(爻辞と小象伝)を示す。
 「雷天大壮」上六の言葉は【新暦四月十四日ころから十八日ころまで】に当て嵌まる。

雷天大壮上六(易経・陰陽消長卦)

《爻辞》
上六。羝羊觸藩、不能退、不能遂。无攸利。艱則吉。
○上六。羝(てい)羊(よう)、藩(まがき)に觸(ふ)れ、退(しりぞ)く能(あた)わず、遂(と)ぐる能(あた)わず。利(よろ)しき攸(ところ)无(な)し。艱(なや)めば則(すなわ)ち吉。
 上六は勢いが盛んで調子に乗ってやり過ぎる(傲(ごう)慢(まん)になったり強(ごう)引(いん)すぎたりする)大壮の極点・震の最上に居る。牡(お)羊(ひつじ)のように暴走すれば、垣根に突っ込んで進退窮まる。艱難辛苦して改心すれば、禍(わざわい)転じて福となす。

《小象伝》
象曰、不能退、不能遂、不詳也。艱則吉、咎不長也。
○象に曰く、退(しりぞ)く能(あた)わず、遂(と)ぐる能(あた)わずとは、詳(つまびら)かならざる也。艱(なや)めば則(すなわ)ち吉とは、咎(とが)、長からざる也(なり)。
 小象伝は次のように言っている。牡(お)羊(ひつじ)のように暴走して垣(かき)根(ね)に突っ込み進退窮(きわ)まるのは、時勢を詳(つまび)らかに分析しなかったからである。艱(かん)難(なん)辛(しん)苦(く)して改心すれば、禍(わざわい)転じて福となすのは、よく反省して過ちを改めるので、咎(とが)めは長く続かないのである。

 「雷天大壮」上六の之卦は「火天大有」である。次に「火天大有」の全体像を表す言葉(卦辞・彖辞、彖伝、大象伝)と「火天大有」上九の言葉(爻辞、小象伝)を示す。これらの言葉は「雷天大壮」の上六と同じく【新暦四月十四日ころから十八日ころまで】に当て嵌まる。

火天大有(雷天大壮上六の之卦)

《卦辞・彖辞》
大有、元亨。
○大(たい)有(ゆう)は、元(おおい)に亨(とお)る。
 大有は乾(天)の上に離(火・太陽・無我の天子)が在り、天上に太陽が燦(さん)々(さん)と輝き普(あまね)く天下万民を慈しみの光で照らす時。一陰の六五(無我の天子・指導者・リーダー)が君位に在り、五陽の賢人(臣民・万民)が帰服するので、何事もすらすら通るのである。

《彖伝》
彖曰、大有、柔得尊位、大中而上下應之、曰大有。其德剛健而文明、應乎天而時行。是以元亨。
○彖に曰く、大有は、柔(じゆう)尊(そん)位(い)を得、大(だい)中(ちゆう)にして、上下之(これ)に應(おう)ずるを、大有と曰う。其(そ)の德剛(ごう)健(けん)にして文(ぶん)明(めい)、天に應(おう)じて時に行う。是(ここ)を以(もつ)て元(おおい)に亨(とお)る。
 彖伝は次のように言っている。大有は、柔順な六五(無我の天子・指導者・リーダー)が尊位に在(あ)る。六五は偉大な中(ちゆう)庸(よう)の德を具えており、上下五陽が心(しん)服(ぷく)しているから、大いに所有する(大有)と言う。六五は強く健やか(下卦乾)で明智(上卦離)を具えており、天命に順(じゆん)応(のう)して時に中(あた)る。それゆえ何事もすらすら通るのである。

《大象伝》
象曰、火在天上大有。君子以遏惡揚善、順天休命。
○象に曰く、火(ひ)、天(てん)上(じよう)に在(あ)るは大有なり。君子以(もつ)て惡を遏(とど)め善を揚(あ)げ、天の休(きゆう)命(めい)に順(したが)う。
 大象伝は次のように言っている。太陽が天上に在って燦(さん)々(さん)と輝き普く天下万民を慈しみの光で照らしているのが大有の形である。
 君子(人の上に立つ者)はこの形に倣(なら)って、悪を絶って、善を勧(すす)め、天命に順応して、普く天下万民を慈しみの光で照らすのである。

火天大有上九(雷天大壮上六の之卦・爻辞)

《爻辞》
上九。自天祐之。吉无不利。
○上九。天より之(これ)を祐(たす)く。吉にして利(よろ)しからざる无(な)し。
 上九は何事もすらすら通る大有の極点に居る無(む)位(い)の賢人、富(ふ)有(ゆう)を超越して天命に順い謙譲の心で六五の天子を教え導くので天(てん)祐(ゆう)を授(さず)かる。何事も滞(とどこお)りなくすらすら通る。

《小象伝》
象曰、大有上吉、自天祐也。
○象に曰く、大有の上(じよう)吉(きつ)は、天より祐(たす)くる也(なり)。
 小象伝は次のように言っている。上九が富有を超越して天命に順い謙譲の心で六五の天子を教え導くので、何事も滞(とどこお)りなくすらすら通る。天道に則(のつと)って天子を補佐し大有の時を長く保つので、天の思し召(おぼしめ)しに叶(かな)い、天(てん)祐(ゆう)を授かるのである。