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四季と易経 その十九

桃始笑(ももはじめてわらう)(七十二候の八候・啓蟄の次候)

【新暦三月十日ころから十四日ころまで】
 意味は「桃の花が咲き始める(絵で楽しむ)」である。
 「絵で楽しむ」には次のように書いてある。
 桃のつぼみがほころび、可憐な花が咲き始めるころ。昔は花が咲くことを「笑う」とも表現していました。

 「桃始笑(ももはじめてわらう)」は、易経・陰陽消長卦の「地天泰」六五に中る。次に「地天泰」六五の文章(爻辞と小象伝)を示す。
 「地天泰」六五の言葉は【新暦三月十日ころから十四日ころまで】に当て嵌まる。

地天泰六五(易経・陰陽消長卦)

《爻辞》
六五。帝乙帰妹。以祉元吉。
○六五。帝(てい)乙(いつ)、妹を帰(とつ)がしむ。以て祉(さいわい)あり。元吉。
 六五は柔中の德を具えて天子の位に居る。泰平が頂点を極めて折り返し地点を過ぎ世の中が傾こうとしている時にあって、己の力不足を知り、昔の王様(殷(いん)の帝(てい)乙(いつ))が自分の妹を格下の諸侯に嫁がせたように、虚心で賢人九二に治国を一任する。
 それゆえ天下泰平を維持することができる。臣民の幸福は続き、国は大いに栄える。

《小象伝》
象曰、以祉元吉、中以行願也。
○象に曰く、以て祉あり元吉とは、中にして以て願いを行なう也。
 小象伝は次のように言っている。臣民の幸福は続き、国は大いに栄える。
 柔順にして中庸の德を具えた六五の天子(トップ)が、心の底から泰平の維持を願って、賢臣九二に治国を一任するからである。

 「地天泰」六五の之卦は「水天需」である。次に「水天需」の全体像を表す言葉(卦辞・彖辞、彖伝、大象伝)と「水天需」九五の言葉(爻辞、小象伝)を示す。これらの言葉は「地天泰」の六五と同じく【新暦三月十日ころから十四日ころまで】に当て嵌まる。

水天需(地天泰六五の之卦)

《卦辞・彖辞》
需、有孚。光亨。貞吉。利渉大川。
○需(じゆ)は、孚(まこと)有り。光(おおい)に亨(とお)る。貞なれば吉。大(たい)川(せん)を渉(わた)るに利し。
 需は孚(まこと)(上卦坎の性質)が剛健(下卦乾の性質)に支えられている。孚(まこと)は光のように隅々を普(あまね)く照らし、剛健な性質と相待って何事もすらっと通る。
 需の時における正しい(慈雨が降ってくるのをゆったりと待つ)道を固く守れば幸運に巡り逢える。正しい道を固く守れば難しい事に取り組んでも宜しい。

《彖伝》
彖曰、需須也。険在前也。剛健而不陥。其義不困窮矣。需有孚、光亨、貞吉、位乎天位、以正中也。利渉大川、往有功也。
○彖に曰く、需(じゆ)は須(ま)つ也。険(けん)前に在(あ)る也。剛健にして陥(おちい)らず。其の義困(こん)窮(きゆう)せず。需は孚(まこと)有り、光(おおい)に亨(とお)る、貞なれば吉とは、天(てん)位(い)に位(くらい)するに、正(せい)中(ちゆう)を以てする也。大(たい)川(せん)を渉(わた)るに利しとは、往(ゆ)きて功(こう)有る也。
 彖伝は次のように言っている。需は自然に慈雨が降ってくるのを待つ時である。下卦乾(剛健)が前に進もうとするが、上卦坎(険難)が立ち塞がって容易に進めない。
 乾(剛健)は泰然と時が至るのを待つことができるから険難には陥らない。
 天命を素直に受け容れるから困窮することもない。孚(まこと)が剛健な性質に支えられて光のように隅々を照らしすらっと通る。正しい道(泰然と時が至るのを待つこと)を固く守れば幸運に巡り逢えるのは、九五の天子が剛健中正の德を具えているからである。
 正しい道(泰然と時が至るのを待つ)を固く守れば難しい事に取り組んでも宜しい。時が至るのを待って行動すれば、功績を上げることができる。

《大象伝》
象曰、雲上於天需。君子以飲食宴樂。
○象に曰く、雲、天に上(のぼ)るは需(じゆ)なり。君子以て飲食宴(えん)樂(らく)す。
 大象伝は次のように言っている。雲が天高く上がり慈雨が降ってくるのを待っている形が需の卦象である。君子は、この形を見習って悠(ゆう)然(ぜん)と身心を養い(休養)宴楽して(飲み食い楽しんで)、ゆったりと慈(いつく)しみの雨を待つのである。

水天需九五(地天泰六五の之卦)

《爻辞》
九五。需于酒食。貞吉。
○九五。酒(しゆ)食(し)に需(ま)つ。貞なれば吉なり。
 九五は剛健中正の理想的な天子(トップ)だが、九二と応じていないのが唯一の欠点である。
 慈雨が降ってくる時を待つ需の時に中(あた)り、優(ゆう)游(ゆう)と酒(しゆ)食(し)を楽しみ楽しませ身心を養って時機が至るのを待っている。
 大象伝の「雲、天に上(のぼ)るは需なり。君子以て飲食宴樂す」とは九五のことである。内に充実した真心で正しい道を固く守り、時至って天下を平定する。

《小象伝》
象曰、酒食貞吉、以中正也。
○象に曰く、酒(しゆ)食(し)の貞(てい)吉(きつ)とは、中(ちゆう)正(せい)なるを以(もつ)て也。
 小象伝は次のように言っている。九五は慈雨が降ってくる時を待つ需(じゆ)の時に中り、優(ゆう)游(ゆう)と酒(しゆ)食(し)を楽しみ身心を養って時機が至るのを待っている。内に充実した真心で需の時の正しい道を固く守り、時至って天下を平定する。
 九五が中正を具えた天子(トップ)だからである。