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四季と易経 その二十

菜虫化蝶(なむしちようとかす)(七十二候の候の九候・啓蟄の末候)

【新暦三月十五日ころから十九日ころまで】
 意味は「青虫が羽(う)化(か)して蝶となる(絵で楽しむ)」である。
 「絵で楽しむ」には次のように書いてある。
 冬を堪えてじっと過ごした蛹(さなぎ)が羽化し、蝶に生まれ変わる時季。

 「菜虫化蝶(なむしちようとかす)」は、易経・陰陽消長卦の「地天泰」上六に中る。次に「地天泰」上六の文章(爻辞と小象伝)を示す。
 「地天泰」上六の言葉は【新暦三月十五日ころから十九日ころまで】に当て嵌まる。

地天泰上六(易経・陰陽消長卦)

《爻辞》
上六。城復于隍。勿用師。自邑告命。貞吝。
○上六。城(しろ)隍(ほり)に復(かえ)る。師(いくさ)を用(もち)ふる勿(なか)れ。邑(ゆう)より命(めい)を告(つ)ぐ。貞(てい)なるも吝(りん)。
 上六は泰が否に移行する時である。堀を掘削して築き上げた城壁が崩れ落ちて堀が平地に復るように泰平の時は終焉しようとしている。
 上下君臣の情が交わらず、民心が離反した時に兵力を用いてはならない。最早動乱を鎮撫することはできない。天下に政令を発布しても無駄である。自分の領地内で政令を命ずる他ない。政令が如何に正しくても、天下泰平を保つことができなかったのである。統治者としては恥ずべきことである。

《小象伝》
象曰、城復于隍、其命亂也。
○象に曰く、城隍に復るとは、其の命亂るる也。
 小象伝は次のように言っている。泰平の時は終焉しようとしている。民(みん)心(しん)が離(り)反(はん)して、天下泰平の天命が攪(かく)乱(らん)して機能しなくなったのである。

 「地天泰」上六の之卦は「山天大畜」である。次に「山天大畜」の全体像を表す言葉(卦辞・彖辞、彖伝、大象伝)と「山天大畜」上九の言葉(爻辞、小象伝)を示す。これらの言葉は「地天泰」の上六と同じく【新暦三月十五日ころから十九日ころまで】に当て嵌まる。

山天大畜(地天泰上六の之卦)

《卦辞・彖辞》
大畜、利貞。不家食吉。利渉大川。
○大畜は貞(ただ)しきに利(よろ)し。家(か)食(しよく)せず。吉。大(たい)川(せん)を渉(わた)るに利(よろ)し。
 大畜は天(下卦乾)が山(上卦艮)の中に在(あ)り、至って大きなものを止(とど)め貯(たくわ)え養っている。人事で観れば、君子が大きな才德(才能と道德心)を止め貯え養っている。正しい道(滅私奉公)を固く守るが宜しい。自分の家に引き籠もらず(己のために図らず)、勇敢に社会に出て、世のため人のため、お国のために尽くせば、天下の艱難を救済することもできる。大きな才德(才能と道德心)を止め貯え養ったのだから、難事業に取り組んでも宜しい。

《彖伝》
彖曰、大畜、剛健篤實輝光、日新其德。剛上而尚賢、健止能。大正也。不家食吉、賢養也。利渉大川、應乎天也。
○彖に曰く、大畜は剛健篤(とく)實(じつ)にして、輝(き)光(こう)日々に新たなり。其(そ)の德、剛上(のぼ)りて賢を尚(たつと)び、能(よ)く健を止(とど)む〔能く健にして止(とど)まる〕。大いに正しき也。家(か)食(しよく)せず、吉とは、賢を養(やしな)う也。大(たい)川(せん)を渉(わた)るに利(よろ)しとは、天に應(おう)ずる也。
 彖伝は次のように言っている。大畜は剛健(乾)にして篤実(艮)。天德は光り輝き、日々新たに磨かれる。六五の天子は上九の顧問を尊(たつと)びその教えによく順い正しい道を施して不義を畜(とど)める。君子が大きな才德(才能と道德心)を止め貯え養っているのだから、大いに正しいのである。自分の家に引き籠もらず(己のために図らず)、勇敢に社会に出て、世のため人のため、お国のために尽くせば、天下の艱難を救済することもできる。六五の天子が賢人を貴びよく養い任用するからである。大きな才德(才能と道德心)を止め貯え養ったのだから、難事業に取り組んでも宜しい。天の道(己のために図らず、世のため人のために尽くすこと=滅私奉公)に適っているからである。

《大象伝》
象曰、天在山中大畜。君子以多識前言往行、以畜其德。
○象に曰く、天、山の中に在(あ)るは大畜なり。君子以(もつ)て多く前(ぜん)言(げん)往(おう)行(こう)を識(しる)して、以て其(そ)の德を畜(たくわ)う。
 大象伝は次のように言っている。天(乾)の元氣が山(艮)の中に蓄え養われて在るのが大畜の形である。君子はこの形に倣(なら)って、古(いにしえ)の賢(けん)者(じや)の言(げん)行(こう)を体得し、見(けん)識(しき)を胆(たん)識(しき)に高めるべく努力したように、日々人德を磨いて世のため人のために尽くす準備をする。

山天大畜上九(地天泰上四の之卦)

《爻辞》
上九。何天之衢。亨。
○上九。天の衢(ちまた)を何(にな)う。亨(とお)る。
 上九は大畜の卦極(陽剛を止め蓄え養い世のため人のために尽くした時)に居て、人德を修養した下卦三陽の賢人を用いて治国平天下を実現する(世の人々を幸せにする)。
 上九が天の広大無辺な(滅私奉公の)道を担って、下卦三陽の賢人が縦(じゆう)横(おう)無(む)尽(じん)に活動するので、何事も成就するのである。

《小象伝》
象曰、何天之衢、道大行也。
○象に曰く、天の衢(ちまた)を何(にな)うとは、道(みち)大いに行われる也(なり)。
 小象伝は次のように言っている。上九が天の広(こう)大(だい)無(む)辺(へん)な(滅私奉公の)道を担って、下卦三陽の賢人が縦横無尽に活動するので、何事も成就する。畜止を終えた大畜の卦極(陽剛を止め蓄え養い世のため人のために尽くした時)に居て、天の道が大いに行われるのである。