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四季と易経 その二十三

桜始開(さくらはじめてひらく)(七十二候の候の十一候・春分の次候)

【新暦三月二十五日ころから二十九日ころまで】
 意味は「桜の花が咲き始める(絵で楽しむ)」である。
 「絵で楽しむ」には次のように書いてある。
 古来より人々に愛でられ、詠まれてきた桜がようやく花を開き始めるころ。(中略)桜は、別名「夢(ゆめ)見(み)草(ぐさ)」。」

 「桜始開(さくらはじめてひらく)」は、易経・陰陽消長卦の「雷天大壮」九二に中る。次に「雷天大壮」九二の文章(爻辞と小象伝)を示す。
 「雷天大壮」九二の言葉は【新暦三月二十五日ころから二十九日ころまで】に当て嵌まる。

雷天大壮九二(易経・陰陽消長卦)

《爻辞》
九二。貞吉。
○九二。貞(てい)にして吉(きつ)。
 九二は陽爻陰位で剛に過ぎないので暴走しない。常に正しい道を固く守る(傲(ごう)慢(まん)になったり強(ごう)引(いん)すぎたりしない)ので、何事も宜しきを得て、幸運を招き寄せるのである。

《小象伝》
象曰、九二貞吉、以中也。
○象に曰く、九二の貞にして吉なるは、中(ちゆう)なるを以(もつ)て也(なり)。
 小象伝は次のように言っている。九二は常に正しい道を固く守る(傲(ごう)慢(まん)になったり強(ごう)引(いん)すぎたりしない)ので、何事も宜しきを得て、幸運を招き寄せる。
 陽(君子・盛運・善)の勢いが陰(小人・衰運・悪)を駆(く)逐(ちく)して益々盛んになる大壮の時に中って、調子に乗ってやり過ぎないように自分の言行を抑制して、常に正しい道(道德)を固く守り、暴走しないからである。

 「雷天大壮」九二の之卦は「雷火豊」である。次に「雷火豊」の全体像を表す言葉(卦辞・彖辞、彖伝、大象伝)と「雷火豊」六二の言葉(爻辞、小象伝)を示す。これらの言葉は「雷天大壮」の九二と同じく【新暦三月二十五日ころから二十九日ころまで】に当て嵌まる。

雷火豊(雷天大壮九二の之卦)

《卦辞・彖辞》
豐、亨。王假之。勿憂。宜日中。
○豐(ほう)は亨る。王、之(これ)に假(いた)る。憂ふる勿(なか)れ。日(ひ)の中(ちゆう)するに宜し。
 豐は盛運の極みである。明らかな智慧(下卦離)で世の中の状況や情勢を見極めて、雷(らい)光(こう)が轟(とどろ)き渡(わた)るように動いている(上卦震)。それゆえ、何事も盛んに伸びて国や社会は豊かになる。権威と権力を兼ね備えた天子(トップ)が到達する豊かさの極みである。盛者必衰の理(ことわり)を過度に心配することはない。中天に輝く太陽になったつもりで萬民を遍(あまね)く照らすことが肝要である。だが、盛運は衰運に向かって行くことを覚悟しておくべきである。

《彖伝》
彖曰、豐大也。明以動。故豐。王假之、尚大也。勿憂、宜日中。宜照天下也。日中則昃。月盈則食。天地盈虚、與時消息。而況于人乎。況于鬼神乎。
○彖に曰く、豐は大なる也。明かにして以て動く。故に豐なり。王、之に假(いた)るとは、大を尚(たつと)ぶ也。憂ふる勿(なか)れ、日(ひ)の中(ちゆう)するに宜しとは、宜しく天下を照らすべき也。日(ひ)の中(ちゆう)すれば則ち昃(かたむ)く。月盈(み)つれば則ち食(か)く。天地の盈(えい)虚(きよ)は、時と與(とも)に消息す。而(しか)るを況(いわ)んや人に于(おい)てを乎(や)。況んや鬼神に于(おい)てを乎(や)。
 彖伝は次のように言っている。豐は盛大で豊かな時である。明らかな智慧(離)で世の中の状況や情勢を見極めて、雷(らい)光(こう)(震)が轟き渡るように動いている。それゆえ、何事も盛んに伸びて国や社会は豊かになる。天子(トップ)が到達する豊かさの極みとは、天子(トップ)が自分の才德及び領地並びに民の富を大きくしたことを貴(たつと)ぶことである。憂えることなく、中天に輝く太陽のように萬(ばん)民(みん)を遍(あまね)く照らすことが肝要なのは、天子の使命は、己の損得から離れて、國家萬民のために、遍く天下を照らし、隅々まで民に恩(おん)澤(たく)を施すことにあるからである。
 太陽が中天に至れば必ず西方に傾き、やがて西の山に沈んで夜が来る。月が満ちて満月になれば、漸次に欠けて三(み)日(か)月(づき)になる。天地萬物、時に随い栄枯盛衰の変化を免れない。人間社会においてはなおさらのことである。ご先祖様や神仏においても同じである。以上のことから、盛運は衰運に向かって行くことを覚悟しておくべきである。

《大象伝》
象曰、雷電皆至豐。君子以折獄致刑。
○象に曰く、雷電皆(みな)至るは豐なり。君子以て獄(ごく)を折(わか)ち刑を致(いた)す。
 大象伝は次のように言っている。雷(上卦震)と稲妻(下卦離)が同時に轟き渡るのが豐の形である。君子はこの形に見習って、盛大な威力の雷(らい)電(でん)が遍く天下に轟き渡るように、悪を一掃すべく是非善悪を裁判で判決して、犯罪者には刑を厳しく執行する。盛運から衰運へ転落して行くのをくい止める努力をするのである。

雷火豊六二(雷天大壮の之卦・爻辞)

《爻辞》
六二。豐其蔀。日中見斗。往得疑疾。有孚發若、吉。
○六二。其(その)蔀(ほう)を豐(おおい)にす。日(ひ)の中(ちゆう)するに斗(と)を見る。往きて疑(ぎ)疾(しつ)を得(う)。孚(まこと)有り發(はつ)若(じやく)すれば、吉。
 六二は柔順中正で離の主爻ゆえ明智と明德を兼ね備えた賢臣である。だが、応じるはずの六五の天子(トップ)は柔弱不正の暗君なので、賢臣六二と協力して豐の道(盛運の極み)を全うできない。灌(かん)木(ぼく)雑草が盛んに繁(はん)茂(も)して日光を遮断するから、白昼に北斗七星が見えるように、世の中は真っ暗闇になる。賢臣六二が自ら進んで諫言しようとすれば、六五の天子(トップ)は暗君なので疑われて疾(にく)まれるのが関の山である。だが、それでも諦めることなく真心で六五の暗君を啓蒙すれば、やがては豐の道(盛運の極み)を取り戻すこともできる。

《小象伝》
象曰、有孚發若、信以發志也。
○象に曰く、孚有り發(はつ)若(じやく)すとは、信(しん)以て志を發(はつ)する也。
 小象伝は次のように言っている。諦めることなく六五の天子を啓蒙しようとする賢臣六二の真心に暗君六五が感化される。六五が天子(トップ)として確(かつ)乎(こ)不(ふ)抜(ばつ)の志を抱くのである。