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四季と易経 その七十一

立冬(りつとう)(二十四節氣の十九節氣)

【新暦十一月七日ころから二十一日ころまで】
 「霜降(そうこう)」の次の二十四節氣は「立冬(りつとう)」である。
 暦の上では冬の始まりです。立冬を迎えるころに吹く北寄りの冷たい風が「木枯らし」。(中略)十一月十五日に行われるのが七五三。昔は幼児の死亡率が高く、「七歳までは神のうち」といわれました。そこで、三歳の男女(髪置きの義)、五歳の男の子(袴儀(はかまぎ))、七歳の女の子(帯解きの儀)の成長に感謝し、お祝いする風習に。(絵で楽しむ)

山茶始開(つばきはじめてひらく)(七十二候の五十五候・立冬(りつとう)の初候)

【新暦十一月七日ころから十一日ころまで】
 意味は「山茶花(さざんか)が咲き始める(絵で楽しむ)」である。
 「絵で楽しむ」には次のように書いてある。
 鮮やかなピンク色の花を咲かせる山茶花が、冬の訪れを予感させてくれるころ。ここでは「つばき」と読ませていますが、昔から椿と山茶花は混同されていました。椿の開花は二月ころ。

 「山茶始開(つばきはじめてひらく)」は、易経・陰陽消長卦の「山地剝」九四に中る。次に「山地剝」六四の文章(爻辞と小象伝)を示す。
 「山地剝」六四の言葉は【新暦十月八日ころから十二日ころまで】に当て嵌まる。

山地剝六四(易経・陰陽消長卦)

《爻辞》
六四。剝牀以膚。凶。
○六四。牀(しよう)を剝(はく)するに膚(はだえ)を以(もつ)てす。凶。
 六四は牀(しよう)の脚(あし)を剝(はく)落(らく)し尽くして牀の上に居る上九に迫り(人が載っている寝台の脚の下から脚の上、そして、寝台そのものに被害が及び、今や寝台の上にまで及んでいる)君子・上九の皮膚を剝落する段階に至った。もはや禍(わざわい)(君子が小人に剝落されること)を回避できない。終には全てが崩壊(君子が小人に剝落されて組織が瓦解)する。

《小象伝》
象曰、剝牀以膚、切近災也。
○象に曰く、牀(しよう)を剝(はく)するに膚(はだえ)を以(もつ)てすとは、切に災(わざわ)いに近き也。
 小象伝は次のように言っている。もはや禍(わざわい)(君子が小人に剝落されること)を回避できない。人が載っている寝台の脚の下から脚の上、そして、寝台そのものに被害が及び、今や寝台に載っている人に直接被害が及ぶように漸(ぜん)次(じ)に進んで来た剝落の災害がいよいよ切(せつ)迫(ぱく)して上九の君子に近づいて来たのである。

 「山地剝」六四の之卦は「火地晋」である。次に「火地晋」の全体像を表す言葉(卦辞・彖辞、彖伝、大象伝)と「火地晋」の九四の言葉(爻辞、小象伝)を示す。これらの言葉は「山地剝」の六四と同じく【新暦十一月七日ころから十一日ころまで】に当て嵌まる。

火地晋(風地観六四の之卦)

《卦辞・彖辞》
晉、康侯用錫馬藩庶。晝日三接。
○晉(しん)は、康(こう)侯(こう)用(もつ)て馬を錫(たてまつ)ること藩(はん)庶(しよ)なり。晝(ちゆう)日(じつ)に三(み)たび接す。
晉は日(離)が地(坤)上に出て、明智・明德(離)で大地(坤)を照らし、地(坤)はその光(離)を柔順に受け容れ萬(ばん)物(ぶつ)が生成する時である。明德の君主の下、諸(しよ)侯(こう)が柔順に国を治めるので、君主が馬を諸侯に賜り(或いは諸侯が馬を君主に献上して)、諸侯は一日三回も天子を礼(らい)拝(はい)または天子に拝謁するほど出世して、治国平天下を実現する。

《彖伝》
彖曰、晉、進也。明出地上、順而麗乎大明、柔進而上行。是以康侯錫馬藩庶、晝日三接也。
○彖に曰く、晉は進む也。明地の上に出(い)で、順にして大(たい)明(めい)に麗(つ)き、柔進みて上(のぼ)り行く。是(ここ)を以て康(こう)侯(こう)用(もつ)て馬を錫(たてまつ)ること藩(はん)庶(しよ)にして、晝(ちゆう)日(じつ)に三(み)たび接する也(なり)。
 彖伝は次のように言っている。晉は何事も進み行く時である。明るい太陽(明智と明德を具えた天子・トップ)が地上に出て(社会に現れて)、大地(臣民)は明智と明德を備えた太陽(天子・トップ)に柔順に従っている。すなわち、柔順な六五が君(くん)位(い)(天子・トップ)に上(のぼ)り詰(つ)めた(風地観の六四が上り進んで火地晋の六五の天子・トップに就任した「朱子の周易本義による」)時である。それゆえ、君(くん)臣(しん)が一体となって、君主が馬を諸(しよ)侯(こう)に賜(たまわ)り(或いは諸侯が馬を君主に献上して)、諸侯は一日三回も天子を礼(らい)拝(はい)または天子に拝謁するほど出世して、治国平天下を実現するのである。

《大象伝》
象曰、明出地上晉。君子以自昭明德。
○象に曰く、明、地の上に出(い)づるは晉なり。君子以(もつ)て自ら明德を昭(あきら)かにす。
 大象伝は次のように言っている。明るい太陽(離)が地(坤)上に現れ出る(大人が明德を明らかにした)のが晉の形である。
 大人を目指す君子はこの形(大人が明德を明らかにしたこと)に見習って、人(じん)欲(よく)に蔽(おお)われた心を磨き自らの中に潜んでいる明德を明らかにするのである。

火地晋九四(山地剝六四の之卦・爻辞)

《爻辞》
九四。晉如鼫鼠。貞厲。
○九四。晉(しん)如(じよ)たり、鼫(せき)鼠(そ)なり。貞(てい)なれども厲(あやう)し。
 偉大な明德を備えた六五の天子(トップ)に、柔順な臣下が柔順に従う晉の時にあって、九四は六五の天子(トップ)と臣下の間を隔てようとする不心得者である。不心得者の九四が大臣(側近・ナンバーツー)の位に居て、柔順な家臣達(下卦三陰)が六五の天子(トップ)に付き従おうとするのを阻(はば)み、上下の間を隔(かく)絶(ぜつ)しようとするのである。
 昼は隠れて夜悪事を働く大(おお)鼠(ねずみ)のように国家を蝕(むしば)む賊臣である。それゆえ、善いことをしても誰にも評価されず、身を滅ぼして家を喪(うしな)うほど危険な状態に陥るのである。

《小象伝》
象曰、鼫鼠貞厲、位不當也。
○象に曰く。鼫(せき)鼠(そ)、貞なれども厲(あやう)しとは、位(くらい)當(あた)らざれば也。
 小象伝は次のように言っている。九四が身を滅ぼして家を喪うほど危険な状態に陥る。六五の天子(トップ)を補佐する側近の位(くらい)に居ながら、その職務に背(そむ)くからである。