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四季と易経 その三十六

蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)(七十二候の二十二候・小満の初候)

【新暦五月二十日ころから二十五日ころまで】
 意味は「蚕が桑の葉を食べ始める(絵で楽しむ)」である。
 「絵で楽しむ」には次のように書いてある。
 古来より蚕は「お蚕様」と呼ばれるほど、繭からとれる絹糸は人々の生活を支える貴重な収入源でした。(中略)ちょうどこの時季にあたる旧暦四月は、蚕の餌である桑の葉を集めることから「木の葉採り月」という別名も。

 「蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)」は、易経・陰陽消長卦の「乾為天」初九に中る。次に「乾為天」初九の文章(爻辞と小象伝)を示す。
 「乾為天」初九の言葉は【新暦五月二十日ころから二十五日ころまで】に当て嵌まる。

乾為天初九(易経・陰陽消長卦)

《爻辞》
初九。潜龍。勿用。
○初(しよ)九(きゆう)。潜(せん)龍(りゆう)なり。用(もち)うる勿(なか)れ。
 初九は無限の可能性を秘めているが、その資質が潜み隠れているので、潜龍と称するのである。だから、潜龍を用いてはならない。世(社会、現場、第一線、表舞台等)に出してはならない。

《小象伝》
潜龍勿用、陽在下也。
○潜(せん)龍(りゆう)用(もち)うる勿(なか)れとは、陽にして下に在れば也。
 潜龍を用いてはならない。世(社会、現場、第一線、表舞台等)に出してはならない。今は萬物の根源的なパワー(元氣)を養う時。パワー(元氣)を発揮する時ではない。発揮しようとすれば木っ端みじんに打ち砕かれて、之卦「天風姤」の時に転落してしまう。

 「乾為天」初九の之卦は「天風姤」である。次に「天風姤」の全体像を表す言葉(卦辞・彖辞、彖伝、大象伝)と「天風姤」の初六の言葉(爻辞、小象伝)を示す。これらの言葉は「乾為天」の初九と同じく【新暦五月二十日ころから二十五日ころまで】に当て嵌まる。

天風姤(乾為天初九の之卦)

《卦辞・彖辞》
姤、女壯。勿用取女。
○姤(こう)は、女(じよ)壯(さかん)なり。女を取(めと)るに用ふる勿(なか)れ。
 姤は一陰(小人・女・邪心)が五陽(君子・男・清明心)の下にすっと入り込んで(下卦巽)、巧妙に取り入り、陰(小人・女・邪心)の勢力を増大していく時である。
 このような時(邪心が魅力的な姿に化身して君子を誑(たぶら)かす時)に女(魅力的な姿に化身した邪心の例え)を決して用いてはならない。

《彖伝》
彖曰、姤、遇也。柔遇剛也。勿用取女、不可與長也。天地相遇、品物咸章也。剛遇中正、天下大行也。姤之時義、大矣哉。
○彖に曰く、姤は遇(あ)ふ也。柔剛に遇ふ也。女(じよ)を取(めと)るに用(もち)ふる勿(なか)れとは、與(とも)に長(なが)かる可(べ)からざれば也。天地相(あい)遇(あ)い、品(ひん)物(ぶつ)咸(ことごと)く章(あきら)か也。剛中正に遇へば、天下大いに行はるる也。姤の時(じ)義(ぎ)大(だい)なる哉(かな)。
 彖伝は次のように言っている。姤は遇う時。一陰(小人・女・邪心)が五陽(君子・男・清明心)と出遇う時である。女(魅力的な姿に化身した邪心の例え)が男(君子・大人・清明心の例え)に巧みに取り入り、陰(小人・女・邪心)の勢力を増大する。このような時(邪心が魅力的な姿に化身して君子を誑(たぶら)かす時)に女(魅力的な姿に化身した邪心の例え)を決して用いてはならない。女(魅力的な姿に化身した邪心の例え)は幾久しく身(清明心)を保つことができないからである。
 陰陽交わり(結合して)悪い結果を招くこともある。しかし、天地の道は陰陽交わり消長して萬物が生成発展する循環である。人の道は剛健中正の德を備えた君子が国(組織)を治めれば、天下(組織)は大いに平らかになる(調和する)のである。以上のように考えてみると、姤の時の意義は何と偉大であろうか。

《大象伝》
象曰、天下有風姤。后以施命誥四方。
○象に曰く、天の下に風(かぜ)有るは姤(こう)なり。后(きみ)以て命(めい)を施(ほどこ)し四(し)方(ほう)に誥(つ)ぐ。
 大象伝は次のように言っている。天(乾)の下に風(巽)が吹き、遍く地上に風が行き渡るのが姤の形である。姤の君主(トップ)はこの形を見習い、清明心を保ち続けるための命令を発布して天下の隅々にまで行き渡らせ、萬民を教化するのである。昭和天皇が発布された大東亜戦争終戦の詔勅(玉音放送)のように…。

天風姤初六(乾為天初九の之卦・爻辞)

《爻辞》
初六。繋于金柅。貞吉。有攸往、見凶。羸豕孚蹢蠋。
○初六。金(きん)柅(じ)に繋(つな)ぐ。貞(てい)にして吉。往(ゆ)く攸(ところ)有れば凶を見る。羸(るい)豕(し)孚(まこと)に蹢(てき)蠋(ちよく)たり。
 陰柔不正(陰爻陽位・一陰五陽)の初六は微(び)賤(せん)な位で、君子を誑(たぶら)かす悪しき小人(魅力的な女性に化身した邪心の塊(かたまり)。一見微力に見えるが徐々に君子に浸透して邪心を蔓延(はびこ)らせる)である。それゆえ、金属製の車の止め木に繋いでおくがよい。
 この悪しき小人を止め木に繋いで正しく教え導けば邪心を正して社会は治まり幸福を招き寄せる。止め木に繋がず自由な行動を許せば、君子が誑(たぶら)かされて社会は乱れ、不幸を招き寄せる。初六は騒がしい豚のように飛び跳ねて、君子を誑(たぶら)かそうと企(たくら)んでいる悪しき小人(魅力的な女性に化身した邪心の塊(かたまり)。一見微力に見えるが徐々に君子に浸透して邪心を蔓延(はびこ)らせる)なので警戒することが肝要である。

《小象伝》
象曰、繋于金柅、柔道牽也。
○象に曰く、金(きん)柅(じ)に繋(つな)ぐは、柔(じゆうの)道(みち)牽(ひ)けば也(なり)。
 小象伝は次のように言っている。悪しき小人(魅力的な女性に化身した邪心の塊(かたまり)。一見微力に見えるが徐々に君子に浸透して邪心を蔓延(はびこ)らせる)初六は金属製の車の止め木に繋いでおくがよい。小人の勢いが盛んになり邪心が蔓延(はびこ)るのを未然に防ぐのである。