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四季と易経 その五十三

立秋(二十四節氣の十三節氣)

【新暦八月七日ころから八月二十二日ころまで】
 「大(たい)暑(しよ)」の次の二十四節氣は「立秋(りつしゆう)」である。
 暦の上では、秋の始まりです。まだまだ厳しい暑さに見舞われますが、季節のあいさつも残暑見舞いに切り替わるとき。この時機ニお盆行事を行う地域も多いはずです。お盆の正式名称は「盂(う)蘭(ら)盆(ぼん)会(え)」。お釈迦様の弟子・目(もく)連(れん)があの世で苦しむ亡き母を救うため、お釈迦様の教え通り供養をして成仏できたという逸話が由来です。(絵で楽しむ)

涼風至(すずかぜいたる)(七十二候の三十七候・立秋の初候)

【新暦八月七日ころから十一日ころまで】
 意味は「涼しい風が初めて立つ(絵で楽しむ)」である。
 「絵で楽しむ」には次のように書いてある。
 秋の涼しい風が吹き始めるといわれる時季。実際にはまだまだ厳しい暑さが続きますが、朝晩の風にふと、かすかな秋の気配を感じることがあります。「涼(すず)風(かぜ)」は、俳句においては夏の季語。

 「涼風至(すずかぜいたる)」は、易経・陰陽消長卦の「天山遯」九四に中る。次に「天山遯」九四の文章(爻辞と小象伝)を示す。
 「天山遯」九四の言葉は【新暦八月七日ころから十一日ころまで】に当て嵌まる。

天山遯九四(易経・陰陽消長卦)

《爻辞》
九四。好遯。君子吉。小人否。
○九四。好(よみ)すれども遯(のが)る。君子は吉。小人は否(しから)ず。
 九四は剛健不中正(陽爻陰位)。正応初六(陰爻陽位)を愛しているが、不正同士なので宜しくない関係である。今は遁れ退く遯の時だから、私欲(初六への想い)を断ち切って、剛健の德を発揮し隠遁すべきである。
 君子なら遯の時の大義に順って隠遁する。小人は私欲に囚(とら)われて禍(わざわい)を招き寄せる。

《小象伝》
象曰、君子好遯。小人否也。
○象に曰く、君子は好(よみ)すれども遯(のが)る。小人は否(しから)ざる也(なり)。
 小象伝は次のように言っている。九四が君子なら遯の時の大義に順って隠遁する。小人は私欲に囚(とら)われて禍(わざわい)を招き寄せる。貴方が君子か小人か、問われる時である。

 「天山遯」九四の之卦は「風山漸」である。次に「風山漸」の全体像を表す言葉(卦辞・彖辞、彖伝、大象伝)と「風山漸」の六四の言葉(爻辞、小象伝)を示す。これらの言葉は「天山遯」の九四と同じく【新暦八月七日ころから十一日ころまで】に当て嵌まる。

風山漸(天山遯九四の之卦)

《卦辞・彖辞》
漸、女歸吉。利貞。
○漸(ぜん)は、女(じよ)歸(とつ)ぎて吉。貞しきに利し。
 漸は漸次に(少しずつ)進んで行く時。どっしりと止まっている山(艮)の地中に、樹木(巽)がしっかりと根を張って風が吹いても揺るぐことなく、すっくと聳え立っている。内外の環境に巽(そん)順(じゆん)に適合して着実に成長するのである。
 漸は少男(艮)が長女(巽)に謙って、礼の順序に従って求婚し、長女が応じてお嫁に行くように、漸次に(少しずつ)着実に前進する。それゆえ幸運を招き寄せる。正しい(少しずつ進んで行く)道を固く守って漸進する(少しずつ進む)ことが肝要である。

《彖伝》
彖曰、漸之進也。女歸吉也。進得位、往有功也。進以正、可以正邦也。其位剛得中也。止而巽、動不窮也。
○彖に曰く、漸は之(ゆ)き進む也。女(じよ)歸(とつ)ぎて吉なる也。進みて位を得(え)、往きて功有る也。進むに正しきを以てす、以て邦(くに)を正す可き也。其(その)位(くらい)、剛中を得(う)る也。止(とど)まりて巽、動きて窮(きわ)まらざる也。
 彖伝は次のように言っている。漸は漸(ぜん)次(じ)に(少しずつ)着実に前進する時。少男(艮)が長女(巽)に謙って、礼の順序に従って求婚し、長女が応じてお嫁に行くように、漸次に(少しずつ)着実に前進する。それゆえ幸運を招き寄せる。九五の天子(トップ)は漸次に(少しずつ)前進して位を得、事を為し遂げて大いに成功する。六二・九三・六四も正しい位を得て、任務を立派に果たすのである。九五の天子(トップ)は正しい道を(少しずつ)進むから、国を正すことができる。天子(トップ)の位に居て、剛健にして中庸の德を兼ね具えている。内に泰(たい)然(ぜん)と止まり、外に巽順に適合して、行き詰まることがない。

《大象伝》
象曰、山上有木漸。君子以居賢德善俗。
○象に曰く、山の上に木有るは漸なり。君子以て賢德に居(お)り俗(ぞく)を善(よ)くす。
 大象伝は次のように言っている。山(艮)の上に木(巽)が有るのが漸(ぜん)の形。山の上の木は、漸(ぜん)次(じ)に(少しずつ)着実に成長して、雲を突き抜けるほどの大木になる。君子はこの形に見習って、賢明な道德を習得して己の人間性を磨き、漸次に(少しずつ)着実に民衆を教え導き、風俗が善くなるように民衆を感化するのである。

風山漸六四(天風姤九四の之卦・爻辞)

《爻辞》
六四。鴻漸于木。或得其桷、无咎。
○六四。鴻(こう)、木に漸(すす)む。或は其(その)桷(かく)を得(う)れば、咎无し。
 大きな雁(かり)(鴻(こう))が小高い平原から木の上に漸次に(少しずつ)進んで来た。雁(かり)(鴻(こう))の足には水掻きがあるので、木の枝をしっかりと掴めない。また、六四は九三から不義の交わりを迫られて危ない状況に置かれている。以上のような不安定な状況の中で、大きく平らな木の枝を見つけて、しっかりと掴むことができれば、咎を免れることができる。

《小象伝》
象曰、或得其桷、順以巽也。
○象に曰く、或(あるい)は其(その)桷(かく)を得とは、順にして以て巽(そん)なる也。
 小象伝は次のように言っている。六四が大きく平らな木の枝を見つけて、しっかりと掴むことができれば咎を免れる。柔順にして謙遜な態度を貫いたからである。