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四季と易経 その四十

腐草為螢(ふそうほたるとなる)(七十二候の二十六候・芒種の次候)

【新暦六月十日ころから十五日ころまで】
 意味は「腐った草が螢に生まれ変わる(絵で楽しむ)」である。
 「絵で楽しむ」には次のように書いてある。
 じっとりと湿度の高い季節、腐りかけた草の下から螢が光を放ち始めます。

 「腐草為螢(ふそうほたるとなる)」は、易経・陰陽消長卦の「乾為天」九五に中る。次に「乾為天」九五の文章(爻辞と小象伝)を示す。
 「乾為天」九五の言葉は【新暦六月十日ころから十五日ころまで】に当て嵌まる。

乾為天九五(易経・陰陽消長卦)

《爻辞》
九五。飛龍在天。利見大人。
○九(きゆう)五(ご)。飛(ひ)龍(りゆう)天に在り、大(たい)人(じん)を見るに利(よろ)し。
 九五は、大空高く飛翔して、大地に慈雨を施(ほどこ)す龍のように天下を治めている。自分を導いてくれる禅の老師のようなブレーンを側近として指導を仰ぐか、それが無理なら、万(ばん)事(じ)研修(松下幸之助の言葉・自分の周りで起こること全てが學びであると云う考え方)と心得て、常に自(じ)戒(かい)(自らを律して君徳を維持)するが宜しい。

《小象伝》
飛龍在天、大人造也。
○飛(ひ)龍(りゆう)天に在りとは、大(たい)人(じん)の造(しわざ)なる也。
 九五が大空高く飛翔して、大地に慈雨を施す龍のように天下を治めているのは、潜龍の時に確立した確乎不抜の志を実現すべく、滅(めつ)私(し)奉(ほう)公(こう)の精神で天命を体現する大人としての君德を具えており、その地位に驕(おご)ることなく、万事研修と心得て、常に自(じ)戒(かい)しているからである。

 「乾為天」九五の之卦は「火天大有」である。次に「火天大有」の全体像を表す言葉(卦辞・彖辞、彖伝、大象伝)と「火天大有」の六五の言葉(爻辞、小象伝)を示す。これらの言葉は「乾為天」の九五と同じく【新暦六月十日ころから十五日ころまで】に当て嵌まる。

火天大有(乾為天九五の之卦)

《卦辞・彖辞》
大有、元亨。
○大(たい)有(ゆう)は、元(おおい)に亨(とお)る。
 大有は乾(天)の上に離(火・太陽・無我の天子)が在り、天上に太陽が燦(さん)々(さん)と輝き普(あまね)く天下万民を慈しみの光で照らす時。一陰の六五(無我の天子・指導者・リーダー)が君位に在り、五陽の賢人(臣民・万民)が帰服するので、何事もすらすら通るのである。

《彖伝》
彖曰、大有、柔得尊位、大中而上下應之、曰大有。其德剛健而文明、應乎天而時行。是以元亨。
○彖に曰く、大有は、柔(じゆう)尊(そん)位(い)を得、大(だい)中(ちゆう)にして、上下之(これ)に應(おう)ずるを、大有と曰う。其(そ)の德剛(ごう)健(けん)にして文(ぶん)明(めい)、天に應(おう)じて時に行う。是(ここ)を以(もつ)て元(おおい)に亨(とお)る。
 彖伝は次のように言っている。大有は、柔順な六五(無我の天子・指導者・リーダー)が尊位に在(あ)る。六五は偉大な中(ちゆう)庸(よう)の德を具えており、上下五陽が心(しん)服(ぷく)しているから、大いに所有する(大有)と言う。六五は強く健やか(下卦乾)で明智(上卦離)を具えており、天命に順(じゆん)応(のう)して時に中(あた)る。それゆえ何事もすらすら通るのである。

《大象伝》
象曰、火在天上大有。君子以遏惡揚善、順天休命。
○象に曰く、火(ひ)、天(てん)上(じよう)に在(あ)るは大有なり。君子以(もつ)て惡を遏(とど)め善を揚(あ)げ、天の休(きゆう)命(めい)に順(したが)う。
 大象伝は次のように言っている。太陽が天上に在って燦(さん)々(さん)と輝き普く天下万民を慈しみの光で照らしているのが大有の形である。
 君子(人の上に立つ者)はこの形に倣(なら)って、悪を絶って、善を勧(すす)め、天命に順応して、普く天下万民を慈しみの光で照らすのである。

火天大有六五(乾為天九五の之卦・爻辞)

《爻辞》
六五。厥孚、交如。威如、吉。
○六五。厥(その)孚(まこと)、交(こう)如(じよ)たり。威(い)如(じよ)たり。吉。
 天下萬民が六五を信服して何事もすらすら通る大有の時に中り、六五の天子は至誠の心で九二の賢人を信任している。九二の賢人も至誠の心で六五に仕えている。衆(しゆう)陽(よう)は六五を心から尊崇しているので六五と衆陽の至(し)誠(せい)が相(あい)交(まじ)わる。六五が柔順温和の中に威(い)厳(げん)を保ち続ければ、大有の時は幾久しく続くのである。

《小象伝》
象曰、厥孚交如、信以發志也。威如之吉、易而无備也。
○象に曰く、厥(その)孚(まこと)、交(こう)如(じよ)たりとは、信以(もつ)て志を發(はつ)する也(なり)。威(い)如(じよ)の吉は、易にして備(そな)うる无(な)き也(なり)。
 小象伝は次のように言っている。六五の天子は至誠の心で九二の賢人を信任している。九二の賢人も至誠の心で六五に仕えている。衆(しゆう)陽(よう)は六五を心から尊崇しているので六五と衆陽の至(し)誠(せい)が相(あい)交(まじ)わる。六五の至誠の心が衆陽の志に通じるのである。六五が柔順温和の中に威厳を保ち続ければ、大有の時が幾久しく続くのは、鎧(よろい)甲(かぶと)(厳めしさの象徴)の備えなくとも、自然に醸(かも)し出される六五の威厳に衆陽が帰服するからである。